「お金をかけて求人広告を出しているのに思うように人材が集まらない」
「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」
平成 30 年度 「介護労働実態調査」によると、平成28年に16.7%だった離職率は平成30年には15.4%となっており、やや低下傾向にあります。
しかしその内訳をみると、1年未満の離職者が38.9%と高い数字になっています。また、同調査によれば人材不足を感じる理由の89.1%が「採用が困難である」となっており、その原因の56.2%が「同業他社との人材獲得競争が厳しい」という結果が出ています。
自社に合った求職者が集まらない、せっかく採用してもすぐに辞めてしまったのでは、採用コストが増えて経営を圧迫しかねません。そこで、本記事では効果的に採用コスト削減をするための6つの方法をお伝えします。コストを抑え、良い人材を確保するための一助となれば幸いです。
介護職はなぜ採用難易度が高いのか?
厚生労働省の調査によれば、介護職の有効求人倍率は平成30年で3.9倍と年々倍率が高くなっています。1人の求職者に対して求人の需要が上回るため採用競争は激化し、自社に合った人材を確保することが難しくなってきます。
なぜ応募者が集まりにくいのか?なぜ早期離職につながってしまうのか?その理由として以下の3つが考えられます。
- 介護職や介護業界に対して求職者からネガティブなイメージを持たれやすいため、応募者が集まりにくい。
- 様々な事業所での募集が多いため、求職者の目にとまりにくい。競争率が高い。
- せっかく入社した方が、「イメージと異なる」「良好な人間関係を保つのが難しい」等の理由から早期利離職をしてしまい、再度、採用コストをかけて人員募集をする必要がある
これらの理由が影響し、今後も採用難易度はさらに高まると予測されます。採用単価をいかに抑えるかが、いっそうの課題となるでしょう。
採用単価とは
一人の人材を採用するのにかかる経費のことを「採用単価」といいます。ここでは、採用単価を算出するために必要な採用コストの内訳と、採用単価の計算方法をご紹介します。
採用コストとは
採用コストとは人を雇う際にかかる費用のことで、内部コストと外部コストの2種類があります。
内部コスト
求職者との面接や電話対応をはじめとした、採用のためにかかる社員の人件費が主な内容です。その他、応募者や内定者へ支払う交通費、内定者の懇親会などにかかる交際費なども含まれます。
外部コスト
求人広告に掲載するための費用や人材紹介会社への手数料、会社説明会の会場費、会社案内などの採用ツールを作成するための製作費などがこれに該当します。
採用単価の計算方法
採用単価を出すには以下の計算方法を用います。
内部コスト + 外部コスト = 採用コスト総額
採用コスト総額 ÷ 採用総人数 = 採用単価
たとえば、採用に総額500万円をかけて25人採用した場合、採用単価は20万円になります。より正確な採用単価を把握するには、新卒・中途・アルバイトなどそれぞれを分けて計算すると良いでしょう。
採用手段の比較
採用コストを削減するには、どのような方法で募集をかけるかが大きなポイントになります。求人広告、人材紹介、人材派遣、ハローワーク別のコストや決定率・手間などを一覧表にしました。
求人サイトや求人広告を利用する場合
では、求人媒体それぞれの特徴とメリット・デメリット、費用相場について具体的に見ていきましょう。まずは求人サイトや求人広告を利用する場合です。
掲載課金型
新聞や求人誌などの紙媒体も含め、求人情報を掲載することで料金が発生します。大手サイトの多くはこのタイプです。
メリット
- 何人採用しても費用が変わらない
- 集客力がある求人媒体が多い
- 求人原稿の作成を行ってもらえるので手間がかからない
デメリット
採用者がゼロでも広告費が発生する
費用相場
1週間~数万円程度
なお、自社のみをアピールしたい場合は新聞の折り込みを利用する方法もあります。費用は約1~20万円が目安です。
応募課金型
求人掲載を見て求人への応募があった場合、その成果として料金が発生します。
メリット
- 掲載料が無料
- 広く母集団を形成できる
デメリット
- 応募が入った時点で課金されるため、応募者が多いと費用が割高になる
- 選考段階で応募者と連絡が取れなくなった場合や、内定を辞退された場合でも費用が発生する
- 募集原稿作成の手間や候補者との日程調整などの管理が大変
費用相場
数千円~1万円程度
完全成功報酬型
実際に採用が決まり勤務を開始することで料金が発生します。
メリット
- 掲載料が無料
- 応募者が多くても、採用に至らなければ費用が発生しない
デメリット
- 掲載課金型に比べると利用者数が少ないケースがある
- 採用人数が多いと費用が割高になる
- 募集原稿作成の手間や候補者との日程調整などの管理が大変
費用相場
数万円~数十万円
通常、企業は応募者に直接アプローチできませんが、最近はダイレクトリクルーティング機能を備えた求人サイトも多く、自ら候補者にアプローチすることができます。
人材紹介
次に人材紹介サービスです。まずは人材紹介会社に登録します。そこから求職者を紹介してもらい、採用が確定すると費用が発生します。
メリット
- 初期費用がかからない
- 採用担当者の工数を抑えることができる
- 専任担当者がつくことで効率よく採用活動ができる
デメリット
ほかの採用方法より割高になる傾向がある
費用相場
50~80万円程度 年収の約15~17%前後
人材派遣
人材派遣会社から登録しているスタッフを派遣してもらうことで派遣料金が発生します。
メリット
- 採用コストと手間を削減できる
- 即戦力になる人材を確保できる
- 労務管理の手間が省ける
デメリット
- 最長期間が決まっているため、専門的なスキルが育たない
- 任せられる仕事が限られてしまう
- 派遣会社への手数料が発生するため、月々の費用が高額になる
費用相場
採用スタッフの年収の約20~30%
ハローワーク
事業所のある地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に申し込むことで、無料でハローワークの求人情報へ掲載されます。紹介してもらった場合も紹介料などはかかりません。
メリット
- 採用コストがかからない
- 条件によっては助成金が出ることもある
デメリット
- 掲載や選考などの手続きに手間がかかる
- 情報量が少なく採用ターゲットと異なる応募も少なくない
- 退職中の方が多く、最前線で活躍する人材や高いスキルを持った人材を募集するのには向いていない
費用相場
無料
採用コストを削減する6つの方法
それぞれの求人媒体のメリット・デメリット、費用相場を確認したところで、いよいよ今回のテーマとなる採用コストを削減する方法をご紹介します。
ここでは6つの方法について、ポイントをお伝えします。
ミスマッチを防ぐ
せっかく経費をかけて採用しても、早期に退職されたのでは採用にかけたコストが無駄になってしまいます。早期退職者が増えることで、ほかの職員のモチベーション低下にもつながりますし、連鎖離職を招く可能性もあります。そのような状況を避けるためにも大切なのがミスマッチを減らすことです。
ミスマッチの原因は入社前後のギャップにあります。「思っていた内容と違っていた」「社風が合わなかった」ということがないよう、求人募集の際に誤解を招きやすい表現は避け、良い面だけをアピールしすぎないようにしましょう。入社前面談を実施し、求職者の方の疑問や不安解消の場を持つことも有効です。
求人広告媒体の見直し
有料の求人広告を有効活用できていないのであれば、求人広告媒体との相性も含め見直しを検討してみましょう。
多職種を取り扱う総合型の求人媒体もあれば、介護に特化した求人サイトもあります。見直しの際は、以下の4つのポイントが重要となります。
- 媒体の特徴
- ターゲットの登録者数
- 出稿のタイミング
- 募集原稿の内容
リファラル採用の強化
リファラルとは「縁故採用」のことですが、働くスタッフの紹介であれば、その会社の雰囲気や仕事内容は紹介者から直接伝わるため、ミスマッチが少なくなります。
また、採用コストについても、紹介者にインセンティブを支払ったとしても、求人広告費に比べれば費用を抑えることができるでしょう。複数の施設を運営する事業者などでは、インセンティブ制度がある旨を告知することで、職員が友人や知人に声をかけやすくなります。
ソーシャルリクルーティング(SNS)の強化
ブログをはじめFacebookやInstagram、Twitterなどを活用した採用活動を行っている企業も増えています。SNSは無料で採用活動が可能なためコストの削減につながります。
SNSを用いた採用を強化する場合、応募数を増やすことが目的ではなく、いかに自社にマッチした人材を確保するかが重要です。なぜ募集することになったのか、求める人材像、自社で働くメリットなどを明確にして呼びかけましょう。LINEなどで応募者から気軽に質問できるような工夫も大切です。
ただし、SNSの企業アカウントを活用した求人方法は、気軽に運用できる反面、手間がかかるなどのデメリットもあります。
自社サイトの内容を充実させる
自社サイトだけで人材確保をするのは困難ですが、何らかのきっかけで求職者が自社のサイトを訪れることもあります。自社に魅力を感じ、興味を持ってもらうことができるサイトであれば、コストの削減につながるでしょう。
企業理念やビジョン、社長や施設長のメッセージはもちろんのこと、そこで働く職員の様子やカルチャーを伝えることで応募意欲を高めることができます。紹介文などは読みやすく、構成はわかりやすくなっているか確認してみましょう。
助成金を活用する
厚生労働省や各自治体などが事業者に対し、雇用促進などを目的とした助成金を設けているケースがあります。受給要件はさまざまありますが、該当するものがあれば活用することで大幅なコスト削減も可能です。
雇用促進のための助成金一例
- 特定就職困難者雇用開発助成金
- トライアル雇用助成金
- 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
主要な助成金の情報は、厚生労働省のサイト「事業主の方のための雇用関係助成金」に掲載されていますのでチェックしてみてください。
まとめ
採用コストを削減するには、まず現在どのくらいのコストがかかっているか把握する必要があります。その上で、ご紹介したコスト削減法を実施してみてください。
重要なのはコストを減らすことだけに注力するのではなく、自社が求める人物像を明確にし、魅力を伝えることで、自社に合った人材からの応募を増やすことです。その結果としてコスト削減が実現します。適切なターゲットに適切にアプローチすることが、優秀な人材を低予算で獲得することにつながります。人材確保に困っている場合は、採用方法などを今一度見直してみましょう。