2016年に発生した、外部侵入者によって障がい者支援施設の多数の入所者が犠牲になった痛ましい事件。以来、運営指導(旧実地指導)でも防犯に係る安全の確保について確認をされる事が多くなっています。個人・法人かかわらず介護で活用できる防犯用カメラへの関心が高くなっておりますが、現在全国で監視カメラ設置についての補助金制度はありません。
介護現場で使われるカメラは、前述した防犯目的のカメラだけではなく、利用者を分析・察知し、安全対策に役立つ「見守りカメラ」と呼ばれるものがあります。検索エンジンGoogleでも2016年ごろから急激に「見守りカメラ」の検索数が増えるなど、防犯意識とともに関心が高まっていることが見て取れます。
この見守りカメラは、補助金制度の対象となる場合があります。本記事では介護施設の「カメラ」設置に使える補助金と、導入の流れについて解説します。
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目次
カメラ導入に使える補助金制度とは?
現在、介護従事者の負担軽減などの雇用環境改善、離職防止および定着を促進する目的で、各都道府県で「介護ロボット補助金」が整備されています。この補助金制度は、条件が合えば介護施設内に設置するカメラに活用ができます。
「介護ロボット補助金制度」の対象条件
補助金制度は、下記(1)~(3)をすべて満たす機器が対象となります。
(1)目的要件
日常生活支援における、下記いずれかの場面において使用され、介護従事者の負担軽減効果のある介護ロボットであること。
- 移乗介護
- 移動支援
- 排泄支援
- 見守り
- 入浴支援
(2)技術的要件
次のいずれかの要件を満たす介護ロボットであること。
- センサーなどにより外界や自己の状況を認識
- これによって得られた情報を解析
- その結果に応じた動作を行う技術を活用して、従来の機器ではできなかった優位性を発揮する
(3)市場的要件
販売価格が公表されており、一般に購入できる状態にある介護ロボットであること。
引用:介護ロボットなど導入支援特別事業(平成27年度補正予算) 「介護従事者の負担軽減に資する介護ロボット導入促進事業」における支援対象介護ロボットの例示について|厚生労働省
カメラの設置で介護ロボット補助金制度が使える理由とは?
カメラの導入になぜ介護ロボットの補助金制度が使えるのかとお思いの方も多いのではないでしょうか。この疑問については、まず介護ロボットの定義から知る必要があるでしょう。
「介護ロボット」の定義
そもそも、「ロボット」の定義とは、下記の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」のことです。
- 情報を感知(センサー系)
- 判断し(知能・制御系)
- 動作する(駆動系)
その中でも、「ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器」を「介護ロボット」と呼びます。
ロボットというと、人型で会話ができて…というイメージを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、上記のような特性を持っているものであればすべてロボットであると言えるのです。
介護ロボットの中のひとつ「見守り機器」
介護ロボットの中でも様々な種類があり、その中に見守り・コミュニケーションを重点としたいわゆる「見守り機器」と呼ばれるものがあります。
見守り機器とは、介護施設において使用する、センサーや外部通信機能などのロボット技術を用いた機器のプラットフォームを指します。カメラの機能を持ったものも多く開発され、通称「見守りカメラ」と呼ばれています(引用:見守り支援機器(介護施設)|厚生労働省)。
見守りカメラを導入したい場合は、導入したい機器が下記の要件に合致しているかどうか確認しておきましょう。
【見守り機器の要件】
- 複数の要介護者を同時に見守ることが可能。
- 施設内各所にいる複数の介護従事者などへ同時に情報共有することが可能。
- 昼夜問わず使用できる。
- 要介護者が自発的に助けを求める行動(ボタンを押す、声を出すなど)から得る情報だけに依存しない。
- 要介護者がベッドから離れようとしている状態または離れたことを検知し、介護従事者などへ通報できる。
- 認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張または他の機器・ソフトウェアと接続ができる。
具体的な導入例
「ロボット」の定義からもいえるように、介護ロボットとは利用者の行動や状態をセンサーなどで察知し、助けが必要かどうかを判断、職員に通知させるものが当てはまります。カメラ機能がついた介護ロボット(見守りカメラ)は介護現場で下記のような働きが期待できます。
【具体例】
- 自分で職員を呼べない利用者の様子を生体センサーで感知し、異常があればナースコールを鳴らすカメラの設置によって、事故発生件数が少なくなり、職員の精神的な安心感も増した。
- プライバシーに配慮しシルエットやアニメーションに置き換わりつつも、状態を監視しタブレットなどで随時利用者を確認できるカメラの設置によって優先度が判断でき、職員の業務負荷軽減に繋がった。
- 「ベッドからのはみ出し」「離床」などの異常だけを感知する生体センサー付きカメラにより、異常が検出された場合のみ、職員が持っているスマートフォンに通知され、転倒などを未然に防ぐカメラで訪室回数が50%以下に削減された。
注意点
前述した機能が備わっているカメラが対象となっていますが、あくまで基本的な条件です。都道府県によっては、条件に当てはまっていたとしても、指定された機器のみが補助金制度の対象という場合があります。
対象かどうかは、機器のパンフレットやカタログなどと一緒にベンダーか各都道府県へお問い合わせください。
補助金申請の流れ
実際に申請する場合はどのような対応が必要になるでしょうか。
各都道府県によって必要書類や流れにはばらつきがありますが、おおよその申請の流れは下記となります。
流れ | 介護事業者対応 | 都道府県対応 |
①機器の選定、メーカーへの見積書依頼 | 〇 | |
②補助金制度利用申請 | 〇 | |
③補助金内定事業者決定 | 〇 | |
④介護ロボット導入 | 〇 | |
⑤交付決定 | 〇 | |
⑥実績報告(およそ1か月後) | 〇 | |
⑦交付額の確定 | 〇 | |
⑧請求書の提出 | 〇 | |
⑨補助金の交付 | 〇 | |
⑩介護ロボットの使用状況の報告(導入後3年間) | 〇 |
実際の申請方法については、下記にまとめております各都道府県の補助金制度概要ページでご確認ください。
常に新しい情報を取り入れましょう
今回ご紹介した制度に限らず補助金制度は募集開始から終了まで1か月程度で締め切ってしまう都道府県も多く、さらに、今年は制度があっても来年はないという事例も見受けられます。
今年度の申請に間に合わなかった場合でも、今年度や前年度を参考にして必要な情報を集めたり、商品を扱っているベンダーとの連携をしておくなどの準備をしておけば、次回の補助金申請で余裕を持って対応できるでしょう。各都道府県が公開している補助金制度のページはブックマークをしておき、定期的に最新情報をチェックするなどアンテナを張っておくようにしましょう。