介護の現場で、認知症の利用者さんとそのご家族により良いサービスを提供するために必要となるのが認知症介護実践者研修です。同じ職場の先輩や上司から難しい研修だと聞くことがあるかもしれませんが、将来、認知症のプロフェッショナルを目指したいと考えている方であれば、欠かすことのできない資格です。
ここでは資格取得の難易度や、取得メリットなど、仕事のやりがいにもつながる認知症介護実践者研修について詳しく解説していきます。スキルアップ、キャリアアップを目指す方は、是非参考にしてみてください。
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目次
認知症介護実践者研修とは
認知症介護実践者研修とは、認知症高齢者により質の高いケアを提供できる専門職員を養成することを目的とした研修です。対象となるのは、すでに施設や事業所など介護の現場で介護職員として仕事をしている方です。
知識や技術を習得するための実践的な研修となるため、認知症ケアの経験がある、認知症介護のプロフェッショナルとして働きたいという方にとっては、取得しておきたい資格のひとつといえます。
認知症ケアには、レベルに合わせて「認知症介護基礎研修」→「認知症介護実践者研修」→「認知症介護実践者リーダー研修」→「認知症介護指導者研修」と4つの研修体系が用意されています。
研修を実施しているのは各都道府県や政令指定都市です。知名度の高い認知症ケア専門士と比較すると、より実践的な研修となります。認知症介護実践者研修は、認知症専門ケア加算の対象となるため事業所側からも歓迎され、転職にも有利な資格といえるでしょう。
認知症介護実践者研修の取得は難しい?資格取得の難易度
認知症介護実践者研修は試験などはなく、研修の全課程を修了すれば資格を取得することができるため、決して難しいものではありません。試験が苦手な方でも真面目に取り組めば資格取得が可能です。
しかし、受講・修了するには、場合によっては難しいと感じる点がいくつかありますのでご紹介します。
- 自治体にもよりますが、受講回数が年に数回しかなくスケジュールの調整が難しい。
- 募集定員に対し受講希望者が多く、選考や抽選になるためスケジュールが合っても、受講そのものができない可能性がある点で難しい。
- 修了試験はないが、報告書として実習レポートなどの提出義務があり、仕事の合間にレポートをまとめるのが難しい。
- 働きながら講義を受講しなければならない点が難しい。
- 専門性が高い講義の内容が難しい。
認知症介護実践者研修を取得するメリット
認知症介護実践者研修は、施設からも歓迎され、転職にも有利な資格ですが、難易度がやや高めです。では、具体的にこの研修を取得することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
認知障害の特徴を知ることで適切なケアができる
認知症のアセスメント、ケアの方法、ケアプラン作成の方法など認知障害の特徴をより深く知り、実践的な知識と技術を身につけることができます。これまでの経験や勘だけに頼らず、理論を理解することで、より適切なケアができるようになります。
転職に有利
認知症介護実践者研修は、民間の認知症資格ではなく国で指定された研修のため履歴書の資格欄に堂々と記載できます。
認知症に関わる施設や事業所では、研修修了者を計画作成担当者や施設・事業所の管理者として配置する義務があります。そのため、求人情報の資格要件に挙げていることも多く、転職に有利です。
グループホームや介護保険施設などでは、研修を修了した職員がいると、認知症専門ケア加算をとることができます。そのため、介護職員のなかでも、より施設側から求められる人材といえます。
国の指定研修なので職場でも評価されやすい
認知症介護実践者研修は国の指定する研修ということもあり、職場での評価は高くなります。評価の現れとして給与のアップがあります。研修を修了しただけで必ずしも大幅に給与が増えるわけではありませんが、施設によって3,000円~20,000円程度の手当がつくところもあるようです。また、計画作成担当者や管理者になることで、さらなる給与アップが期待できます。
認知症介護のエキスパートになれる
認知症介護実践者研修の次には認知症介護実践リーダー研修、その先には認知症介護指導者研修があり、ステップアップが可能です。
認知症介護実践者研修で習得した知識と技術をベースに、さらなる実務経験を積み重ねていくことが、リーダー、介護指導者へとキャリアアップしていくための第一歩となります。
認知症介護指導者になれば、認知症介護基礎研修や認知症介護実践者研修の企画・立案、講師として指導することもできます。
認知症介護実践者研修を受講するには
研修は各都道府県から指定や委託された機関が行うため、受講資格や受講費用などの受講内容はそれぞれ異なります。以下に概要をまとめましたが、詳しくは各都道府県のホームページから実地施設ごとに確認できますので、事前にチェックしておくようにしましょう。
認知症介護実践者研修の受講資格
東京都の場合、以下のすべての要件を満たしている方が受講対象となります。
- 概ね2年程度、認知症の方の介護に関する実務経験があること。
- 東京都内の介護保険施設・事業所(居宅介護支援事業所を除く)に従事している介護職員等
これは東京都の一例ですが、各都道府県が主体となって開催される研修のため、自治体ごとに受講資格や要件が異なります。従事している施設や事業所から推薦をもらうこと、施設実習の際に施設を利用する認知症の方に協力してもらうことなどあります。詳細は各都道府県のホームページなどで詳細を確認しましょう。
認知症介護実践者研修の内容
研修は、講義と演習、施設実習で構成されています。標準カリキュラムが設定されていますが、研修期間は各都道府県により異なります。
研修内容の柱は「認知症ケアの基本的理解」と「認知症の方への具体的な支援の方法と展開」の2つと実習になります。
研修期間は、東京都の例でみると講義と演習が6日間、自施設での実習が約2週間となっています。ただし、講義や演習は連日行われるわけではなく、1カ月に2~3回のペースなので、自施設実習も含めると修了までに2~3カ月かかります。
実施機関にもよりますが、講義と演習はグループワーク形式で行うことが多く、参加者から他施設の取り組みや現場での体験談などを聞くこともでき勉強になります。
認知症介護実践者研修の場合、修了試験などは特にありません。カリキュラムのすべてに参加し、実習レポートなどの報告書を提出すれば修了証が交付されますので、試験が苦手な方でも真面目にきちんと取り組めば資格取得が可能です。
認知症介護実践者研修受講費用の相場
受講費用の相場は一般的に25,000円~30,000円ほどですが、地域や実施機関により大きな差があります。
東京都は無料で受講できるのに対し、山口県が35,000円、佐賀県になると45,000円、静岡県も43,000円と受験費用が高額な場合もあります。平均的なのが神奈川県で25,000円、北海道は28,000円、大阪府が31,500円、安いところですと千葉県が10,000円、群馬県が18,000円です。
その他、受講費用以外にも別途テキスト代がかかるところもありますので、事前に確認しておきましょう。
まとめ
認知症患者の数は、2025年には約650~700万人、2040年には約800~950万人と年々増加していくといわれています。認知症介護に携わる者として、認知症介護実践者研修を修了しておけば、職場でも高く評価され、利用者さんやそのご家族からも頼りにされる存在となります。
転職の際にも有利な資格ですし、認知症ケアのエキスパートとして活躍の場も広がります。仕事をしながら受講するのは大変だと思いますが、介護の世界で働く者にとっては積極的にとっておきたい資格のひとつではないでしょうか。