介護現場に勤務していて、入浴介助の仕事に負担を感じている介護職の方も少なくないと思います。介護業務の中でも、特に入浴介助は身体的にも精神的にも大きな負担がかかる仕事だといえます。この記事では、入浴介助をはじめとした介護の仕事において大変なことや、疲労回復やストレス解消に大切なこと、介護職のやりがいについて解説していきます。
入浴介助が疲れる2つ理由
体力的な疲れ
入浴介助は、体が自由に動かせない利用者さんを支えなければならないため、体力的な負担の大きい仕事だといえます。利用者さんの介助を必要とする度合いにもよりますが、対象となる人のペースに合わせて動作の妨げにならないように注意したり、場合によっては全体重を支えたりする必要が出てきます。また、浴室という場所柄、狭くて湿度が高く暑いなかでの業務となるため身体的な負担も大きくなります。そのような環境下の力仕事ですから、介助職は熱中症の危険も隣り合わせです。さらに、浴室は濡れていて滑りやすいため、利用者さんも介助職もケガに気をつけなくてはいけません。
精神的な疲れ
入浴介助中は事故が起こりやすいため、体力的な負担だけではなく精神的な負担も大きくなります。
利用者さんによって動作の癖や持病の有無なども異なるため、ひとりひとりに適切な対応をしなければなりません。また、作業の段取りを念頭におきながら入浴中の事故を防ぐための注意をしなければならないため、気を緩められない業務です。常に相手の様子を観察しながら配慮して介助を進めていく必要があり、集中力や気遣いが求められます。
入浴介助の疲れを軽減するコツ
入浴介助は重労働であり、体力的にも精神的にも負担の大きい仕事だといえます。そのため、介助者はその負担を軽減しながら作業を進めていく工夫が必要です。介助者が疲れにくくするために意識すべきことや、入浴介助の負担を少しでも減らすための方法ついてご紹介します。
水分補給をしっかりする
入浴介助をする際は、意識的にしっかりと水分補給をするようにしましょう。入浴介助の仕事は高温多湿の中で汗をかきやすいため、脱水症状になりやすい条件がそろっています。2015年 日本静脈経腸栄養学会雑誌の介護現場における入浴介助者の体液の変動に関する検討によると、入浴介助の業務1時間につき、少なくとも200ml程度の水分補給が必要だといわれています。仕事に集中していると、のどの渇きにも気づくことができません。知らず知らずのうちに体の水分が足りなくなっていきますので、入浴介助をする前としたあとにたっぷりの水分を補給するようにしましょう。
ポイントは、自分が適量だと思っている量よりも多めに水分を摂取することです。入浴介助は重労働なのでスポーツ用のドリンクを活用するのもよいでしょう。長丁場になる可能性もありますし、何があるか分からない環境ですから、とにかく十分に水分を補給して負担を抑えるように努めることが大切です。
腰痛の人はコルセットなどグッズを活用する
腰痛の人は、腰の負担を減らすためにコルセットやサポーターなどのアイテムを活用することも有効です。入浴介助では、介助する相手の体重を支えて動作をサポートする必要があるため腰にとても負担がかかりやすく、腰痛や、ひどい時にはぎっくり腰になってしまう可能性もあります。介護用のコルセットやサポーターも増えてきており、着用することで骨盤から背骨にかけてサポートしてくれるため、腰に無理な負担がかかりにくくなります。
腰の痛みを気にすることなく仕事に集中できれば精神的なストレスの軽減にもつながりますし、食事介助や中腰で行うほかの業務でも心強い味方となってくれます。腰痛を軽減するアイテムを有効活用することで自分を守り、長く働き続けていける体を維持しましょう。
ボディメカニクスを活用する
体の負担を軽くするためには、介助する際にボディメカニクスを活用するのも良い方法です。
ボディメカニクスとは、姿勢の安定や力の分散などの理論を用いて介護する側の身体的負担を軽減する技術のことであり、介護の現場や病院ではよく使われています。
例えば、相手の体を支えるときは腕先で支えるのではなく腕や体全体で支えるために、できるだけ体を密着させることで負担が小さくなるといったものや、支持基底面積を広くとるために足は大きめに開いたほうが安定するといったものです。また、重心は低いほど安定するため、腰は曲げずに椅子を使って低い位置で介助を行うことで楽に業務を行うことができます。ボディメカニクスには介護職に役立つ理論がたくさんあり、これを活用することで身体的負担を減らすことができます。
- 水分補給は1時間に200mlが目安
- 体をサポートするグッズやボディメカニクスを活用して身体的負担を軽減!
入浴介助が苦手な人におすすめの施設とは
入浴介助が苦手な人や体力に自信のない人は、利用者さんの数が少なく入浴介助の業務が少ないところや、入浴介助を行うことのない職場で働くことも選択肢の1つです。入浴介助の仕事や負担が少ない傾向にある施設について紹介していきましょう。
自立度の高い有料老人ホーム
自立度の高い有料老人ホームでは、介護度の高い介助が必要な利用者さんがいないため、入浴介助が必要であっても負担が軽いことがほとんどです。介助の際、体の不自由な利用者さんが多いと介助者側の負担が大きくなりますが、そういった施設であれば介助の技術や体力に自信がない人にもおすすめです。
入浴介助専任のスタッフがいる施設
高齢者施設の中には入浴介助専任のスタッフが在籍している施設もあります。入浴介助専任のスタッフがいる施設では、浴室までの誘導や入浴介助スタッフの補助業務が行えれば問題ありませんので、入浴介助の仕事をすることなく勤務できます。入浴介助の仕事が苦手な人には人気の職場であるといえるでしょう。
夜勤専従といった働き方も
一般的に夜勤の仕事では入浴介助がないため、夜勤専従という働き方を選ぶことも1つの方法です。夜勤では生活が不規則になりやすいといったデメリットもありますが、入浴介助のような利用者さんの動作をサポートする仕事自体が少ないため、肉体的な負担は比較的少ない傾向にあります。
入浴介助がないサービス
たとえば短時間型のリハビリ中心デイサービスなどでは、入浴介助を実施していないものもあります。施設系では入浴介助がないケースはまずないと思いますが、働き方の一つとして日勤帯のみでのデイサービスもありだという場合には検討材料になります。
- 自立度の高い有料老人ホームは入浴介助の負担が軽い!
- 入浴介助専任のスタッフがいる施設や、夜勤専従なら入浴介助なし!
介護職の疲れを解消するコツ
介護職は人の命や健康を預かってサポートをしていく大切な仕事であるため、介助者は常に自分の心身の健康管理を怠らずに仕事を行う必要があります。日々の業務で溜まっていく介護職の疲れを解消する方法を紹介していきましょう。
ストレス発散方法を見つける
介護職は身体的にも精神的にも負担が大きい仕事のため、自分に合ったストレスの発散方法を見つけましょう。日頃からしっかりと睡眠時間を確保して質の良い睡眠をとったり入浴をしたりして体調を整えることが基本ですが、特に大切なのは精神的なストレスの解消です。例えば、家族や友人に悩みを聞いてもらったり、他愛もない話をしたりすることでストレスを発散することができるでしょう。仕事で溜まるフラストレーションを休みのうちに解消できると良いでしょう。
ストレスを解消するためには、業務後や休みの日に没頭できる趣味を見つけておくことも大切です。精神的なストレスの発散には、おもいっきり体を動かすことが効果的です。たまにはスポーツやトレーニングなどをしてみるのはいかがでしょうか。体を動かすとストレスに強いホルモンが分泌されるといわれており、メンタルが安定して前向きになれる効果が期待できます。ランニングでもウォーキングでも遊びまわることでもストレスは発散できます。自分が楽しいと思えることや好きなことをして英気を養いましょう。
体調管理を万全にする
介護職では生活習慣や生活のリズムが乱れやすくなりますので、意識して整えるようにしましょう。もちろん休みの日に栄養を気にせず好きな物をおもいっきり食べるのは悪いことではありませんが、習慣にならないように食生活や睡眠時間の乱れを整えることを心掛けるのが大切です。
- 「遊ぶ」「食べる」「寝る(休む)」の3つの方法で、体と心の健康維持が大切!
疲れを回復したら介護職のやりがいを増やしていこう!
介護職は身体的にも精神的にも大変な仕事で疲れも溜まりやすいですが、とてもやりがいのある仕事だといえます。休みの日にしっかりと疲れをとり、自分の仕事のやりがいを見直してモチベーションを保っていきましょう。やめられない介護職の魅力について紹介していきます。
働きがいがある
何といっても介護職は人の役に立つ仕事であり、利用者さんやそのご家族を通してそのやりがいを直接感じることができます。利用者さんから直接感謝されることもあり、人の役に立っている実感があるため、それがモチベーションにつながる仕事だといえます。
資格や技能が活かせる
介護職は、取得した資格や介護の経験を生かしてキャリアアップができる仕事です。資格や別の介護施設での実務経験をそのまま生かすことができるため、休職したり転職でブランクがあったりしても問題なく働けるといったメリットがあります。
これからも必要性が高まる
介護職は、需要が高く将来性のある仕事だといえます。日本では高齢者が増えており、日本全国で必要とされている仕事だからです。厚生労働省老健局の「平成30年度 公的介護保険制度の現状と今後の役割」という資料によると、介護サービス全体の利用者さんは2000年からの17年で約3.3倍に伸びています。介護の資格や経験はニーズがあるため、資格や経験を持っていて損はないでしょう。今後も介護サービスや介護施設の需要は高まっていくといわれています。
頑張り過ぎる前に、職場を変えて気分転換してみては
入浴介助の大変さや負担軽減の方法、介護職のやりがいについて紹介してきました。入浴介助業務は、施設によって負担の差があります。頑張り過ぎる前に、キャリアアップをかねて新しい職場に転職することも選択肢の1つです。介護職はたくさんの職場があり、これからもニーズが高まっていく仕事であるため、自信をもって自分に合った職場を探してみてはいかがでしょうか。