ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間でやり取りされるケアプランデータなどの帳票を、オンライン上で送受信するためのシステムです。厚生労働省が進める取り組みの1つで、2023(令和5)年4月から本格始動しています。
この記事ではケアプランデータ連携システムの概要をはじめ、導入のメリットや手順などを解説します。導入を検討している事業所はぜひ参考にしてください。
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目次
ケアプランデータ連携システムとは
ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間でやり取りされるケアプランデータなどの帳票を、オンライン上で効率的に送受信するためのシステムです。居宅サービス計画や居宅サービス利用表をデータ化することにより、事業所間で安全にやり取りすることができます。
システムの開発は、厚生労働省より依頼を受けた公益社団法人国民健康保険中央会が担い、暗号化して通信を行うため、セキュリティも強化されている点が特徴です。
同システムは、2023(令和5)年4月から本格稼働しており、導入企業が増えています。導入企業は、独立行政法人 福祉医療機構が運営する情報サイト「WAM NET」内にある「ケアプランデータ連携システム利用状況」からも確認できます。同サイトによると2023年11月末時点で、全国8284ヶ所の事業所がシステムを利用しています。
現時点で導入は義務化されていない
ケアプランデータ連携システムの導入は、現時点では義務化されておりません。ただし、事業所に好影響を与える可能性が高いシステムであることから、導入が推奨されています。
介護業界では人材不足と、膨大な帳票整備および管理における作業負担などの課題があり、業界全体でICT化による業務改善の意識は高まっています。将来的には、ケアプランデータ連携システムの導入が義務化される流れも予想しておいたほうがよいでしょう。
2024年度の介護報酬改定に向けた審議会でも、ケアプランデータ連携システム活用時における居宅介護支援2の逓減制※1についてさらなる緩和の見直しが検討されています。具体的な内容としては、ケアプランデータ連携システムの活用を要件に加えたうえで、逓減制の適用件数を45件から50件に緩和する案が示されてされています。
※1:逓減制とはケアマネジャー1人あたりの担当件数が上限を超えると、利用者の基本報酬を引き下げる仕組みのこと。
ケアプランデータ連携システムの利用料
1事業所あたりのケアプランデータ連携システムのライセンス料は、年間21,000円(税込)です。ひと月あたりで計算すると、月額1,750円の利用料となります。支払い方法は介護給付費からの差引が基本ですが、口座振り込みに切り替えることも可能です。
月の前半(1~15日)に利用申請を行った場合、翌月の介護報酬支払分から差し引かれます。月の後半(16日以降)の申請に関しては翌々月の差引となります。
ライセンスの有効期間は1年間のため、毎年更新が必要です。
ケアプランデータ連携システムの仕組み
ケアプランデータ連携システムは、以下のように居宅介護支援事業所と介護サービス事業所で利用している介護ソフトと連携させ、データを暗号化させながら、帳票の送受信を行うシステムです。そのため同システムを利用するには、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所でそれぞれ介護ソフトを導入する必要があります。
同システムでやり取りできる帳票は以下の4種類です。
- 居宅サービス計画(第1表)
- 居宅サービス計画(第2表)
- サービス利用票(第6表)
- サービス利用票別表(第7表)
- 週間サービス計画書(第3表)
上記1~4のデータはCSVファイルで送受信されます。5の週間サービス計画書に関しては、PDFでやり取りが可能です。
ケアプランデータ連携システムの機能
ケアプランデータ連携システムには、主に以下の機能が搭載されています。
- ログイン認証機能(ログインするにはIDとパスワードが必要)
- データ送信機能
- データ受信機能
帳票を修正したり、内容を突き合わせて確認したりする機能はないため、CSVデータを介護ソフトに取り込んで作業を行う必要があります。また、データは蓄積されず、一定期間を過ぎると自動で削除されます。
今後は、さらなる利便性の向上を目指して、データの蓄積や検索などの機能が拡張される予定です。
ケアプランデータ連携システム導入のメリット
ケアプランデータ連携システムは、事業所間の帳簿のやり取りの効率化を目指して開発されたシステムです。具体的には以下のメリットが考えられます。
- 郵送やFAXなど送付作業にかかる負担の軽減、費用の削減
- 給付管理票へ転記する手間やミスの削減
- 帳票整備の煩雑化の防止
- 個人情報の漏洩リスクが減る
これまで紙でやり取りしていた帳票をデータ化することで、転記作業の手間を軽減できます。
たとえばこれまでFAXで帳票の送受信を行っていた場合、紙に記載された情報を転記する手間がかかっていました。同システムを導入すれば、送られてきたデータをそのまま自社の介護ソフトに読み込めるため、転記の手間がなく、かつ転記誤りによる人的ミスを減らせます。データでやり取りすることで印刷代や郵送代をはじめとしたコストも削減できるでしょう。
さらに同システムは事業所番号をもとに自動で送信先が選択されるため、送信ミスが起きにくいこともメリットです。そのため、個人情報が漏洩するリスクも減らすことができます。ケアプランに関するデータのみを扱うシステムのため、管理も簡単です。ただし一定期間を過ぎるとデータはシステムから削除されます。利用する際は十分気をつけましょう。
ケアプランデータ連携システム導入のデメリット
ケアプランデータ連携システムの導入は多くのメリットがある一方で、以下のデメリットも考えられます。
- ライセンス料などの費用がかかる
- システム定着に至るまで時間がかかる可能性がある
まず、ライセンス料として、年間21,000円の費用が発生します。介護ソフトを導入していない場合は、ソフトの導入費用も追加でかかってしまうでしょう。しかし厚生労働省は同システム導入により、人件費や印刷代などもろもろのコストを年間81万6,000円ほど削減できると説明しています。場合によっては、かかったコストが回収できると考えられます。
また、ケアプランデータ連携システムは1事業所につき、端末(パソコン)1台にしかダウンロードできません。1台のパソコンを事業所で共有して使うため、業務の流れを整理しておくとよいでしょう。公式ホームページには操作マニュアルが用意されていますが、操作方法に慣れるまで時間がかかり、業務負担が一時的に増える可能性も考えられます。
ケアプランデータ連携システムの補助金
導入にかかる費用が気になる事業者は、補助金にも着目してみましょう。自治体によっては、独自の補助金制度があります。たとえば早期にケアプランデータ連携システムの導入を開始した事業所に対し、ライセンス料の一部もしくは全額を補助する制度を実施している自治体もあるので確認してみてください。
そのほか介護ソフトをまだ導入していない事業者にとっては、IT導入補助金の活用も視野に入れましょう。IT機器の導入にかかる費用の一部を補助する制度で、ソフトウェアだけでなく、パソコンなどの機器も対象となります。現在も「IT導入補助金2024」で登録申請を受け付けているので、ぜひチェックしてみてください。
ケアプランデータ連携システムの導入手順
ケアプランデータ連携システムの導入に際し、必要な準備やクライアントソフトのダウンロード方法などを解説します。
事前に必要な準備
ケアプランデータ連携システムを導入する際には、以下の準備が必要です。
- パソコン(Windows10以降)
- 介護ソフト
- 電子証明書(介護報酬請求と同じ電子証明書を使用)
同システムはデータの送受信を行うシステムのため、インターネットが使えるパソコンを用意しなければなりません。あらかじめインターネット環境を確認しておきましょう。
円滑に事業所間のやり取りをシステム上で行うには、扱う帳票においてフォーマットの統一が必要です。厚生労働省が示す様式に基づいたフォーマットやデータ形式などを備えた介護ソフトを各事業所で用意してください。
電子証明書は、ケアプランデータを送信する際に必要です。代行業者に介護給付費の請求業務を委託している事業所は、新たに電子証明書を取得してください。ただしこの場合、発行手数料はかかりません。
ケアプランデータ連携システムのダウンロード方法
まず、ケアプランデータ連携システムの利用申請サイトにアクセスし、電子請求受付システムで使用しているIDとパスワードを入力します。IDはKJで始まる14桁の番号です。インターネット請求を利用していない事業者は、国民健康保険団体連合会にユーザーIDとパスワードの発行発行を依頼してください。発行には約2週間程度かかるため、早めの申請を心掛けしましょう。
ユーザーIDとパスワードを入力してログインしたら、利用規約に同意し、次に進みます。 ケアプランデータ連携システムのヘルプデスクサポートサイトにアクセスし、「製品ダウンロードはこちら」のボタンをクリックします。組織名称と介護保険事業所番号を入力して、ケアプランデータ連携システムをダウンロードしてください。
ケアプランデータ連携システムを導入して業務を効率化しよう
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所のケアプランデータのやり取りを効率化するためのシステムです。紙で行っていた業務をデータ化することで、業務の効率化や職員の負担軽減、コスト削減などの効果が期待できます。さらに、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所ともに空いた時間を利用者と向き合う時間にあてれば、サービスの質の向上につながるでしょう。
ただし同システムを導入するには、事前の準備が必要です。1年ごとにライセンス料もかかるため、自治体の助成金制度などを活用しながら、導入を検討しましょう。