介護施設の「見守り」とは?目的や方法、注意点

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介護施設の「見守り」とは?目的や方法、注意点

介護施設における「見守り」とは、施設の利用者の行動を監視するのではなく、利用者のそばについて援助が必要なときに手を差し伸べることをいいます。身体の状態や行動範囲などは利用者によってそれぞれ異なるため、一人ひとりに応じた見守りが必要です。

この記事では、介護施設における「見守り」がどのような意味を持つのか、そして実際に見守りをする方法やコツ注意点などを解説します。介護施設で働く職員の方はぜひ参考にしてください。


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介護施設における「見守り」とは?定義と目的

介護施設における「見守り」の定義は、利用者の誤嚥や急な転倒・転落を未然に防ぎ、利用者が安全に生活できるようにすることです。急変時にはすぐに介護職員や看護師が対処できるようにする役割もあります。利用者は加齢とともに体の動きが思うようにいかなくなるため、とっさの事故を防ぐために見守りが必要になります。

観察することは重要ですが、利用者の行動をずっと見張るような”監視”をしたり、自分の力で動こうとしている利用者に対して何でも介助したりすることは見守りとはいえません

介護施設での生活は、あくまで利用者自身の能力を維持・向上させるのが目的ですので、利用者の意思を尊重しながらも、大きな事故につながらないよう適切に介助することが大切です。

介護施設での見守り方法4つ

介護施設において、事故などを防ぐための見守りには4つの方法があります。実際に介護施設で見守りを実施する場合は、複数の方法を組み合わせてシステム化するのが一般的です。

1. カメラで利用者の状況を把握

介護職員が24時間体制で利用者全員を見守ることは難しいため、カメラを活用して利用者の様子をモニタリングしている施設が増えています。

たとえば、居室の入り口を映すカメラで出入りを確認し、認知症の利用者が徘徊していないか気を配ったり、利用者からの呼び出しがあった場合にのみ起動するカメラを設置し、状況をすぐに確認できるようにしたり、視覚から得られる情報が多いカメラは利用者の状態などを把握することが可能です。

2. センサで利用者の動きや生体情報を把握

介護施設で使用されるセンサには、転倒や転落の原因となりやすいベッドの柵に設置するベッドセンサや、利用者が触れることで作動するタッチセンサなど、さまざまあります。

介護施設でセンサを使用する場合は、あわせて見守りシステムを導入して一元管理することにより、センサから受信した利用者の動きや生体情報などを一覧で確認することができるため、介護職員が少ない場合でも利用者それぞれの状況を把握することが可能です。

センサの種類と特徴は以下のとおりです。

センサの種類 特徴
マットセンサ ベッドの降り口付近に敷いて使用するセンサ。利用者がベッドから降り、マットを踏むと作動する。
タッチセンサ 利用者が触れることで作動するセンサ。
ベッドセンサ ベッドの柵に設置し、利用者が柵を掴むことで作動するセンサ。
超音波・赤外線センサ 壁や家具などに取り付けるセンサ。利用者が通過したときに反応し教えてくれる。
クリップセンサ 衣類に取り付けるセンサ。利用者が一定以上動く、ベッドから離れるなどの動作で作動する。
人感センサ 体温に反応するセンサ。利用者のベッドからの立ち上がりなど特定の動作を検知するために使用する。
シルエットセンサ ベッド上にカメラを設置し、利用者の動きをシルエットで確認するためのセンサ。体の動きを目視できる。
バイタルセンサ ベッドのマットレス上に敷いて使用するセンサ。利用者の呼吸数や心拍数、血圧、体温などのデータを取得する。

カメラとセンサについて解説しましたが、この2つを組み合わせた「見守りカメラ」が普及し始めています。

夜間など介護職員が不足している時間帯では見回りの回数が限られますが、異変は見逃せません。このようなニーズから、導入が増えていると考えられます。見守りカメラの導入を検討する際には、自治体による補助金制度が使える場合もありますのであわせて確認しましょう。

また、「夜勤職員配置加算」の算定においても、見守りカメラは有効です。夜間の介護現場で基準よりも介護職員や看護師の配置人数を増やすことで適用される加算です。この加算は、令和3年度の介護報酬改定によりルールの変更があり、カメラなどの見守り機器を夜間に導入した場合、人員基準が緩和されます。

3. 職員の代わりに介護ロボットが見守り

利用者の自立支援や介護職員の業務負担の軽減に役立つとして介護ロボットが注目されています。

介護ロボットの種類は以下のとおりです。

ロボットの種類 特徴
移乗支援 ベッド⇔車いす⇔トイレの移乗時にパワーアシストを行う機器。装着型機器と非装着型がある。
移動支援 高齢者が買い物などで外出する際に役立つ歩行支援機器。
排泄支援 利用者の排泄時の補助や、臀部の洗浄・脱臭を行う機器。その他にも、排泄を予測し利用者をトイレへ誘導するなどの機器もある。
入浴支援 浴槽への出入りの一連の補助を行う機器。
コミュニケーション 会話機能やレクリエーション機能が搭載されており、日常生活動作の維持など幅広く使用することが可能。

介護ロボットを導入することにより、利用者の介助時の負担を軽減することができます。

4. 職員による巡回やコミュニケーションで、利用者の行動や状態を把握

多くの介護施設では、介護職員や看護師が施設内を巡回し、直接利用者と直接コミュニケーションをとりながら利用者の状態を観察しています。「今日は顔色が優れない」など介護職員側で状態を把握できるだけではなく、「ベッドからの起き上がりが昨日よりも大変になった気がする」といった利用者側が感じる変化に素早く気付くメリットがあります。

また、巡回やコミュニケーションで分かった情報は、職員間の申し送りで共有し、職員全員で利用者の状態や様子を把握することが大切です。

効果的な見守りを行うためのコツとは?

ここまでは見守りの手段についてご紹介しました。そのほかにも、職員が一人ひとり心がけるポイントがあります。より「効果的な見守り」を行うためのコツをご紹介します。

利用者ごとの特性を理解し、見守りの目的を明確にする

見守りには、利用者の日常生活動作能力を理解することも必要です。日常生活動作能力とは、人が日常生活を自立して行うために必要な基本動作や能力のことです。

歩行が大変な方、立ち上がりが大変な方、入浴や排泄が大変な方など、利用者によって状態はさまざまです。利用者の状態によって必要な介助は異なるため、「どの動作に」「どんな目的で」「どのような」見守り・介助が必要かを確認し理解しておくことが重要です。

たとえば、ベッドからの起き上がりの際ふらついてしまうといった利用者に対しては、安全にベッドの乗降を行うためにセンサや移乗ロボットを活用した介助を行うなどが挙げられます。

利用者の動作を予測する

利用者の多くは、高齢であるためちょっとした転倒などであっても大きな怪我に繋がることが多く、それが原因で寝たきりになってしまう恐れがあります。

これらの事態を避けるためにも、利用者の動作を予測しながら見守りを行うことが重要です。たとえば、利用者の歩行時にはふらつきやすい方向を予測してそちら側に立っておくことや、食事のスピードが速く誤嚥しが起こりやすい利用者に対してはゆっくり食べるよう何度か声かけを行うなどが挙げられます。

介護事故の発生時や急変時の対処法を知る

万が一介護事故が発生してしまった場合や、利用者の容体急変などが起きた場合を想定し、事前に事故や急変時の対応方法を理解し、実践できる状態にしておくことが必要です。

たとえば、廊下歩行時の転倒やトイレなどでの介護事故が発生した場合は、すぐに介護職員から看護職員などへ報告します。看護職員や医師によって、擦り傷などの軽度外傷なのか捻挫や骨折なのかなどの状況判断を行い、処置を行う必要があるためです。利用者が急変した場合は、救急車を呼んで病院へ搬送するケースも考えられるでしょう。

事故や急変時であっても、介護職員や看護師が迅速かつ冷静に対処できるようになるために、施設内でのガイドラインや連絡フローを決めておき、実際に発生した場合に備え定期的なトレーニングとシミュレーションを行っておくことも見守りにおける重要な要素です。

見守りを行うときの注意点

見守りは利用者の安全のために重要なことですが、利用者に不快感を与えてしまう可能性もあります。見守りを行う際に気をつけるべきことをいくつかご紹介します。

利用者のプライバシーに配慮する

着替えや入浴、排泄など、プライバシーに関わるような場面では配慮が必要です。たとえば、自立して便座に座ることが可能な利用者であれば、トイレの便座に座るまでの介助は行っても、排泄の最中は介護職員はトイレの外に出ておくといったような気遣いを心がけましょう。

利用者を注視しすぎない

利用者の様子や行動を観察する際、特定の利用者を見続ける、一方向をじっと見るなど注視しすぎないように気を付けましょう。じっと見続けられると、視線に意味を感じてしまい、不安になったり不快に感じたりする利用者もいます。

利用者の行動を予測し、介助が必要な動作のとき以外は、極力さりげなくそっと見守るように心がけましょう。

利用者の意思をなるべく尊重する

基本的に介護職員が介助を行う場合、利用者がひとりでは難しい動作などをサポートします。ただし、どの程度介助するべきかは個々の希望によっても異なります。

介護施設は、利用者の能力の維持・向上を支援する場ですので、利用者が「誰かの力を借りずに自分の力で頑張りたい」と考えている動作があれば事故が起きないようにしながら見守りのみに留めるなど、利用者の気持ちを優先しましょう。

利用者に寄り添った適切な見守りを行いましょう

利用者一人ひとりの特性が違うように、生活のなかでできることや苦手なこと、そしてその度合いなどはそれぞれ異なります。
介護職員や看護師が利用者の見守りをするうえで気をつけるべきことは、個々の利用者を理解し、きちんと寄り添いながら、それぞれに適した見守りを行うことです。事故のリスクがあるところはしっかり介助しながらも、あくまで利用者が持っている能力の維持・向上を目的とした見守りを意識していきましょう。

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