老健で働く看護師に求められる資質とは?仕事内容や給料も紹介

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老健で働く看護師に求められる資質とは?仕事内容や給料も紹介

老健(介護老人保健施設)は、看護師が病棟勤務以外を希望する場合に選択できる職場のひとつです。老健にはどのような看護師が向いているのでしょうか。この記事では仕事内容や給料、老健で働くメリットなどについても紹介しますので、転職先のひとつとして老健を検討している方は参考にしてください。また、老健の求人を見つける方法についても紹介します。

老健とはどんな施設?

老健とは高齢者向けの介護施設のひとつで、正式には「介護老人保健施設」と呼ばれる施設です。入居者さんはそれぞれのケアプランに従ってリハビリを行い、在宅復帰を目指します。

看護師の配置基準

100人の入居者さんに対して常勤の医師を1名、常勤の看護職員又は介護職員を34名以上配置する基準となっています。うち看護師の割合は介護職員に対して2/7程度と決められており、100名の入居者さんの施設では看護師は9名くらいの配置となります。介護職員と看護職員の合計が入居者さんの1/3以上になるという決まりがあるので、医療面と介護面の両方で手厚い支援が期待できるのも老健の特徴といえるでしょう。

他の介護保険施設との違い

他の施設との一番の違いは終身ではなく在宅復帰を目指す一時的な入所施設であるという点です。状況によって延長も可能ですが基本的には入居期間は3ヶ月と定められています。

特養(特別養護老人ホーム)

より介護に特化した施設といえるでしょう。老健とは異なり、特養の医師は非常勤でも構いません。老健では要介護度1以上の方が入居対象者とされていますが、特養では要介護度3以上の方が対象となります。

介護医療院

2017年度末で廃止となった介護療養型医療施設に代わり、医療と介護の両方に対応した施設です。夜間も看護師が常駐するので、医療ニーズが高いと判断された方が入居します。老健ではリハビリを行って自宅療養に復帰させることを目的としていますが、介護医療院では長期入居となることが多く、施設内で看取りまで対応することが一般的です。

有料老人ホーム

老健や介護医療院は公的施設ですが、有料老人ホームは主に民間が運営している施設です。医師が在籍していないことも多く、医療を必要とする入居者さんは病院などの医療機関に通院したり、往診によって診療を受けたりします。施設によって住宅型、介護付きとコンセプトや提供するサービス内容が異なっており、求められるスタッフやスキルが異なります。

老健での看護師の仕事内容と役割

老健で勤務する看護師は、幅広い業務を担当します。看護師の仕事内容について見ていきましょう。

入居者さんの健康管理

利用者さんの健康管理は看護業務のひとつであり、看護師の担当です。バイタルサインをチェックするだけでなく、利用者さんとの会話を通じて「健康に生活できているか」、「十分な栄養を取れているか」を確認します。異常や不調が見られる場合は早めに医師に報告し、適切な治療が受けられるようにサポートすることも看護師の役割です。

褥瘡処置などの医療行為

長期入所している利用者さんのなかには、褥瘡(じょくそう)を生じている方もいるかもしれません。褥瘡処置などの医療行為は、医師の指示のもとで看護師が担当します。そのほかにも医療的配慮が必要な行為、例えば誤嚥(ごえん)の可能性がある利用者さんの食事介助などは、看護師が担当することが多い傾向にあります。

日常生活の介助

老健施設は介護やリハビリを行う場であるため、看護師も介護士などの介護職員と一緒に介護業務を行います。食事や入浴、排泄など日常生活の介助や、日常生活のなかで機能回復できるようにサポートすることも看護師の仕事です。

利用者さんの情報共有

利用者さんが一日も早く自宅療養に復帰するためには、身体状態や機能に関する情報をスタッフたちが把握し、適切なケアプランを立てて実行していくことが必要です。ほかの看護スタッフだけでなく介護職員や理学療法士、医師など関係するすべてのスタッフと利用者さんの情報を共有することも看護師に求められる仕事といえるでしょう。

利用者さんやご家族とのコミュニケーション

利用者さんにとって老健は生活の場です。居心地よく過ごしてもらうために和やかなコミュニケーションを取ることも、看護職・介護職ともに大切な仕事のひとつといえるでしょう。また、ご家族に利用者さんの状態を説明することも大切な業務です。看護師ならではの看護的かつ医学的知見をもとに、ご家族にわかりやすく説明しましょう。

看護師が老健で働くメリット

看護師の職場としては、老健などの介護施設以外にも病院やクリニックなどの医療機関もあります。そのなかで老健を選ぶことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのメリットについて見ていきましょう。

比較的穏やかで体力的な負担が少ない

老健には、いつ患者さんが急変するかわからない急性期病棟や24時間対応で患者さんを受け入れる救急医療センターのような忙しさがありません。老健は在宅復帰を目指す施設で基本的には重症患者さんがいないので、比較的穏やかに毎日の仕事を行えるでしょう。

また、医療機関とは違って介護を専門に行う介護職員が大勢いるため、体力的な負担が少ないことも老健のメリットです。夜勤はありますが、医療機関での夜勤と比べると仕事量が少なめで、働きやすいと感じる看護師も多いでしょう。

利用者さんとじっくり向きあえる

介護老人保健施設の平均在院日数は311日(平成25年)で、多くの利用者さんが長期にわたって滞在しています。看護師は利用者さんと時間をかけてじっくりと向き合えるので、看護や医療、介護によって利用者さんがどう変化していくのか見守ることができるでしょう。認定看護師や専門看護師の資格取得や更新のために看護研究をしている方にとっても、老健はメリットの多い職場といえます。

参考:厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」

病院に近い働き方の中で介護のスキルを身につけられる

医師や看護師が常勤する老健は、介護施設のなかでは比較的病院に近い施設です。今まで介護施設で働いたことがない看護師も、医療機関での経験を活かして働きやすい職場といえるでしょう。

また、医師が常駐しているので、医療的判断のプレッシャーが少ないという点もメリットです。例えば訪問看護の現場では、看護師が一人で利用者さんの居宅を訪問することも多く、看護師が医療的ケアをその場で判断しながら行うこともあります。医療機関で働いた経験が少ない看護師や、特定の診療科でしか経験のない看護師にとっては、判断に困ることもあるでしょう。

介護のスキルが身につく点も、老健で働くメリットです。ほかの介護施設で働くときや訪問看護を行うとき、また、療養型医療機関においても介護のスキルが求められているので、病院に近い働き方のなかで介護を習得できる老健は、看護師にとって優れた職場といえるでしょう。

老健看護師に向いている人とは

看護師としてのスキルを活かしながら介護スキルを習得できる老健は、介護に興味のある方に適した職場です。とりわけ次の3つの特性を持っている方に適した職場といえるでしょう。

高齢者とのコミュニケーションが得意な人

老健は高齢者施設であるがゆえに、高齢者と進んでコミュニケーションを取れることが必要とされています。普段から高齢者と話すことが好きな方、また高齢者とのコミュニケーションが得意な方に適した職場です。

チームとして目標を立てて働くことができる人

老健では看護師や准看護師といった看護スタッフだけでなく、介護職員や理学療法士などの看護以外を担当するスタッフも多く働いています。大勢のスタッフとそれぞれの立場を尊重しながら協力して働ける人が求められているといえるでしょう。

また、在宅復帰を目指している利用者さんが多いので、目標を立てて目標に向かって行動できることも望まれます。看護師には利用者さん一人ひとりの目標を把握すること、リハビリだけでなく日常生活を通して機能回復をサポートしていくことが求められるでしょう。

穏やかな性格の人

老健は利用者さんにとっては生活の場です。看護師がテキパキと業務をこなすことはよいことではありますが、あまりにもせかせかしている印象を与えると、利用者さんに余計な心労をかけることもあるでしょう。性格が穏やかで、利用者さんがゆったりとくつろいだ気持ちで過ごせるようにサポートできる方が望ましいといえます。

また、利用者さんは機能回復が必要な方ばかりであるため同じ失敗を繰り返すことも多く、老健の雰囲気に慣れないうちの看護師はもどかしく感じることもあるかもしれません。しかし、その度に看護師が強い言葉を投げかけたり厳しい態度で応じたりすると、利用者さんの意欲を削いでしまいます。穏やかに優しく見守ること、必要に応じて手助けをすることも、老健に働く看護師に求められているといえるでしょう。

老健看護師の給料

日本看護協会の調査によれば、老健看護師の平均基本給は244,379円で、手当などを含む給与総月給は317,642円です。介護業務が求められる職場における看護師の平均基本給で比較すると、訪問看護ステーション(251,353円)より低く介護老人福祉施設(235,646円)より高くなっています。医療的な判断が求められる比率で給与が変わるといえるでしょう。
しかし、給与総月給で比較すると訪問看護ステーション(317,406円)より高くなっており、夜勤手当が加算された結果といえます。

老健看護師の給料は、夜勤があるかどうかで変わります。高給与を望む場合は、夜勤をどの程度シフトに組み込めるかについても尋ねてみましょう。

参考:日本看護協会「介護施設等における看護職員に求められる役割とその体制のあり方に関する調査研究事業報告書」

老健で働く看護師の求人はどう見つける?

看護スキルだけでなく介護スキルも習得できる老健は、将来の選択肢を増やしたい看護師にとってもよい職場といえるでしょう。では、老健の求人はどのように見つけることができるのでしょうか。

気になる職場の公式サイトからチェックする

働きたい老健が決まっている場合は、施設の公式サイトをチェックしてみましょう。老健のなかには公式サイトで求人募集をしている施設もあります。給料や休日などの勤務条件、福利厚生などについても記載されていることがあるので、まずは気になる施設のサイトにアクセスしてみてください。

看護・介護系の求人サイトを活用する

働きたい施設が絞り込めていない場合には、看護系あるいは介護系の求人サイトで調べてみるとよいでしょう。また、働きたい施設の公式サイトが求人情報を公開していない場合にも、求人サイトの利用を検討できます。

求人サイトでは自分で条件を設定して転職先候補を選んでいくため、自分のペースで転職活動を進めていけるでしょう。もちろん勤務条件の交渉や職場の詳細については、転職希望者自身が行う必要があります。面接時に気になることを尋ねたり、面接前に職場を訪問してみたりして、勤務条件や職場の雰囲気について調べておきましょう。

看護・介護系の求人エージェントサービスを活用する

求人サイトのなかには、登録制のエージェントサービスを提供しているものもあります。エージェントサービスとは転職希望者に専属のエージェントがつくサービスのことで、最初に転職先に関する希望を伝えると、エージェントが条件に合う職場を紹介してくれます。

ただし、エージェントのペースで転職活動が進むことも多いので、ゆっくりと自分のペースで活動を進めていきたい方には不向きかもしれません。また、エージェントからの電話やメールが多く、対応が大変と感じるケースもあるでしょう。しかし、勤務条件の交渉をエージェントが代わりにしてくれたり、職場の詳細情報を収集してくれたりするというメリットもあります。

老健看護師としての働き方も検討してみよう

高齢者とじっくりと関わることができる老健看護師。介護から医療、看護の幅広い仕事に対応するため、スキルアップも図れる職場です。ただし、医療機関と比べると看護業務は少ないため、看護学生から看護師になったばかりの新人よりは、ある程度看護の経験がある方におすすめといえるでしょう。

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