高齢者の体調管理~疾患の特徴①~

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高齢者の体調管理~疾患の特徴①~

私たちがケアに携わる高齢者は、様々な既往歴などを含む疾患を持っています

今回は『高齢者の体調管理~疾患の特徴①~』をご紹介させて頂きますので、施設や事業所のサービスの質の向上にご活用頂ければ幸いです。


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高齢者の主な疾病

高血圧症   

高血圧とは

持続して血圧が高い状態のことです。高血圧は加齢と共に増加し、高齢者の約3分の1が高血圧といわれています。

老人性高血圧といわれるものは、収縮期血圧は高いが拡張期血圧は高くない「収縮期高血圧」が多くみられます(最高血圧(収縮期血圧)140mmHg以上、最低血圧(拡張期血圧)90mmHg以上)。

※正常値は最高血圧(収縮期血圧)139mmHg以下、最低血圧(拡張期血圧)89mmHg以下

これは、大動脈壁が硬化して伸展性や弾力性が低下するために、血圧を強い力で送り出すことによって起こります。また、日内変動が大きいのが特徴で、特に夜間や起立時、食後に血圧が下降しやすくなっています。

多くは生活習慣(塩分の摂りすぎ、オーバーウエイト、喫煙、過度の飲酒など)が原因ですが、加齢による高血圧は原因が明らかでない本態性高血圧症が大部分を占めています。

主な症状・合併症

頭が重く感じる、頭痛、肩こり、めまい、吐き気、耳鳴りなどは高血圧の症状としてよく知られていますが、高血圧に特有な自覚症状はありません。実際にはほとんど無症状のため、治療に至らず急に合併症を起こすことがあります

高血圧状態が続くと動脈硬化が進み、その結果、脳卒中や心不全、腎不全などの合併症を引き起こしやすくなります。

急激に血圧が上がった場合にも、上記のような頭重感・頭痛・肩こり等の症状がみられることがあります。利用者から類似する症状を訴えられた場合は、状況に応じて主治医に相談・連絡、または病院の受診を勧めてください。

【ケアのポイント】

ナトリウム(食塩)と動物性脂肪の摂取を控える

  • 1日に食塩の摂取量は5~6gを目安に調整
  • カリウムを多く含む果実・野菜を適度に摂取
  • 動物性脂肪は高血圧と合併しやすい動脈硬化の予防のために控えめにする

排泄・入浴時には注意する

  • 排便時のいきみや高温の湯への入浴は血圧を上昇させるため、便秘予防や室温調整に注意

血圧の変動に注意する

  • 急に立ち上がって血圧が下がる起立性低血圧や、食後の消化器系に血液が使われる事で、食後30~90分は低血圧が起こりやすくなるため注意

高齢者の高血圧の特徴として、心機能や筋力の低下、血行不良などにより血圧の変動がしやすくなっていることが原因です。

【日常生活上の留意点】

精神的ストレスを避ける

睡眠不測、不規則な生活、過度のストレスなどで緊張が続くと、急に血圧が高くなることがあります。

過度な嗜好品の摂取を避ける

降圧剤の効き目を悪くする喫煙や、過度な飲酒は控え、心臓や血管に負担をかける肥満にならないように気を付けましょう。

適度な運動をする

有酸素運動をできるだけ行いましょう。ほどよい運動には血圧を下げる働きあり、ストレスや肥満を解消します。

糖尿病

糖尿病とは

血糖値が異常に高くなることによって全身の臓器に障がいが起こる疾病のことです。インスリンの分泌不足、または、インスリンの効果が十分に発揮されないことが主因で、大きく分けて、2つのタイプがあります。

1型糖尿病:インスリン依存型糖尿病        

すい臓のβ細胞が破壊され、インスリンが全く分泌されないか、極度に分泌能力が低下します。若年者に多くみられます。発症が急激で進行が早く、インスリン注射が必要です。

2型糖尿病:インスリン非依存型糖尿病

インスリン分泌能力の低下と、インスリン抵抗性が原因で発症します。中年期過ぎに多く見られます。遺伝的な要因も推測されていますが、大部分は食べすぎ・飲みすぎ、オーバーウエイト、運動不足、ストレスなど、いわゆる生活習慣に関係しているといわれています。

すい臓でのインスリン産生能力は保持されていますので、食事療法・運動療法で治療可能なものがほとんどです。日本人の糖尿病の95%はこちらのタイプです。

症状

初期には自覚症状はほとんどありませんが、進行すると喉がひどく渇いて水分が欲しくなり、尿量が増加します。さらに進行すると、身体が痩せて皮膚感染を起こし、できものができやすくなります。化膿を起こしやすく、病気に気づかないまま放置すると様々な合併症を引き起こしてしまいます。

【糖尿病3大合併症】

◆糖尿病性網膜症

網膜の毛細血管が破綻を生じて出血を起こしたり閉塞によって血流が途絶えたりすることで、網膜に障害を及ぼす病気です。失明するケースも多く報告されています。

◆糖尿病性腎症

高血糖状態が続き腎不全を起こすと透析に至るケースもあります。

◆神経障害

高血糖により血流が悪くなったことにより末梢神経に障害が起こり、知覚、運動神経に影響が及ぶと手足のしびれ、痛み、冷熱に対する感覚麻痺、筋力低下、免疫力の低下による細菌感染から足の切断にいたるケースもあります。

特に低血糖(血糖値が60mg/dl以下または50mg/dl以下の状態)がみられる場合は、注意が必要です。症状として、冷汗・動悸・手足の震え・意識消失があり、その際はブドウ糖(なければ砂糖)を摂取をすることが必要です。また、状況に応じて主治医に相談・連絡、病院の受診を勧めましょう。

【ケアのポイント】

感染症に注意する

糖尿病になると、白血球の活力、免疫能が低下し、感染症に対する抵抗力が弱まるため、その予防に気を配ることが必要があります。そのため、身体の清潔を心掛けましょう。

食事療法

身長・体重などから1日の適性エネルギー量が決まっているため、それを守って食事を提供します。医師や栄養士の栄養指導が重要です。

【日常生活上の留意点】

運動療法

インスリンの働きが悪くなる原因の一つは運動不足です。ただし、急激に激しい運動を行うと血糖値を必要以上に低下させ、逆に低血糖状態になる恐れがありますので、ウォーキングなど激しすぎない運動がおすすめです。運動療法は、食事療法と併用されることが多いので医師に相談して行いましょう。

腎不全

腎不全とは

老廃物を尿として排出する腎臓の機能が低下し、本来の血液の浄化作用などを十分に行えない状態が進行した状態を腎不全と呼びます。

経過によって急性腎不全と慢性腎不全に分けられます。腎不全の末期は尿毒症と呼ばれ、死に至る可能性もあります。慢性腎不全では人工透析が必要です。

高齢者の場合、同時にさまざまな病気をもっている確率が高いため、薬剤の投与機会が多い傾向にあります。特に抗生剤や鎮痛解熱薬、悪性腫瘍(がん)の治療薬、あるいは検査のための造影剤使用などが腎不全の原因になることもあります。治療法として、血液透析やCAPD(持続腹膜透析)が導入されています。

※血液透析:人工腎臓で血液を浄化する
※持続腹膜透析:腹腔内に透析液を注入し血液を浄化

症状

症状はこの病気に特有なものはありません。全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、そのほか精神面での症状では不眠、せん妄(意識障害の一種)などが現れる場合もあります。しかし、まったく無症状のこともしばしばあるので注意が必要です。

脱水、発熱、過労、大けが、手術などが原因で病状が悪化することがあります。特に、脱水になり嘔吐や下痢で水分の補給ができないときには、点滴注射による水分補給が必要なため、必ず主治医に連絡しましょう。また、その他の症状が現れた場合でも状況に応じて主治医に相談・連絡、または病院の受診を勧めてください。

【ケアのポイント】

水分量

水分制限のある方は1日の水分量を守りましょう。むくみや体重増加などの症状が出たら要注意です。また、1日の尿量、回数、色を観察し、1日の尿量が減っていないかチェックしましょう。

食事

減塩と低タンパク食が基本です。制限については合併症によっても異なるので、主治医の指示に従いましょう。また、水分制限がある人は、便秘になりやすいため、繊維質の多い食品をとり、毎日決まった時間にトイレに行く、などの工夫が必要です。

【日常生活の留意点】

安静にする

激しい運動をすると、新陳代謝が活発となり老廃物も多く作られます。腎臓の負担を避けるために激しいスポーツなどは控える必要があります。しかし、腎臓の機能が安定した状態にある場合は、日常的な家庭生活や普通の事務仕事なら、問題はないと言われています。

禁煙

タバコは全身の動脈硬化を促進させて腎臓の動きを悪くするだけでなく、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞を起こす危険性が高いことが知られています。タバコは病気を進行させないためにも可能な限り止めましょう。

知識は利用者の体調悪化の防止につながる

疾患に対しての知識を持ち、日常生活のケアのポイントの知識を身に着け対応を行うことは、利用者の体調悪化を防止することにつながります。

「受診をしているから…」「訪問看護が入っているから…」ではなく、日常生活の留意点を基に悪化防止の対応ができるように、施設や事業所全体で研修、申し送りなどを活かし、周知徹底を心がけていきましょう。

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