令和6(2024)年度の介護報酬改定で介護職員の処遇改善に関わる加算が一本化され、処遇改善計画書の様式も変わります。さらに実績報告書の簡素化も行われました。
この記事では厚生労働省の記載例をもとに、新しい処遇改善計画書の書き方を詳しく解説します。あわせて加算の申請時に必要な書類や、申請期限などの情報もまとめました。
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目次
新しい処遇改善計画書とは
令和6(2024)年度の介護報酬改定で、介護職員の処遇改善にかかる3つの加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算)が、介護職員等処遇改善加算へ一本化されました。
処遇改善計画書とは、介護職員等処遇改善加算を算定する際に必要となる書類です。書類には、様式に従って加算や賃金改善の見込み額などを記入します。令和6年度の処遇改善計画書は、令和5年度のものより簡素化され新しい様式になっているため、必ず厚生労働省のホームページより「別紙様式2(処遇改善計画書)」の様式をダウンロードし活用してください。
また、実績報告書の様式も同様に簡素化が行われました。新様式は「別紙様式3(実績報告書)」で、令和6年度の実績報告書の提出期限は令和7年7月31日です。
【令和6年度】処遇改善計画書の書き方
「別紙様式2(処遇改善計画書)」は5つのワークシートで構成されており、基本情報入力シートと、個票のシートをそれぞれ記入することで、内容が転記されて計画書が完成します。そのため定められた順番でシートに情報を入力しなければなりません。
なお、申請の際に提出が必要なのは、個票と統括表のみです。ただし、電子申請する場合は、シート全体を提出してください。
以下で、それぞれのシートの書き方を記入例とともに解説します。
基本情報入力シートの書き方・記入例
まずは基本情報入力シートに記入します。基本情報入力シートは、事業者名や代表者、運営する各施設・事業所の住所、介護保険事業所番号などを入力する書類です。
項目1・2では、書類の提出を行う市区町村の情報や、自社の基本情報を入力します。
項目3には、各施設・事業所の情報を入力します。ひと月あたりの介護報酬総単位や処遇改善加算の単位を記入する欄には、前年の実績をもとにひと月あたりの平均値を求めるなどの方法でそれぞれ値を計算し、記入してください。新設の事業所の場合は、介護報酬総単位の見込み数のみ記載します。
別紙様式2-2/2-3 個票の書き方・記入例
次に別紙様式2-2と2-3の個票に記入します。
別紙様式2-2は、令和5年分と令和6年4〜5月分の情報を入れるシートです。基本情報入力シートから各施設・事業所の情報は自動で転記されるため、それ以外の情報(算定していた処遇加算の区分や加算率、満たしている要件など)を入力します。キャリアパス要件Ⅳに関しては、要件を満たす職員数(賃金改善額が月額8万円以上、もしくは年額440万円以上の職員数)を記入してください。
別紙様式2-3には、令和6年6月以降の情報を入力します。これまで記入した内容が転記された部分を除き、新しく算定する加算について区分や算定対象月、加算の見込み額などの情報を入れます。
別紙様式2-4 個票の書き方・記入例
別紙様式2-4の個票は、年度内に加算の区分変更が予定されている場合のみ記入します。令和7年3月までに加算の変更予定がない介護施設・事業所は、このシートの記入は不要です。
このシートには基本情報入力シートと個票2‐2、2‐3の情報が転記されているため、区分変更後に算定する予定の処遇改善加算の区分と、算定対象月、加算額、満たしている要件などを記入します。
統括表の書き方・記入例
統括表には基本情報入力シート、個票に記載した内容がすべて転記されています。残りの項目を記入すれば、処遇改善計画書は完成です。まず、以下の部分に賃金改善にあてる見込み額を記入します。
令和6年度の賃金改善見込み額は、令和5年度の賃金よりベースアップできる額を記入する必要があります。
次に賃金改善を行うための具体的な取り組み内容について記入します。
最後に、要件を満たしていることを確認する欄にそれぞれ情報を記入して、処遇改善計画書は完成です。
介護職員等処遇改善加算の算定方法
次に、介護職員等処遇改善加算を算定する際に必要な手続きについて、詳しく解説します。
申請時の必要書類
通常、加算区分などに変更がない場合は、新しく加算届の提出は必要ありません。しかし令和6年度の介護報酬改定で介護職員等処遇改善加算に一本化されたため、今年はすべての介護施設・事業所が介護職員等処遇改善加算の加算届を提出しなければなりません。介護職員等処遇改善加算を申請するには、主に以下の書類の提出が必要です。
- 介護給付費算定に係る届出書
- 介護給付費算定に係る一覧表
- 処遇改善計画書
そのほかキャリアパス要件などの確認書類や、就業規則などを添付しなければならない場合もあります。詳しくは管轄の自治体へお問い合わせください。
提出方法と期限
介護職員等処遇改善加算に関する届出は、適用を開始したい月の前々月末日までの提出が必要です。たとえば、令和6年7月より算定を開始したい場合は、令和6年5月31日までに提出しなければなりません。提出先は管轄の自治体です。基本的には郵送または電子申請などで提出しますが、なかには電子申請しか受け付けていない自治体もあるため注意してください。
支援ツール:移行先検討・補助シート
厚生労働省では、従来加算を算定している施設・事業所に向け、新加算の区分を検討できる支援ツール「移行先検討・補助シート」を用意しています。移行先検討・補助シートに対象となる介護サービス種別と、令和5年度に取得していた処遇改善加算を入力すると、一本化された加算でどの区分を取得すべきか、理由とともに表示されます。
見直しにより、従来加算が一本化された介護処遇改善加算は、令和6年度末までを移行期間とし、令和7年度から本格的に始動します。そのため、各施設・事業所で移行するための準備が必要です。
従来3加算のうちひとつを算定していた事業所の場合
厚生労働省が公表している「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、現行3加算の取得状況は以下のとおりです。
取得している | 取得していない | |
---|---|---|
介護職員処遇改善加算 | 94.5% | 5.5% |
介護職員等特定処遇改善加算 | 75.0% | 25.0% |
介護職員等ベースアップ等支援加算 | 91.3% | – |
※介護職員処遇改善支援補助金を取得している事業所は全体の88.7%
引用:令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)|厚生労働省
上記のように介護職員処遇改善加算を取得している事業所がほとんどですが、介護職員等特定処遇改善加算や介護職員等ベースアップ等支援加算をあわせて算定していない事業所も見られます。
これまで従来の3加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算)のうち、一部のみ取得していた施設・事業所には、介護職員等処遇改善加算Ⅲの取得がおすすめです。介護職員等処遇改善加算Ⅲの要件は以下のとおりで、比較的取得しやすい加算となっています。
【介護職員等処遇改善加算Ⅲの要件】
- 新加算Ⅳの1/2以上の月額賃金改善
- 現行のベースアップ等加算相当の2/3以上の新規の月額賃金改善 ※現行ベア加算未算定の場合のみ
- 任用要件・賃金体系の整備、研修の実施、昇給の仕組みの整備など
- 職場環境等要件の生産性向上の取り組みを2つ以上行うこと
- 上記以外に区分ごとに1つ以上の取り組みを行うこと
出展:「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります|厚生労働省
今年度、厚生労働省は各都道府県の介護労働安定センターを通し、介護職員等処遇改善加算の取得支援を行っているため、現行3加算を取得したことのない介護施設・事業所は、悩む前に迷わずに、介護労働安定センターへ相談してください。
一本化された加算「介護職員等処遇改善加算」の概要
介護職員等処遇改善加算は、Ⅰ~Ⅳの4区分に分けられており、算定するにはキャリアパス要件・職場環境等要件・月額賃金改善要件の3つの要件を満たさなければなりません。
今回の改定では、各区分の要件の整理や職場環境等要件などの見直しが行われているため、必ず確認しましょう。また、介護職員や、技能・経験のある職員への配分を基本としていれば、加算額の柔軟な配分が可能などの変更点もあります。
詳しく知りたい方は以下の記事もご参考ください。
処遇改善実績報告書の提出について
介護職員等処遇改善加算を算定するには、必ず実績報告の提出が必要です。実績の報告がない場合、不正請求とみなされ、全額返還となる可能性もあります。
令和5年度分の実績報告書は、令和6年7月31日(令和6年3月サービス提供分まで加算を算定した場合)までに提出します。様式は厚生労働省のホームページで公表されている「別途様式3(実績報告書)」を利用してください。
令和6年度の実績報告書の提出期限は、令和7年7月31日です。様式は上記のものとは異なり、令和6年度以降対応の様式「別紙様式3(実績報告書)」を活用します。
積極的に介護職員等処遇改善加算を取得しよう
令和6年度の介護報酬改定により、介護の処遇改善に関わる加算は一本化され、介護職員等処遇改善加算となりました。仕組みや計画書、実績報告書が簡素化されたため、従来より取得しやすい内容となっています。
職員の賃金改善を進めることは魅力的な職場づくりとなり、離職防止や人材定着、採用活動にも効果を発揮します。これまで現行3加算を未取得、または一部のみ取得していた介護施設・事業所は介護職員等処遇改善加算の取得を検討してみてください。