介護の現場では、たとえ人材が不足していたとしても介護サービスの質の維持、向上を目指さなければなりません。これには業務の改善と業務効率化が喫緊の課題であり、効果的に進める必要があります。
サービスの質の向上や業務改善を継続的に行える強い組織とは、どのようにしてつくられるのでしょうか。この記事では、業務改善を効果的に進めるための手順や注意すべきポイントについてご紹介します。
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目次
- 1 介護事業所で業務改善が必要な理由とは
- 2 介護の業務改善における5S活動と3M削減
- 3 介護事業所における業務改善の効果的な進め方
- 4 介護における業務改善の取り組み事例を紹介
- 5 シフト作成や管理の業務改善にはCWS for Care
- 6 介護業務の課題発見にはアンケート調査も有効
- 7 業務改善の必要経費には補助金を活用
- 8 介護業務の全体的改善には個人目標の設定も大切
- 9 介護における業務改善は優先順位を決め、できることから進めよう
介護事業所で業務改善が必要な理由とは
介護事業所における業務改善は、介護スタッフにとって働きやすい環境をつくることであり、人材の定着や雇用維持につながります。業務改善によって無駄な業務を削減し、効率化を図ることで介護サービスの質の向上につながり、最終的には利用者の満足度向上も期待できます。
ただし、業務改善は業務の省力化や介護スタッフの負担軽減が主目的ではありません。利用者を無視した事業所にとって都合の良い業務改善は、介護サービスの質の低下を招くばかりか利用者の尊厳を損ない、事故を招く可能性を生じるので注意が必要です。
人手不足の状況にあっても介護サービスの質を維持向上すること、それにあわせて人材育成を通して、定着を図ること、そのために無駄な業務を削減するための業務改善活動が極めて重要です。
介護の業務改善における5S活動と3M削減
業務改善とはいっても、何から手を付けたらよいのでしょうか。ここでは、業務改善に取り組む際に知っておくとよい5S活動と3M削減について紹介します。
5S活動とは
整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)の頭文字であるSをそれぞれとって「5S活動」といいます。とても馴染みのある言葉であるだけに、理解したつもりでも、実は適切な理解と活かされていないことも多くあるでしょう。
置き場所が決められていないために毎回探す時間が必要であったり、床に置かれたもので転んでケガをしてしまったりなど、ミスや事故が多い場合は要注意です。もしかすると5Sに問題があるかもしれません。
5Sとは
- 「いるもの」と「いらないもの」を分ける【整理】
- 必要なときに必要なものをすに取り出せるようにする【整頓】
- つねにきれいな状態を保つ【清掃】
- 上記3つをルール化して維持する【清潔】
- 習慣化を図る【躾(しつけ)】
上記の5Sに基づく活動は、業務改善に取り組む際のもっとも基本的で重要な活動です。
3M削減とは
「3M削減」とは、自分の職場におけるムリやムダ、ムラを削減することです。過度に負担がかかっていることや行わなくてもよいこと、バラついた状態の削減を目指します。端的にいうと「こだわりは捨てさせる」「短時間で適切に行う」ということが大切です。
介護士としての経験や知識の差によって個人ができる業務量が異なる中、業務の偏りによって特定のスタッフに負担がかかっているケース(ムリ)があります。
また、IT化やデジタル活用によって解決できる課題も、昔からのやり方を続けているために不必要な手間をかけているケース(ムダ)もあるでしょう。さらに、介護士それぞれが自分なりの手順や方法で行うことにより、業務状況にばらつきが生まれるケース(ムラ)も存在します。
徹底して「ムリ・ムダ・ムラ」を省いていくことで、業務効率は必然的に高まります。
介護事業所における業務改善の効果的な進め方
より良いサービスの提供と職場づくりのために、今日からできることとはいったいどのようなことでしょうか。業務改善の効果的な進め方やコツについて解説します。
改善に向けた準備
まずは、改善チームを立ち上げることからはじめましょう。改善チームは現場のマネジメントを行うスタッフや、中堅スタッフを中心に組織化するのがよいでしょう。その中でリーダーの選定とメンバーの役割分担を行います。
改善を進めるにはチームを組むべきですが、どうしてもチームを組織化することが難しい場合もあるでしょう。その際は前向きに取り組むことのできるスタッフを数名集め、不満や課題を洗い出すことから始めます。
重要なのは、スタッフが一体となって取り組むために目的を共有することです。施設長や管理者からスタッフに対し、業務改善活動の開始にあたって目的を明確に伝えるようにしましょう。
課題の可視化
日々の業務内容や流れを整理し、全体を可視化すると業務における課題を見つけやすくなります。この可視化とは、どのように行えばよいのでしょうか?
ここで参考になるのは、厚生労働省老健局が制作した「より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)」です。この手引きにはツール集が掲載されており、そこで紹介されている「課題把握シート」や「気づきシート」を使えば、業務において気づいたことを自由に記述する方法などで課題を抽出し、可視化することができます。
それ以外にも付箋などに因果関係を転記して現状を分析する方法や、業務時間調査を3M(ムリ、ムダ、ムラ)の視点で分類する方法があります。
参考:厚生労働省「ツール集」
課題解決に必要な計画の立案
課題解決に向けて、なにができるかを話し合います。より多くの取り組みを検討するために、思いついたことをどんどん出すようにするとよいでしょう。
経験が豊富なスタッフほど、いろいろなアイディアが思いつくものです。とはいえ、最初に出たアイディアが必ずしも効果的な対策や計画であるとは限りません。優先度の高い課題から取組方法を具体化し、取り組みの効果を検証できるように定量的な評価を準備しておくとよいでしょう。
改善活動の実施
どんなに優れた計画を立てたとしても、変化に対する不安があるものです。それでも実行段階において大切なのは、「とにかくまずはやってみること」です。試行錯誤を繰り返しながら何度も計画を見直し、修正を加えて精度を上げていった先に必ず、成功体験がありますので、皆で継続的にあきらめずに行うことが重要です。
小さな成功事例を積み上げ、継続すること、そして互いに失敗も悩み、成功は喜び合うことが現場のモチベーションアップにもつながります。
課題の整理と計画再検討
これまでの取り組みの効果を確認し、新たな課題の抽出と計画の再検討を行います。ここで大切なのは、当初想定していなかったスタッフの気持ちやコミュニケーションの変化など、副次的な効果も含めて整理しておくことです。
介護における業務改善の取り組み事例を紹介
ここでは「より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き) パイロット事業改訂版」業務改善の取り組み事例をいくつか紹介します。
興味深い取り組み例を見つけたならば、ぜひそれを参考にしながら業務改善を進めてみることをおすすめします。
職場環境を整備・改善した事例
【Case1】リーダーが職員に5S活動を行う意味を伝え、意識を高めた事例
有限会社サニーベイル サニービルイン鳴海
<課題>
ほかのスタッフの使い勝手を考えない職場環境
<解決のステップ>
- リーダーがスタッフに5S活動の意味を伝え、5Sに対する意識を高めさせた。
- 使い勝手の悪いエリアを洗い出した。
- 誰が、いつまでに、どのように5Sを行うかを決めて実施した。
- 手順書を作成した。
<成果>
- スタッフに責任感が生まれ、ほかのスタッフの使い勝手を考えるようになった。
- 心にゆとりが生まれた。
【Case2】「美観コンテスト」の開催により、見た目にこだわった整理整頓の意識付けを行った事例
社会福祉法人善光会 フロース東糀谷
<課題>
5Sの徹底が必要
<解決のステップ>
- 美観を保つための5Sマニュアルを作成し、研修を実施した。
- 毎日施設長が巡回するとともに、年3~4回の内部監査(他施設長チェック)を実施した。
- 改善項目をリストアップし、期限までに写真付きで改善結果を報告した。
- 美観コンテストを実施した。
<成果>
美しく保つ習慣ができた。
業務フローを再構築した事例
【Case】業務時間調査によって現状の業務を見える化し、ムリやムラ、ムダ(3M) を削減した事例
社会福祉法人青森社会福祉振興団 金谷みちのく荘
<課題>
- 業務表の内容と実際行っている業務に乖離がある。
- 業務表にない業務を実施するタイミングやかかる時間がスタッフごとにバラバラである。
<解決のステップ>
- 現状を把握するため、すべての職員の業務を10分単位で見える化した。
- 「気づきシート」も活用し、実際の業務と業務表との乖離を明確化した。
- 業務表に載っていない業務の必要性について、3Mの視点で検討した。
- 役割分担や業務の実施タイミングを明確化したうえで、実態に即した業務表を再作成した。
<成果>
職員の業務時間に対する意識が高まった。
テクノロジーの力を活用した事例
【Case】見守り支援システム導入により、夜間における巡視業務の負担を軽減した事例
株式会社アズパートナーズ アズハイム練馬ガーデン
<課題>
職員の業務のうち定期巡視が多くの時間を占めている。
<解決のステップ>
- スタッフ満足度調査や定例ミーティングで意見を集約した。
- 「正確性」と「安否確認の要件が満たされていること」の2つを基準として機器を選定した。
- 機器の使用法について指導するにあたり、介護IT担当を配置した。
- システムに対する職員の信頼感を高め、「睡眠状態が覚醒状態になった際に部屋を訪れる」といったオペレーションを導入した。
<成果>
1日5時間かけていた定時巡視の時間が0時間になった。
わかりやすい業務手順書を作成した事例
【Case】ベテラン職員の効率的な方法を手順書としてまとめた事例
社会福祉法人生愛福祉事業団 生愛ガーデン
<課題>
日勤リーダー介護職員の時間外労働が目立っていた。介護職員以外の職員が協力できていなかった。
<解決のステップ>
- 日勤介護職員が行う業務を書き出した。
- 介護職員が行わなくてもよい業務は、介護職員以外に割り振った。
- ベテラン職員の方法を写真を使って例示するなど、わかりやすい手順書を作成した。
<成果>
- 例示された方法でベテラン介護職員以外も的確に業務ができるようになった。
- 介護職員以外に業務を振り分けることで、介護職員は介護業務に専念できるようになり、日勤リーダーの残業を毎日30分削減できた。
記録や報告様式を工夫した事例
【Case】全職員がスマートフォンで記録を作成した事例
社会福祉法人青森社会福祉復興団 金谷みちのく荘
<課題>
- 記録業務のためにケア業務を中断し、パソコンのある場所まで戻らなければいけない。
- 見守りが手薄となってしまう。
- 事後の記録となり、内容の漏れを生じさせていた。
<解決のステップ>
- 必要な記録項目を選定した。
- 全職員にスマートフォンを配布し、必要な情報をその場で記録できるようにした。
- 入力項目はすべて選択式(プルダウン)として効率化を図った。
- リアルタイムで記録し、正確な情報をより早く共有し毎日更新するようにした。
<効果>
- 利用者とのコミュニケーションの時間が増えた。
- 記録漏れを防止できた。
- 残業時間を削減できた。
情報共有を工夫した事例
【Case】 インカムの活用でリスクを回避した事例
社会福祉法人孝徳会 サポートセンター門司
<課題>
- PHSや内線で職員を探すことに大きな時間を割いている。
- 緊急時にすぐ対応できるスタッフが見つからない。
- 申し送りに時間がかかる
<解決のステップ>
- インカムを導入し、インカムに慣れるところからスタートした。
- インカムでの伝え方を決めた(ユニット名、名前、要件、短く)。
- 必ず返事をすることをルール化した。
<効果>
- 職員間の連携が良くなった。
- 職員を探す時間が大幅に減った。
- 情報共有がスムーズとなり、申し送りにかかる時間を削減できた。
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実地指導の際に必要な勤務形態一覧表が、カンタンに出力できます。
CWS for Careは介護専用のシフト作成・管理システムです。介護事業者様の業務効率化を支援します。
介護業務の課題発見にはアンケート調査も有効
業務改善の取り組みとして課題の見える化は非常に重要です。見える化をするためにはチームを構成し、リーダーとメンバーの役割分担を決め、課題抽出の方法を検討するのがよいとご説明しました。とはいえ、業務改善に取り組む前にひと手間もふた手間も必要になるので、少し面倒と思う方も少なくないでしょう。
介護業務の課題発見を取り組みやすく始める方法として有効なのがアンケート調査です。アンケート調査はそれほど時間もかからずに実施しやすく、意見を数値化したデータとして集めることができます。業務改善に向けた取り組みのファーストステップとして、受ける側の心理的障壁も低いといえるでしょう。
だだ、現場の声に耳を傾けるという手段としては有効であっても、あくまでもアンケートなので内容の深堀りは困難です。また設問項目の設計を間違えると意図しない結果を招いてしまうので注意が必要です。
業務改善の必要経費には補助金を活用
業務改善に必要な設備投資等の費用については、助成金の活用をおすすめします。
たとえば生産性を向上するための設備投資を行う、スタッフの賃金を引き上げるといった場合には、設備投資費用などの一部を助成してくれる「業務改善助成金」が利用できます。
この制度は令和4年3月まで期間延長されており、申し込みはまだ間に合います。この制度の助成ではパソコンやスマホ、タブレットなどが対象とされており、助成金を使ってスマホを導入し、情報共有や引継ぎ業務の円滑化、サービスの質向上を図ることが可能です。
募集期間が定められていたり、年度によって内容が異なることもあるので、常に情報をチェックしておく必要があります。
介護業務の全体的改善には個人目標の設定も大切
どんな人でも、目標がなければ成長のきっかけをつかむことができません。介護業界では、モチベーションアップやスキルアップにつなげるために個人目標を設定することが非常に重要視されています。これは、個人目標の達成状況を評価して賞与額や手当等を決めることにも有用なことです。
介護サービスの質や事業所に対する評価は、個々の職員の知識や技術、モラルやコミュニケーション力などによって大きく差が出るため、一人ひとりが個人目標を設定して業務改善に取り組むことが重要なのです。
介護における業務改善は優先順位を決め、できることから進めよう
業務を改善し、スタッフの負担が減れば、スタッフの満足度や落ち着いて利用者と向き合うことも出来るようになるため、介護サービスの質の向上にもつながりますが、業務改善に向けた取組をすべて一度に行うことは不可能です。
本記事を参考にして、できることから少しずつ進めていきましょう。
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