特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、24時間の介助が必要になる高齢者が入居する介護施設では、夜間に勤務するスタッフが必要になります。夜勤の経験がない方の中には「夜勤ってしんどいのかな…」「夜勤って辛そう…」といったイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、夜勤がしんどいと感じる理由や負担を軽くする方法などについて解説します。あわせて、夜勤の仕事内容やメリット・デメリットも紹介しますので、夜勤について正しく理解し不安を軽減しましょう。
目次
介護職の夜勤の仕事とは?
そもそも夜勤とはどのような働き方なのでしょうか。夜から朝方にかけて働くことと漠然と理解している人も多いと思いますが、夜勤の勤務体制は大きく分けて「2交代制」と「3交代制」の2つに分けられます。
まずは、それぞれの違いや特徴、実働時間などについて詳しく解説します。
2交代制の勤務時間
2交代制とはその名の通り、営業時間、介護施設の場合には24時間を2つの時間帯に分けて人員を配置する働き方です。日本医療労働組合連合会の「2019年介護施設夜勤実態調査」によると、介護施設全体の87.0%が2交代制の夜勤を採用しています。
始業時間などは各施設によって異なりますが、8時~17時までの日勤と、16時~翌10時までの夜勤に分かれることが多いでしょう。勤務時間は8時間と16時間ですが、日勤の場合にはこのうち1時間、夜勤なら2時間が休憩時間として設定されることが一般的です。
- 大半の介護施設が2交代制
- 夜勤は16:00-翌10:00勤務(休憩2時間)が一般的
3交代制の勤務時間
3交代制とは、1日を3つの時間帯に分けてシフトを組んで回す人員体制のことを指します。それぞれの勤務時間は各施設によって異なりますが、基本的には早番・遅番・夜勤に分かれており、6~14時、14~22時、22~翌6時といったシフトになるでしょう。このシフトの場合の夜勤は、22時から勤務を開始し翌朝6時に退勤することになります。
- 3交代制の夜勤は22:00-翌6:00勤務(休憩1時間)が大半
なぜ2交代制が多いのか
介護業界では3交代制で回すだけの人材を確保できず、結果的に2交代制を採用せざるを得ないというのが大きな理由です。各施設や事業所では資格取得援助を行うなど、未経験者でも入りやすい環境作りに取り組んでいますが、加速する高齢化に人材確保が追い付かず、慢性的な人材不足が続いているのが現状です。
夜勤の1ヶ月あたりの目安
夜勤のみに従事する夜勤専従という契約でないのなら、毎回夜勤が回ってくるわけではありません。2交代制の場合、2019年介護施設夜勤実態調査によると月平均で4.4回程度が夜勤シフトとなっています。ただし、施設によって人員に違いがあるため、1ヶ月に6~8回ぐらい夜勤が回ってくる場合もあります。3交代制の場合には、先述した通り月平均で5.9回程度が夜勤シフトになります。一カ月にどのぐらいの日数働くのかにもよりますが、月に22日出勤すると考えた場合には、日勤の日数よりも夜勤として出勤する日数のほうが少なくなります。
- 2交代制の夜勤回数は4,5回/月、ただし施設により6~8回の場合も
- 3交代制の場合、夜勤回数は6回/月程度
仕事内容
夜勤ではどのような仕事をするのかみていきましょう。ここでは、2交代制の夜勤を例に仕事内容をご紹介します。
引継ぎ、夕食の準備・介助
出勤したあと、日勤のスタッフと引継ぎをおこなうと夕食の時間になります。基本的には、一番忙しい時間になるでしょう。
夕食介助は、ただご飯を食べさせればいいというものではありません。しっかりと利用者さんとコミュニケーションを取ることが、スムーズな介助につながります。また、利用者さんごとに介助が必要な程度も変わってきます。それぞれの利用者さんにあわせて介助しつつ、時間内に終わらせなければいけないので慣れないうちは大変だと思う人も多いでしょう。
服薬介助
介護施設に入居している人は、決まった時間に決まった薬を飲まなければいけない人も多くいます。そのため、利用者さんにあわせて投薬の介助をします。薬を飲むタイミングや時間、飲ませ方なども異なりますし、ミスによって大きなトラブルが起こる可能性もあるので注意しましょう。
排泄介助
食事の前後や就寝前などの定められたタイミング、もしくは必要なタイミングで介助を行います。排泄の介助も、人によってどの程度介助すればいいのかが異なります。そのため、利用者さんの状態などにあわせて適切な介助が必要です。また、排泄介助は起きている時間だけではありません。寝ている時間にトイレに行きたくなる利用者さんもいるため、コールなどで呼び出される場合もあります。
巡回・安否確認
利用者さんが就寝したら、安全確認のため定期的な巡回も必要です。施設にもよりますが、1~2時間おきに施設内を巡回して利用者さんに異変がないか、施設に異常がないかを見回ることになるでしょう。また、コールが自分で押せなかったり、寝返りが打てなかったりする人もいます。おむつ交換が必要な人もいるため、定期的に介助が必要な人のケアをしましょう。
起床介助・朝食介助
起床の準備は時間との勝負です。時間内に終わらせられないと、朝食を始められないので効率良く進めるように意識しましょう。介助の程度が重い人などは起床の準備に時間がかかる場合もあります。そのため、その人にあわせておこなうことも重要です。起床介助は、起こすだけではありません。歯磨きや着替え、排泄の介助なども含まれているので、夜勤の仕事の中でも忙しい部類に入るでしょう。全員の起床が終わったら朝食の介助をおこない、日勤スタッフに引き継ぎをして業務は終了です。
夕食、服薬、排泄介助から就寝までがはじめの仕事
夜間の見回り、安否確認から起床後の朝食までをサポート
具体的な時間の流れや、施設ごとの働き方の違いなどは、下記の記事でご紹介しています。
夜勤はしんどいと言われる理由
夜勤がしんどいと言われる理由には、「肉体的な疲労」と「精神的な疲労」の2つが重なることが挙げられます。具体的にはどのような疲労があるのか、それぞれみていきましょう。
肉体的な疲労
夜勤の場合、日勤よりも勤務時間が長くなります。休憩時間や待機時間があるとはいえ、16時間拘束されることになるので、どうしても肉体的な疲労がたまりやすくなります。
特に、一人夜勤の場合は仮眠の時間を取ることができない場合も多く、疲労がたまる原因の一つです。
また、変則勤務ということで、慣れない場合には体調を崩しやすくなります。
夜働いて朝に帰宅して眠るという昼夜逆転の生活になるので、人によっては上手く眠れずに疲れが抜けにくくなってしまう場合があります。
精神的な疲労
夜勤では日勤に比べて職員の数が少ないので、緊急対応が必要になった場合に、限られた人員で考えたり対応したりしなければいけません。そのため、精神的にも負荷がかかってしまいます。
また、施設によっては1人夜勤の場合もあります。2019年介護施設夜勤実態調査によると、2交代制の夜勤の場合には約6割程度が1人夜勤という結果も出ています。そのため、すべてを1人で行わなければいけない心理的重圧、孤独感などが重なって、精神的な負担が大きくなるのです。
- 変則的な働き方&長時間労働の中、仮眠が取れないケースも
- 少ない人数での心理的プレッシャー、孤独感もある
辛い夜勤の負担を軽くするには、体調管理が重要!
辛い夜勤の負担を軽くするためにはどうしたらいいのでしょうか。負担を軽くする体調管理のポイントをご紹介します。
睡眠のとり方
夜勤前にできるだけ睡眠をとろうと寝だめをしてしまう人もいますが、これは逆効果です。夜勤後の睡眠が浅くなって疲れが抜けにくくなるので注意しましょう。夜勤前は数時間程度の仮眠にとどめて、夜勤後にしっかり眠るのも良い方法です。
食事のとり方
夜勤中はお腹が空いてしまいますが、消化に良いものを摂ることがポイントです。夜勤では内臓が冷えやすいので、お湯を注ぐだけで作れる温かいスープやおかゆなどを食べるといいでしょう。
夜勤明けの過ごし方
夜勤明けではできるだけ早めに睡眠をとったほうがいいでしょう。早めに寝て日中は普通に過ごすことで、体内サイクルが整いやすくなります。また、趣味を楽しむ、友人と会うなどしてリフレッシュするのも大切です。
介護職で夜勤を行うメリット
長時間の勤務で大変そうというイメージのある夜勤ですが、実はメリットもたくさんあります。
夜勤の場合、特にトラブルやコールがなければ、日勤よりも比較的自由な時間が多くなります。また、収入面でのメリットも大きなポイントです。夜勤の場合には手当が付きます。2019年介護施設夜勤実態調査によると、2交代制の夜勤手当は平均で6,125円となっています。施設によっては最大15,157円の手当が付く場合もあるので、大幅な収入アップにつながるでしょう。
また、2交代制の場合には、1回の勤務で2日分の時間働きます。そのため、施設にもよりますが、夜勤明けとその翌日は休日になることが多く、1日半以上が自由な時間になるので連休気分を味わうことができ、趣味や買い物、レジャーなどで時間を有効活用できます。
- 夜勤の最大のメリットは夜勤手当による大幅な収入アップ!
- 夜勤明けは1日半以上が自由!時間を有効活用できる
まとめ
慣れない間は「夜勤はしんどい」と感じることもあるかもしれませんが、夜勤前後の過ごし方を工夫することで、負担を軽減することは可能です。
また、未経験で介護職に就いた場合、ほとんどの施設ではいきなり夜勤に入るということはありません。日勤である程度の経験を積んでから先輩職員と一緒に夜勤に入るのが一般的です。
先輩職員に教わりながら、徐々に業務に慣れていけば良いでしょう。
夜勤には「高収入を狙える」「時間を自由に使いやすい」というメリットもあるので、介護職に興味をお持ちの方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。