私たちがケアに携わる高齢者は、様々な既往歴等を含む疾患を持っています。
今回は『高齢者の体調管理~疾患の特徴②~』をご紹介させて頂きますので、施設や事業所のサービスの質の向上にご活用頂ければ幸いです。
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目次
疾患の特徴
虚血性心疾患
心臓の冠状動脈に動脈硬化が起こり、心筋への血流が不足して起こる病気の総称で、狭心症と心筋梗塞の2つを指します。
血管狭窄の原因の大多数は、糖尿病、高脂血症、高血圧などで起こる動脈硬化です。
狭心症
冠状動脈が動脈硬化によって狭くなり、ストレスや過労をきっかけにして、一過性に栄養や酸素不足に陥った状態のこと。
心筋梗塞
血栓などで冠動脈が完全に閉塞し、その先の血流が途絶え心筋が壊死を起こした状態のこと。
症状
胸の中央が締め付けられるような痛み・圧迫感を感じるなどが典型的な症状といわれています。
しかし、高齢者は息切れや疲れやすさを訴えることが多く、部位も必ずしも胸骨部の痛みではないことがあります。さらに、胸痛などを伴わない無症候性心筋虚血も、3割程度の人に認められるといわれています。痛みが30分以上続くようであれば心筋梗塞の疑いが強いと言えるでしょう。
狭心症 | 心筋梗塞 | |
血管の状態 | 冠動脈の狭窄のため血液が流れにくくなった状態 | 血栓で冠動脈が完全につまった状態 |
症状の特徴 | 短時間の胸痛:絞めつけられる、押さえつけられるような鈍い痛み(数十秒~10分程度) | 冷や汗や吐き気、恐怖感を伴う30分以上続く 耐えがたい痛み |
硝酸薬の効果 | 原因となった労作を中止したり硝酸薬の舌下錠(ニトログリセリンなど)を使用すると症状がおさまる | 硝酸薬の舌下錠を使用しても症状はおさまらない |
【ケアのポイント】
血圧の変化を避ける
運動、浴室などの寒暖の変化、不安感、睡眠不足、排便時のいきみなどは血圧を上昇させるのでできるだけ避けましょう。
【日常生活上の留意点】
生活習慣を改善し、危険因子を除くことが重要です。
- 禁煙
- 塩分・糖分・脂肪分を控え、バランスの良い食事を摂る
- 適度な運動をする
- ストレスを避ける
関節リウマチ
手足をはじめとする全身の関節に激しい痛みや腫れを起こす病気のことです。
原因は不明ですが、本来自分の体を守るべき「免疫」機能に異常が起こり、誤って自分の体を攻撃してしまうことから起こると考えられています。
完治することは難しく、進行すると関節が変形して日常生活にも支障をきたすことがあります。さらに、心臓や消化器などで血管炎を起こしたり、心筋梗塞や重い肺炎を引き起こすような「悪性関節リウマチ」へ進展することもあります。
30~50代女性に多く、男性1に対し女性は3~4の割合で発症します。
症状
発症早期では、朝起きたときに関節がこわばったり、動かしにくいのが特徴です。
滑膜に炎症が起こり慢性化していく病気ですが、まず初めに手足の指や手首に痛みと腫れが起こることが典型的な症状といわれています。慢性化して進行すると、四肢の大きな関節が腫れてくるようになります。
【主な関節の変形】
【日常生活上の留意点】
関節の痛みや腫れは温めることが基本です。夏は冷房の風が直接あたらないようにしましょう。
痛みが強いときは安静にし、昼寝をするのも良いといわれています。ただし、安静を長く続けていると関節を動かす筋肉が萎縮してしまい、寝たきりになるといった別の危険性がありますので、早い時期から運動を始める事が大切です。運動と安静のバランスのとり方については医師の指示を受けてください。
脳卒中(脳血管障害)
頭部の血流障害を総称した病名で、脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血などがあります。
高血圧や高脂血症、糖尿病、加齢などで動脈硬化が進行し、脳卒中の原因となります。食生活の欧米化で、動脈硬化の原因となる生活習慣病の増加が背景にあると考えられています。
進行すると頭痛や手足のしびれなど、動悸、胸痛などの症状が出始めます。放置すると脳卒中へ発展する危険性があるので、早めの治療が必要です。
脳出血
動脈硬化によって弱くなった脳の血管が破裂して出血する病気です。
高血圧の症状が出ている人で、精神的緊張や運動など血圧をさらに高くさせる原因が働いたときに突然起こり、破れた動脈により脳の実質の中に血腫ができます。
左脳に脳出血が起こると反対側の右半身の手足が、右脳に起こると左半身の手足の運動が不能になる可能性が高くなります。言語中枢のある側に脳出血が起こると失語症になることも。発症は40~50歳代に多くなっています。
症状
主に、突然の激しい頭痛、意識が無くなる、吐き気・嘔吐などの症状が起こります。
脳梗塞の発作と比べて急激で重度の症状を示します。活動中(仕事中、入浴中、運動中など)に発症することが多く急速に昏睡に陥ることも考えられます。
脳梗塞
動脈硬化によって脳の血管が狭くなっている箇所に、血栓(血のかたまり)が詰まり、詰まった血管から先へ血液が流れなくなることでその周辺の脳細胞が壊死し、手足の運動麻痺などを引き起こす病気です。
※脳血栓:脳血管の動脈硬化に合併して起こる。血管壁に付着し血流を悪くする。危険因子として、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症等。
※脳塞栓:心臓や比較的太い血管に出来た血栓や細胞が、脳に達して血管を閉塞させるもの。不整脈・心疾患が基礎疾患として認められる。非常に小さい梗塞の場合は症状があまりなく、少々気分が悪くなるだけで済むこともある(無症候性脳梗塞)。
症状
主に、片側の手足や顔面の麻痺、手足のしびれ、意識がもうろうとする、ろれつが回らない、相手の言っていることが分からない、視野が狭くなる、失禁、めまい、吐き気などの症状が見られます。
発作に至る前には、軽い一過性の意識障害や麻痺発作を経験している場合もあるります。脳梗塞は脳のどの血管が詰まったかによって、症状が違っています。
脳血栓は、休息時に起こり徐々に症状が進行し、脳塞栓は、突発し数分以内に症状が出始めます。
くも膜下出血
軟膜とくも膜の間のくも膜下腔で脳動脈瘤が破裂し出血する病気です。
40~60歳代に多く、脳卒中の中でもくも膜下出血は予後が悪いといわれています。
症状
突然の激しい頭痛(特に後頭部痛を訴える場合が多い)、吐き気や嘔吐、意識障害など、急激に発症します。
【ケアのポイント】
後遺症として肢体不自由や言語障害が起こる可能性が高いため、リハビリテーションが重要です。言語障害の場合は1年以上の長期の訓練が必要です。しかし、意欲低下をはじめとしたうつ状態に陥ることもあり、機能回復訓練を妨げてしまったり、性格変容などの目に見えない後遺症などもあります。
このような時は、焦ったり、急いだりせず、励ましながらリハビリを進めていきましょう。リハビリをすれば、かなりの部分で能回復が期待できることをお伝えし、ゆっくりと話し掛け、精神的支えとなれるように心掛けましょう。
気になることは医師に相談
寒暖の変化等で利用者の疾患が悪化する場合があります。その前に予兆がある場合もありますので、少しでも気になることがあれば、速やかに医師等へ報告、連絡、相談を行うように、施設や事業所全体で、研修や申し送り等の際に周知徹底を心がけて下さい。