認知症ケアの専門家「認知症ケア指導管理士」とは?取得方法やメリットを解説

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認知症ケア指導管理士 取得方法 メリット

介護職員に対する認知症ケアの専門性が求められるなか、2010年に新たに誕生した「認知症ケア指導管理士」。

本記事では、認知症ケア指導管理士の学習内容や受験資格を分かりやすく解説。合格率や難易度とともに、資格取得のメリットを紹介していきます。

認知症ケア指導管理士はどんな資格?

認知症ケア指導管理士 資格

認知症ケア指導管理士は、認知症ケアの専門性を高めることを目的とした資格です。認知症ケアのスキルアップが望めるだけでなく、スタッフの指導や人材育成、管理も行えるようになります。

超高齢化が進む現代社会では、高齢者の約4人に1人が認知症、またはその予備軍だとされています。今後その数はさらに増加し、2025年には総患者数が約700万人にのぼるとも言われているのです。

認知症の方が住み慣れた地域で自分らしく暮らしていくためには、環境整備が必要です。認知症ケア指導管理士は、認知症の方の暮らしを地域で支える社会的役割の一端を担っています。

初級と上級にわかれる認知症ケア指導管理士資格は、それぞれ試験内容や受験資格が異なります。上級資格を目指すことでより専門性が増し、職場でのキャリアアップにもつながると言えるでしょう。

認知症ケア指導管理士(初級)

「認知症ケアに関する基礎知識を身につけたい」という方におすすめなのが初級資格です。受験資格は設けられておらず、これから未経験で介護の仕事を始めようと考えている方も取得できます。また、自宅で認知症家族と暮らす方にも役立つ資格です。

上級認知症ケア指導管理士

上級認知症ケア指導管理士は、初級を取得してから1年以上経過した方が対象となります。医療や介護に関する国家資格を保有する方であれば、初級取得後1年未満でも受験可能。初級と併願で申し込むこともできます。

認定試験では、マークシートのほかに論述問題が出題されるのが特徴です。認知症ケアに関するより専門的な知識を身につけられるため、介護や医療の現場で活躍する方におすすめの資格であると言えるでしょう。

認知症ケア指導管理士から学べる内容

初級資格では以下の11科目が出題され、認知症への理解を深めながら、実践的なケアについて学ぶことができます。医療や介護の現場で働く方に向け、家族への支援科目が含まれていることもポイントです。

  • 認知症高齢者の現状
  • 認知症の医学的理解
  • 認知症の心理的理解
  • 認知症ケアの理念と認知症ケア指導管理士の役割
  • 認知症ケアの実践
  • 日常生活支援
  • 認知症への薬物療法
  • 認知症への非薬物療法
  • 家族への支援
  • 認知症ケアにおける社会資源
  • 応用問題(時事問題など)

さらに、上級資格では、より実践的な知識を身につけていきます。認知症ケアだけでなく、ケア全般に関する内容を学ぶため、介護士としてのスキルアップにつながる資格であると言えるでしょう。

認知症ケア指導管理士の受験資格は?

認知症ケア指導管理士初級は、どなたでも受験できる資格です。介護職の実務経験がなくても、認知症ケアの基礎知識を身につけられます。

一方、上級資格は初級の資格取得から1年以上経過した方が対象となります。ただし、以下にあげる国家資格または国家資格に準ずる資格保有者を保有している方は、1年以上経過していなくても上級資格を受験できます。

またこの対象の国家資格または国家資格に準ずる資格保有者の場合、初級資格の受験と併願で上級資格の受験を申し込むことも可能です。

対象資格
医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・はり師、きゅう師・柔道整復師・栄養士(管理栄養士含む)・精神保健福祉士

認知症ケア指導管理士の試験内容

認知症ケア指導管理士試験は、初級は年2回、上級は年1回実施されています。上級資格は二次試験まであるため、費用や日程についてよく確認しておきましょう。

認知症ケア指導管理士初級試験
試験日程・年2回(7月または12月)
試験会場・東京・大阪・仙台・名古屋・福岡・長崎・富山・秋田など
受験料・一般 7,500円
・学生    4,000円
出題方式・60問(マークシート方式)
上級認知症ケア指導管理士試験
試験日程・年1回
試験会場・東京・大阪・札幌・仙台・名古屋・福岡・富山など
受験料・一次試験 12,000円
・二次試験  6,000円
出題形式・一次試験 60問(マークシート方式)
・二次試験 論述形式

いずれも2年に1度の更新手続き(更新料5,000円)が必要です。

認知症ケア指導管理士の合格率や難易度は?

2010年から2019年までの初級受験者数は、32,682人です。そのうち、合格者は約19,282人。合格率は59.0%になると考えられます。また、2020年の実施状況を見ると、受験者の平均年齢は約45歳です。職種別では、介護福祉士の受験者数が全体の約4割を占めています。

第20回認知症ケア指導管理士(初級)(2020年度12月実施状況)
受験者数1,138人
合格者数763人
合格率67.0%
平均年齢44.8歳
(受験者の職業)
介護福祉士37.5%
医療職(看護師・准看護師等)19.7%
介護職(訪問介護員等)16.0%
医療職5.8%
介護支援専門員3.1%

上級認知症ケア指導管理士は、第一次試験と第二次試験で合格率が大きく異なります。2019年に実施された試験の、第一次合格率は7.0%。第二次試験の合格率は95.2%と、第一次試験をクリアすることが大きなポイントであることが分かります。介護士とともに、看護師の受験も多く見られる試験です。

第7回上級認知症ケア指導管理士(2019年度実施状況)
第一次試験・受験者数 328人
・合格者   23人
・合格率   7.0%
第二次試験・受験者数 42人
・合格者  40人
・合格率  95.2%
(受験者の職業)
看護師・准看護師31.1%
介護職25.7%
介護福祉士10.2%
介護支援専門員8.3%
社会福祉士・精神保健福祉士7.5%
理学療法士・作業療法士3.1%

認知症ケア指導管理士の勉強方法

初級の教材として販売されているのが、認知症ケア指導管理士試験公式テキストです。資格取得に関する学習は、これらの公式テキストを用いて独学で進めていくのが基本となります。

ひとりでの学習が不安な方には、資格取得キャリアカレッジが開催している講座もおすすめです。模擬試験を受けた後に回答解説があるため、自分が不得手とする分野を確認することができます。

認知症ケア指導管理士を取得するメリットは?

認知症ケア指導管理士 取得 メリット

認知症ケア指導管理士は、今後増加が見込まれる認知症の方を支える資格です。資格取得には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

専門知識を身につけスキルアップできる

介護施設や在宅で認知症ケアにあたる方にとって、認知症ケア指導管理士は心強い資格です。介護職の方であれば、認知症ケアの専門性を身につけた介護士として、スキルアップが可能となります。他のスタッフを指導する、チームリーダー的な役割を担うこともあるでしょう。

転職の際に有利になる

介護保険施設では、認知症の利用者さんに対して「認知症ケア加算」が算定されます。認知症ケアに力を入れている施設であるほど、スタッフを含めた体制づくりに取り組んでいるのです。

そのため、資格を保有していれば転職に有利に働くと考えられます。認知症ケアの専門性を活かしながら、活躍の場をより一層広げていくことができるでしょう。

「認知症ケア専門士」との違いとは?

認知症ケア専門士 違い

「認知症ケア指導管理士」は介護・医療現場で認知症ケアに携わる人の専門性向上を、「認知症ケア専門士」は認知症ケアの優れた学識や高度な技能・倫理観を備えた専門技術士の養成を目的としていることから、「認知症ケア専門士」の方が難易度が高いと言えます。

まず、認知症ケア専門士を受験するためには、認知症ケアの実務経験が3年以上必要です。さらに、合格後は5年ごとに講演会に参加するなどで必要単位を取得して更新手続きをしなくてはいけません。

一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する資格であり、2009年には「認知症ケア上級専門士」も誕生しています。筆記試験のほか論述試験や面接もあるため、上級資格も難易度は比較的高くなっていると考えられるでしょう。

認知症患者を支える認知症ケア指導管理士

認知症患者 認知症ケア 指導管理士

認知症ケア指導管理士は、「認知症ケアをこれから学びたい」「認知症家族の介護に役立てたい」という方におすすめの資格です。介護士としてスキルアップできるだけでなく、転職時にも役立つことも大きなポイント。認知症の高齢者をサポートしていきたいという方は、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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