訪問介護事業所ってどんなところ?仕事内容とは?

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訪問介護事業所とは

訪問介護事業所の役割

ヘルパーステーションとも呼ばれることもある訪問介護事業所では、事業所に所属している訪問介護員(ホームヘルパー)が要支援1・2、要介護1~5の要介護認定を受けている高齢者の自宅を訪問して介護サービスを提供しています。利用者さんが、自宅で可能なかぎり自立した生活を送れるように支援することが、訪問介護事業所の役割です。

訪問介護員(ホームヘルパー)の行う介護サービスは大きく分けて「身体介護」と「生活援助」のふたつです。「身体介護」では食事や排泄、入浴の介助を行います。他には、着替えや移乗介助、体位変換、散歩の補助、口腔ケアなども行います。「生活援助」では、調理や食事の配膳、自宅内で普段の生活において利用する部屋の掃除や整理整頓や、洗濯、ゴミ出し、食料品や日用品などの買い物代行、服の補修など、ご利用者の身の回りにおける家事の支援を行います。

このほか、介護保険タクシーを利用して外出の介助を行います。具体的には、病院への通院や公的機関、銀行などの金融機関へ手続きに行く場合、日常生活で必要なものを買い物に行く場合の、車での送迎や乗り降りの介助です

訪問介護員(ホームヘルパー)になるためには、介護福祉士、介護員養成研修修了者、介護職員初任者研修修了者などを保持しておく必要があります。無資格では基本的には訪問介護の仕事をすることはできません。

訪問介護事業所によるサービス提供までの流れ

利用者さんへ訪問介護サービスを提供するには、訪問介護事業所がケアプランに沿ったサービスの依頼を受けることから始まります。ケアプランは同じ在宅サービスの事業所である居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのケアマネジャーなどが作成します。このケアプランについては利用者さん本人でも作成を行うことができます。

依頼を受けた訪問介護事業所のサービス担当責任者は利用者さんの自宅を訪問し、依頼に基づいたサービス内容の説明をします。説明した内容に同意を得ることができれば、利用者さんや関係する事業所などが集まり会議をして訪問介護計画書を作成します。前述の同意とは別に、上記で作成した訪問介護計画書に同意をもらったうえでサービスの提供を行います。

尚、上記の居宅介護支援事業所は、介護を必要としている人がそれぞれに合った支援を受けられるように、「要介護認定」の申請代行やケアプランの作成など、介護保険に関する手続きを要介護者に代わって行う介護支援専門員(ケアマネジャー)が」所属する事業所です。介護サービスを提供する訪問介護事業所とは利用者さんを支援する役割と仕事内容が異なります。

訪問介護事業所の特徴

訪問介護事業所の特徴は大きく分けると3つあります。

一つ目は運営している主体の約7割が営利法人であるという点です。老人福祉施設と比較するとその違いがよくわかります。老人福祉施設を運営しているのは社会福祉法人が7割を超えており、サービスを提供している主体が異なっています。

二つ目の特徴は雇用形態です。老人福祉施設などの施設系の介護事業所では約7割が正規職員であるのに対して、訪問介護員の場合は半数以上が非正規社員となっています。

三つ目は事業所が属する法人が別のサービスを提供している割合が高いという点です。
訪問介護事業所を運営する法人の61.8%は「居宅介護支援・介護予防支援」を提供しており、次いで「通所介護・通所リハビリテーション」が 43.7%となっています。

さらに、同一敷地内または隣接地に併設している割合は「居宅介護支援・介護予防支援」が35.8%、「通所介護・通所リハビリテーション」が 24.3%となっています。

訪問介護以外の訪問サービス

訪問入浴介護

サービスを利用できる方:要支援1・2、要介護1~5の高齢者

デイサービスの利用が困難な方や、浴室の環境や心身の状態によって入浴が難しい利用者さんの自宅へ入浴車などで浴槽をもち込み、入浴の介助をします。

訪問看護

サービスを利用できる方:要支援1・2、要介護1~5の高齢者

医師の指示のもとに療養上の世話やアドバイスを、医療職(看護師や保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)が利用者さんの自宅を訪問し行います。

訪問リハビリテーション

サービスを利用できる方:要支援1・2、要介護1~5の高齢者

医師の指示のもとに、リハビリ職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)が利用者さんの自宅を訪問して生活するうえでの困りごとに対応したリハビリテーションの実施や、自宅の環境整備などへのアドバイスを行います。

居宅療養管理指導

サービスを利用できる方:要支援1・2、要介護1~5の高齢者

利用者さんの自宅に医師や歯科医師、薬剤師、栄養士などが訪問をし、自宅療養する上で必要な指導や管理を行います。

夜間対応型訪問介護

サービスを利用できる方:要介護1~5の高齢者

「定期巡回」「オペレーションサービス」「随時訪問」の3つからなるサービス(地域密着型サービス)を提供します。定期巡回とは、午後10時~翌朝6時を含む決まった時間にホームヘルパーが訪問することを言います。オペレーションサービスは利用者さんが体調に不安があるときの通報に応じるサービス、随時訪問は通報を受けた緊急時に訪問するサービスのことです。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

サービスを利用できる方:要介護1~5の高齢者

利用者さんの自宅へ24時間体制で、訪問介護と訪問看護が連携しながら定期的な巡回と必要に応じた訪問を行います。このサービスは地域密着型サービスとなっています。

訪問介護事業所の仕事内容

訪問介護事業所での主な仕事内容

訪問介護事業所は「身体介護」「生活支援」「外出介助」といった支援を行っています。これらのほかに、訪問介護計画書の作成、居宅介護支援事業者や関係する介護サービス事業者との連絡と調整、サービス担当者会議への参加といった内容の仕事も行います。

訪問介護員の場合の一日の流れ

訪問介護員の一日(例)

09:00 出社
09:00~9:20 ミーティング
09:20~10:00 訪問先である利用者さんの自宅へ移動
10:00~11:00 利用者さんの自宅にて訪問介護サービスの提供
11:00~11:30 別の訪問先である利用者さんの自宅へ移動
11:30~12:30 利用者さんの自宅にて訪問介護サービスの提供
12:30~13:30 昼休憩
13:30~14:00 訪問先である利用者さんの自宅へ移動
14:00~15:00 利用者さんの自宅にて訪問介護サービスの提供
15:00~15:30 別の訪問先である利用者さんの自宅へ移動
15:30~16:30 利用者さんの自宅にて訪問介護サービスの提供
16:30~17:00 事務所へ移動
17:00~18:00 事務所にて報告書の作成などの事務作業
18:00 帰宅

訪問介護員の勤務は上記の例で紹介したように日勤帯での勤務が一般的です。訪問介護で行う仕事内容は上記でもいくつか紹介しましたが以下のようになります。

  • 入浴や排泄の介助をはじめ、歩行や着替え、移乗など身体介護
  • 利用者さんの自宅の掃除や衣類などの洗濯、調理、食事の配膳、ゴミ出し、布団干し、日用品の買い物、薬の受取りなどの生活援助
  • 外出の支援

訪問介護員は利用者さんが自宅においてできるだけ自立した生活を送ることができるようサポートを行います。ただし、提供するサービスの内容はあらかじめ決められています。また、利用者さんへのケアのほかに、介護記録など報告書を作成することや、重要な事柄をケアマネジャーに報告することも、訪問介護員の大切な仕事です。

訪問介護で行えないこと

訪問介護ではできないことがいくつかあるので注意が必要です。大きく分けると、「ホームヘルパーが行わなくても利用者さんの生活に差し支えのないこと」「家族や同居人などの利用者さん以外の方へのサービス」「介護保険において対象外となる外出」「医療行為」といったことです。下記に具体例を紹介するので参考にしてください。

ホームヘルパーが行わなくても利用者さんの生活に差し支えのないこと

  • 電気器具の修理
  • 家具の移動や修理
  • 窓のガラス拭き
  • 庭の草むしり
  • ペットの散歩など

医療行為

  • インスリンの注射
  • 経管栄養
  • 点滴
  • 摘便や床ずれの処置など

>>介護護福祉士ができる医療行為とは?爪切り、耳掃除は医療行為?

家族や同居人などの利用者さん以外の方へのサービス

  • 家族の分の食事を作る
  • 利用者さん以外の家族や同居人などの部屋を掃除する
  • 利用者さん家族の子供を世話するなど

介護保険において対象外となる外出

  • 日用品以外の買い物
  • 外食
  • 結婚式・法事・葬式・墓参りなど冠婚葬祭への出席
  • ドライブ・カラオケなど趣味や嗜好にかかわること
  • 地域行事への参加など

訪問介護事業所で活躍する人材

訪問介護で求められる職種

訪問介護事業所では管理者、サービス提供責任者、訪問介護員(ホームヘルパー)の3つの職種を、定められた人数で配置することが定められています。人員配置基準の詳細は以下のとおりです。

訪問介護員等

常勤換算で2.5以上

サービス提供責任者

利用者さんの人数が40名、またはその端数を増すごとに1人以上のサービス提供責任者を配置する。

管理者

常勤で専ら管理業務に従事するもの

気をつけたいのが上記にあげた職種の兼務についてです。サービス提供責任者と管理者は訪問介護員を兼務、あるいは、サービス提供責任者と管理者を兼務することがありますが、訪問介護員等・サービス提供責任者・管理者の3つを兼務することはできません。

訪問介護で求められる資格

訪問介護ではサービス提供責任者や訪問介護員をするうえで、次のような資格が必要とされます。

訪問介護員(ホームヘルパー)

  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 初任者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修過程修了者
  • 旧ホームヘルパー1級課程修了者
  • 旧ホームヘルパー2級課程修了者
  • 看護師・准看護師

サービス提供責任者

  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修課程修了者
  • 旧ホームヘルパー1級課程修了者
  • 実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級課程修了者)

訪問介護事業所で働くメリット

訪問介護では利用者さんの自宅に介護職員が一人で訪問してケアをすることから、困った時にすぐに相談できる人が側にいるわけではないなどの特有の大変さがあります。けれども、利用者さんと個別で深い関りを持ちながらその人らしい生活をするためのサポート・ケアを行うことができるので介護職員として大きなやりがいや達成感を得やすいと言えます。また、施設で働く介護職員とは異なる経験を得やすい仕事でもあります。他にも、訪問介護員は雇用の形態や求人情報が豊富なことから仕事を見つけやすいというメリットもあります。

訪問介護事業所で働くことで介護職としてキャリアアップを目指すことができる点もメリットのひとつと言えます。介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士の資格の取得を考えている方であれば働きながらそれらを目指すことができるのです。サービス提供責任者、ケアマネジャーへのキャリアアップも可能となっています。

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