セキュリティをどんなに強化しても考えもつかないところから離設される可能性があります。利用者に対して、日頃からの心身の状態を常に把握することを心掛け、ニーズを把握し、できるだけ実現していく姿勢が求められます。今回は「離設事故対策と発生時対応」についてご紹介させていただきますので、皆さんの業務改善にご活用いただければ幸いです。
目次
離設の理由
- 認知症
- 介護施設拒否
- 帰宅願望
- 行きたい場所がある
- 見当識障害
が考えられます。
発生サービス、時間帯
デイサービス:12~16時、玄関からが多い
ショートステイ:夕方送迎時間の16~18時、玄関や非常口からが多い
グルームホーム:午後発生、外出時に見失う事故もある
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅:午後と深夜早朝に発生傾向
玄関での来客とのすれ違いで外出や窓からの外出
離設事故の危険因子
- 転倒のリスク
- 熱中症のリスク
- 交通事故列車事故のリスク
- 凍死のリスク
があります。
離設に備えて日頃行う準備
カギ、ファスナーロックが施錠できているか
- 職員にカギ、ファスナーロックの重要性を周知できているか
- 故障があったらすぐに報告、修理できているか
外出希望の利用者は申し送りと注意徹底
- 朝礼や申し送りノートで申し送り
- 利用開始間もない利用者は要チェック
年1回研修を実施
- 離設事故の傾向を周知
- 予防・対策ができているか確認
来客対応の徹底
- インターフォンモニターのみで玄関の開錠はしない
- 来客名簿への記入
- 来客者プレートの装着
ベッドは窓から60㎝以上離す
- ベッドや棚を踏み台にして外に出ないようにのルールの徹底
地図の準備
地図購入、半径3キロの川、踏切など危険個所をチェック
- 折りたたみ赤ペンで町丁目および幹線道路などを区切ります
- 地図を準備
捜索のための地図の準備
- 折り畳み地図のエリア分け、エリアに対応する道路地図コピーは、事前に準備
マニュアルファイルに保管
- 地図と捜索用地図は、マニュアルのファイルに保管
利用者の写真の準備
- 胸から上の写真、全身写真の2枚を撮影
- 利用開始日に必ず撮影、それ以降は誕生日に必ず撮影して写真を更新
離設が起きた場合の対応
対応1:報告を行う(最終確認できていた時間を伝える)
- 管理者に報告
- 管理者から上長に報告
対応2:ご家族・警察・ケアマネジャーに連絡(15分以内に実施)
- ご家族・緊急連絡先に連絡
- 110番に連絡
- 担当ケアマネジャーに連絡
対応3:施設内を捜索
- デイルーム内
- 押入れ
- 居室内(ベッドの中)
- 相談室内(机の下など)
- 浴室(脱衣含む)
- 事務室内(机の下)
- 浴室(脱衣含む)
- エレベータホル
- 静養室内
- 相談室内
- 食堂共同生活室内
- 事務室内(机の下など)
- トイレ内
- バルコニー
- トイレ内
- 職員トイレ内
- 多目的室内
- 汚物処理室
- 介護材料室内
- 医務室内
- 職員休憩室内
- 職員トイレ内
- エレベータ内
- バルコニー
- 厨房内(事務室含む)
- 倉庫内
- パントリー
- 階段下倉庫物置
- 職員ロッカー
- 階段下倉庫内
- 駐車場(の間下など)
- バルコニー
- 非常階段付近
- 隣家
- 建物周辺(植栽付近)
- 風除室
- 物置
捜索開始
対応1:指揮担当者は施設にとどまる(原則:施設長)
事故発生について各部署、担当から連絡が入るため、全員で探しに行くのではなく、必ず1名は施設事務所に待機する
対応2:施設の全社員に連絡し、応援要請を行う
施設の全社員に連絡し、応援要請を行う
対応3:公共交通機関、タクシー、コンビニなどなどにも協力依頼
緊急連絡先一覧にある施設に連絡する(駅、タクシー、コンビニなど)
対応4:ご家族には定期的に連絡を入れる
対応5:夜間までに発見されなかった場合の準備
20:00になっても発見されない場合、翌朝から捜索できる応援職員の手配をする
22:00までに見つからなかった場合は少人数で対応
利用者発見後の対応~身体ケア、心のケアをしっかりしましょう~
対応1:利用者の健康状態の確認・ボディーチェック
- 水分補給
- 健康状態の確認(体温血圧)、ボディーチェック
- 必要に応じて医療機関を受診、社員が付き添う。費用は自社負担
- 心のケア、帰設24時間は要観察
- 食事がとれていない場合あり、おにぎりなど準備
- 身体が冷えている場合はバイタル測定で問題なければ、入浴も可能
対応2:報告・御礼の連絡を行う
- ご家族、緊急連絡先、ケアマネジャーに連絡
- 捜索にご協力いただいた関係機関、捜索支援社員に連絡・御礼
対応3:事故発生の検証、再発防止策を決定
- なぜ事故が起きたのか?
利用者の当時の状況・ハード面での問題・どうして外に出られたのか
- 再発防止に向けた対応の決定
- 事故報告書の作成・提出
まとめ
離設はご利用1年以内で、特に1ヶ月以内の方が要注意です。また発生原因は、職員のリスクの認識や把握ができていないことです。「誰かが見ているだろう」の見守りの隙が要因にもなります。
「絶対出られないだろう」という思い込みが捜索の遅れにつながり、かえって逆効果になります。設備に慢心することなく、小さな物音や、利用者の言動の小さな変化に気が付けるよう五感を研ぎ澄ませましょう。
また、定期的に施設全体に離設可能ポイントがないか話し合い、設備の劣化や窓・柵など備品の緩みやたるみ、今まで置いてなかったものがベランダにあって踏み台になるのでは?などチェックをしましょう。