介護の仕事には無資格でも就くことが可能ですが、自らのスキルアップや収入アップ、働き方の選択肢を増やしたいと考えるなら、資格の取得がおすすめです。介護に関する資格を取得する理由や主要資格、目的別のおすすめ資格などをご紹介します。
目次
介護の仕事で資格を取得する理由とは?
介護の技術やスキルを表す資格を取得することは、スキルアップはもちろんのこと、自信を持つことにもつながります。また、資格取得によって仕事の幅が広がれば、給与アップの可能性も高まるでしょう。
資格は、転職や就職において有利に働く場合もあります。介護職の求人では、未経験者や無資格者も応募可能であることが少なくありません。しかし、即戦力となり得る有資格者を優遇している求人情報があることも事実なのです。
これは、無資格で働ける介護職にあっても、仕事の内容によっては資格保有を求められる場合があるからです。
業務内容や介護サービスの種類によって、必要とされる資格が異なります。これから資格を取得しようと考えている方は、まずどんな業務に就きたいかを明確にしましょう。
資格の取得をサポートしてもらえる職場がおすすめ
介護の資格を持っていることで得られるメリットはたくさんあります。とはいえ、資格を取得するには、それなりの時間とお金が必要となります。
そこでおすすめするのが、資格の取得をサポートしてもらえる職場を選ぶことです。未経験や無資格で介護の仕事を始めたとしても、資格の取得を支援する体制の整った職場であれば安心して働くことができるでしょう。
社内で無料の講習会を開いてくれたり、資格を取得するのにかかる費用を負担してくれたり、資格取得時に合格祝い金を出してくれたり、その支援方法は事業所によって異なります。スキルアップやキャリアアップを目指す場合には、事前にサポート体制の有無を確認しておきましょう。
スキルアップするための4つの主要資格
介護職としてスキルアップを目指す上で基本となる、主要資格4つをご紹介します。
介護の入門資格】介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の入門資格となる公的資格のひとつです。介護の基礎知識と基本技術を学ぶことができます。
この資格は、ホームヘルパー2級研修の廃止に伴って平成25年にできたものです。ホームヘルパー2級研修は主に訪問介護員として働くための資格でしたが、介護初任者研修は、施設介護と訪問介護のどちらにも活用できる資格となっています。
介護の仕事をこれから始める方はもちろん、介護が必要なご家族のために取得する方もいるようです。この資格を取得すれば、訪問介護で身体介護ができるようになります。
ホームヘルパーなどの訪問介護事業所への就職を希望する場合は、必ず取得しておきたい資格といえるでしょう。
【介護職員初任者研修の上位資格】介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、より実践的かつ質の高い介護技術や専門知識を修得できる介護職員初任者研修の上位資格です。
介護職員初任者研修と同様に、無資格や未経験の方でも取得できます。資格を取得することでスキルアップはもちろんのこと、給与アップも期待できるでしょう。
平成29年以降、介護福祉士を受験するにはこの研修の修了が必須となっています。スキルアップしながら介護福祉士を目指すなら、取得すべき資格といえるでしょう。
【介護士に欠かせない国家資格】介護福祉士
介護福祉士は、介護に関する資格の中で唯一の国家資格です。介護に関する技術やスキルだけでなく、保険や医療的ケアなどの幅広い知識を得ることができます。
資格取得後は、介護現場におけるリーダーや管理者として、指導やアドバイスをする立場へのステップアップが期待できます。また、利用者さんやそのご家族への相談業務などを担う場合もあるでしょう。
資格手当を用意している職場も多く、介護の業界でキャリアアップを考えているなら、目指したい資格のひとつです。
また、ケアマネジャーや生活相談員を目指す場合は受験資格や要件になるため、必ず取得しましょう。
介護福祉士になるにはふたつの方法があります。ひとつは、専門学校か福祉系の高校や大学の課程を履修し、国家試験を受ける方法です。もうひとつは、実際に働きながら3年以上の実務経験を積み、介護福祉士実務者研修を修了してから国家試験を受ける方法です。社会人になってからでも意欲さえあれば挑戦できる資格で、何歳になっても取得可能です。
【介護をコーディネートする資格】ケアマネジャー
ケアマネジャーの正式名称は「介護支援専門員」です。介護や支援を必要とする方やそのご家族が適切な介護サービスを受けるための介護計画(ケアプラン)を立て、調整する役割を担います。
数多くある介護サービスの中から利用者さんに合うサービスを提案し、提供できる事業所との橋渡しを行うため、介護保険制度については熟知しておく必要があります。
仕事内容は、介護計画(ケアプラン)の作成だけではありません。ケアマネジャーが利用者さんに代わって要望を事業所に伝える場合もあります。利用者さんが直接言いづらいことを代弁して事業所に伝えたり、反対に事業所の考えを利用者さんに伝えたりなど「調整役」を務める必要もあるのです。要望を単に伝えるだけでなく、利用者さんと事業所のどちらの立場にも立てる中立的な考えが必要となるので、実務経験を問われる専門性の高い資格です。
資格を取得するためには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければなりません。その後「介護支援専門員実務研修」を修了すると、各都道府県の「介護支援専門員名簿」に登録され、「介護支援専門員証」が交付されることになります。
スキルアップの目的ごとに役立つ資格とは?
介護の資格には、個人の得意なことが活かせたり、他職種でも活用できたりする資格が多くあります。
ではスキルアップに役立つ4つの資格を目的別に見ていきましょう。
介護業務の幅を広げる2つの資格
「すでに介護関連の資格を取得しているけど、もっと仕事の幅を広げたい」といった場合は、幅広いスキルを身につけられる以下の資格がおすすめです。
- 喀痰吸引等研修(かくたんきゅういんとうけんしゅう)
- 介護予防指導士
これらの資格を取得するためには、特定の資格や規定の実務経験を必要とする場合があります。どちらかというと新人の時期ではなく、介護士としてある程度の経験を積んでから、必要に応じて取得するのがよいかもしれません。
相談援助業務で役立つ3つの資格
相談援助業務とは、利用者さんの相談に対する援助や関係機関との調整を行う仕事のことです。地域包括支援センターの相談窓口や介護施設などで、利用者さんやご家族からの相談を受けて必要な援助を行います。
職場によっては、生活相談員やソーシャルワーカー、ケースワーカーなどと呼ばれることもあるでしょう。相談援助業務に就くための代表的な資格は、以下の通りです。
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 社会福祉主事任用資格
中でも社会福祉士は、この分野共通の国家資格です。社会福祉士と精神保健福祉士のどちらかを取得していれば、社会福祉主事任用資格を有することになります。
いずれも簡単に取得できる資格ではありません。しかし、どれも介護事業所以外にも医療や福祉の現場、自治体などでも幅広く活用できる資格です。
自分の得意を活かせる3つの資格
ネイルアートが趣味であったり、ギターやピアノが得意であったり、自分の得意分野を介護の仕事に活かせる資格があります。
- レクリエーション介護士
- 福祉ネイリスト
- 音楽療法士
これらは、得意分野を活かせる資格の一部です。レクリエーション介護士の資格を持っていると、レクリエーションに注力するデイサービスや有料老人ホームなどで優遇されるでしょう。
福祉ネイリストは、利用者さんにネイルアートを施したり、ハンドマッサージを行ったりします。介護士のスキルと資格を組み合わせることで、心のケアに役立つかもしれません。
自分の趣味や得意なことを仕事にできれば、自身のやりがいにもつながるでしょう。
介護の現場以外でも活用できる3つの資格
介護が必要となるシーンは、介護施設や自宅だけではありません。介護の現場以外でも活用できるのが次の資格です。
- 福祉住環境コーディネーター
- 福祉用具専門相談員
- トラベルヘルパー
介護職としての経験と知識を活かし、他業界に転職を考える場合、これらの資格は、建築や住宅、旅行、旅館やホテル業界などの幅広い分野での活躍が期待できます。
家族や知人に身体に不自由な方がいる場合、トラベルヘルパーの資格があれば外出に関わる専門家としてサポートすることもできるでしょう。
スキルアップの理由と目的を明確にしよう
介護職に就職した当初は未経験かつ無資格だったとしても、働く中で「そろそろスキルアップのために資格を取得しておかないと」と考える方も多いかもしれません。
そこで重要なのが、スキルアップの理由と目的を明確にすることです。「なぜ取得したいのか」、「取得した後にどうしたいのか」を明確にすれば、自分の取得すべき資格が見つかるでしょう。
「仕事をしながらだと、なかなか勉強の時間と取れない……」、「資格取得の費用が負担になって、なかなか踏み出せない……」そういった悩みをお持ちの方は、職場の資格取得支援制度活用することをおすすめします。もし、現在の職場のサポート体制が十分ではない場合には、思い切って転職を考えてみてもよいかもしれません。
なりたい自分をめざして、ぜひ一歩踏み出してみてください。