特別養護老人ホームの仕事内容

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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは

特別養護老人ホーム(以下、特養)は、社会福祉法人や地方公共団体などが運営する公的な介護施設です。入居する利用者さんは要介護度3以上となる高齢者で、在宅での生活が困難な中重度の要介護者が大半を占めます。入居者は、各施設に設置されている入所判定委員会で、介護度や家庭の事情などの状況をふまえて点数化され、優先順位の高い順に入居となります。入居型介護施設なので、介護福祉士などの介護職員や看護職員は利用者さんに以下のような介護サービスを提供し、生活のサポートを行います。

  • 入浴、排泄、食事などの介護
  • その他日常生活の世話
  • 機能訓練
  • 健康管理および療養上の世話

よく比較して挙げられるサービスに有料老人ホームや介護老人保健施設があります。

有料老人ホームは主に営利法人など民間企業が運営することが多い施設です。特養と同じように入居者の身体介助や生活支援などの介護サービスを提供します。施設ごとに独自の特色を打ち出しており、高級感のある施設や、医療サービスやレクリエーションが充実したところなど種類はさまざまです。自立しているうちから入れる施設もあり、それぞれの施設で独自の基準を定めています。

介護老人保健施設は、医療法人や社会福祉法人などによって運営されています。病状が安定期にあり在宅生活への復帰にむけて、介護や医療を必要とする方を対象に、介護・医療ケア・リハビリテーションを行う施設です。医師が常勤であり看護職員も多く勤務しています。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士なども配置されています。

特別養護老人ホームの種類と特徴

特別養護老人ホームを利用できるのは、原則として要介護度3~5に認定されている方です。理解力が低下し、身の回りのことができない状態にあって生活全般への介助が必要な高齢者とされています。

特養にも、働き方に関わる違いがいくつかあります。特にベッドや居室に関しての違いは大きく影響してきます。

従来型(多床室、従来型個室)

過去には一般的であった従来型も、最近では少なくなってきています。古くからある施設などにはこのタイプが多く見られます。従来型は多床室と呼ばれる1つの部屋に複数のベッドが配置されるタイプと、従来型個室と呼ばれる1つの部屋に1つのベッドが置かれるタイプに分けられます。多床室と従来型個室が1フロアに併設されている施設もあります。

配置されている職員数が多く、たくさんの利用者さんをまとめて見ることができるのが特徴です。自分以外の介護職が行うケアを見ることも多く、勉強する機会に恵まれています。利用者さんはまとまって過ごすので、ユニット型に比べ見守りも比較的行いやすいです。比較的、職員のペースで仕事をしやすい環境と言えます。一方で、多床室の場合は感染症の予防や伝播対策が難しい側面もあります。また臭気が居室に充満したりもします。

ユニット型

2001年以降に新設された特別養護老人ホームは、厚生労働省によってユニット型が設置基準として盛り込まれました。比較的新しい施設はユニット型となっています。1ユニットあたりおおむね10人以下の利用者さんが生活をしており、従来型と比べ生活の規模が小さくきめ細やかなケアが行えます。最大の特徴は、利用者さんのプライバシーや尊厳に配慮しているという点です。利用者さん個人の意思決定を尊重し、個別にケアを行います。自分の部屋があるのでリラックスする空間と時間があり、その方らしい生活を送るサポートを行える環境と言えます。感染症への個別対応がしやすいという利点もあります。その反面、職員にとっては利用者さんの見守りや状態の把握がしにくくなるという面があります。利用者さんごとのプライバシーを守るため、他者の居室が見えにくいよう入り口が配置されているケースが多くあります。逆に言うと死角ができやすく、介護職からは確認がしづらい配置といえます。

ユニット型準個室

動かない仕切りで居室を分けているものの、部屋の壁と天井に隙間があり、完全な個室ではありません。ユニット型より気配や物音を感じ取りやすく、状況を把握しやすいと言えます。しかし、多床室と同じで感染症の予防や臭気を防ぐには不向きというデメリットがあります。

特別養護老人ホームの仕事内容

特養での勤務は日勤、夜勤を含めて3から5交代制の勤務が一般的です。休日は土日祝日などといった決まった曜日に固定されておらず、シフトに合わせて職員が交代しながら休むことになります。

主な仕事内容は、食事や入浴、排泄など身体的な介助、看護職員と連携して利用者さんの健康管理をすることです。特養は入居者の要介護度が高いので、身体的負荷のかかる介護が多くなる点が特徴です。終末期におけるケア、看取り対応が求められることも少なくありません。大変な反面、介助技術を学ぶには大きな経験が得られる環境とも言えます。
また、リハビリを通して身体機能の維持や回復、レクリエーションなどを行い、生活に楽しみがあるようにも努めます。施設管理職や栄養士などとも連携をとりながら、利用者さんの生活全般を支えていくことになります。下記は一日の業務の流れをまとめたものです。

06:00 入居者の起床
着替えや洗顔の介助をします。おむつ交換やトイレへの誘導など排せつ介助も行います。

07:00 朝食
自分で食事を食べられない方もいるので食事の介助をします。
自分で食べている方も喉に食べ物を詰めたりしないように見守りを行います。服薬の介助や、食後には口腔ケアをします。

09:00 入浴
利用者さんの身体状況や健康状態に合わせた方法で入浴を介助します。

12:00 昼食
食事と服薬の介助をします。食後に口腔ケアを行います。
食前や食後には排せつ介助をします。

14:00 レクリエーション
介護職員が企画したレクリエーションを行います。
外部からボランティアを招いたり、ドライブに出かけたり散歩など外出をすることもあります。機能訓練士による機能訓練も行われます。

15:00 おやつ
利用者さんの状態に合わせたおやつを提供し、必要な方には介助・見守り、水分補給も行います。終了後はトイレ誘導と排泄介助も行います。

18:00 夕食
食事と服薬の介助をします。食後に口腔ケアを行います。

19:00 入居者の就寝
着替えや服薬の介助を行います。
トイレ誘導やおむつ交換などの排せつ介助をします。

21:00 見回り
利用者さんの居室を見回り、睡眠の様子や健康状態を確認します。
自力で寝返りをできない方には、床ずれ予防のために体位変換の介助をします。
必要に合わせてトイレ誘導やおむつ交換を行います。
各ベッドに緊急用のコールを設置してあるので、その対応も求められます。

その他の業務
時間の合間をみながら介護記録の作成など事務作業や、清掃作業、洗濯作業をします。

特養の利用者さんには重度の方も多くいるため、入浴介助なども負担が大きくなることがあります。一人ひとりのケアに時間を要するため、時間の有効活用が求められます。職員配置も重要ですが、業務の回し方や工夫によって施設ごとに大きく差が出る部分でもあります。

なお最近では、看取りケアに取り組む施設も増えてきました。利用者さん本人や家族の意向を聞き取りながら、医師や看護師などの医療職と連携をとり、慣れ親しんだ施設での最期を看取ります。

特別養護老人ホームで活躍する人材

特養で求められる職種は施設長などの管理者、利用者さんのケアプランをつくるケアマネジャー、生活に関わるさまざまな相談業務にあたる生活相談員、そして介護職員や看護職員です。ほかには、機能訓練指導員、栄養士、調理員、事務員もいます。また、常勤ではありませんが医師もいます。

特養の人員配置基準

医師
1人以上(入所者の健康管理及び療養上の指導を行うのに必要な人数)

生活相談員
入所者100人に対して1人以上

看護職員と介護職員
・入所者が30人以下の場合は、常勤換算で1人以上配置
・入所者が31~50人の場合は、常勤換算で2人以上配置
・入所者が51~130人の場合は、常勤換算で3人以上配置
・入所者が131人以上の場合は、常勤換算で4人以上配置
(入所者130人を超過する人数が50人を超える毎に更に1人以上加算)入所者3人に対して、看護職員または介護職員を常勤換算で1人以上

栄養士
1人以上

機能訓練士
機能訓練士として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、按摩マッサージ指圧師のいずれかを1人以上

ケアマネジャー
入所者100人に対して、1人以上(常勤)

求められる資格

施設長
施設のあらゆる面において管理を行う責任者です。下記の資格要件のいづれかを満たす必要があります。
・社会福祉主事の要件を満たす者
・社会福祉事業に2年以上従事した者
・社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者ケアマネジャー
施設の利用者さんを対象に、ケアプランの作成や、介護保険の申請代行などを行います。多くの施設では、管理者や介護職員が兼務しています。ケアマネジャーの資格が必要となります。

生活相談員
入退所の調整や手続き、地域との連携・調整、利用者さんからの苦情受付など、多岐に渡ります。資格の要件に社会福祉士の資格を保有していることなどがあります。自治体によってはケアマネジャーや介護福祉士資格も認められている場合があります。

介護職員
介護業務などを行います。必要な資格はありませんが、介護福祉士の資格を保有していると現場のリーダーとして活躍できます。

医師
利用者さんの健康管理や療養上の指導を行います。医師免許を必要とします。

看護職員
健康管理の業務や、機能訓練補助業務、投薬などの指導をします。正看護師、もしくは准看護師の資格が必要です。

機能訓練士
利用者さんの心身機能維持向上のためにプログラムを作成し実施します。必要な資格は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師などになります。

栄養士
ケアマネジャーと相談しながら、献立の作成や栄養管理などをします。栄養士、もしくは管理栄養士の資格が必要です。

事務員
介護保険制度に基づき介護給付を国や地方自治体に請求する事務を行います。職員の労務管理や経理などもします。即戦力として働くのであれば介護事務の資格を持っていることが望ましいです。

特別養護老人ホームで働くメリット

キャリアアップ

特養は要介護度の高い利用者さんが集まるので、日常的に身体介護をする頻度が高く、認知症を患った方のケアをすることも多くなります。そのため、さまざまな経験を積むことができ、ケアの技術を身につけることが可能です。有料老人ホームなどと比べると利用者さんの数が多いので、施設に蓄積されてきた経験、知識も膨大なものです。また、感染症や、リスクマネジメントなどの内部研修も盛んに行われるため、勉強をする機会にも恵まれています。ケアマネジャーや多職種と日常的に接するため仕事内容を知ることも多く、キャリアアップの道筋もイメージしやすいでしょう。

待遇

福利厚生や待遇面でも、ほかの一般企業などが運営する施設と比べて優位と言えます。社会福祉法人は経営基盤がしっかりとしていることが多く、賞与や昇給などが手厚いケースも多く見られます。たとえば扶養家族や持ち家などがある場合には、基本給は有料老人ホームなどと一緒でも福利厚生や手当で手取額が大きく異なってくるという場合も少なくありません。

地域貢献

最近では社会福祉法人に近隣地域の生活への貢献といったことも求められているため、特養で働くことで自然と社会や地域へ貢献する機会も増えます。例をあげると地域の避難所や、近辺に住む子どもから大人まで集まれるサロンを開設しているというケースなどがあります。さまざまな取り組みをしながら、地域との共生を模索しているのです。

特別養護老人ホームでの仕事が向いている人

特養の求人への応募を考えている方は、次のようなポイントをおさえておくといいでしょう。

特養は介護度の高い方が利用しているため、身体介助をする機会が多く重労働になりがちです。そのため、体力に自信のある方や、しっかりとしたケアの技術を身につけたい方にはぴったりです。重度の認知症を患った利用者さんも多いので、認知症ケアを身につけたい方にもおすすめです。また、通所サービスとは違い24時間365日利用者の生活を支えていくことになります。利用者と深く関っていきたい方や、じっくりと向き合いながら集中して仕事をしたい方にも向いていると言えます。またケアマネジャーを目指す方にも、資格取得に必要な実務経験を重ねながら、その働き方を知ることができる、良い環境と言えるでしょう。

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