介護職の「退職届」「退職願」の書き方(見本付き)

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介護職の「退職届」「退職願」の書き方(見本付き)

初めての転職で悩むのが「退職願」や「退職届」の書き方です。パソコンで作成してもいいのか、書式は決まっているのか、いつごろに提出すればいいのかなど、わからないことばかりではないでしょうか。

介護職の場合、どの施設も人手不足なので早めに書類を提出したほうがよいでしょうし、自己都合による退職なのか会社都合による退職なのかによって書類の書き方も違ってきます。

この記事では、スムーズに退職するための方法として、退職願・退職届の書き方のポイントや提出の流れ、そもそも退職願や退職届を準備する前に確認すべきことがあるのかについてご説明します。

「退職願」「退職届」を準備する前に確認すること

会社に提出する「退職願」「退職届」を準備する前に、入社時にもらった就業規則で確認すべきことがあります。

就業規則の退職手続きに関する事項に「退職を希望する場合、〇カ月前までに直属の上司に退職願を提出すること」などと書かれているはずです。まずは自分の施設や事業所の就業規則を確認しましょう。

一般企業では、1カ月前までに申し出るよう記載されているケースが多いのですが、介護職の場合、1カ月~2カ月前というケースが多いようです。

期間の定めがなければ2週間で退職可能


では、2カ月前と書いてあった場合、それよりも前に辞めることはできないのでしょうか。

民法では「期間の定めのない雇用契約」の場合、退職希望日の2週間前までに退職の申入れを行えば退職することができると定められています。ただし、円満退社を望むのであれば就業規則に沿うことでトラブルを回避し、しっかりと引継ぎができるでしょう。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

(民法627条1項)

介護職の場合、周囲への気遣いから、引き止められるとついつい辞められなくなってしまう方が少なくありません。しかし、退職は労働者の正当な権利ですし、次の転職先のこともあります。どうしても辞められない場合はしかるべきところに相談するという手もあります。

https://care-infocom.jp/article/852/

「退職願」「退職届」の違いとは?

「退職願」「退職届」という言葉はよく耳にしますが、この2つの書類には大きな違いがあります。

[box05 title=”ポイント”]退職願 → 会社側に退職の意思表示をするための書類

退職届 → 会社の意向は問わず、会社に対して労働契約の解除を届け出るための書類[/box05]

円満退社をしたいのであれば退職届をいきなり出すのではなく、まずは退職願を提出しましょう。原則として退職願は撤回できますが退職届は撤回できません。また、退職願を提出したからといって労働契約が解約されるわけではありません。

書面で提出しなくても、退職はできるの?

民法上では、退職願・退職届を提する義務はなく、必ずしも提出する必要はありません。ただし、口頭だと「言った」「言わない」の問題になることもよくあるため、書面を提出した方がトラブルを防ぐことができます。

最近はメールで退職願・退職届を提出する方もいますが、社会人のマナーとしてはやはり書面が望ましいでしょう。また、メールの場合、間違ってほかの方に送ってしまう可能性もゼロとは言えないため、書面での提出をおすすめします。

「退職願」「退職届」提出の流れ

退職の意思を固める

退職手続きの流れは、手順を間違えると会社とのトラブルに発展する場合もあります。不利な状況に陥ることがないよう注意してください。

退職願を作成する

退職の意思が固まったら、退職願を作成します。次の仕事のことも気になるとは思いますが、引継ぎのことも考えて退職希望日を記載しましょう。就業規則に規定がある場合、期日までに提出しなければなりません。

退職願を提出する

退職願は直属の上司に提出します。会議室など人目につかない場所で、直接手渡しするのがマナーです。書類のフォーマットが決まっている、メールや郵送で退職願いを提出する、という企業もありますので、事前に就業規則などで確認をしておきましょう。

退職届を提出する

退職願が受理され、正式な退職日が確定したら退職届を作成し、直属の上司に手渡します。退職が正式に決まるまでは、仲の良い同僚であっても、くれぐれも内密にしておきましょう。

たとえ直属の上司が退職願を受け取ったとしても、所属長や施設長に報告し後任や退職時期について検討しなければ、簡単にOKを出せないのが組織です。これは介護業界だけでなく、どの業界でも同じです。気持ち良く転職するためにも、流れに沿って退職の手続きを進めてください。

「退職願」「退職届」の書き方とポイント

退職願と退職届の書き方とポイントについて、具体的に見ていきましょう。

[box02 title=”用意するもの”]

  • 用紙・・・A4かB5サイズの用紙を用意。白い便箋がおすすめです。罫線入りのものを使う場合は、色や柄などの入っていないシンプルなものを選びましょう
  • 筆記具・・・黒の万年筆かボールペンを使います
  • 印鑑・・・三文判でもOKですがシャチハタはNG[/box02]

【用意するもの】
・用紙・・・A4かB5サイズの用紙を用意。白い便箋がおすすめです。罫線入りのものを使う場合は、色や柄などの入っていないシンプルなものを選びましょう。
・筆記具・・・黒の万年筆かボールペンを使います。
・印鑑・・・三文判でもOKですがシャチハタはNG。

退職願・退職届の書き方

退職願見本
退職届見本
  1. 用紙の中央よりやや上の位置に、表題として本文より大きな文字で【退職願】【退職届】と書きます。
  2. 本文1行目の行末に、「わたくしごとではありますが」という意味を込め、【私事】もしくは【私儀】と書きます。
  3. 退職理由として、自己都合の場合は【一身上の都合】と書きます
  4. 退職願の場合は退職を希望する年月日を書きます。
    退職届の場合は上司と合意の具体的な退職日を書きます。
  5. 退職願はまだ打診の段階なので、【お願い申し上げます】と書いて本文を締めくくります。
    退職届は退職することは承認されていますので、【退職いたします】と書いて本文を締めくくります。
  6. 実際に退職願を提出する年月日を書きます。
  7. 行の下の方に、正式な所属部署名、役職があれば役職名を書きます。全体のバランスを見て、その下か次の行に氏名を書きます。
  8. 氏名の下には捺印を忘れないこと。
  9. 所属している施設名や事業所名、法人名を書きます。
  10. 施設長や代表取締役など組織の最高執行責任者の役職と氏名を書きます。自分の氏名より上に書き、敬称は「殿」にします。

退職願・退職届は自筆、縦書きで作成します。字の上手・下手ではなく、丁寧に書くよう心がけてください。書き終わったら誤字脱字がないか、もう一度見直しましょう。

封筒の書き方・封入のポイント

封筒も白いものを用意しましょう。便箋がA4の場合は封筒は長形3号、B5の場合は長形4号がおすすめです。

表面には、【退職願】【退職届】とはっきりと縦に書きます。字があまり細くならないよう、太めのペンを使いましょう。

裏面には、左下のほうに所属部署名と役職があれば役職名を書きます。氏名は次の行の役職名より下の位置に書きます。

便箋の折り方

文章が書いてある面を上にした状態で、下から1/3を上に向けて折ったら、残りの上部1/3を下に向けて折ります。便箋の端が飛び出したり、折れ曲がったりしないよう注意してください。封筒に入れやすいよう、封筒の幅よりもやや細めに折りましょう。

封筒への入れ方

イラストのように▲の面が上にくるようにし、便箋がシワにならないよう注意しながら封筒に入れます。上司が開けやすいようノリで封をせず、封入口を折った上から【〆】の印を書けば完了です。

最後に封筒の両面に誤字脱字がないか確認し、上司に提出しましょう。

「退職届」「退職願」でよくある疑問

「退職届」「退職願」はパソコンで作成してもいいですか?

「退職届」「退職願」はパソコンでも作成できますし、マナー違反にはなりません。ただし、一般的には「手書き」「縦書き」で作成するのが慣習となっており、自筆で書いたほうが誠意が伝わりやすいため、できるだけ手書きにすることをおすすめします。

直属の上司が「退職願」を受け取ってくれない場合、どうすればいい?

職場によっては、直属の上司が退職願を受け取ってくれないこともあると思います。その場合は、直属の上司のさらに上の上司に退職希望の旨を相談してみてください。それでも難しい場合は、さらに上の施設長や部門長クラスの上司に交渉し、それでもダメな場合には人事部の担当者にかけ合いましょう。

退職に取り合ってもらえない場合、どうすればいい?

問題が複雑化することも考えられます。いざというときのために、申し出のやり取りをメモに残しておくようにします。

基本的に労働者は民法で守られていますので心配はありません。どうしても退職を認めてもらえない場合、最終手段として退職届を配達証明書付き内容証明で送るか、直属の上司や人事課長宛にメールをします。こうすることで、退職の意思表示をいつ行ったのか証拠を残すことができます。

弁護士や労働基準監督署などの外部機関に相談するという方法もあります。とくに未払いの残業代がある場合などは、労働基準監督署が強い味方になってくれるはずです。また、内容証明を送ったことで事業者から損害賠償請求されたときなどは、弁護士に相談するのがおすすめです。

会社都合の退職の場合も退職届を出す必要はありますか?

退職願や退職届は、自己都合により従業員から申し出があった場合に必要な書類です。会社都合の場合、本来は必要ありませんが、会社によっては提出を求めてくるケースもありますので、就業規則や人事部に問い合わせて確認してみましょう。

ひとつ注意すべきなのは、会社都合の場合、退職理由として「一身上の都合」としないことです。「業績不振に伴う施設閉鎖のため」など、具体的な解雇理由を書くようにします。失業保険を受け取る時期や失業給付金の額、給付期間などにも影響しますので、くれぐれもご注意ください。

まとめ

介護の世界はどの施設や事業所も人手不足なため、退職願を提出してもなかなか受理してもらえない可能性があります。しかし、感情的になっていきなり施設長や経営者に直接退職届を提出するのは避けましょう。

同僚や周りの方のことも考えれば円満退社が一番です。何より利用者さんに引き続き良いサービスを提供するには、後任者へしっかりと引継ぎをすることが大切ですし、その姿勢は次の職場でもきっと役に立つはず。転職活動の予定や引継ぎのスケジュールのことも考え、退職の意思が固まったら早めに退職願を出すようにしましょう。

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