介護士のキャリアアップ!介護福祉士の先に目指すものとは

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介護士のキャリアアップ!介護福祉士の先に目指すものとは

介護の現場で働き介護福祉士の資格を取得した後に、「自分は今後どうしていこうか」と、将来のことやキャリアアップ、給料アップについて考える方も多いのではないでしょうか。キャリアアップと一口に言っても、その方向や種類はさまざまで、イメージしにくいところがあるかと思います。
今回は、キャリアアップのヒントになる「介護業界のキャリアパス」について紹介します。

介護業界のキャリアパス(キャリアアップモデル)

介護職のキャリアは無資格から始まり、初任者研修や実務者研修などを経て介護福祉士の資格取得までが一定のステップになります。

ではその後には、どのようなキャリアステップが考えられるでしょうか。介護福祉士の資格取得後の流れについてご説明します。

まず介護福祉士の資格を取得し現場経験を積んだ後のキャリアアップは、以下のように大きく分けると3つあります。それに加えてキャリアチェンジ(職種を変えたキャリアアップ)の道もあります。

キャリアアップ

  • 相談業務などより全体が見える立場で介護のプロフェッショナルを目指す
  • 認定介護福祉士など介護現場でのプロフェッショナルを目指す
  • 管理者としてマネジメント職を目指す

キャリアチェンジ(職種を変えたキャリアアップ)

  • 看護師など医療系専門職へのキャリアチェンジを目指す

キャリアアップ1 ケアマネジャーなどの相談業務で介護のプロフェッショナルを目指す

ケアマネジャー

仕事内容

ケアマネジャーとは、利用者さんを直接介助する介護職とは異なります。
主な仕事内容はケアプランの作成で、介護や支援を必要としている高齢者やそのご家族から状況などを聞きとり、適切な介護サービスを受けられるようにサポートするのが役割です。

要件

ケアマネジャー試験に合格して実務研修を修了する。

相談員

仕事内容

相談員(ソーシャルワーカー)は職場によって呼び名が変ります。
老人ホームでは「生活相談員」、介護老人保険施設(老健)では「支援相談員」と呼ばれています。利用者さんやそのご家族への相談援助・指導業務を行うのが主な業務内容です。介護施設で利用者さんの入所・退所の説明や契約手続き、ご家族やケアマネジャー、関連機関との連絡調整を行います。

要件

  • 「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のいずれかを保有していること
    ※上記の資格を持っていなくても、自治体が定めている独自の要件を満たしていれば、その地域でのみ生活相談員として働けます。

サービス提供責任者

仕事内容

サービス提供責任者とは、役職や資格ではなく、介護保険制度上の職業の名前です。訪問介護事業所のホームヘルパーをとりまとめる責任者のことです。ホームヘルパーの手配や調整といったスケジュール管理を行い、教育・指導などもします。ケアマネジャーとの連携や、利用者さん・ご家族からの相談に応じたり、書類(計画書・アセスメントなど)の作成をしたりと仕事内容は多岐にわたります。

要件

  • 介護福祉士、看護師、准看護師、保健師のいずれかの資格を持っている
  • 実務者研修を修了している
  • 介護職員基礎研修を修了している(旧資格)
  • ホームヘルパー1級の資格を持っている(旧資格)

相談業務でのキャリアアップの場合、給与はどうなる?

下記のとおり、相談業務に従事する職員の給与は一般の介護職員と比較した場合、高い水準にあることが分かります。

平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果
介護従事者等の平均給与額の状況(月給・常勤の者、職種別)
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における介護職員 (月給・常勤の者)の平均給与額について

介護職員 300,970円
生活相談員・支援相談員 321,080円
介護支援専門員 350,320円

平成30年度介護労働実態調査
【労働者】<月給の者>の所定内賃金(平均額)(職種別)

介護職員 214,721円
生活相談員 246,996円
介護支援専門員 258,444円
サービス提供責任者234,201円

【労働者】賞与(平均額)(職種別)

介護職員 559,569円
生活相談員 620,401円
介護支援専門員 666,534円
サービス提供責任者479,150円

キャリアアップ2 認定介護福祉士など介護現場でプロフェッショナルを目指す

介護の現場で利用者さん達と向き合いたいと希望するなら、認定介護福祉士や認知症ケア専門士を目指すといったキャリアアップの方法もあります。実践的な専門資格を取得することで、プロフェッショナルとして活躍することができます。

認定介護福祉士

一般社団法人である認定介護福祉士認証・認定機構が、介護福祉士の上位資格という位置づけで定めている民間の資格です。

仕事内容

介護福祉士の上位資格として、豊富な経験や知識を備えた高い能力で介護職員のリーダーとしての指導や教育を行い、他職種との連携の中心的役割を担うことが求められています。

要件

  • 介護福祉士としての実務経験が5年以上ある
  • 認定介護福祉士養成研修で600時間の研修を修了する
    ※受講先によっては介護福祉士ファーストステップ研修等の研修を受講しておく必要あり
  • 研修の修了後、認定申請を行い審査に通過する

>>認定介護福祉士の詳しい仕事内容はこちら

認知症ケア専門士

一般社団法人である日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。認知症ケアに対する優れたた知識と高度な技能を備えた専門技術士の養成を目的としており、実践的なスキルアップが望めます。

仕事内容

認知症についての専門知識とスキルを兼ね備えたプロとして、介護現場で認知症ケアにあたっていきます。医師や看護師などの医療職が認知症ケアを正しく職員に伝えるために資格を取得して役立てるケースもあるようです。
有資格者は求人の際に待遇面や転職活動で優遇されることがあり、資格手当を設けている施設や事業所も存在し「経験者歓迎」と迎えてくれるでしょう。

要件

  • 認知症を患った利用者さんのいる施設や団体機関で、3年以上の実務経験がある
    ※実務経験は下記の認定試験が行われる年の3月31日からさかのぼって過去10年が対象
  • 認知症ケア専門士認定試験に合格して定められた登録申請を行う
    ※更新制の資格で5年に一度の更新手続きをする必要がある
    ※更新のためには、資格を取得後に定められた講座や論文投稿などで単位を取得する必要がある

資格取得後の給与はどうなる?

認定介護福祉士や認知症ケア専門士の待遇に関する公なデータはありませんが、実務経験と資格に応じた手当などによる給与アップが期待できます。特にグループホームなど、これらの資格を重視するサービスでは手当を設けている傾向があります。

>>認知症ケア専門士の資格を取得するメリットについてはこちら

キャリアアップ3 施設長・ホーム長などの管理者としてマネジメント職を目指す

役職者としてしっかり足掛かりを築きキャリアアップしたいと考えるなら、施設長やホーム長を目指す方法もあります。施設全体の責任者として管理・運営を行うのが、老人ホームの介護長や施設長、訪問介護事業者なら事業所長と呼ばれる役職です。

施設長・ホーム長

仕事内容

仕事内容は働く施設や事業所によって異なりますが、施設や事業所全体の管理を行います。主に介護業務や人材、収支に関するマネジメントが業務内容となります。

要件

特養や老健など、介護施設によっては施設長や管理者になるためには、資格や要件が必要な場合があります。

特別養護老人ホーム(基準省令第5条第1項)

  • 社会福祉主事の要件を満たす者
  • 社会福祉事業に2年以上従事した者
  • 社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者

介護老人保健施設(介護保険法第95条)

  • 介護老人保健施設の開設者は、都道府県知事の承認を受けた医師に当該介護老人保健施設を管理させなければならない
    ※都道府県知事の承認を受け、医師以外の者に管理させることができる

小規模多機能型居宅介護事業所

  • 特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、介護老人保健施設、指定認知症対応型共同生活介護事業所等の職員又は訪問介護員等として、3年以上認知症高齢者の介護に従事した経験を有する者であること

    厚生労働大臣が定める認知症対応型サービス事業者管理者研修を修了していること(「実践者研修」又は「基礎課程」修了が必須)

グループホーム

特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、介護老人保健施設、介護医療 院、指定認知症対応型共同生活介護事業所等の従業者又は訪問介護員等と して、3年以上認知症である者の介護に従事した経験を有すること
厚生労働大臣が定める認知症対応型サービス事業者管理者研修を修了していること(「実践者研修」又は「基礎課程」修了が必須)

その他

  • 有料老人ホームや訪問介護事業所、居宅介護事業所、デイサービスなどは特に資格要件は定められていませんが、実務経験や資格を持った人が従事していることがほどんどです

施設長・ホーム長などの管理者になったら給与はどうなる?

施設や事業所のトップといえるポジションで、最終的な責任を背負う立場になるため、介護職などの労働者と比べ賃金は優遇されています。

平成30年度介護労働実態調査 Ⅲ労働者の個別状況
所定内賃金(労働者、事業所管理者)

労働者全体231,553円
事業所管理者(施設長)359,357円

いずれの管理者も各施設にほぼ1名なので、要件を満たしているからと言ってなれるわけではありません。
前任者の退職や新規オープンなど、タイミングも重要となってきます。
管理者へのキャリアアップを目指す場合は、現在働いている職場以外の情報もチェックしておくと可能性が広がります。

また、施設長やホーム長の管理者だけではなく、管理職として勤務する場合も給与アップが見込めます。

平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果
第73表 介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者),サービス種類別,職位別(加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)

管理職でない283,340円
管理職315,870円

>>施設長の詳しい仕事内容はこちら

キャリアチェンジ 看護師や作業療法士などの医療系専門職を目指す

これまでの介護職での経験を活かし、看護師や作業療法士、理学療法士、言語聴覚士(PT・OT・ST)など、職種を変えたキャリアアップも一つの方法です。

医学的な知識を学ぶことで、看護師であればこれまで一部しか対応出来なかった医療行為に広く携われるようになり、リハビリ職であれば、専門的なリハビリテーションを通じて利用者さんの回復へ貢献することが可能になります。
同じ医療系の資格保有者のなかでも介護職としての経験を持つ人材は、どの施設や事業所からも歓迎されるでしょう。
給与面でも介護職よりも収入アップが期待でき、資格取得に対する大変さに見合うだけの収入を得られる場合がほとんどです。

看護師

仕事内容

介護職員では限定されている医療行為を幅広く行い、専門的な知識と技術で利用者さんのケアや診療をサポートしていきます。
一般的には、介護職員と比較すると給与アップすることが期待できるので、看護師にキャリアチェンジする方も多くいます。

要件

  • 専門学校、看護大学校に入学して、所定の科目を修了し、国家試験に合格すること

作業療法士、理学療法士、言語聴覚士(PT・OT・ST)

仕事内容

利用者さんの機能回復訓練を担当します。担当する領域はそれぞれに異なります。   

  • 理学療法士(PT)基本動作(立つ・歩くなど)のリハビリを行う
  • 作業療法士(OT)日常生活に必要な動作(着替える・入浴するなど)のリハビリを行う
  • 言語聴覚士(ST)言語コミュニケーション能力や嚥下機能のリハビリを行う。 

要件

  • 専門学校や大学などの養成校で養成課程を修了し、国家試験に合格すること

介護現場で働く医療系専門職の平均月給とは

平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果
介護従事者等の平均給与額の状況(月給・常勤の者、職種別)
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における介護職員
(月給・常勤の者)の平均給与額について

介護職員300,970円
看護職員372,070円
理学療法士、作業療法士、
言語聴覚士又は機能訓練指導員
344,110円

>>機能訓練指導員の詳しい仕事内容はこちら

その他、独立を目指す

既存の事業所で勤務するのではなく、訪問介護事業所などを開業して独立することもキャリアアップのひとつです。自分が考える理想の介護を実現できるという大きなメリットがあります。独立のために必要なのは資金と人材ですので、独立を目指す場合は早い段階から準備しておくことが重要です。

まとめ

今回は介護職員として働く方のなかでもより上を目指したい方のためのキャリアアップをご紹介しました。
どれも実現するまでに長い時間と努力が必要となります。求められるスキルもそれぞれに異なるので、早い段階から将来どのように活躍したいかを考えておくと、今何をすべきかが見えてきます。
また、将来の具体的な目標を持つことで、今の仕事にもこれまでと違ったやりがいを感じることもができるでしょう。

※所定内賃金とは平成 30 年 9 月時点におけるもので、月給の者の所定内賃金は 1 ヵ月あたりの決まって支給する税込み賃金額(交通費、役職手当等を含む。)、日給の者の所定内賃金は 1 日あたりの決まって支給する税込み賃金額、時間給の者の所定内賃金は 1 時間あたりの決まって支給する税込み賃金額をいう。