転職者の中には「介護の仕事をするのが初めてです」という方も少なくありません。未経験の方が介護の仕事を選ぶ際、どのようなことを考え、どのような基準で事業所選びをするのでしょうか。実際に異分野から介護業界に転職した方にインタビューを行い、未経験者向けの採用PRの際のポイントを考えたいと思います。
目次
他業界・他業種から見た介護業界の強み
数ある仕事の中で、なぜ介護業界に目を向けたのでしょうか。介護業界に入った理由から介護業界の強みを探っていきましょう。
「介護の仕事は未経験でも始めやすい」というイメージ
「前職は介護業界とは全く違う業界で働いていて、利益の為なら何でもやる!利益優先でという感じで、残業や休日出勤も多く、バリバリやってきましたが、利益追及だけじゃない仕事をしたくて。介護の仕事は未経験でも始めやすそうな印象だったので、介護職を選びました」
(40代 男性 特別養護老人ホーム勤務)
積極的な採用活動をしているイメージの強い介護業界は、未経験者にとって「始めやすそう」という印象が強くあります。今回インタビューを行った中でも、「未経験でも始めやすそう」と思って選んでいる方が多くいました。異業種・異業界から仕事を探す際に、「転職ハードルの低さ」は、アドバンテージになりうるのです。
求人票や自社のHPなどで「未経験歓迎」と窓口を広く広報しつつ、「入社時にサポート研修があります」、「介護を1から教えるプログラムがあります」といったメッセージを出すなど、未経験でも働きやすい工夫や、手厚いサポートがある事を伝えましょう。「この施設なら未経験でも働けるかも?!」と思う取っ掛りをつくり、応募につなげていく事が必要です。
「条件に合わせて、柔軟に働くことができそう」
「前職は介護のかの字もないところで働いていました。私には子供がいて、地元に帰ってきて子供を育てながら、同じ業界・条件で務め先を探すとなると、生活できる給与水準をクリアできるお店がなくて…。ハローワークで条件に合う形で正社員になれる仕事として紹介されたのが、介護職でした。」
(30代 女性 ショートステイ勤務)
年齢を重ねての転職は、育児や家族の介護など、家庭の状況に合わせながら、条件に見合う仕事を選ぶ方も多くいます。子育てをしながら柔軟に働ける・十分な生活費を稼げる・未経験で正社員可の求人が多いなどといった特徴のある介護職は、仕事を選ぶうえで大きなメリットになるのです。子育てと仕事の両立をし、活躍している社員のインタビューをHPや求人情報に掲載したり、働きやすさに関わるような制度を紹介したりと、生活と仕事の両立ができる事が分かるようなアピールを行うのも良いかもしれません。
他業界・他業種から転職する時の会社選びのポイント
介護業界未経験者が介護の仕事で会社を選ぶ際のポイントは、どのような所なのでしょうか。経験者と未経験者の気になる・チェックする点も比較しながら、未経験者にPRする際のポイントをご紹介します。
業態を選ぶ時は何を考えている?
経験者の場合(例)
- ユニット型で一人一人とじっくり関われるところで働きたい。
- 認知症の人に関われる施設で働きたいからグループホームを中心に探してみよう。
具体的に次に関わりたい業態や種別が決まっている場合が多い。
未経験者の場合(例)
- 介護の仕事をしたいのだけど、よいところはないかな?
- 老人保健施設って老人ホームと何が違うのかな?
「どんな業態で働きたいか」という具体的な希望はない場合が多く、業態それぞれの特徴や違いも詳しくは知らない事が多い。
未経験者の場合、最初から介護業界を検討してるわけではないため、介護の仕事の詳しい部分はよく知らない中で、仕事探しをすることになります。当然ながら「介護」と言っても、業種や業態によって様々な特徴や違いがあります。すでに介護の仕事をしている人にとっては「当たり前」と思えるような基本情報(訪問介護と入居介護の違い、通所介護の仕事の中身、施設形態の特徴など…)を丁寧に届けることも重要です。
自分たちの事業所が行うサービスはどのようなものであり、そこで具体的にどのような仕事をするのかといったことを、介護の仕事を全く知らない人の目線で分かりやすく届けることが重要です。そうすることで、未経験者の人も実際の働くイメージが深まることになります。
何をみて会社を選んでいるか(求人票の見方)
経験者の場合
- 条件面:基本給はいくらか/処遇改善加算はどこに含まれているのか/夜勤手当はいくらか/資格手当はあるのか
- 働く環境:人員配置はどうなっているのか/介護度はどれくらいなのか/研修や資格支援制度はあるのか
給与は手当や処遇改善加算等、詳細まで見ている事が多い。求人票から施設の規模、働き方を想像しながら見ている。
未経験者の場合
- 条件面:現在の給与程度もらえるところはあるか/家から近いか/福利厚生は充実しているか
- 働く環境:入社時にサポートや研修はあるか/やっていける環境・仕事内容なのか
条件面で検索し、自身の条件に合った会社に応募。どんな仕事をするのか不安な為手厚いフォローがあるかもキーポイント。
インタビューをしている中で、介護職経験者は、条件面でも働く環境でも、これまでの経験から自分自身が重視するポイントを持ち、細かく比較検討しています。一方で、未経験者の場合、具体的な仕事内容や手当の情報などを把握することが難しいため、比較検討の材料が少なく、「月給の額面が高い・家からの距離が一番近い」等の分かりやすい条件面を中心に検討する形になる事が多いと言えます。そういった条件面の勝負になってしまった場合は、最終的に最も良い条件の事業所以外は選ばれないということになってしまうので、しっかりと未経験の人も比較検討できる情報を届けていくことが重要です。
例えば、月給の総額だけを出すのでなく、年収モデルや昇給モデルを出し、中長期的な処遇アップを説明したり、育成制度・福利厚生施策なども未経験の人に分かりづらい表現になっていたりしないかなどのチェックが必要です。人員体制なども、そのまま伝えるだけでは経験者以外にはよく分からない情報ですが、「他と比較して多い配置になっていることで、このようなサービスができる/職員の負担が減る」などといったメリットまで加えて紹介することで、未経験者へのPRにつながります。その他にも未経験から介護業界に転職した職員のインタビューなどを活用することで、未経験の人でも働けるということを、しっかりPRすることが、条件のみ勝負から脱却するきっかけになるかもしれません。
他業界と戦える介護業界
未経験者は仕事を探す際、介護業界にこだわって探しているとも限りません。例えば近くのファミレス、コンビニなど他業界と比較検討している場合があります。「介護業界の中で自社はどうか?」という観点だけではなく、「他業界と比較した時に介護業界・自社はどのような位置にあるのか」という観点で考えることも重要になります。介護業界は「未経験でも入社しやすい」「子育て等に合わせて柔軟な働き方ができる」など他業界とも十分に戦っていける力があります。また、インタビューを行う中で他業界では「社会保険なし・賞与なし・月給20万なんていうのは普通」「手取り13万円はざらにある」等の意見があり、条件面でも他業界と比較し決して悪くはないように思います。「求職者がどのような業界・業種と比較検討しているか」ということを考え、「どのような内容を伝えると関心を持ってもらえるか」という視点から採用PRを考えていけば、
他の業界から介護業界へ関心を持ち、転職してくる可能性は大いにあるのです。
一方で経験をしていない人にとっては、介護の仕事は未知の領域であり、「どんな事をするのか?」「やっていけるのか?」等不安に思い、躊躇する事は大いにあります。未経験者が安心できるように、丁寧に対応すると同時に、入社後のフォロー・研修などの受け入れ体制を整え、未経験でも介護職として働ける環境を整備していきましょう!