ケアマネジャーとして仕事をする場合、介護サービスを必要とする人が「施設」にいるのか、「居宅(自宅)」にいるのかによって、働き方は変わってきます。
介護施設で働くケアマネジャーは通称「施設ケアマネ」と呼ばれ、施設利用者さんのケアプランを作成することが主な仕事です。
「施設ケアマネってどんな仕事?」「介護職からキャリアアップして施設ケアマネになりたい」
そんな施設で働くケアマネジャーの仕事に興味を持っている方に、施設ケアマネの役割や仕事の流れ、居宅ケアマネとの違いなどを紹介していきます。
目次
施設ケアマネとは
施設ケアマネとは、特別養護老人ホームや老人保健施設、有料老人ホームやグループホームなどの介護施に勤務するケアマネジャーの事を指します。施設に入居する方の施設サービス計画(ケアプラン)を作成するのがメイン業務となります。
ケアプランは施設内のサービスから組み合わせてケアプラン作成するため、施設内の他のスタッフとの連携が求められます。
また、大規模施設の場合は100名ほどの利用者さんを担当することもあるため、書類作成などの事務作業の時間をどれだけ短縮できるかが重要なポイントになるでしょう。
利用者さんの数が比較的少ない小・中規模施設の場合、ケアプランの作成以外にも、現場での介助業務や相談業務を兼務する場合もあります。
施設ケアマネと居宅ケアマネとの違い
施設ケアマネと居宅ケアマネの違いについて、分かりやすく表にまとめて説明していきます。
ケアプラン | 担当人数 | 勤務場所 | |
施設ケアマネ |
・利用者さんの意向と施設方針に沿って作成 ・施設内で行えるプランを作成 |
特養や有料老人ホームなどは最大で100人程度になる場合もある | 特養・老健・グループホームなどの施設内 |
居宅ケアマネ |
・外部機関のサービスの中から取捨選択して作成 ・自宅を訪問して、利用者さんの生活環境や身体状況に合わせて作成 |
1人あたり35人程度が目安 | 利用者さんの自宅 |
施設ケアマネと、居宅ケアマネの大きく異なる点は担当件数です。
居宅ケアマネの場合、一人あたりの担当件数は約35件程度ですが、施設ケアマネは最大で100件程を担当する場合もあります。
その他の違いとしては、施設内での連携を考えたケアプランの作成が求められる点や 、介護職員として現場での介助業務や、生活相談員としての相談業務などを兼務する場合があるといった点です。また、介護職員と同様に、夜勤に入る場合もあるでしょう。
施設ケアマネの役割は施設によって違う
施設ごとに違うケアマネの役割について、3施設に分け説明していきます。
- 特別養護老人ホーム/介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- グループホーム
まずは、特養・介護老人保健施設での役割についてです。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設での役割
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)で働くケアマネジャーは、ケアマネジメント業務以外にも、生活相談員や現場の介護職員としての業務を兼務する場合があります。
生活相談員として、利用者さんだけでなく利用者さんのご家族からの相談を聞いたり、介護職員として、食事介助や排泄介助、入浴介助などの介助業務を行ったり、幅広い役割を求められます。
介護付き有料老人ホームでの役割
介護付き有料老人ホームでも、特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同様に、現場での介護業務を行う場合があります。
また、民間企業が運営しているため、独自のサービスが多く、求められる業務内容も多岐にわたります。
グループホームでの役割
グループホームは、1ユニット(最高9名)に対し1名の計画作成担当者の配置義務があり、担当件数が少ないため、介護職員として介護業務を行う場合や、管理職やホーム長として施設の運営やスタッフの管理などマネジメント業務を行う場合があります。
施設ケアマネの仕事の流れ
施設ケアマネジャーとして働く場合は、基本的に決められたスケジュールの中で働くことになります。
施設によって異なりますが、例えばこのような一日の流れです。
09:00 出勤/朝礼
10:00 ケアプランの作成など書類の作成
11:30 入居者さん・ご家族の対応
12:00 食事介助/昼食
13:30 入居者のモニタリング/レクリエーションなど 15:00 サービス担当者会議/ケアプランの見直し/事務処理
17:00 ミーティング/引継ぎ
18:00 帰宅
まず、出勤したら制服に着替えて朝礼に参加。
スタッフからの申し送りや入所者の健康状態などの情報共有を行います。
午前中は、ケアプランの作成や申請書類などの作成といった事務仕事を行います。
12時になると、スタッフと協力して入所者の食事介助を行いながら昼食。
午後は、入所者の部屋でモニタリングを実施した後に、レクリエーションなどを行うこともあります。
15時ごろになると、看護師や介護職の担当者を交えながらサービス担当者会議を行います。
サービス担当者会議では、利用者さんとそのご家族、管理者などが参加して意見交換してサービス内容の見直し・変更について協議します。
その後、ケアプランの見直しなど事務処理を行い、17時頃にミーティングを行った後に終業です。
施設ケアマネの兼務は条件次第
各施設により、兼務は現在の業務に支障が出るなら行えません。
それに加えて施設ごとに条件があります。
老健での兼務について
老健での施設ケアマネジャーは、ケアマネジャーの業務に支障がない場合のみ他の職務に従事することができます。
この場合、兼務を行うケアマネジャーは配置基準を満たすことが前提で、兼務を行う他の職務の常勤換算上も勤務時間合わせて算入する必要があります。
ただし、居宅ケアマネジャーと老健施設のケアマネジャーの兼務は基本認められていませんが、増員に係る非常勤のケアマネジャーのみ認められることもあります。
特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)での兼務
利用者の処遇に支障がない場合は、同一敷地内で他の職務を兼務することが可能です。
兼務する業務が、施設ケアマネと同時並行的に行えない場合は兼務を行えません
グループホームの兼務について
グループホームの施設ケアマネジャーは、施設内の他の職務なら兼務可能となっています。
同一法人の複数施設で兼務する場合は、勤務時間数の合計がケアマネジャーの勤務時間数内である必要があります。
施設ケアマネとしてのやりがい
居宅ケアマネと施設ケアマネの大きな違いのひとつが、利用者さんが近くで生活しているので、日常の様子を見ながら、最適なケアプランを作成できるということです。
常に利用者さんと関わっているからこそ気付けることがあり、必要な時に直接ご本人からお話を伺うことができるからこそ、利用者さんの望む生活を支援することができるのです。
これは施設ケアマネならではのやりがいだと言えるでしょう。
その他にも、「様々な職種の方と関わり、多くを吸収できた」「多くの利用者さんのケアプランに対応しなければいけないので、業務を効率的にこなせるようになった」といった声も聞かれます。
施設ケアマネの仕事は苦労が大きい分、乗り越えた先には大きな達成感やりがいを感じられる仕事です。人それぞれ、何をやりがいと感じるかは異なりますが、あなたなりのやりがいをぜひ見つけてください。
施設ケアマネに向いている人の特徴
施設ケアマネが向いている方の特徴をご紹介します。
- 相手の立場になって会話ができる方
- 限られた時間で複数の業務を行える方
- 相手のことを考え行動できる方
- ケアマネとして成長していきたい方
施設ケアマネは、一人ではなく他のスタッフとチームで仕事を行っていきます。
そしてチームで円滑な業務を行うには、相手のことを考えて、相手の立場になって会話がする力が必要です。
自信がなくても、まずは相手の話を親身に聞くことが大切です。
また、複数の業務を並行して進めていくため、タイムマネジメントが得意な方が向いているといえるでしょう。苦手な場合はまず仕事に優先順位をつけ、限られた時間を上手く利用して複数の業務をこなせるように訓練すると良いでしょう。
施設ケアマネを目指す方へ
施設ケアマネジャーは、施設内の様々な職種と連携をとりながら業務を進める重要な役割を担っています。施設ケアマネとしての経験が無い場合、その役割へのプレッシャーや大量のケアプラン作成、介護業務との兼務に不安を感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、慣れてくれば、徐々に効率的な対応法も身にくので心配はいりません。介護現場に直結し、利用者さんと近い距離で関われる施設ケアマネにぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。