介護職の離職率は高い?離職率の高い職場を見分ける方法

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介護職の離職率は高い?離職率の高い職場を見分ける方法

「介護業界は他業界よりも離職率が高いのでは」と感じている事業者の方も多いのではないでしょうか。しかし、全産業平均と比較すると介護職の離職率は低い水準で推移している状況です。本記事では介護職の離職率についてデータを用いながら確認し、実際の退職理由も含めてご紹介します。

また、どのような職場で離職率が高くなる傾向にあるのかもあわせてお伝えしますので、自事業所に該当する場合は改善に努めましょう。介護職への就職・転職を検討されている方は、離職率の高い職場かどうかを見極めるための参考としてご活用ください。


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介護職の離職率は他業種と比べて高いわけではない

介護職の離職率は高いというイメージがありますが、公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」の結果によると、介護職(訪問介護員・介護職員)の離職率は令和4年で14.4%でした。令和3年の離職率は14.3%だったため前年と比較すると若干増えているものの、近年は低下傾向にあります。

また、厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、全産業の令和4年の離職率は15.0%であり、介護職の離職率はこれを下回っています。令和3年は全産業の離職率が13.9%だったので、産業計と比べて介護職離職率は低い水準で推移している状況です。

離職率の推移

介護職と全産業の離職率の推移(令和4年版)

出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査
   厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況

ただし、介護職全体の離職率はさほど高くないものの、介護事業所別に見るとバラつきが見られます。離職率10%未満の事業所が約半分を占める一方、30%以上と著しく離職率が高い事業所も2割弱ほど存在しています。

事業所単位の離職率

離職率階級別にみた介護事業所の割合(令和4年版)

出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度 事業所における介護労働実態調査 結果報告書

介護職の退職理由5選

公益財団法人介護労働安定センター発表の 「令和4年度介護労働実態調査結果の概要について」によると、退職理由として多い上位5つは以下の通りです。

  1. 「職場の人間関係に問題があったため」(27.5%)
  2. 「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」(22.8%)
  3. 「他に良い仕事・職場があったため」(19.0%)
  4. 「収入が少なかったため」(18.6%)
  5. 「自分の将来の見込みが立たなかったため」(15.0%)

介護現場ではどのように当てはまるのか、1つずつ解説していきます。

前職を辞めた理由(令和4年版)

出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査結果の概要について

1位 職場の人間関係に問題があったため

介護職の退職理由のなかでも多い理由が「職場の人間関係」です。

介護職は直接高齢者に関わり、日々身体介護などのサービスを提供します。認知症の方など、利用者とのコミュニケーションが必要であることはもちろん、2人介助など他職員と連携して行う業務も多く存在します。

人間関係のトラブルは業界にかかわらず起きてしまう可能性がありますが、介護現場では業務に追われているなかで利用者の安全にも気を配らなくてはいけません。その緊張感も加わることで心の余裕がなくなって他職員や利用者への言葉が強くなり、トラブルが発生してしまう…など業務にも影響を与える場合があります。

【一例】

  • 職員同士の仲が悪く、常に悪口を言っている
  • 以前から働いている職員のグループができていて対立している、新人職員が入りにくい
  • 利用者やそのご家族からのハラスメントがあっても適切に対応してくれない

2位 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため

運営者の目指す施設や運営方針に、全員が共感できるわけではありません。働き手側にも「こういう施設が良い」「こういう風に働きたい」というイメージがあり、これらが一致しなければ不満につながるでしょう。

【一例】

  • 利用者を考えていない運営方針で仕事にやりがいを感じられなくなる
  • 経営体制の変更に伴って、理念や運営方針が大きく変わってしまった
  • いざ働いてみたら面接段階で聞いていたイメージと異なっていた

3位 他に良い仕事・職場があったため

転職を考えていなくても、知人から仕事を紹介されたり、インターネットなどで求人情報を目にしたりすることで転職を考えることもあるでしょう。

何らかの不満があり日常的に転職先を探している場合は、気付いたときにはすでに転職を決めており、フォローする間もなく離職してしまう恐れがあります。

【一例】

  • 他施設で働いている知り合いから一緒に働かないかと誘われた
  • インターネット検索していた際に魅力的な求人広告を見つけた
  • 介護業務に疲れ、テレワークができる異業種に魅力を感じた

4位 収入が少なかったため

介護業界の収益構造は、その他の業界とは異なり介護報酬制度によってほとんどが成り立っています。国や利用者が費用を負担しており、そのため大幅に収益を上げることが難しい事業といえます。

さらに、コロナ禍の影響を受けた職場や人手不足の職場では、サービスの質が低下し、利用者数が減り、収益が減少し、給与が上がらないという悪循環も起きています。
職員側からすれば、給与が高いに越したことはありませんが、平均年収や他施設の給与などはインターネットなどで確認できるため、同じ地域の別施設より収入が少ないと知れば不満を抱えるケースは少なくないでしょう。

【一例】

  • 他施設で働く介護職員と比べて収入が少ない
  • 現在の収入が同年代の平均年収を下回っている
  • 激務にもかかわらず給料が低い

5位 将来の自分の見込みが立たなかったため

「昇給・キャリアアップの見込みがない」「適切な人事評価を受けていない」などの場合、仕事へのやりがいを見出せなくなったり、モチベーションが上がらなくなったりするケースが多く、介護職員としての自分の将来設計が難しいと判断して離職してしまう恐れがあります。

【一例】

  • 管理業務や資格を取得してもポジションに空きがなく、将来的なキャリアアップが見込めない
  • 昇給の条件が不明確であり、面談の機会もない

介護職の離職がもたらす課題と改善策

課題:人材不足

令和3年に厚生労働省が発表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2023年度は約22万人、2025年度には約32万人の介護職員を追加で確保する必要があると推計しています。

離職率はそれほど高くありませんが、求人倍率が高い介護業界では人材不足は慢性的な課題です。今後より人材が必要になるなか、十分な数の介護職員を確保するために改善策が求められます

介護職員の必要数について

出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について

改善策:介護職員処遇改善加算

介護職の人材不足に向けた改善策のひとつとして「介護職員処遇改善加算」があります。この加算は、以下のキャリアパス要件もしくは職場環境等要件、またはその両方を満たすことにより、介護職員一人当たり月額12,000円〜37,000円相当の加算を受け取れるという制度です。

<キャリアパス要件>

  1. 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
  2. 資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
  3. 経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

<職場環境等要件>

職場環境など賃金改善以外の処遇改善の取り組みを実施すること

出典:厚生労働省「介護職員処遇改善加算」のご案内」

たとえばキャリアパス要件を満たす取り組みとして、勤続年数や経験年数によって昇給する仕組みを整えたり、資格取得によって手当をつけられるよう変更したりするなどが考えられます。

この加算により、職場内におけるキャリアパスや、これに向けた研修等の機会の確保、将来的な昇給などといった環境改善が見込めます。働きやすさやモチベーションアップにつながるため、介護職員も継続的に安心して勤務しやすくなるでしょう。また、加算分の一定額は賃金改善に使うよう定められているため、介護職員の賃金改善を図ることができます

離職率の高い介護施設の特徴3つ

離職率の高い介護施設には、以下のように3つの共通した特徴があります。該当する場合は、改善に取り組みましょう。

また、職員側にとっても、当てはまるポイントがあれば改善することでより働きやすい環境にすることができるでしょう。

職員のコミュニケーションや笑顔が少ない

職員同士の挨拶がなかったり、笑顔が見られないような職場は、普段から職場の雰囲気に活気がなく、いきいきと働ける環境ではないかもしれません。また、そのような職場環境が、業務の連携の取りにくさや個人主義な業務を招いている可能性が高いと考えられます。

新たに職場を探している方は、実際にその職場で働くイメージを持ち、職員の表情や会話をよく確認しましょう。暗い表情の職員が多かったり、目を合わせても、挨拶など言葉を交わすことが少なかったりする場合は要注意です。

環境の改善を図る際には、メンタルヘルスの問題が関係していないかどうかも確認しましょう。

職場環境の改善が見られない

職員が職場に対して不満を抱く理由はさまざまです。たとえば、職場の人間関係が悪い、施設の方針に賛同できない、職場からのサポートや評価が適切でない、キャリアアップが見込めない、指導や教育体制を含む成長の機会が不足している、仕事量が多すぎて長時間労働が常態化している、などが挙げられます。

先述の離職理由を見てわかる通り、こういった問題を忙しさを理由に改善しようとしない介護施設は離職率が高くなります。職員同士のコミュニケーションも重要ですが、施設責任者と職員のコミュニケーションも非常に重要です。施設責任者が職員と定期的に面談を行い、職員の意見を真摯に受け止めながら、改善につなげるためのアクションを起こし、職員が働きやすいと感じるような職場づくりが信頼関係のためにも必要です。

職員の待遇が悪い

給与や各種手当、年間休日数などの待遇も、離職率に大きく影響します。厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によれば、令和4年9月の平均給与額は月給317,540円でした。このうち、手当は80,670円、賞与を含めた一時金は50,680円となっています。これを大きく下回るようなら、給与・手当等の面から見て待遇の悪い職場といえるかもしれません。

また、厚生労働省「平成30年就労条件総合調査の概況」を見ると「医療・福祉」における労働者1人あたりの平均年間休日総数は111.5日、「令和4年就労条件総合調査の概況」によると労働者1人あたりの年次有給休暇の平均取得日数は9.9日(付与日数16.4日)です。休日の取得状況についても、こうした日数をベースに考えると良いでしょう。特に有給休暇は、付与日数だけではなく実際の取得日数も確認することが大切です。

出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要
   厚生労働省「平成30年就労条件総合調査の概況
   厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況

離職率の低い職場にするには

昨今は男性の育休取得も推奨されているなど、時代や働く人のニーズが変わってきています。施設運営においても、今働いている職員側がどのようなことを求めているのかを丁寧にヒアリングし、体制やルールをブラッシュアップしていく意識が必要です。また、新しい職員を採用する前にも「どのような職場で働きたいか」「自社に期待することは何か」「将来どのような姿を目指しているのか」などを聞き、自施設や現在働いている職員とマッチしているかどうかを冷静に判断しましょう。採用後の定着率向上や運営体制の整備につながります。

離職率が高まると現場は人材不足となり、職員一人ひとりへの業務負担が増え、コミュニケーションがとりづらくなるなど、職場環境の悪化を生んでしまいます。これを解消するためには、適切な人員配置も欠かせません。

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