2022年介護業界に求められるケアテック活用【第三回】導入・活用に向けて検討すべきポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ケアテック導入・活用に向けて検討すべきポイント

前回はケアテックの導入に向けて、導入前(企画の段階)に実施すべき業務分析等の流れを解説して参りました。

今回は、それ以外に重要なポイントについて触れて行きたいと思います。

ケアテック活用が進む事で得られるメリット

問題から課題を抽出し対応すべき課題をケアテックで解決していく事で、将来的には確かに業務効率は上がります。

具体的には、介護の専門性が必要の無い事務作業や情報共有といった特定の業務に費やす時間を短縮する事で、そもそも職員の働き方改革が進み、休憩時間が取りたい時間に十分に取れるようになったり、希望休取得の可能性が高まったり、残業時間が減る等し、職員の負担軽減が進みます。

また、効率化した事で生まれた時間を、介護の専門性が必要な業務(対人援助)の時間に振り分ける事業所もあるでしょう。当然後者の事業所は、利用者の満足度が高まります。利用者満足度が上がる事で、結果的に職員満足度も上がるかもしれません。

この様に、ケアテック活用は職員や利用者にとって有益ではありますが、万事ハッピーになるかというとそれはそれで間違いで、上手に取り組まなければ落とし穴にはまってしまいます。ケアテックが進む事で新たな課題が生まれるのです。それらの課題を上手く解決しなければ、真のケアテック活用の価値を掴む事は難しいでしょう。

ケアテック活用が進んだ事で生じる新たな課題

それでは、ケアテック活用が進む事で、具体的にどの様な課題が生じるのかを解説していきたいと思います。

教育と採用

ケアテック活用を進める上で、最も重要な課題となるのは人材教育です。

管理者層(リーダー層)、現場層それぞれ以下の観点での教育を検討してみて下さい。

管理者層(リーダー層)

前回のコラムで投稿した様な業務改善計画の立案やそれに伴うケアテック活用についての理解、そしてプロジェクトをリード出来る人材の育成も重要です。プロジェクトのリーダー(ファシリテート役)の育成については、令和3年に厚生労働省よりリリースされた以下の手引きの活用をするのも良いでしょう。

生産性向上の取組を支援・促進する手引き」(厚生労働省)

現場層

  • 人材教育

現場層に向けての教育は主にパソコンやスマートフォンなどの基本的な操作方法や、情報の取り扱い、セキュリティーについての意識の醸成等、ケアテック活用についての基本的な知識習得が肝となります。

以前コラムで触れさせて頂いた通り、ケアテック活用に不安を抱く事業所は少なくありません。実際ケアテックに触れながら業務を行う現場職員にはこうした不安を少しでも払拭できる環境を整える必要があります。

上記の様な教育は介護業界に限らず全ての産業にとって必要な時代ですから、習得に必要な研修等は自治体や地元の商工会議所などが行う研修に目を向けても良いでしょう。主催が自治体や商工会議所であれば、教育に掛かるコストを抑える事も可能です。

また、教育の十分な体制が整ったとしても、苦手な方は一定以上おられますから事業所内でのサポート体制を充実する等、フォローアップ体制も検討してください。

  • 情報セキュリティ

言うまでも無く、介護事業所で取り扱う情報は個人情報の中でも取り扱いを注意しなければならない(センシティブ)機微情報にあたります。

紙で管理していた時代も、書庫に鍵をかけるなどのセキュリティが求められておりましたが、ケアテック活用が進む事でデジタルデータの比率が高まります。

デジタルデータを外部へ漏洩したりしない様、管理ルールを厳密に定め、人的ミスによる事故を未然に防ぎましょう。

また、管理ルールだけではなく、パソコンやスマートフォン、業務で使用するサーバやネットワークに対してICTによる漏洩対策も検討が必要です。本記事を執筆中の2022年3月時点でも、コンピューターウィルスの一種である「Emotet(エモテット)」が猛威を振るっています。

人的ミスの防止[ルール徹底に依る対策]と[ICTによるリスク対策]双方を適切に検討してください。

  • 情報管理

情報セキュリティと混同しがちですがセキュリティ対策だけでなく、情報管理の視点も重要です。情報セキュリティでは主にデータの機密性[漏洩対策]をイメージしますが、情報管理の視点でデータ(情報)を考察する際の視点として「可用性」と「完全性」の観点も極めて重要です。

ここでは詳細について触れませんが、平たく言うと、「鮮度の高い正確な情報」が保存され、災害等の有事でも「情報が紛失したり壊れない状態を保つ」事になります。

具体的には、職員毎にばらつきが無い統一された観点で、漏れや遅滞なく入力を行う事や、定められたルールに則ってデータを上書き・廃棄する事、そして、それらの情報が万全にバックアップされ、破損等が起こらない状態にする事です。

取り扱うデジタルデータの量が増える事により、この観点は事業上の高いリスクとなりますので、漏れなく検討しましょう。

  • その他

上記の他、法人のケアテックに対するポリシー[姿勢]を決めておくことも今後重要になるでしょう。具体的にはセキュリティをどの程度重視するかや、ケアテック導入前の教育を重視するか、あるいは導入を優先してOJT的に日々のオペレーションで慣れて行く様なスタイルを取るか等、これらは法人毎に性格が違いますから、自法人・自事業所に合わせた判断基準の設定をしましょう。ケアテック導入の度にこれらの観点が求められますので、一度決めておけばその観点は再利用可能です。

まとめ

ケアテック活用は魔法の杖では無く、上述の様にケアテックが進む事で取り組まなければならない課題も発生します。

しかし、第2回のコラムで申しました通り、人口減社会の中で「介護の質の維持・向上を図る為」にはケアテック活用は極めて重要です。

先を見据え、得られるメリットと課題を十分に理解し正しくケアテックと向き合えば、必ず皆様とって有益な取り組みになる事は間違いありませんので、本コラムが皆さまの気付きとなり、取り組むきっかけとなれば幸いです。

前回はケアテックの導入に向けて、導入前(企画の段階)に実施すべき業務分析等の流れを解説して参りました。

今回は、それ以外に重要なポイントについて触れて行きたいと思います。

▼前回のコラムはこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加