退職理由(転職理由)は介護職の転職の面接で必ず聞かれる質問です。しかし、なかには「本音の退職理由を伝えると、面接官にマイナスの印象を与えてしまうのではないか」「嘘をつくのもよくないだろう」と悩む方も多いのではないでしょうか。転職する際の退職理由の伝え方について、具体例も交えてお届けします。
目次
面接で退職理由を聞く3つの理由
前職場の退職理由を聞くことは、介護職に限らず企業の面接ではよくあることです。退職理由を聞くことで、面接官は次の3つの点を確認しようとしています。
- 長く勤務してくれるか
- 職場の雰囲気に合うか
- 仕事に対する思いを持っているか
では、それぞれについて、詳しくみていきましょう。
長く勤務してくれるか
「前職場を退職したのと同じ理由でまた辞めてしまわないか」「この職場で長く働いてくれそうか」ということを確認しようとしています。
事業所としては、長く勤務してくれる人を雇いたいという思いがあります。
- 前の職場の不満や悪口ばかりを言う
- 給与面や有給などの待遇面ばかりを話す
- 退職理由に前向きな要素がなく、自分に合わなければすぐに辞めてしまいそうな雰囲気
- 退職理由がはっきりしない、曖昧
このような転職理由の場合、「トラブルを抱えているのではないか」「同じ理由で辞めてしまうのではないか」という不安感を与えてしまうでしょう。
職場の雰囲気に合うか
介護職員には、利用者さんやご家族とのコミュニケーション、スタッフとのチームワークが必要です。そのため柔軟な対応ができる人や協調性のある人が求められます。
退職理由からは「周りのことを考えて動けそうか」「利用者さんやスタッフとのコミュニケーションに問題はなさそうか」などを判断しています。高圧的な態度で話す人や自分本位な話をする人、質問に対して的を得ない回答をする人は敬遠される可能性があります。
また、利用者さんがゆったりと過ごせる落ち着いた雰囲気の職場、行事やイベントが多く活気のある職場、富裕層を対象としていて接遇マナーを重視している職場など、職場によって求める人物像もさまざまです。その職場に合う雰囲気を持った人かどうかもチェックされます。
仕事に対する思いを持っているか
退職理由を聞くことで「仕事に対しての意欲ややる気は感じられるか」「仕事における今後の目標を持っているか」などを確認しています。
事業所は、介護の仕事に対して意欲を持って取り組むことができる人、モチベーションを保ち続けて働くことができる人、目標を持っている人を必要としています。
退職理由がただ「前の職場が嫌だったから」「こちらのほうが待遇が良さそうだったから」などの場合は、仕事に対する本人の思いが感じられず、敬遠されるでしょう。前向きな思いをもって退職したこと、これから新しい職場で取り組みたいこと、目標としていることを話すことが大切です。
介護職の退職理由(本音)ランキング・TOP10
公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働の現状について 平成30年度介護労働実態調査の結果と特徴」によると、介護職が前職を辞めた理由のトップ10は以下のとおりです。
1位 | 職場の人間関係に問題があったため | 22.7% |
---|---|---|
2位 | 結婚・出産・妊娠・育児のため | 20.3% |
3位 | 他に良い仕事・職場があったため | 17.6% |
4位 | 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため | 16.5% |
5位 | 収入が少なかったため | 16.4% |
6位 | 自分の将来の見込みが立たなかったため | 16.3% |
7位 | 新しい資格をとったから | 11.0% |
8位 | 人員整理・勧奨退職・法人解散・事業不振等のため | 7.1% |
9位 | 自分に向かない仕事だったため | 5.8% |
10位 | 家族の介護・看護のため | 4.6% |
結果を見ると、人間関係や結婚・出産・妊娠・育児などのライフイベントを理由に退職している人が多いことがわかります。
退職理由を伝えるときのポイント
退職理由を伝えるときには、不満や不平ばかりを語らないこと、退職理由を整理して志望動機や入社意欲へとつなげて伝えることがポイントです。
事業所の批判や他人の悪口は言わない
介護職の退職理由として多いのは人間関係ですが「前の職場は上司が現場の意見を取り入れてくれず、介護スタッフみんなから不満が出ていた」「スタッフ同士の仕事に対するモチベーションの違いから、職場の雰囲気が悪く居心地が悪かった」「新人として介護現場に入ったのに、怒られてばかりで初めてのことも教えてくれなかった」など、感じたままに話すと、面接官には愚痴と捉えられてしまうでしょう。
愚痴を聞かされたと感じた場合、これから同じ職場で働く仲間になりたいとは思いません。「不満があったらまた辞めるのでは?」と思われる可能性もあります。どれだけ前の職場が大変だったとしても、その経験を通して、自分がその不満や悩みを解決するためにどのように考えて行動したのかを伝えることが重要です。
志望動機や入社意欲へつなげる
退職理由を伝えるときは、ただの愚痴で終わってしまわないように、退職理由から入社意欲をアピールする内容につなげましょう。
前の職場で感じた問題を解決するために行動した具体的なエピソード→実行しても上手くいかなかったこと→環境を変えて新たに取り組みたいと思っていること、と組み立てると、退職理由を志望動機や入社意欲につなげることができます。
退職理由をポジティブに変換することが難しい場合には、複数の退職理由のうち、面接官に「それならば前の職場を退職しても仕方がない」と思わせる理由を伝えましょう。
たとえば「前の職場は自宅からの距離が遠く、家庭との両立が難しかったため」や「家族の自宅介護が必要になり、夜勤のない職場への転職を考えた」といった理由が挙げられます。
ネガティブな退職理由をポジティブな理由に変換しよう!(具体例)
辞めたいと思ったときは、不満や悩みばかりにフォーカスしがちで、ネガティブな考えしか出てこないこともあります。しかし、不満や悩みを抱えているということは、自分の中にこうなりたい、こうしたいという理想や思いがあるはずです。自分が本当は何を望んでいるのか、これからどうしたいのかという気持ちを整理し、不満や悩みの裏側にあったポジティブな理由を伝えましょう。
職場の人間関係に不満
[box04 title=”退職理由”]前の職場では先輩から何も教えてもらえず、自分なりにケアをすると怒られてばかりで嫌になった[/box04]
【ポジティブ変換のポイント】
人間関係に不満がある場合、裏を返せば、
- スタッフみんなで協力して働きたい
- わからないことは先輩に確認したら教えてくれるような雰囲気の良い職場で働きたい
という思いがあるということです。
例文
「前の職場では、先輩のケアを見て覚え、自分なりのケアを実践していました。しかし、より質の高いケアを提供できるようになりたいと思い、チーム制での教育・指導体制や、介護スタッフ全員が同じ方向性を持ってケアに取り組む姿勢が整っている御社(貴社)で質の高いケアを学びたいと思い、前職場を退職しました」
法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満
[box04 title=”退職理由”]とにかく経費削減を第一とし、いつも人手不足のうえ、介護スタッフをこき使う事業所のやり方に不満があったから[/box04]
ポジティブ変換のポイント
法人や事業所の経営理念や運営に共感できないということは、
- 自分の介護の仕事に対する思いと同じ方向性を持った職場で働きたい
という気持ちがあるということです。
例文
「介護職として一人ひとりの利用者の方に、時間をかけて寄り添える職場で働きたいと思っております。その働き方が叶えられる職場で働きたいと思い、前職を退職いたしました」
給料に不満
[box04 title=”退職理由”]働きのわりに給料が安すぎるから[/box04]
ポジティブ変換のポイント
給料は安すぎると感じるということは、
- 自分の働きを正当に評価してほしい
という思いがあるということです。
例文
「介護福祉士の資格をとるためにステップアップを目指し、段階的に資格も取得してきました。ステップアップや保有資格に応じて評価される体制が整っている職場で働きたいと思い、退職を決めました」
勤務待遇に不満
[box04 title=”退職理由”]働きのわりに給料が安すぎるから[/box04]
ポジティブ変換のポイント
休みがとれないという気持ちの裏側には、
- 休むときはしっかりと休み、仕事と休みのメリハリをつけて仕事に取り組みたい
という意欲的な思いがあるということです。
例文
「休みをしっかりとってプライベートも充実させることで、心身ともにリフレッシュでき、仕事にも意欲的に取り組むことができると考えています。夜勤体制や月間の休日体制も整っている職場で働くために前の職場を退職しました」
業務内容に不満
[box04 title=”退職理由”] 仕事が面白くない、つまらない [/box04]
ポジティブ変換のポイント
仕事にやりがいを感じることができないということは、
- 自分のやりたい仕事がほかにある
ということです。
例文
「私は集団でのレクリエーションや体操、イベントの企画や実行を得意としていますが、前職ではそれを活かせる機会がありませんでした。介護スタッフが積極的に施設のレクリエーションやイベントの企画に携わっているこちらの施設でぜひ働きたいと思い、前の職場を退職することを決めました」
退職理由を会社に伝えるときは
退職理由を会社に伝えるときに、どこまで本音を言ってもよいのか、どのように伝えればよいのか、判断に迷うこともあるでしょう。
「ほかにやりたい仕事があります」「キャリアアップを図りたいです」という退職理由は、本人の前向きに転職したいという思いが伝わり「新しい職場でも頑張って」と気持ちよく送り出したくなる退職理由です。
自分の目標に向かったポジティブな理由であれば、そのまま退職理由を伝えましょう。
反対に、次のような退職理由である場合には、職場に対する不満と捉えられ、職場とのトラブルに発展することや、円満に退職できない結果となることが多いので、そのままの理由を伝えることは控えましょう。
- 人間関係
- 休みがとれない
- 給料が安い
- 職場の雰囲気が自分に合わない
- 上の考え方についていけない
- 介護方針は自分と合わない
退職理由は前向きな意思を伝えよう
介護職の転職において、退職理由は面接で必ず聞かれる質問です。本音では「人間関係や法人の経営方針や運営のあり方が合わない」「給料が安い」といった理由が多く挙げられますが、転職先にそのまま伝えると、不満や愚痴を語るだけになってしまい、面接官の印象もよくありません。退職理由は「ここで働きたい」というポジティブな意志に変換して伝えましょう。転職活動時の履歴書や職務経歴書も、ポジティブな意志が伝わる文面を意識することが大切です。