お客様の状態に合わせた調理をしていく際は、担当の医師や看護師、栄養士から情報・指示を受け、御家族、ケアマネジャーと相談し、調理についての計画を立てることも重要です。
今回は「介護サービスにおける高齢者の食事:病態別に合わせた調理法」についてご紹介します。
お客様の心身状況に合わせた調理の工夫は、病気を悪化させないための要となりますので、皆さんの調理業務にご活用頂けたら幸いです。
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病態別に合わせた調理法
医療機関の指示のもとで調理を行うことはもちろん重要ですが、お客様とご家族、調理・介護スタッフが調理法の重要性をお互いに理解していかなければいけません。
味覚の低下した高齢者にとって、塩分制限等で薄味になった料理を食べることはとても辛いことです。お酢や香辛料、だし味を利かせるなど、調理の工夫をすることを心がけましょう。
高血圧症
高血圧は症状であってそれだけでは疾患名ではありませんが、心疾患・脳血管疾患・腎疾患とも深いかかわりを持っていて、血圧の管理はそれらの疾患の発症予防や治療にとって重要です。
高血圧には発症の原因が分からない本態性高血圧と、他の疾患(動脈硬化、腎疾患、クッシング症候群等)に伴って起こる続発性高血圧があり、日本人の場合は前者が多くを占めています。
【 食事での注意点 】 ・食塩、動物性脂肪、コレステロールを控える ・食物繊維、カリウム、マグネシウム、カルシウムを摂取 ・3食規則正しくバランスの良い食事 |
食事以外では、適度な運動や標準体重を維持する、禁煙などはもちろん、薬を正しく服用できているかや血圧をあげるような環境から改善を図るなども必要です。
便秘
【弛緩性便秘】
大腸の緊張低下や運動不足の為に、内容物の移送が異常にゆっくりとなって起こります。
食物繊維の少ない食事や交感神経の過度の緊張、鎮痛剤の使用等により大腸運動の緊張の減弱から、便が直腸内に停滞し、水分が吸収されて硬くなります。これは便秘の原因の70~80%を占め、多忙等により便意を抑えてしまうことから習慣化することが多くなっています。
その他、便秘の起こる要因には、神経障害、低栄養、全身衰弱、ビタミン欠乏症、貧血、感受性低下、機械的刺激不足が考えられます。
【痙攣性便秘】
大腸のある部分が痙攣を起こし収縮したために、内容物の通過が阻害される場合に起こります。持続することは少なく、しばしば下痢と交互に起こります。主として腸壁に分泌する神経障害が原因しています。
【 食事での注意点 】 ・1日3食規則正しく食べる ・食物繊維を毎食たっぷり摂る ・水分を十分に摂る ・主食はパン・麺類より米飯を摂るように心がける ・豆、いも、カボチャ、栗、バナナなどを食べるようにする |
食事以外では、定期的排泄習慣をつける為に規則正しく過ごすことや、ストレスを溜めないよう生活環境を見直すことが必要です。
下痢
下痢とは、便に含まれる水分が異常に多くなり、大便が棒状の形をしないまま排泄される状態をいいます。
【分泌性下痢】
消化管粘膜の分泌の異常亢進によって起こります。
【浸透圧性下痢】
食物中に砂糖やミネラルなど浸透圧を上昇させる物質が存在し、この圧力を希釈するために腸管壁から水分を引出し、腸管内の水分含有量が多くなって送ります。
【消化管運動異常】
消化管の運動が何らかの原因で亢進すると、食物の腸管での通過時間が短くなり、水分を吸収する時間が不足して下痢を起こします。
下痢を起こす病気には、食中毒・急性腸炎・感染症・肝臓病・胆嚢病・膵臓病・神経性下痢・食品アレルギーなどが挙げられます。
また、病気でない場合も、暴飲暴食、不規則な食生活、ストレス、寒冷などで下痢になることがあります。
【 食事での注意点 】 ・消化が悪く、腸管を刺激し、下痢を助長する脂質を制限 ・腸管壁に刺激を与える香辛料、刺激の強い野菜類 (玉ねぎ、にんにく、鷹の爪)などを控える ・カフェイン飲料、アルコール類、炭酸飲料は禁止 |
糖尿病
インスリンの相対的または絶対的不足により、高血糖をはじめとする代謝障害を起こしている疾患です。
【Ⅰ型糖尿病】
特定の遺伝子を持つものに、何等かの原因が働いて発症します。原因として自己免疫説、ウイルス説、感染説があります。治療にインスリンが不可欠です。
【Ⅱ型糖尿病】
家族歴があり、肥満・ストレス・感染・妊娠等の環境因子が加わった時に発症します。
【 食事での注意点 】 ・バランスの良い食事を摂る ・コレステロールを摂りすぎないようにする ・食物繊維を十分に摂取する (食後血糖の急な上昇を防ぎコレステロールの排泄を促す等の働き) ・まとめて食べずに3~5回に分けて摂る。 特に経口血糖降下剤、インスリン療法を行っている場合には食事時間を守る ・アルコールは食事療法を乱す原因となりやすいので、控えめにする。 特に薬物療法を行っている場合には禁酒する |
高脂血症
血中の脂質には中性脂肪、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸があり、遊離脂肪酸を除けば比較的水に溶けにくい性質であるため、血液中のたんぱく質と結合して、リポたんぱく質として存在しています。これらのうち、1つの脂質で正常値以上に血液中に存在する場合を高脂血症といいます。
高脂血症の状態が続くと、動脈硬化になり、やがて狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの病気につながってしまう恐れがあります。
【 食事での注意点 】 ・体内脂肪量の増加を抑制し、脂質代謝異常を是正するためにも、標準体重の 維持に努める。特に肥満症の場合は、急激な減量ではなく、1か月に1~2kg を目安とし、標準体重1kgあたり20kcal/日のエネルギーを基準にする。 ・アルコール摂取は中性脂肪が上昇している場合は禁止。 それ以外は適量(アルコール25g/日)を目安にする。 |
まとめ
最近では、調理スタッフごとで食事の味のばらつきなどがないように調理済み食材を活用したり、自立支援を目的にしたコンビニ等の配食サービスを利用されるお客様や民間業者が増えてきました。
そのような社会資源を活用することも、人材不足に悩む介護業界においてはお客様へ安全な食の提供を継続するためには必要ですので、様々な工夫を行いながら疾患に合わせたお食事のご提供を心がけて下さい。