介護職の給料を詳しく解説! 給料を増やす5つの要素も紹介

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

介護職は「仕事が大変な割に給料が見合わずに安すぎる」というイメージをお持ちの方も多いことでしょう。「ほかの人はどのくらいもらっているのだろうか?」と疑問に思うこともあるかもしれません。

しかし、同僚や先輩に給料の金額を聞くというのはなかなか難しいものです。「今後、昇給して年収が上がる可能性はあるのか」、「介護職の将来性はどうなのか」などと心配している人も多いのではないでしょうか。

本記事では、介護職の平均給与や平均年収などの最新データをもとに、介護職が給料アップするためのポイントや今後の展望についてお伝えします。

介護職の給料はどのくらい?勤続年数・職種別に徹底比較

実際のところ、介護職の給与はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省の最新資料をもとに見ていきましょう。

勤続年数別の介護職の平均給与額

一般的に勤続年数が長くなると給与は上がっていくものですが、介護職ではどうでしょうか。下の表に勤続年数別の平均給与額をまとめたので見てみましょう。

勤続年数令和2年平均給与額(円)平成31年平均給与額(円)前年との差額(円)
1年(1年~1年11ヶ月)283,480258,260+25,220
3年(3年~3年11ヶ月)291,010277,120+13,890
5年(5年~5年11ヶ月)296,930282,070+14,860
10年(10年~10年11ヶ月)326,830310,840+15,990
15年(15年~15年11ヶ月)348,530331,690+16,840
20年以上390,960373,920+17,040

参照:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」

上の表を見ると、平均給与が勤続年数とともに上昇していることがわかります。とはいえ上昇の幅はゆるやかで、勤続年数による劇的な給与アップはないといえるでしょう。

しかし平成31年と令和2年を比較すると、全体的に金額がアップしていることが見てとれます。このことから考えると、今後も給与水準が上がって待遇が良くなっていく可能性は十分にあるのです。

サービス種類・施設別の介護職の平均給与額

介護サービスや施設によっても、介護職員の給与は異なります。以下は常勤である介護職員の平均給与です。軒並み上昇していますが、非常勤介護職員については減額しているケースもあります。

サービス種類・施設令和2年平均給与額(円)平成31年平均給与額(円)前年との差額(円)
介護老人福祉施設191,530188,4703,060
介護老人保健施設177,670175,0202,650
介護療養型医療施設163,130160,8502,280
介護医療院168,170164,5003,670
訪問介護事業所186,960183,1703,790
通所介護事業所180,540177,2503,290
通所リハビリテーション事業所175,810173,1802,630
特定施設入居者生活介護事業所180,500177,5003,000
小規模多機能型居宅介護事業所173,080170,2302,850
認知症対応型共同生活介護事業所170,460167,3803,080
※いずれも常勤介護職員の場合

参照:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」

職種別の平均給与額

次に、職種による平均給与を見てみましょう。下の表では、介護事業所に勤務している職種の平均給与をまとめています。

職種令和2年平均給与額(円)平成31年平均給与額(円)前年との差額
介護職員315,850300,120+15,730
看護職員379,610372,940+6,670
生活相談員・支援相談員343,310332,980+10,330
理学療法士、作業療法士、
言語聴覚士又は機能訓練指導員
358,560349,190+9,370
介護支援専門員357,850347,460+10,390
事務職員311,120303,710+7,410
調理員267,930261,180+6,570
管理栄養士・栄養士319,680310,720+8,960

参照:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」

上の表を見ると、平均給与が一番高いのは看護職員であり、続いて作業療法士などの機能訓練指導員、介護支援専門員、相談員の順となっています。
やはり、上位を占めるのは有資格者が行う職種であることがわかります。

介護職員に関しては無資格の職員もいるので、平均値として下がってしまうのはやむを得ないことかもしれません。
ただし、注目すべきは前年との差額で、介護職員が約1万6,000円増とダントツになっています。これは、処遇改善加算の効果が出た結果といえるでしょう。

パート、アルバイトとして働く介護職の時給

時給で働いている社会福祉士などの介護職員も多いです。厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護職員の平均時給は1,110円で、看護職員の1,440円や理学療法士の1,660円と比べると低い水準にあります。

なお、介護職員の時給は、パートやアルバイトとして働くよりも派遣職員として働くほうが高めに設定されていることも珍しくありません。応募する前に働き方についても検討するようにしましょう。

参照:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」

介護職の給料を左右する5つの要素

介護職の給与を左右する要素には、どのようなものがあるのでしょうか。以下に5つの要素を記します。

  • 資格の有無
  • 勤務する事業所の形態
  • 地域
  • 働き方
  • 勤続年数

介護職の給与は、資格によっても異なります。介護職員初任者研修や介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格取得も目指してみましょう。また、勤務する事業所の形態によっても異なります。特別養護老人ホームなどの入所施設には夜勤があるため、高めに設定されていることがあるかもしれません。

さらに地域や働き方によっても異なります。通勤が可能な範囲で仕事を探すことや、パートやアルバイト以外にも常勤、派遣社員といった働き方も検討してみましょう。職場によっては勤続年数が長くなることで基本給が高くなることもあります。

上に挙げた5つの要素について検討してみると、給与アップにつながるヒントを得られるかもしれません。

介護職の給料を上げる方法

前述した5つの要素をふまえて、具体的に給与アップの方法を考えてみましょう。

資格取得で資格手当をつける

介護従事者の平均給与に関するデータを見ても、有資格者の職種が上位を占めているのは明らかです。資格を持っている職員を多く雇用することは、加算が多く取れるなど事業者としてもメリットがあるからです。

介護職員の保有資格別に平均給与額を見てみましょう。

保有資格名平均給与額(円)
介護福祉士338,340
社会福祉士359,380
介護支援専門員380,210
介護福祉士実務者研修311,690
介護職員初任者研修310,560
保有資格なし282,290

参照:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」

上の表を見ると、介護福祉士の平均給与は資格を持っていない人に比べ、約5万6,000円高くなっていることがわかります。月額でこれだけの差があるのであれば、給与アップのためには介護福祉士の取得は必須であるといえます。

しかし、受験資格を得るには実務経験が必要となるので、すぐに受験できない場合もあるでしょう。要件を満たすまでの間に、介護福祉士実務者研修を修了しておくことをおすすめします。

実務者研修があれば平均給与が約2万9,000円高くなります。これは実務経験のない人でも受講できるものです。また、介護福祉士を受験するための要件のひとつにもなっているので、キャリアアップの第一歩として受講するとよいでしょう。

実務者研修や介護福祉士取得のための費用を、勤務先の事業所が補助してくれる場合もあります。取得を考える際には確認してみましょう。また市区町村の社会福祉協議会などでは、資格取得のための貸付制度もあります。条件を満たせば返済が免除され、実質自己負担なしで資格を取得することができます。

夜勤業務を行う

特養や老健などの夜勤業務のある事業所であれば、夜勤手当をねらうのもおすすめの方法です。2交代夜勤の場合、夜勤手当の平均は6,125円となっています。施設形態によって若干の差はありますが、積極的に夜勤業務を引き受けることで月収を増やすことが可能です。

また「夜勤専従」という働き方もあり、「少ない勤務回数で高収入を得られる」、「休日が多い」などのメリットがあるため注目されています。

データ出典:医療労働組合連合会「2019年介護施設夜勤実態調査結果」

キャリアアップで役職手当

施設形態や事業所によって名称は様々かもしれませんが、介護リーダーや主任などのリーダー職に就くことで役職手当が付くことがあります。事業所ごとの設定によって金額に差はあるものの、3,000~10,000円くらい付くことが多いようです。

リーダー職に就くことによって目に見える資格手当だけではなく、昇給や賞与の査定にも影響があることが考えられます。一般職員と比較して昇給のペースが速くなったり、基本給がアップすることで必然的に賞与も高くなったりすることがあるのです。

また施設長や管理職ともなると、役職手当もさらに金額が大きくなることが予想されます。その分必要とされるスキルも多岐にわたることになりますが、高収入を得るためにもキャリアアップする価値は十分にあります。

さらに、資格を得てケアマネジャーや生活相談員、サービス提供責任者などにステップアップしていくのも年収アップにつながります。

一つの職場で長く勤める

介護福祉士としての勤続年数が増えると、給与が上がります。給与アップを狙うのならば、長期間勤務するのもひとつの方法です。

しかし、勤続年数が増えても給料にあまり反映されない職場もあります。要介護度が高い入居者を主に任されるなど、仕事が質も量も増えているのに給与があまり変わらないということもあるでしょう。上がり幅が少ないときは、転職を視野に入れてもいいかもしれません。

条件の良い施設に転職する

各種手当や昇給などの基準は、勤務先の事業所によって様々です。施設形態や労働形態によるところも大きいでしょう。条件の良い施設を探して転職するというのも、時間をかけずに年収アップを目指せる方法として有効です。

ハローワークに行って求人情報を見ても、労働条件の詳細を把握するのは難しいため、転職・求人サイトの力を借りるのは大変有効です。介護職専門のキャリアアドバイザーがサポートをしてくれるので、自分の希望に合った職場探しができます。

介護職の給料、今後はどうなる?

きたるべき2025年問題に備えて、介護職員の確保は重要な課題となっています。そのため、国の方針が処遇改善の方向に進む傾向は今後も続くのではないかと予想されます。

これから介護職の給料は上がる?

介護職員の賃金向上を目的に、2012年に処遇改善加算の運用が始まりました。これは、事業所が介護報酬に加算を行い、その額に相当する賃金改革をするというものです。

そして2019年10月には、介護職員等特定処遇改善加算も創設されています。これは、勤続10年以上の介護福祉士に月額8万円相当の処遇改善を行うというものです。

介護職員処遇改善加算は、介護職員全体の処遇改善を目的としていますが、この加算はベテラン職員やリーダー職に対する処遇改善となっています。つまり、長く勤めればいずれ給料が上がるという実績を作ることで人材不足を解消しようというものです。

厚生労働省の資料を見ると、処遇改善加算によって介護職員の平均月収は約1万8,000円の増となっています。国の政策として処遇改善や離職防止に力を入れていることは間違いないので、今後の賃金改革も期待できるでしょう。

介護報酬改定によりさらに増える見込みも

2021年の介護報酬改定により、介護報酬が+0.7%高くなります。介護士の給与にも反映されると考えられるので、さらなる増額を期待することができるでしょう。

介護職の給料、今後の展望を考える

今後、ますます介護職の需要は増えることが見込まれていますが、人材確保が難しい事業所も多いのが現状で、処遇改善の流れは今後も継続していくことが予想されます。

介護保険制度の財源は、保険料と税金でまかなわれています。社会保障制度の財源にする目的で消費税が10%に引き上げられたことは記憶に新しいでしょう。また、介護保険の利用者自己負担金も、所得に応じて最大3割までの負担に引き上げられています。

このように、国も様々な施策で福祉財源を確保して介護業界の改革を行っています。2021年度の介護報酬改定では、介護人材の確保と定着、介護保険制度の持続可能性確保が議題となっています。段階的ではあるかもしれませんが、今後の介護職の給与水準が改善されることは間違いないといえるでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加