介護関係の仕事をしている人であれば「アセスメントシート」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。しかし、アセスメントシートが実際にどのように使われ、記入の際にはどのようなポイントがあるのかを具体的に知る人はそれほど多くないようです。そこでこの記事では、アセスメントシートの様式や書き方について詳しく解説していきます。
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目次
アセスメントシートとは
アセスメントシートとは、ケアマネジャーがケアプランを作成する際に、利用者さんの状況を把握するための情報収集(アセスメント)の内容をまとめる重要なツールです。
このシートには具体的に「どのような支援を必要としているか」や「介護サービスの利用者がどのような背景を持っているか」などの情報を簡潔にまとめます。
アセスメントシートにはさまざまな様式があるので、利用者さんの状況などを考慮したうえで適切な様式のものを選ぶのが理想的です。アセスメントシートはケアプランを作成するケアマネージャーのほかに、実際に介護サービスを提供している介護事業所でも利用されています。利用者さんの情報を正確に記入するためにも、厚生労働省が指定した23項目の「課題分析標準項目」を満たしたうえで書き方に気をつけていきましょう。
アセスメントシートの7つの様式
「平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成29年度調査)(4)介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業報告書」によると、施設サービスでは包括的自立支援プログラム方式を採用している使用している施設が多く、居宅介護支援事業所では居宅サービス計画ガイドライン方式を採用している事業所が多いという結果が出ています。その他、介護老人保健施設では R4 を使用している施設が 2 割程度となっています。
アセスメントシートにはさまざまな様式があるので、選ぶものによって特徴も異なります。ここからは、7つのアセスメントシートの様式についてご紹介します。
包括的自立支援プログラム
「包括的自立支援プログラム」と呼ばれているアセスメントシートは、全国老人福祉施設協議会・全国老人保健施設協会・介護力強化病院連絡協議会の3つの団体が開発したものです。厚生労働省発表の「平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」によると、介護老人保健施設では29.2%、介護老人福祉施設では49.3%がこの「包括的自立支援プログラム」を採用しています。
最も大きな特徴は、要介護認定に使う認定調査票と絡みがある点です。ケアプランを作成する際、聞き取りを行ったケアマネージャーの主観が入っているケースは少なくありません。しかし、ケアマネージャーの主観をもとにして作られたアセスメントシートは、場合によってはそれぞれの利用者さんにとって適した計画にはなっていないという問題も見られました。
この問題を解消するために、包括的自立支援プログラムでは、認定調査票をアセスメントとして連動させることによって既存のケアプランの見直しを行いました。そうすることによって、利用者さんにとってより良いサービス内容が提供しやすくなった点は大きなメリットのひとつです。
居宅サービス計画ガイドライン
全国社会福祉協議会が開発したアセスメント方式で、エンパワメント支援の考えが盛り込まれています。利用者さんの「強さ」を理解し、それをケアプランに活かすことで、自らの問題を自らの力で解決することを支援することを目的としており、全国の居宅介護支援事業所の37.6%が採用しています。
MDS-HC方式
MDS-HC方式は、在宅・施設のどちらの場合でも使用可能です。特に、在宅と施設を行き来することが多い高齢者の情報を収集し、分析したいときの基準として高く評価されています。MDS-HC方式なら、支援をするうえで欠かせない「機能面」「感覚面」「精神面」「健康問題」「ケアの管理」「失禁の管理」の6つの領域について、くまなく把握することができます。
R4
公益社団法人全国老人保健施設協会が介護老人保健施設でのケアのために開発したR4システムに基づいたアセスメント様式です。
全国老人保健施設協会が持つ介護老人保健施設でのデータを統計学的に分析し、ICFという国際的な分類を用いて、5段階の絶対値評価を行うのが特徴です。
ケアマネジメント実践記録方式
調査分析の内容が広範囲であり、細部まで対応している「ケアマネジメント実践記録方式」なら、細かいケアマネジメントまで行える可能性がアップします。この様式のアセスメントシートには「本人・家族等の意見・要望」や「アセスメント担当者が判断した課題」を記入するスペースがあります。そのため、包括的なニーズを把握したいときには特に効果的です。ただし、その一方でアセスメントにはかなりの時間が必要です。
日本介護福祉会方式
アセスメントシートの記入では、要介護者の生活状況を正しく把握することが重要です。「日本介護福祉会方式」の場合、衣・食・住・体の健康・家族関係・社会関係という7つの領域から高齢者の課題を分析していきます。この様式はホームヘルプの活動実績をもとにして作られたものです。そのため、要介護者の意思や価値観、思想、生活の環境などの事柄をより重視しているという特徴が見られます。
日本訪問介護振興財団版方式
「日本訪問介護振興財団版方式」は使用できる対象が広い点が特徴で、成人から高齢者までの幅広い年齢層に用いることができる様式です。この様式のアセスメントシートなら、数回にわたっての記入が可能です。複数回の記入が行え、調査項目も細かくなっているという特徴から、利用者さんのこれまでの経緯を確認しやすい点はメリットのひとつと言えます。ただし、調査が細部に及ぶため、アセスメントにかなりの時間を要する場合があります。
アセスメントシート書き方のポイント
アセスメントシートを書くときには、具体的に「どのような点を意識して記入するか」を把握しておくことが欠かせません。アセスメントシートを記入する際、多職種との連携をスムーズにするためにも、記入者以外の人が見た場合でも状況などが理解できるように書くことが大切です。
たとえば「5W1Hを意識しながら書く」や「主観的事実と客観的事実を区別して書く」などのポイントを押さえておきましょう。
ここでは、アセスメントシートの書き方について紹介していきます。
基本情報
基本情報は本人の基礎となる情報のこと指しています。この部分には利用者さんの氏名や性別、生年月日、住所などの基本的なことに加えて、日常生活の自立度や認定情報、障害者手帳の有無などをヒアリングして記入していきます。このとき、手帳があるのであれば控えを取っておくと良いでしょう。また、すでに障害福祉サービスを利用しているのであれば、その利用計画を作成している相談支援事務所の職員とも連絡を取っておくとよりスムーズです。アセスメントシートを作成する際の面談は2~3時間程度かかるケースがほとんどです。利用者さんやご家族と面談をするときは、必要事項に漏れのないように聞き取りをしましょう。
本人の要望・希望
基本情報について記入するうえで、本人およびそのご家族の要望は最も重視されます。アセスメントシートの要望・希望があいまいであると、支援の方針が適切でないと判断されることもあります。そのため、本人の要望・希望はしっかりと聞き取りをしておき、それを基本方針に反映して具体的な支援につなげていくことが大切です。
ご家族情報
基本情報では、利用者さん本人を取り巻く家族構成も重要です。ヒアリングの際には「主な介護者は誰か」「介護者の健康状態」「連絡可能な家族は誰か(またその優先順位)」などの事柄は特に丁寧に聞いておく必要があります。利用者さん本人が認知症の場合には、そのご家族が代弁者になります。そのため、家族情報は可能な限り詳細に聞き取りをしておきましょう。成年後見制度を利用して親族が後見人になっているのであれば、その家族構成まで記載しておくことが欠かせません。
サービスの利用状況
在宅介護の場合、すでに利用者さんが利用しているサービスと組み合わせると、介護サービスの質が向上する可能性もあります。ただし、アセスメントシートの様式よっては、現在利用している介護サービスの状況がまとめられていないために、これまでどのような介護サービスを受けていたのかがわからないこともあります。在宅介護で複数のサービスを領している場合は、それぞれの利用状況がまとめられる様式のアセスメントシートに記入して、より良い支援につなげていきましょう。
住居等の情報
住居等の情報とは、居室やリビング、トイレの状況など、現在利用者さん本人が住んでいる住居に関する情報で、記入式や図面式となっています。介護の度合いによっては、どの程度バリアフリーが整っているのかについても確認しておく必要があります。今後、支援をしていくにあたって利用者さん一人ひとりに合った住環境を提案していくためにも、利用者さんの住居について正しく理解しておきましょう。
移動手段
支援の方針を決定していくうえで「本人の移動が自立しているか」という問題は非常に重要です。それは、車いすや歩行器などの移動に関する情報を、支援の方針を決定するうえで反映していかなければならないからです。介護者に対して適切な支援を行うためにも、本人の移動手段は丁寧に確認し、詳細は特記事項に記入しておきましょう。
アセスメントシートを正確に記入することでより良い介護を
アセスメントシートを詳細、かつ正確に記入することは、被介護者に対して適切な介護を提供していくうえでの第一歩となるものです。そのため、アセスメントシートの様式や書き方のポイントは、正しく理解しておく必要があります。より良い介護を提供していくためにも、アセスメントシートを記入する段階から丁寧な作業を心がけていきましょう。