少子高齢化が進む日本では、介護現場での生産性の向上が重要視されています。生産性を高めることで、サービスの質向上や、経営の改善にも効果が見込めると考えられています。
この記事では介護現場の生産性を向上するための取り組みやその流れについて、ポイントとともにお伝えします。業務改善に役立つツールや、最新情報についてもまとめました。
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目次
介護現場の生産性向上とは?
生産性を向上させるためには、介護現場の「ムリ・ムダ・ムラ(3M)」をなくし、業務の改善を図ることが重要です。たとえば業務を標準化させるためにマニュアルを作ったり、ICTを活用して記録の転記業務を減らしたりなど、現場の課題に合わせて必要な取り組みを検討し、実行します。
さらに取り組みを行う際は現場で情報を共有し、PDCAサイクルをもとに習慣化させていくことが大事です。現場に業務改善の取り組みを定着させることで、業務の効率化が実現し、結果的に生産性向上にも効果が期待できます。
生産性向上とは一般的に生産効率を表す言葉ですが、介護の分野ではサービスの質を高めることが求められます。無駄な間接業務を減らし、利用者と接する時間を増やすことで、利用者の尊厳を守る暮らしを支えることにつながっていきます。
厚生労働省の生産性向上ガイドラインの概要
厚生労働省が促進している生産性向上のガイドラインでは、7つの取り組みが紹介されています。取り組みを行う前にまず「改善活動の準備」で生産性向上に関する理解を深め、次に「現場の課題を可視化」させます。業務改善を図るためには、このように事前に課題を抽出させるステップが欠かせません。課題の把握に役立つツールは、記事後半でも紹介しています。ぜひ参考にしてください。
次に抽出した課題にあわせて、以下のような業務改善の取り組みを実施していきます。
- 職場環境の整備
- 業務の明確化と役割分担
- 手順書の作成
- 記録・報告様式の工夫
- 情報共有の工夫
- OJTの仕組みづくり
- 理念・行動指針の徹底
上記7つの取り組みは、PDCAサイクルをもとに、現場に定着させることが重要です。
介護現場の生産性向上のための7つの取り組みとポイント
生産性向上のために必要な7つの業務改善の取り組みについて、詳しく解説していきます。
①職場改善の整備
現場の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすには、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が効果的です。
要素 | 概要 | 介護現場の事例 |
---|---|---|
整理 | 要るものと要らないものをはっきり分けて、要らないものを捨てる | 保存年限が超えている書類を捨てる |
整頓 | 三定(定置・定品・定量) 手元化(探す手間を省く) |
紙オムツを決まった棚に収納し(定置・定品)、棚には常に5個 (定量)あるような状態を維持し、取り出しやすく配置する(手元化) |
清掃 | すぐ使えるように常に点検する | 転倒防止のために常に動線上をきれいにし、水滴などで滑らないようにする |
清潔 | 整理・整頓・清掃(3S)を維持する 清潔と不潔を分ける |
3Sが実行できているかチェックリストで確認する 使用済みオムツを素手で触らない |
躾 | 決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける | 分からないことがあったとき、OJTの仕組みの中でトレーナーに尋ねることや手順書に立ち返る癖をつける |
引用:より良い職場・サービスのために 今日からできること(業務改善の手引き) パイロット事業令和2年度版|厚生労働省老健局
ある介護施設では、従業員が使いづらいと感じているエリアを洗い出したうえで、整理整頓や清掃を行う役割を決め、スケジュールを作成しました。自ずと責任感が芽生え、自発的に動く従業員が増えたといいます。
②業務の明確化と役割分担
業務を効率化させるためには、業務の分担を見直すことが重要です。特に介護現場では介護職員が関わる業務が多く、負担が偏る傾向にあります。具体的には介護職員の業務をほかの職員や他職種の職員へ共有・移管する事を表すタスクシェアリング(タスクシフティング)の考えで、業務の集中を防いでいきます。
たとえば、介護職員が行う間接業務のうち、掃除や洗濯などを専門業者へアウトソーシングしたり、食事の準備や見守りなどを他職種に移管したりなどの取り組みが効果的です。多職種が連携することでサービスの質向上にもつながっていきます。
上記のように業務を振り分けるには、介護職員が行っている業務を分類し、見える化する作業が必要です。見守り機器や介護ロボットなどのICTを活用する手もあります。
③手順書の作成
従業員ごとに業務の進め方が異なると、業務の非効率化を招くとともに、サービスの質にムラが生じる原因となります。写真や絵を入れた見やすいマニュアルを作成し、従業員に活用してもらうことで、サービスの均質化と質の底上げにつながっていきます。
たとえば申し送り事項をマニュアル化して標準化すれば、従業員間で漏れなく無駄なく情報を共有できるようになります。結果的に、コミュニケーションコスト削減の効果も期待できるでしょう。
また、事業者の理念に基づいたマニュアルを作成すれば、従業員の共通意識を育み、適切なケアを判断するためのツールとしても活用が可能です。
④記録・報告様式の工夫
介護記録や報告書の使いやすさ、および見やすさを確認し、不要な項目や重複している項目がないか見直しを行いましょう。
書類の向きを変えただけで時系列がわかりやすくなったという事例もあるため、レイアウトの工夫も非常に重要です。様式をアップデートする際に、達成状況などを記載する項目を設ければ、従業員の意欲向上にもつながります。
また、介護ロボットや勤怠管理システムなどのICTを導入し、記録を電子化することもひとつの手です。帳簿に何度も記載する必要がなくなり、業務負担の軽減が見込めます。
⑤情報共有の工夫
情報共有を効率化させるためには、インカムやタブレットなどのICT機器の活用が非常に有効です。特にインカムはタイムリーに情報交換ができ、迅速な指示や対応に役立ちます。
インカムを導入した福島県の特別養護老人ホームでは、活用方針を明確にし、マニュアルを作成することで、現場で効果的に活用できるようになりました。導入当初はインカムの仕様ルールが明確でなく、飛び交う情報が多すぎてケアに集中できないといった問題があったといいます。
マニュアルでは場所や名前など、伝える内容と順番をルール化したことで、情報共有の効率化を実現しました。
⑥OJTの仕組みづくり
OJT(On the Job Training)とは人材教育の方法のひとつです。実際の業務を通じて指導を行う方法で、新人だけでなくベテラン職員の人材育成にも役立ちます。
OJTでは、指導内容が属人化しないよう仕組みや体制を整えることが重要です。教育方法を統一化するため、指導する側の従業員に対しても教育が必要になります。ある介護施設ではOJT研修を受けている後輩から、その指導内容についてフィードバックをもらうなど、研修を充実させるための工夫を重ねていました。
⑦理念・行動指針の徹底
現場で統一した質の高いサービスを提供するためには、理念や行動指針を従業員に浸透させる活動が必要です。従業員が理念や行動指針をしっかり理解していれば、マニュアルにない事態が発生した場合でも、自分の判断で動くことができるようになります。
具体的にはアンケートを用いて理念がどれだけ浸透しているかチェックしたり、研修を行って伝えたりするなどの方法があります。
介護現場の生産性向上のための業務改善の流れ
実際の取り組みの流れは以下の図を参考にしましょう。
まずはプロジェクトチームを立ち上げ、担当者を決めることが重要です。必要であれば、外部の研修なども活用しましょう。厚生労働省がYouTubeにアップしている「介護現場における改善活動の支援・促し有効性紹介セミナー」のセミナー動画も役に立ちます。
次に、厚生労働省のホームページで公表されている「気づきシート」「課題把握シート」などを用い、現場の課題を洗い出します。管理者だけでなく、介護職員など現場のスタッフの声を拾うことで、あらゆる視点から現状を把握できます。「業務時間見える化ツール」で労働時間を可視化することも有効です。
その後は「改善方針シート」や「進捗管理シート」で課題を解決するための取り組みや成果の測定方法を定め、実行に移します。取り組みは継続が重要になるため、PDCAをもとに改善を行いながら、進めていきましょう。小さな成果を積み重ねることで、従業員のモチベーションを維持しながら、業務改善に取り組むことができます。
介護現場の生産性向上に活用できるツール
厚生労働省が公表する生産性向上に活用できるツールは以下のとおりです。
- 気づきシート
- 業務時間調査票
- 業務時間見える化ツール
- 課題把握シート
- 課題分析シート
- 改善方針シート
- 進捗管理シート
いずれも「より良い職場・サービスのために 今日からできること(業務改善の手引き) 」に詳しい使い方なども含めて記載してあります。
そのほかICT機器も生産性向上に役立ちます。たとえば介護専門シフト管理サービス「CWS for Care」はシフト表作成を効率化してくれるツールです。人員配置を可視化して余剰配置をなくしたり、シフトを作成するだけで同時に勤務形態一覧表の作成できたりするため、従業員の負担を大幅に減らしてくれます。
人員配置基準や加算のチェックは目視で実施する事業所や施設が多く、手間がかかる作業のひとつですが、自動でチェックしてくれるツールを導入することで、シフト作成の属人化を防ぐこともできます。
全国に介護生産性向上総合相談センターが新設!
昨年、厚生労働省は、全国に「介護生産性向上総合相談センター」を設置すると公表しました。2023年度から数年にかけて順次、新設される予定です。
同センターでは施策や支援のアドバイスのほか、研修会の開催などを行います。さらにICT機器の貸し出しや、ICT導入に関するコンサルタントの紹介も予定されています。生産性の向上を目指す事業所や施設はぜひ注目してみてください。
生産性向上ために活用できるツールとして、介護ロボットも挙げられます。以下の記事もあわせてご確認ください。
介護現場の生産性向上を目指して、まずは業務改善に取り組もう
介護現場の生産性を向上するためには、厚生労働省のガイドラインを理解したうえで、まず業務改善から取り組みましょう。
ただし、現場の声を聞かずに作業内容を変えたり、やみくもにICTを導入したりすると、取り組みが継続できずに頓挫してしまう可能性があります。現場の従業員も交えて、施設や事業所全体で取り組むことが重要です。
取り組む際には厚生労働省の公表しているツールや、介護専門シフト管理サービス「CWS for Care」などのICT機器の導入も視野に入れましょう。