更衣介助とは、文字通り衣服を着替える動作を手助けすることをいいます。更衣介助は、1日の始まりとなる朝や、寝床に入る前にはもちろんのこと、入浴の際などにも頻繁に行われます。この記事では、身体の動きにトラブルを抱えた利用者さんの着替えを介助する際、どうしたらスムーズに行えるのか、その方法を紹介します。
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目次
更衣介助とは
加齢や身体の機能などが原因で、自分1人ではうまく着替えることが難しい方の着替えを手伝うことが更衣介助です。衣服を着替えるという行為には実にたくさんのメリットがあり、更衣介助はとても大切な作業です。衣服を着替えることにより皮膚を清潔な状態に保つことができるため、褥瘡(じょくそう)などをはじめとする病気を予防することができるのです。
また、朝の起床時に寝間着から着替えることで日常にリズムが生まれるので、単調になりがちな生活にメリハリを与えたり、気分をリフレッシュさせたりする効果も得られます。着替えの手助けは、利用者さんのQOLを向上させるためにも大きな意味を持つ介助なのです。
更衣介助の手順
この段落では更衣介助を二つのパターンに分け、それぞれの作業の流れを説明します。
寝たままの状態での更衣介助
寝たポジションで、前開きタイプの上着で更衣介助(着替え)を行う場合を説明します。
- 最初にボタンを外して広げ、肩の部分だけ上着を脱いだ状態にします。
- 横向きにして、上になった側の上着を外し、腕を脱がしましょう。
- そのままの体勢で、引き続き着替え用の服の片袖を通し、肩と背中にも着せます。
- 次に仰向けになってもらい、脱ぐほうの洋服の袖をもう一方の腕から脱がせます。
- 先ほどとは反対の腕が上になるよう横向きになり、着替え用の服に腕を通し、再び仰向けになってからボタンを留めて背中のしわやたるみを伸ばせば完了です。
寝た姿勢でズボンの更衣介助を行う場合の手順です。
- 横向きになってもらい、お尻の下までズボンを下げてから仰向けに戻します。
- ズボンを交互にずらしながら脱がしたら、着替え用のズボンを足先から通しましょう。
- そして、太ももの位置までズボンを上げ、横向きにポジションを変えます。
- 上側のズボンをお尻まで上げ、次に、反対側の横向きにしてからそちら側もズボンをお尻まで上げます。
- お尻付近のしわやたるみを伸ばし、ズボンを整えれば終了です
座った状態での更衣介助
座った姿勢でかぶりタイプの上着の着替えを介助する際の手順です。
- まず、上着の裾部分をたくし上げ、片方の腕を袖から抜きます。
- 次に、頭から上着を抜き、引き続き、反対側の袖から腕を抜きます。これでかぶりタイプの上着を脱ぐことができました。
- 着るときは、着替え用の上着の片袖を通します。
- 次に身ごろを頭にかぶり、その後、もう片方の袖に腕を通し、しわを伸ばしたら完了です。
座った姿勢で、ズボンを着替える介助の流れについてです。
- 最初に、ズボンのウエスト部分を可能なところまで下げます。
- 次に立ち上がってズボンをお尻の下まで下ろし、再び座ります。
- 座ったまま左右交互にズボンを下げてゆき、足首から抜きましょう。
- 着替え用のズボンの裾に片方ずつ足を入れ、お尻の下の位置までズボンを上げます。
- 立ち上がってズボンをウエスト位置まで上げれば完了です。
更衣介助のコツ
更衣介助に伴う具体的な方法に着目してみます。
服の着脱について
一人で着替えることが難しく介助が必要な方の多くは、身体にマヒや、関節が拘縮しているなどの症状があります。また、痛みの症状を抱えている方もいらっしゃるでしょう。更衣介助を行う際の基本ルールは「脱健着患(だっけんちゃっかん)」です。すなわち、脱ぐ際には問題のない側から始め、逆に、着るときには症状のある側から行うという意味です。このルールを守ることで、更衣介助を円滑に進められるようになります。
介助する部位について
身体にマヒや関節の拘縮、または、痛みがある場合、着替えるときに該当部分の手や足を持ったり引っ張るなどの力を加えると、関節や皮膚を傷めてしまうリスクが発生します。骨折していて動かせないケースなどは、関節を持ってはいけません。そのため、基本的には腕や足の関節を慎重に支えながら安定させ、介助にあたることが求められます。利用者さんが痛みを感じることの無いように、ゆっくりと介助を行いましょう。
気をつけたいポイント
更衣介助の際、念頭に置くべきポイントとして、プライバシーへの配慮と皮膚の確認があります。可能なら、着替えの介助は同性のスタッフが対応し、さらに、カーテンやタオルケットなどを活用して露出を減らすことでプライバシーの保護に努めましょう。
また、更衣介助は皮膚の状態を確認するのにとても適したタイミングです。乾燥していないか、あざはできていないか、皮膚の一部がはがれるなどの異常はないかなどをチェックします。お尻や背中などに、褥瘡ができていないかも確認しましょう。
更衣介助前の注意点
更衣介助を進めるにあたり、注意する点がいくつかあります。スムーズな更衣介助を行うために、重要となるポイントをみていきましょう。
衣類選び
更衣介助を円滑に進めるポイントのひとつに、衣服選びがあります。
着替えの手助けが必要となる方の衣類を選ぶ際は、着替えやすいものを選ぶことが大切です。まず、デザインやサイズに関しては、ぴったりとしたジャストサイズではなく、ゆとりのあるタイプを選ぶと動きやすくなります。また、着脱が簡単な衣服を選択することも重要です。
普段着用の上着は、伸縮性のある衣服が望ましいでしょう。身体にフィットしてぴったりするデザインは、着脱時にひじや肩が通りにくく、思わぬ怪我を招くリスクがあります。伸縮しない生地の場合は、ゆったりとした大き目サイズを選ぶとよいでしょう。ズボンもウエスト周りの締め付けを意識して、ゆとりのあるサイズを選んだほうが無難です。デニムのような硬い生地や、後ろにポケットやボタンがついているデザインのズボンは、褥瘡の原因になることがあるので注意が必要です。
下着は、ゆったりと履けるものが最適です。さらに、座骨の付近に縫い目がないデザインだと着心地もよく快適です。靴は、幅が広めのタイプがおすすめです。また、少し大きめのサイズを選びます。
その他の注意点
実際に更衣介助を行うときの注意点をご紹介します。
まず、室内の気温が適温かどうかに気を配りましょう。特に冬は、衣服を脱いでも十分温かくなるよう、部屋の温度を調整してから着替え始めることが重要です。プライバシーへの配慮も重視されるべきポイントです。バスタオルやブランケットなどを用意して、必要に応じて体を隠すなどするとよいでしょう。不意にバランスを崩してしまうことも考えられるため、転倒や転落には細心の注意を払います。
また、着替えを早く無事に終わらせようとして、すべての動作に介入してしまうことは避けたほうがよいでしょう。利用者さんが自力でできる部分は本人に任せ、身体を無理に引っ張るなどせず、難しい部分だけを手伝うスタンスで臨む介助が理想的です。
たとえば、Tシャツの袖やズボンの裾に手や足を通すときは、介助される人の腕や足、さらには関節部分をしっかりと支えながら行います。自分1人で身体を動かすことが難しいときは、特に注意しながら慎重に作業を進めることが重要です。拘縮(こうしゅく)の症状がある場合は、思わぬ怪我につながるおそれもあるので、相手の状態に気を配りながら、関節の可動域を把握しつつ介助します。
スムーズな更衣介助を行おう!
衣服の着脱は日常生活において、欠かせないものです。着替えの介助をスムーズに行うために、心に留めておきたいポイントは、「更衣介助の手順の理解しておくこと」「介助に関わる事前準備をしておくこと」の2つです。これらのポイントを押さえ、しっかりと更衣介助の知識を身に着けることができれば、自信を持って利用者さんの着替えを介助することができるのではないでしょうか。