介護支援専門員実務研修は、介護支援専門員の試験に合格した人が必ず受講しなければなりません。介護支援専門員になるためには、毎年10月に行われる介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、その後開催される実務研修において国が定めたカリキュラムを修了することが条件になります。
研修内容は、その名前のとおり介護支援専門員として実務が行えるように、制度の活用方法や面接技法、疾患に合わせたケアプランの作成方法など実践的な構成になっています。
今回の記事では、研修の主な内容を取り上げ、どれくらいの期間で受講費用がどのくらいかかるのか、また令和2年度の実務研修がコロナ禍でどうなったかについて紹介していきます。
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目次
なぜ実務研修が義務付けられているのか?
2000年の介護保険制度創設と同時に誕生した介護支援専門員は、介護を必要とする人やそのご家族の心身の状況から抱える課題を分析し、必要なサービスを受けられるようにマネジメントする役割を担っています。
実務研修が義務付けられている理由は、すべての介護支援専門員が一定水準以上の知識、技術を有し、全国で統一されたケアマネジメントを行う必要があるからです。2016年には高齢化が進行していくと同時に、介護保険を利用する高齢者も増加し続けることを見据えて、より質の高いマネジメントが実践できるように介護支援専門員実務研修の内容が根本から見直されました。
ケアマネ実務研修の概要
2016年に行われたカリキュラム改正の最も大きな変更点は、受講時間の増加です。実際、講義の合計時間は従前の44時間から約2倍の87時間に増加し、科目内容も一般的なケアプラン作成に関する講義から具体的な疾患別高齢者への個別事例を用いた演習形式に変更となりました。
そして、新たに3日間の現場実習として、要介護高齢者の同意のもとに行われる訪問面接やケアプランの作成が追加されました。次表は実務研修の主な内容と時間を示したものです。赤字で示す項目が改正によって新たに追加されました。
研修形式 | 主な内容 | 時間 |
講義形式 | ・介護保険制度の理念や現状について ・実習オリエンテーション ・ケアマネジメントに係る法令等の理解 ・地域包括ケアシステム及び社会資源 ・ケアマネジャーに必要な医療との連携及び多職種協働の意義 ・人格の尊重及び権利擁護並びに介護支援専門員の倫理 ・ケアマネジメントのプロセス | 16時間 |
講義・演習 | ・ケアマネジメントの基本 ・相談援助の専門職としての基本姿勢及び相談援助技術の基礎 ・ ケアマネジメントに必要な基礎知識及び技術 ・実習の振り返り ・利用者、多くの種類の専門職等への説明及び合意 ・介護支援専門員に求められるマネジメント ・サービス担当者会議の意義及び進め方(必要な基礎知識及び技術に追加) ・ケアマネジメントの展開 | 71時間 |
現場実習 | ・基礎技術の実習 | 3日間 |
合計時間(講義・演習) | 87時間 |
日程はどのくらいあるのか
実務研修受講試験は、毎年10月の第1もしくは第2日曜日に都道府県単位で全国一斉に行われ、12月の初旬に合否が発表されます。実務研修は、1月頃から各都道府県が指定した研修実施機関によって行われ、全16日間で87時間のプログラムを前期9日間と後期7日間に分けて開催する日程になっています。
前期と後期の間には3日間の現場実習が設定されており、あらかじめ同意を得た要介護高齢者宅を受講生が訪問してアセスメントを行ったり、ケアプランを立案したりする内容になっています。
1月から受講生が実務研修を受け、すべてのプログラムを修了して都道府県に登録し、介護支援専門員として活動できるのは7月頃になります。
費用はどのくらいかかるか
実務研修の費用は、都道府県によって異なります。2020年9月時点で公開されているデータによれば、テキスト代を含めた受講費用の平均は5万円前後です。ケアマネ試験(実務研修受講試験)にも費用が必要で、その金額は全国平均で1万円前後となっています。受験生としては、できるだけ少ない回数で試験にチャレンジして修了証明書を手にしたいところでしょう。
(参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター|令和2年度都道府県別担当課一覧)
いつまでに受けるのか
実務研修の日程は、実務研修受講試験の合格発表後に公表されますが、研修開始日や日程は都道府県によって異なります。受講期限は試験に合格してから1年以内に受けることが望ましいとされていますが、具体的な期限が設定されているわけではありません。
試験後1年以内の受講が望ましいとされているのは、2016年のカリキュラム見直しの際に介護支援専門員実務従事者基礎研修(実務経験1年未満対象)が実務研修の中に組み込まれたのが大きな理由です。実務研修の時間が87時間に増加したのも、これまでの実務研修44時間と基礎研修33時間が統合されたことによるものです。
受講後の流れ
87時間の実務研修を修了すると「修了証明書」が交付されます。その後受講者は都道府県に登録を行い、知事宛てに申請することで介護支援専門員証を手にすることができます。そこから介護支援専門員としての業務を行う流れになっているのです。
もしも転勤などの理由で受講した都道府県とは別の場所で介護支援専門員の業務を行う場合は、受講した都道府県の担当課に連絡をして、異動の手続きをとることが必要になります。介護支援専門員は各都道府県の知事からケアマネジメント業務を任されている立場なので、登録した都道府県を離れる場合には注意しましょう。
受けられないときはどうすればよいのか
実務研修の案内は受講試験合格書と一緒に送られてくるので、おおよそ1ヶ月前には開催日程を知ることになります。合格者が多い都道府県では、複数の日程や会場が設定されるので、それらのなかから都合のつく日程を選ぶことができます。
実務研修を受けられないときは、次年度への振替受講やほかの開催地域での受講といった救済措置が用意されている場合があるので、受講試験を受けた都道府県の担当課に相談することをおすすめします。
資格は5年の更新制
介護支援専門員の資格は、2006年から5年の更新制となりました。これにより、介護支援専門員資格を取得したならば5年以内に介護支援専門員更新研修を受講して登録内容を更新しなければなりません。もしも資格取得後5年の間に更新しないでいると介護支援専門員資格は失効し、業務に就くためには改めて54時間の研修を受け直す必要が生じます。
コロナ禍での実務研修はどうなっているの?
令和2年度第23回介護支援専門員実務研修受講試験は、新型コロナウイルスに対する感染予防措置をとった上で令和2年10月11日に実施されました。受験者数は約4万5千人程度で合格率は17.7%と、例年どおりの受験者数と合格率になっています。
実務研修については主任介護支援専門員研修や主任介護支援専門員更新研修などほかの専門研修と同じく、新型コロナウイルス感染対策について厚生労働省から文書が通知され、集団感染の予防を徹底した上で実施されました。
令和2年度の実施状況
京都府では、令和2年3月に第22回前期研修が一旦修了したあと4月から5月にかけて緊急事態宣言が発出され、予定していた現場実習と後期実務研修がすべて延期になりました。
8月には厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症に係る 介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第14報)」が発出され、令和2年度に限り都道府県の判断で実習免除ができるなど次のような緩和要件が示されました。
(実習免除となる要件)
- WEBでの講義形式で対応可能
- アセスメントからモニタリングまで一連のプロセスについて再確認及び定着を図るためのレポート等の提出
- 実践的な内容になるように、ロールプレイをとおして習得した事例にしたがったアセスメントに関するレポート提出
- 有資格者と居宅訪問への同行などOJT等3日間以上実施
これらの条件を満たせば、高齢者宅を訪問して行う実習が免除されました。京都府では6月から開催予定であった後期演習が10月に延期され、受講生が修了証明書を受け取ったのは12月後半となりました。
タイムリーに情報を得ることが大事
令和3年度の介護支援専門員実務研修受講試験は、令和3年10月10日に実施されます。例年どおりとすれば12月に合格発表と実務研修の案内が行われるので、定期的に厚生労働省や各都道府県の高齢者福祉担当課のホームページを確認することをおすすめします。
介護支援専門員を目指す人が交流しあうことを目的として運営されているホームページでは、先輩介護支援専門員からのアドバイスや役立つ情報が得られます。情報を得る機会のひとつとして利用してみましょう。
ケアマネ実務研修で得たものを現場で活かそう
介護支援専門員になるためには、介護支援専門員実務者試験に合格したあと、演習や実習で構成された実務研修を受けなければなりません。
もしも指定された実務研修の日程では都合がつかない場合や、急な体調不良により出席できなかった場合は、受講試験を受けた都道府県の担当課に直接相談することが大事です。
令和2年度はコロナの影響により、日時の延期や会場が変更になったところもありましたので、受講する人はこまめな情報収集を心がけましょう。
介護支援専門員にとって実務研修は終わりではなくスタートであり、身につけた知識を現場で活かすためには、常にスキルを磨くことが求められています。