介護事業者の倒産増加の理由は?倒産件数や事例から解説

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介護事業者の倒産増加の理由は?倒産件数や事例から解説

東京商工リサーチの調査結果によると、介護事業者の倒産件数は増えており、2022年は過去最多の143件を記録したことがわかっています。新型コロナウイルス感染症の流行や、物価高などが原因といわれています。

この記事では、実際のデータから介護事業者の倒産急増の実態を明らかにし、その詳細をまとめました。実際に倒産した介護事業者の事例も詳しく解説していきます。


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介護事業者の2022年の倒産件数は過去最多

東京商工リサーチが2023年1月11日に公表したデータによると、2022年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は過去最多の143件でした。

グラフ「老人福祉・介護事業」 の倒産件数 年次推移
引用:コロナ禍と物価高で急増 「介護事業者」倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~ 2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況|株式会社東京商工リサーチ

倒産件数は2011年より増加傾向にあり、2016年以降には100件を超える状況となっています。2021年には、経済産業省などが実施した新型コロナウイルス感染症関連の資金繰り支援策の影響で、倒産件数が一時的に81件に減少しました。加えて介護報酬のプラス改定が功を奏したと考えられています。

しかし、2022年はその効果が薄れ、前年比76.5%増と倒産件数が大幅に増加する結果となりました。全業種の倒産数が6,428件で前年比6.6%増という結果と比較しても、介護業界でいかに倒産件数が増えているかがわかります。

いまだに世間では、新型コロナウイルス感染症の混乱が続いている状です。今後も倒産件数が増える可能性は高いと考えられます。

業種別では通所系サービスの倒産が急増

業種別で見ると、「通所・短期入所介護事業」の2022年の倒産件数が69件でもっとも多い結果となりました。

円グラフ:老人福祉・介護事業の倒産件数 (業種別)
通所・短期入所介護事業:69(48.3%)
訪問介護事業:50 (35.0%)
有料老人ホーム:12 (8.4%)
その他:12 (8.4%)
グラフは株式会社東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増 「介護事業者」倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~ 2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況」をもとに、当社にて加工

これまでは「訪問介護事業」の倒産件数が多い傾向にありましたが、2022年は逆転し、「通所・短期入所介護事業」の倒産件数が大幅に増えました。

その原因として、機能訓練型デイサービスを運営する株式会社ステップぱーとなーと、その関連会社の倒産が考えられます。同社に関連する倒産は39社にも及び、「通所・短期入所介護事業」の倒産件数のうち半数近くを占める結果となりました。

次いで「訪問介護事業」では、東京都江戸川区のうさぎの和をはじめとした50件が倒産。「有料老人ホーム」は前年から8件増え、12件が倒産したことがわかっています。

倒産した介護事業者の大半は10人未満の小規模事業者

2022年に倒産した介護事業者のうち、8割は従業員が10人未満の小規模介護事業者で、特に5人未満の事業者の倒産件数が多く、前年より28件増えて85件でした。従業員数が5~9人の事業者は32件で、前年より倍の倒産件数となっています。

一方で、大手介護事業者の倒産件数も若干増加しており、二極化が見られます。従業員数50~299人の事業者は4件、20~49人の事業者は9件と、いずれも増加傾向にあります。

介護事業所の倒産が増えた理由

東京商工リサーチの「2022年1-9月老人福祉・介護事業 原因別倒産状況」を分析すると、倒産の実態が見えてきます。

円グラフ:老人福祉・介護事業 原因別倒産状況
販売不振:58.0%
他社倒産の余波:21.0%
放漫経営:7.0%
既往のシワ寄せ (赤字累積):6.0%
グラフは株式会社東京商工リサーチ「2022年1-9月老人福祉・介護事業 原因別倒産状況」をもとに、当社にて加工

上記のように「販売不振」「既往のシワ寄せ(赤字累積)」などの不況型倒産は、全体の6割以上にも及びます。2022年は新型コロナウイルス感染症の第6波、第7波など、感染拡大を警戒しなければならない状況があり、介護事業者にとっても依然として苦しい状態が続きました。さらに物価高の上昇や、慢性的な人材不足が追い打ちをかけたと考えられます。

倒産が増えた上記の理由について、次に詳しく解説していきます。

コロナ禍の影響

特に大きな影響を与えたと考えられるのが、新型コロナウイルス感染症です。東京商工リサーチの調査によると、新型コロナウイルス感染症が直接的または間接的に影響した倒産件数が増えていることがわかっています。2020年が7件、2021年の11件と比べ、2022年は5倍以上増えて63件を記録しました。

要因のひとつに、感染をおそれて利用を控える方が増えたことが考えられます。2022年も変異株や感染者増加など感染拡大の波が収まらず、デイサービスなどの利用を見合わせる動きが引き続きありました。利用者の減少は、事業収入に大きな影響を与えます。結果、経営が立ち行かなくなり、倒産してしまう介護事業者が増えています。

さらに感染症予防にかかる経費も、経営を圧迫する要因となっています。事業所や施設内に置く消毒液のほか、職員が使うマスクなどの消耗品が多く、コロナ対策のための費用が膨らんでいる状況です。

コスト高の影響

世界的なインフレの影響で、2022年は食品や日用品などの物価、光熱費、ガソリン代などが高騰しました。さらにコロナ対策により、換気をしながら暖房を使うことで、光熱費が増大した事業所や施設もあります。

運営にかかるコストや、光熱費などの固定費が増えたことに加え、新型コロナウイルス感染症による利用控えなどが重なり、倒産へとつながっていると考えられます。

特に介護業界は介護サービスの料金が定められているため、上昇したコスト分を利用料に転嫁することが難しい状況にあります。しかし、利用者の健康やサービスの質を守るためにも、空調や食品にかかる費用が節約できず、経営が立ち行かなくなるケースが増えています。

人材不足の影響

以前から問題視されているのが、介護業界の人材不足です。公益財団法人介護労働安定センターの令和3年度「介護労働実態調査」によると、特に訪問介護員の不足を感じている介護事業所が多いことがわかっています。さらに訪問介護員や介護職員の高齢化も進んでいる状況です。

前述した新型コロナウイルス感染症の影響や物価高などで経営がひっ迫しているところへ、慢性的な人材不足が追い打ちとなり、倒産が増えているケースも考えられます。特に職員が濃厚接触者になって出勤できなくなった場合、人材が不足しているとサービスの提供ができず、経営の悪化につながる可能性があります。

2022年介護事業所の倒産事例

次に、2022年に倒産した介護事業者の事例を2つ紹介していきます。

コロナ感染で休業に

福岡県や佐賀県など九州エリアで有料老人ホームとデイサービスを経営していたウェルビス悠愛株式会社は、新型コロナウイルス感染症が一因となり、2022年2月度に倒産しました。

はじまりは同社が運営する「桜花の宴 悠愛」での従業員と利用者の新型コロナウイルス感染です。さらに同時期に「悠愛アリビオ」でもクラスターが発生し、長期間の休業を余儀なくされました。営業を再開してからも休業前の水準まで利用者が戻らなかったことで、業績が悪化。入居者の退所なども重なり、経営が立ち行かなくなりました。東京商工リサーチによると、負債総額は30億円です。

設備投資増大で資金ショートへ

ハートケアライフ佐久株式会社は、過大な設備投資によりキャッシュが回らなくなり、倒産しました。

同社は、長野県で有料老人ホームやデイサービスなどを運用していた企業です。2020年6月期までは順調に収益を上げていましたが、設備投資にかけた資金が回収できず、苦しい状況が続いていました。サービスの見直しにより再建を図ったものの、事態は好転せず、2022年3月に破産手続き開始決定を受けました。

介護事業者の倒産を防ぐ方法

介護事業者の倒産を防ぐには、慢性的な人材不足を解消することが必要です。人材が不足しているところに、新型コロナウイルス感染症の流行や物価高が重なると、経営状況がさらに悪化することが考えられます。まずは人材確保や、生産性の向上などの取り組みを進めることが重要です。

生産性を向上させる手段としてICT機器やサービスの導入なども検討しましょう。見守り機器や介護ロボットなどのデジタルテクノロジーを活用することで、業務の効率化につながり、人材不足に対応できるようになります。

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2023年も倒産のリスクが懸念される介護業界

2023年も新型コロナウイルス感染症や、物価高などの影響が続くと考えられ、介護業界での倒産が増えることが予想されます。特に小規模事業者は大手に比べ、人材確保やコスト削減に弱い傾向があるため、早めに対策を行うことが必要です。あらかじめ人材確保や生産性向上の取り組みを進めるようにしましょう。

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