終末期ケア専門士とは?受験資格や合格率、メリットについて解説

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終末期ケア専門士 受験資格 合格率 メリット

「終末期ケア専門士」は、死を間近にした方の終末期を支えるための資格です。高齢化が進む現代社会では、「どのように自分らしい最期を迎えるか」が重要な課題となっています。

それぞれのニーズに対応するためには、専門的な知識を身につけることが必要です。本記事では、終末期ケア専門士の受験資格や合格率、資格取得のメリットについて詳しく解説していきます。


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終末期ケア専門士とは臨床ケアのスペシャリスト

終末期ケア専門士 臨床ケア

「終末期ケア専門士」は、2020年に日本終末期ケア協会が創設した資格です。科学的根拠(エビデンス)に基づいた実践の知識を学び、ケアの引き出しを増やして、利用者さん一人ひとりを尊重したケアを提供できるようになることが目的です。

また、終末期には「延命治療をするのか」、「残された時間を充実させるのか」など、答えを明確に出せない場面が多々訪れます。そのため、終末期ケア専門士のカリキュラムには、倫理観を育成するための内容が組み込まれています。

2040年には多死社会が到来

社会の高齢化に伴ない、年間の死者数は毎年増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2040年の年間死者数は約166万人。

大多数の高齢者が平均寿命を迎える「多死社会」が到来すると考えられています。やがて訪れる多死社会に向け、終末期医療とともに必要となるのが終末期ケアです。

介護と看護、医療を一体型とした老人ホームなどにおいて、認知症ケア専門士とともに終末期ケア専門士のニーズは高まりを見せています。

終末期に求められるケアとは?

終末期には、人生の残りの時間を自分らしく過ごし、満足に最期を迎えるためのケアが求められます。令和元年の調査によると、自宅での最期を希望する高齢者は半数以上。

住み慣れた場所で充実した最期を迎えるためには、医療と介護の連携を欠かすことはできません。終末期ケアでは、身体的なケアだけでなく精神面のケアも大切です。

利用者さん本人だけではなく、ご家族の気持ちに寄り添いながら状況に応じたケアを行っていきます。多様化するニーズに対応するためにも、終末期ケアでは専門的な知識とスキルが必要となります。

就業環境の”見える化”で実現する介護の働き方改革
長時間労働の是正を中心とした、介護業界における働き方改革対応のための「就業環境の”見える化”」と「就業管理業務の”標準化”」についてお伝えします。

終末期ケア専門士資格の取得方法

終末期ケア専門士資格 取得方法

終末期ケア専門士の資格は、協会が実施する試験に合格することで取得できます。ここからは、受験資格や受験要項について確認していきましょう。

受験資格

終末期ケア専門士資格を受験するためには、医療や看護、介護における有資格者であり、一定以上の実務経験を重ねている必要があります。「介護福祉士」の資格を保有する方は、介護士として通算3年以上の実務経験があれば受験可能です。国家資格を有さない「介護士」の方は、実務者研修修了証のコピーを提出することが求められます。

2年以上の経験が必要3年以上の経験が必要
該当資格医師
歯科医師
看護師
保健師
薬剤師
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
臨床工学技士
歯科衛生士
管理栄養士
介護支援専門員
社会福祉士
栄養士
准看護師
臨床心理士
音楽療法士
介護士

受験要項

終末期ケア専門士の試験は、各テストセンターでパソコンを用いて行われます。受験会場や要項は、年度によって変更になることもあるため注意してください。

試験日時10月後半に設けられた期間の希望日
試験会場日本全国260ヶ所のテストセンター
受験料10,000円
試験時間90分(終末期ケア専門士公式テキストより90問出題)
申請期間4月から9月初旬まで(定員に達し次第、申し込みの打ち切りあり)
必要書類公的な顔写真付き本人確認書類(次のいずれか1点)
・運転免許証
・パスポート
・写真付き住民基本台帳カード
・マイナンバーカード(写真つき)
申込方法日本終末期ケア協会公式ホームページより申込み
追って届く申請書類に必要事項を記入し、実務経験証明書とともに提出
結果通知2021年12月下旬に投函
登録料および更新料登録料 10,000円
更新料 5,000円(3年ごとに必要)

合格までの流れ

終末期ケア専門士の試験を受験するためには、まず専用フォームから受験を申込み、受験料を支払う必要があります。その後、一週間前後で申込書が到着。必要事項を記入し、書類と合わせて返信します。

試験当日は、予約した試験会場でパソコンによって行われます。合否通知が届くのは受験から約2ヶ月後で、合格後に登録手続きを行えば、翌月には認定証が発行されます。

合格率はどのくらい?

日本終末期ケア協会によると、2020年の合格率は65.6%となっています。「終末期ケア専門士認定試験」第1回目にあたるこの試験の受験者数は約2,300人です。

合格基準は明記されていないものの、受験者の半数以上が合格していることがわかります。受験の対象者は医療や看護、介護の有資格者であるため、臨床ケアに関する基本的な知識を有していると考えられます。

そのうえでテキストを読み込み、終末期ケアの理解を深めることが合格への近道だといえるでしょう。

合格後は更新が必要

続きは「ココリンク」で行います。「ココリンク」とは、合格後に登録可能となる動画配信システムです。

動画を視聴したり、対象イベントに参加したりすることで単位が取得できます。更新には60単位が必要であるため、内容はこまめにチェックしておきましょう。

終末期ケア専門士のテキストカリキュラム

終末期ケア専門士 テキストカリキュラム

試験問題は、公式テキストから90問が出題されます。内容は「概論」から「疾患別終末期ケア」までの全11段階。終末期ケアの定義を踏まえたうえで、実践に必要なケアについてより細かく学習していきます。

1.概論(1)生と死
(2)終末期に関する定義と概念
(3)全人的苦痛とは
(4)わが国における看取りを取り巻く状況
2.終末期におけるチームケア(1)チームケアとは
(2)2チームケアの実際
(3)よりよいチームとなるために
3.日常生活を支えるケア(1)加齢に伴う変化
(2)コミュニケーション
(3)食を支えるケア
(4)口腔ケア
(5)排泄ケア
(6)褥瘡ケア
(7)終末期リハビリテーション
4.身体症状とそのケア(1)痛みの治療とケア
(2)呼吸困難の治療とケア
(3)消化器症状の治療とケア
(4)全身倦怠感の治療とケア
(5)浮腫の治療とケア
(6)せん妄への治療とケア
(7)不眠の治療とケア
(8)抑うつの治療とケア
5.意思決定支援(1)終末期の意思決定支援
(2)バッドニュースの伝え方
(3)終末期にまつわる倫理
(4)意思決定支援の実際
(5)意思決定支援で大切なこと
6.家族ケア
7.スピリチュアルケア(1)スピリチュアルケアの成り立ち
(2)スピリチュアルペイン
(3)ケアのいとなみ
(4)ケアする人のケア
8.グリーフケア(1)グリーフとは
(2)悲嘆反応
(3)喪失と悲嘆の諸相
(4)悲しみへの配慮
(5)グリーフケアとしての遺族会
9.看取り期のケア(1)看取りケアの実際
(2)死亡確認と死亡診断書
(3)エンゼルケア
10.終末期を取り巻く社会資源(1)社会資源とは
(2)社会保障制度
(3)社会保険制度
(4)社会福祉法
(5)障害者福祉制度
(6)公的扶助
(7)終末期における介護保険・医療保険
(8)終末期を取り巻く現状と課題
11.疾患別終末期ケア(1)悪性腫瘍の終末期ケア
(2)認知症の終末期ケア
(3)脳血管障害の終末期ケア
(4)慢性閉塞性肺疾患の終末期ケア
(5)心不全の終末期ケア
(6)腎不全の終末期ケア
(7)神経難病の終末期ケア

終末期ケア専門士の資格を取得するメリット

終末期ケア専門士 資格取得 メリット

終末期ケア専門士は、利用者さんを身近で支える人を育成するための資格です。そのため、ケアを受ける方とケアを行うスタッフの双方にメリットのある資格だといえるでしょう。

終末期ケアの専門性が身につく

終末期ケア専門士のカリキュラムでは、「生と死とは何か」といった終末期に関する定義や概念を学びます。そのうえで、具体的なケアについて学びを深めることが可能です。

日常生活を支える口腔ケアや排せつケアから、身体症状に応じたケアまで内容は多岐にわたります。延命治療に関する意思決定支援やご家族のケアも重要な項目です。

基礎的な内容に加え、より具体的な支援方法を学ぶことは終末期ケアの専門性を高めます。結果的に、個々のニーズに対応できる専門性の高いスタッフへと成長することができるでしょう。

キャリアアップにつながる

終末期ケア専門士の資格は、履歴書や名刺などにも記載できます。医療や介護に関する資格に加えて専門知識があることをアピールできるため、転職時にも大いに役立つでしょう。

実際に終末期ケアを行う現場であれば、専門知識を有するスタッフとしてキャリアアップが期待できます。ほかの職員に指導を行うチームリーダーの役割を担うこともあるでしょう。

「今後終末期ケアを行う現場で働きたい」、「今いる施設でさらなる専門性を高めたい」という方にとって、大きなメリットのある資格だと考えられます。

有資格者と情報交換できる

資格取得後は、Webをとおしてセミナーやカンファレンスに参加できます。「ココリンク」にはSNS機能もあり、ほかの有資格者と情報交換が可能です。動画視聴システムを利用すれば、いつでもどこでも単位を取得できることもポイントです。

仕事と学びを両立しながらステップアップが可能です。「資格を取得して終わり」ではなく、ほかの有資格者とともにさらに学びを深めていくことができます。

終末期ケア専門士のステップアップ制度

終末期ケア専門士 ステップアップ制度

終末期ケア専門士は、さらなる試験に合格することでステップアップが可能です。協会内で業務活動をしたり、地域から仕事を受注したりするなど、さらに活躍の場が広がります。

「育む人」である終末期ケア上級専門士

終末期ケア上級専門士は、リーダーとしてチームをまとめ、組織と人を「育む人」を目指す資格です。リーダーシップや対人コミュニケーション、ストレスマネジメントなどについて学習します。

上級専門士のテキストは、公式サイトから購入可能で、「終末期ケアの多様性」、「他学問から学ぶケアの本質と組織マネジメント」の2章に分かれているのが特徴です。上級専門士は、終末期ケア専門士を取得した1年後から受験できます。

「伝える人」であるJTCAアドバンスインストラクター

病院や施設、地域などで専門アドバイザーとして活躍できる資格です。看護師や介護福祉士、栄養士にリハビリスタッフなど、さまざまな職種がアドバンスインストラクターとして在籍しています。

アドバンスインストラクターは、上級専門士取得から1年後に受験可能です。その後は協会を通じて仕事の依頼を受けることもできます。地域や職種を越えた「コアメンバー」として、協会の企画や運営に携われることもメリットといえるでしょう。

「自分らしい最期」を支える終末期ケア専門士

終末期ケア専門士 握手

終末期ケア専門士は、今後の多死社会に向けて活躍が期待される資格です。専門的な知識を身につけることは、利用者さんだけではなく、ケアする自分自身にも大きなメリットを生み出します。

終末期ケアは、個々に応じた対応力が求められるデリケートな仕事。スキルアップを重ね、利用者さんの「自分らしい最期」を支えるスタッフへと成長していきましょう。

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