介護現場での虐待についての基礎知識と身体拘束の禁止

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介護現場での虐待についての基礎知識と身体拘束の禁止

『高齢者虐待』とは、自分の人生を自分で決め、周囲からその意思を尊重されることです。つまり人生を尊厳をもって過ごすことは、介護の必要の有無に関わらず誰もが望むことです。しかし現実には、家族や親族などが高齢者の人権を侵害する「高齢者虐待」が問題となっています。高齢者の中には、辛くても不満があっても、声を出せない人がいます。あなたの身近にも、そんな人はいませんか?今回は『虐待についての基礎知識と身体拘束の禁止』についてご紹介をさせて頂きます。皆様の適切なケアの徹底にお役に立てれば幸いです。

高齢者虐待の種類

高齢者虐待といっても、様々な状況があります。ここでは虐待の主な種類を「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」「介護・世話の放棄・放任」とします。

虐待の主な種類

虐待の主な種類

5つの種類の虐待について理解しましょう。全ておこなってはいけないことです。
これらに上記は、他者が行うものです。ただしご自身による虐待に近い行為もあります。セルフネグレクトという言葉があることはご存じでしょうか?
成人が通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失し、自己の健康・安全を損なうこと。必要な食事をとらず、医療を拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲から孤立し、孤独死に至る場合がある。防止するためには、地域社会による見守りなどの取り組みが必要とされる。自己放任。(出典:デジタル大辞泉)
生きる意欲が出てくるような温かいサポートを心がけましょう。類似する行為も禁止です。

虐待のレベルに合わせた考え方

虐待のレベルに合わせた考え方

虐待は、その状況の深刻さから「緊急事態」「要介入」「見守り・支援」の3つのレベルに分けて考えることができます。適切な対応を行うためにも、種類と程度の視点から虐待の状況を正確に把握することが大切です。

身体拘束の禁止

身体拘束の禁止

介護保険施設等では、「身体拘束」が禁止されています。家庭における「身体拘束」も、高齢者に与える悪い影響は施設と同じです。
適切ではない介護を受けることで心身に重大な影響が生じることが明らかになっています。

施設などでの安易な身体拘束も虐待です。

身体機能の低下

筋力低下、関節の拘縮、心肺機能の低下などを招きます。

リスクの増大

拘束しているが故に、無理な立ち上がりや、柵の乗り越えなどにより、重大な事故が起きる危険もあります。

周辺症状の増悪不安や怒り、屈辱、あきらめなどから、認知症の進行や周辺症状の増悪を招きます。意欲が低下し、結果的にADL(日常生活動作)の低下を招きます。

身体拘束の禁止と例外

身体拘束の禁止と例外

介護保険制度では、介護保険施設等でのサービス提供にあたり、緊急やむを得ぬ場合を除いて身体拘束等の行動を制限する行為(身体拘束)が禁止されています。

下記の全ては身体拘束にあたります。

  • 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひもなどで縛る
  • 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひもなどで縛る
  • 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む
  • 点滴・経管栄養などのチューブを抜かないように、四肢をひもなどで縛る
  • 点滴・経管栄養などのチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋などをつける
  • 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型高速隊や腰ベルト、車いすテーブルをつける
  • 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する
  • 脱衣やおむつはずしを制御するために、介護衣(つなぎ服)を着せる
  • 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひもなどで縛る
  • 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
  • 自分の意志で開けることのできない居室などに隔離する

引用:【身体拘束ゼロへの手引き】|厚生労働省

介護の現場では「スリーロック」と呼ばれる、「フィジカルロック」「ドラッグロック」「スピーチロック」が存在します。いずれも相手の自由な行動を制限する行為で、原則禁止とされています。

今すぐ使える「スピーチロック言い換え表」
言葉による抑制とも言われる「スピーチロック」について、具体的な事例と言い換えの例文を一覧表にしました。スピーチロックを防ぐクッション言葉もまとめていますので、ぜひご活用ください。

身体拘束をする前にすべきこと

身体拘束をする前にすべきこと

[起きる]

朝は離床し、ご利用者のADLに応じて、立位・座位・歩行の機会を作ります。寝たきり(寝かせきり)にしないことによって心肺機能の維持、じょくそう予防、筋力維持、関節拘しゅく予防、骨そしょう症予防の効果が期待できます。

[清潔にする]

皮膚の清潔を保てないことがかゆみの原因となり、そのために皮膚をかきむしったり、夜間眠れずに不穏状態を引き起こす原因となりえます。清潔をたもつことでご利用者は快適ですし、他者との交流も図りやすくなります。

[活動する]

ご利用者の生活史や趣味・興味におうじた運動や活動に参加することで脳を活性化し、生活にメリハリをつけて暮らすことが大切です。心身の機能維持をする活動や生きがいをつくることで生活の質の向上につながります。

[食べる]

ご利用者のかむ力やのみこむ能力に応じた食事形態を用意しましょう。また適切な食事環境を作りましょう。水分と食事をきちんととることで低栄養を予防し、免疫力を高め、感染症を予防することにつながります。高齢者にとって食事は大切な楽しみです。

[排泄する]

可能なかぎりトイレで排泄すること考えましょう。なぜなら①腹圧をかけやすくなる②直腸内に便の通り道を確保しやすくなる③便が上から下へ移動することで重力を利用できる等、排泄しやすくなるからです。

安全のためにトイレに必要な手すりや移乗スペースの確保もしましょう。

サービスを適切なタイミングで提供し、身体拘束「0」を実現しましょう。そのためにはお客様にとって本当に必要なサービスが提供されているかどうか?確認することが必要です。

初回のアセスメントをしっかり行い、本人状況や要望に合わせたケアプランを作ることも大切です。アセスメントは一度したら終わりではなく本人の状況の変化に合わせ、必要なときに行いましょう。

まとめ

まとめ

今回は、『虐待の定義』を基に、定義とともにどういったことが虐待にあたるのか、またご利用者様が虐待にあっていないかどうか冷静に観察するようにしましょう。
また『介護サービス提供中における虐待の定義や身体拘束の禁止』については、虐待の定義の中には虐待が疑われる行為というものも含まれます。自分の業務で疑われる行為がないかきちんと学び、不適切ケアを行わないように周知徹底をして下さい。

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