これから介護業界で働きたいと考えて求人情報を検索していると、「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」「グループホーム」「デイサービス」など、様々な施設形態があって、どれを選べばよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。
介護業界と一口に言っても施設によって働き方は大きく違ってきます。そこで、本記事では主な介護施設7つにおける特徴や仕事をするうえでのメリット、デメリットなどを解説し、どのような働き方ができるかを具体的に紹介します。自分の目指す介護職や働き方に合う施設をじっくり考えてみましょう。
目次
介護職として働くなら施設・サービスごとの違いを知っておこう
介護業界では深刻な人材不足に悩まされています。そのため未経験からでもやる気があれば歓迎してくれる施設も多く、比較的仕事を見つけやすい状況にあります。
しかし、施設やサービス内容の違いを理解せずに勤務先を選んでしまい、就職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することのないよう、あらかじめ施設の違いを知って、自分にあった就職先を探すことが重要です。
施設・サービス形態別のメリットデメリット
ここでは、7種類の介護施設のメリットやデメリットを詳しく解説します。どの施設が自分にあっているのか、それぞれの特徴を理解しながらじっくり探ってみましょう。
なお、各施設で説明する「平均給与」は、厚生労働省による令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果および令和元年度介護事業経営概況調査結果における各サービス別総括表を参考にしています。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、通称「特養(とくよう)」と呼ばれ、社会福祉法人などが運営する公的な介護施設です。原則として65歳以上で要介護認定3以上の比較的高い介護を要する方が入居しています。
給与
特養の平均給与は有資格者で約35万円、無資格者で約30万円と介護職の平均を上回る高い給与水準となっている。
メリット
- 給与水準が高く福利厚生も整った施設が多いため、勤続年数が長い職員も多く、経験を積んだベテラン職員から知識やスキルを習得できる。
- 介護度の高い利用者さんが多いため、身体介護のスキルが身に付く。
デメリット
- 排泄や入浴など体力を使う介助が多く、体への負担が大きい。
- 規模が大きく利用者さんの多い施設では、ケアが画一的でルーティーンワークになりやすい
介護老人保健施設
通称「老健(ろうけん)」と呼ばれる介護老人保健施設は、病院と在宅の中間施設と位置付けられ、原則として在宅復帰に向けてリハビリの機能を重視した施設です。
給与
老健の平均給与は有資格者で約34万円、無資格者は約28万円となっており、特養よりは低いものの介護施設全体では比較的高くなっている。
メリット
- 要介護度の低い利用者さんも多く、比較的介護スタッフの身体的な負担が軽い傾向にある。
- リハビリや療養といった医療ニーズが高く、医師や看護師、理学療法士などの専門職と連携を取ることが多いため、勤務していく中で医療知識を学べる。
- 24時間看護師が配置されているため日勤だけでなく夜勤も安心して勤務できる。
- 他の施設にはない、「利用者さんを元気にする」という充実感や達成感が得られる。
デメリット
- 基本的に在宅復帰を目指す施設なので、利用者さんの入れ替わりが激しいため、利用者さんが変わるたびに信頼関係を構築しなければならない
有料老人ホーム
有料老人ホームは主に民間企業が運営する施設で、利用者さんの要介護度や提供するサービス、運営方針、入居費用など施設によって異なる特徴を持っています。「介護付き」「住宅型」「健康型」の3つの類型があり、高級な施設ほど介護スキルだけでなく高い接遇スキルが求められる傾向にあります。
給与
有料老人ホームを含む特定施設入居者生活介護事業所の平均給与は有資格者で約32万円、無資格者で約28万円となっているが、施設によってかなりの幅がある。
メリット
- 住宅型、健康型の有料老人ホームなどは介護度が低い方が多いため、体力が必要で身体に負担がかかる業務が少ない。
- 高級有料老人ホームなどでは、より質の高い接遇マナーが求められるため、介護スキル以外の接遇スキルも身に付く。
デメリット
- 住宅型や健康型では身体介護の負担が少ない反面、介護スキルを学ぶ機会が少なく、介護職員としてのスキルアップを見込めない場合がある。
- 一部の有料老人ホームでは、利益を重視したサービス業の要素が強い場合もある。
グループホーム
グループホームは要支援2または要介護1以上で、軽度~中等度の認知症高齢者を対象とした施設で、施設規模が小さく、1ユニット5~9名で、原則として1事業所あたり2ユニットまでとなっています。
認知症があっても介護スタッフのサポートを受けながら安心して共同生活を送ることを目的とし、排泄や入浴、食事介助だけではなく、食事の準備や洗濯、清掃といった家事全般も業務に含まれるのが特徴です。
給与
スタッフの平均給与は有資格者で約29万円、無資格者で約26万円となっている。
メリット
- 利用者さんの共同生活をサポートするため、家庭的な雰囲気の中で一人ひとり寄り添ったケアができる。
- 認知症を患っているものの身体的には自立している方も多いため、比較的身体介護が少なく肉体的な負担が少ない。
デメリット
- 業務内容に炊事洗濯などの家事業務が含まれるため、家事が苦手な人にとって働きにくい。
- 職員の数も少ないため、一人夜勤になる施設が多い。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は「サ高住」とも呼ばれる高齢者向けの賃貸住宅です。
バリアフリー構造の住宅であることと、安否確認及び生活相談が提供されていることが運営の条件となっており、介護サービスの提供は義務付けられていません。利用者さんに介護が必要になった場合は、外部のサービスを手配します。
日常生活の見守りや、介助が必要な場合の外部サービスの調整、買い物の代行や外出のサポート等のほか、敷地内に訪問事業所やデイサービスを併設している場合は、そちらの業務を兼務することが多いです。。
なお、特定施設入居者生活介護の認可を受けているサ高住では、介護付き有料老人ホームと同様に介護サービスが提供されます。
給与
併設しているサービス事業所の給与水準に準じている。特定施設入居者生活介護の認可を受けている場合は、有料老人ホームに準じている。
メリット
- 比較的介護度の低い利用者さんが多いので、他の施設に比べて体力が必要な作業は少ない傾向にある。
- 生活相談や外部サービスとの連携などを行うため、現場の介護職とは異なるスキルが身に付く。
デメリット
- 介護職として身体介助のスキルを学びたいと考えているにとって、サ高住は介護度の低い利用者さんが多く介護業務が少ないため、物足りないと感じる場合がある。
デイサービスとデイケア
デイサービスとデイケアは利用者さんが通いでサービスを受ける施設です。基本的には日勤のみの勤務で、自立した利用者さんも多く介護の身体的負担が軽いことから、就職先として人気があります。尚、デイケアは医師の常駐が義務付けられており、医師の指示のもとに行われるリハビリ中心のサービスを提供する施設です。
デイサービスにおいては「お泊りデイ」として宿泊サービスを提供する施設も増えています。
給与
デイサービスの平均給与は有資格者で約28万円、無資格者では約25万円。デイケアの場合は有資格者で約31万円、無資格者では約27万円となってる。
メリット
- 基本的には日勤のみで残業が少なく、日曜や年末年始が休みなので仕事とプライベートの調和がとりやすい。
デメリット
- 短時間で多くの利用者さんが入れ替わるため、一人ひとりの利用者さんにしっかり時間をかけることは難しく、利用者さんとじっくり向き合いたいという方にとっては物足りないと感じるかもしれない。
- 利用者さんの送迎業務が含まれる場合もあるので、車の運転が苦手な方にとってはデメリットとなる場合もある。
訪問介護
訪問介護とは介護を必要とする高齢者のご自宅を訪問し、日常生活のサポートを行う仕事です。排泄、食事、着替えなどの身体に直接触れる身体介護から、炊事洗濯などの家事業務、生活相談を含めた精神面のサポートまで行います。
訪問介護においてサービスを提供する場合は介護職員初任者研修などの資格が必要です。基本的には特定の場所には出勤せず、直行直帰する形態の事業所が多いです。
給与
訪問介護は有資格者のみが提供可能で、平均給与は約30万円となっている。
メリット
- 利用者さんと1対1の仕事になるため、一人ひとりにじっくり向きあった介護が可能
- 一人で業務にあたるため、施設勤務と比較して人間関係の悩みが少ない
デメリット
- 突発的な事態にも一人で対応しなければいけない
- 非常勤雇用が多いので常勤雇用を希望する人には不向き
施設・サービスを選ぶ際のポイント
自分にどんな施設が合っているのかは、今の生活様式や将来への希望などから考えるのがおすすめです。たとえば、今後介護職として経験を積んで資格を取り、ケアマネジャーや施設責任者などキャリアを志向するならば、生活援助から身体介助まで幅広い介護を経験できる特養や介護付き有料老人ホームなどが適しています。
一方、家庭があって小さい子どもを抱えるお母さんならば、日勤だけの訪問介護やデイサービス、デイケアがよいかもしれません。いずれキャリアアップしたいと考えているのであれば、複数の施設を運営する大手の企業を選び、同じ企業内でデイサービスから他の施設へ異動するといった働き方も一つの選択肢です。
いずれにしても、施設のメリットやデメリットを正しく捉え、自分の能力や希望に合わせた職場を選ぶことは、より長く務めるためにも非常に重要な要素だといえます。
自分に合った働きやすい介護施設と出会うために
介護施設と一口に言っても様々な種類の施設が存在しているため、求められるスキルや働き方にも違いがあります。介護業界は職場を選ぶことができる業界だからこそ、条件だけで選んでしまわず、自分がどのように働きたいのか、今後どうなりたいのかを考え、本当に自分に合った施設かどうかを判断することが重要です。施設の違いを理解し、ぜひ理想の職場を見つけてください。