介護職の残業の実態とは?転職を考えるべきタイミングをチェック

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介護職は慢性的な人手不足が背景にあり、人対人の仕事でイレギュラーが起こることもあるため、時間通りに業務を終了するのはなかなか難しいこともあると思います。しかし、日常的に当たり前のように残業をしなければならず、残業分の給与も支払われないとなると話は変わってきます。心身ともに疲弊し、職場への不満も募るでしょう。ここでは、介護職の残業の実態と、残業で転職を考えるタイミングについてお伝えしていきます。

介護職の残業の実態とは

メディアなどを通じて「介護職は人手不足で忙しい」ということが世間一般的に浸透しており、介護業界は「休みがない」「残業が多い」とイメージしている方も多いと思います。介護職・介護福祉士の残業の実際について、データで確認していきましょう。

全国労働組合総連合の「介護労働実態調査 報告書(2019年4月)」によると、介護職のひと月の残業時間は平均8.2時間、正職員で平均10.2時間です。1時間の残業であれば週に2~3日程度ということになります。一方で、「残業なし」の人は32.3%、ひと月の残業が5時間未満の人は22.7%であり、残業時間が5時間未満の割合は半数を超えています。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、全産業を対象としたひと月の残業時間は10.6時間、正職員のひと月の残業時間は14.3時間。医療・福祉分野においては全体で5.2時間、正社員で7.2時間となっています。

この2つの調査結果を見ても、介護の残業時間は、その他の産業と比較して、特別多いわけではないことがわかります。

しかし、「介護職の残業時間は、実はそれほど多いわけではない」ことは一般的にはあまり知られていません。(株)リクルートキャリアの「介護サービス業 職業イメージ調査 2014」でも、介護業界についてもっとも知られていないのは「介護業界の50%の企業で残業がないこと」であるという報告があります。

介護職の残業で多い仕事内容

介護職ではどのような業務が残業となるのでしょうか。

全国労働組合総連合による「介護労働実態調査 報告書」では、残業で多い業務として、情報収集、記録、ケアの準備と片付け、利用者のケアや家族への対応、会議や委員会への参加が挙げられています。

情報収集、介護記録

施設では出勤してから、起床・就寝・トイレ・入浴・食事の介助、食事の準備・片付け、レクリエーションの準備・実施など、利用者さんの1日の生活スケジュールに沿って行うケアや対応で手いっぱいとなります。訪問介護の場合も時間内で利用者さんに行うケア内容は決まっており、介護記録や介護計画書、書類などを作成する時間や利用者さんについての情報収集は、勤務時間外に行うこととなります。

ケアの準備 ・ 片付

勤務時間中は時間いっぱい利用者さんのケアや対応に追われます。そのため、ケアを行うための事前準備は始業時間前に対応することが多く、ケアの後片付けは業務終了後に持ち出されることが多くなります。

利用者のケア・ご家族などへの対応

勤務時間中に想定外のことが起こった場合には、時間内にケアを終えることができず、長引くこともあります。また、訪問介護の場合、ケアに対する時間が長引くことによってご家族への対応が勤務時間内に取れなかったり、ご家族から時間外の対応を求められたりする場合もあります。
また、急な欠勤を補うため、続けての勤務になる(夜勤から、翌日の日勤業務の繁忙時間帯まで働く)といった場合もあります。

会議 ・ 委員会 ・ 研修

事業所内での会議や担当者会議などへの参加や、委員会活動、研修への参加に対し、アンケート回答者の3人に一人が時間外に行われていると回答しています。
人手不足により、業務として勤務時間内に組み込まれておらず、始業時間前や休み時間、業務終了後に行われることが多くなっているようです。尚、事業所から命じられた資格取得のための研修への参加も、勤務時間外であれば残業となります。

介護事業所の残業時間数を減らす取り組み

国が進める「医療・福祉サービス改革プラン」に、業務の負担軽減として介護職の平均勤務時間と残業時間を、2020年度末までに減らすという施策が打ち出されています。

介護専門職と介護助手との業務を仕分け、介護専門職は利用者さんのケアに重点的に当たることができるようにすることや、ICTやロボット・センサーなどの活用で業務の効率化を図ること、書類の量を半減することなどが具体策として挙げられています。

これにより、勤務時間外で対応しなければならないケアや介護記録の負担が減ることが期待されます。

実は介護職の4人に1人がサービス残業を経験

他の産業と比べ、比較的残業時間の少ない介護業界ですが、全国労働組合総連合の調査によると「時間外労働はない」と答えたうちの4人に1人はサービス残業を行っているという実態があります。

残業しているのに給与が支払われないという現状が、介護職の離職にもつながる不安・不満材料となっています。サービス残業となっている理由については「自分から請求していない」という人が70.9%を占め、続いて「請求できる雰囲気にない」が40.3%となっています。

サービス残業がまかり通っている職場では、サービス残業をして当たり前の環境となっており、勤務時間を越えて仕事をしたからといって残業代を請求できない状況にあると考えられます。

転職を考えるべきチェックポイント

残業があってもきちんと残業代が支払われている場合や、事業所が残業を極力減らすよう、労働環境の改善に取り組んでいる場合はある程度その改善を待ってもよいでしょう。

しかし、残業を減らす取り組みが行われておらず、残業しても対価が支払われない状況が続く場合は、正当な対価の支払いと労働環境改善について相談してください。相談しても状況が変わらない、そもそもそのようなことを相談できる雰囲気にないといった場合は、転職も視野に入ることをおすすめします。具体的なチェックポイントは以下の3つです。

時間外労働の上限規制が守られていない

労働者の残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間と法律で決められています。1日8時間もしくは1週間に40時間を超える労働時間は残業とみなされるため、上限を超えているようであれば、労働基準法が守られていないことになります。

※臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合は年720時間以内まで認められる場合もあります。
参考: 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 」

想定される業務が時間内にできるように配慮されていない

介護記録を書く時間、ケアやレクリエーションの準備と片付け、会議や委員会活動への参加する時間が業務内で行われるように、スケジュールが配慮されているでしょうか。表向きには残業が行われていないようにみせるために、昼休みや始業時間よりも早く来て、仕事を片付けるように言われていないでしょうか。

そもそも勤務時間外に業務スケジュールを組まれていることが問題です。勤務時間内に終えることができないと想定されるのであれば、職場として業務の仕分けや効率化を図って勤務時間内に仕事が終えられるような体制を整える必要があります。

残業した時間分は残業代が支払われない(サービス残業)

雇用契約の内容にもよりますが、大前提として、会社は従業員に対し1日8時間・週40時間を超えた労働をさせたのであれば残業代を支払う義務があります。
会社に残業代の支払いを求めても応じてくれない場合は退職を検討する一つの理由となるでしょう。

まとめ

全職種のなかで介護職の残業時間がとりわけ多いというわけではありません。国を挙げて介護職の職場環境改善の取り組みも図られています。残業はあっても就業規則の範囲内で残業代も支払われており、自分自身が納得して残業しているのであれば、特に問題となることはありません。

しかし、残業代の未払いが当たり前になっている、残業を強制される、残業時間が規定を越えているなど、残業が職場への不安・不満材料となっている場合は、転職を考えてもよいタイミングといえるでしょう。

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