採用担当者であれば、「ソーシャルリクルーティング」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用した新しい採用手法です。
SNSによる宣伝効果や影響力の高さは既にご存知だと思いますが、その効果を採用にも活かそうと、各企業が積極的に取り入れています。
介護業界は常に人手不足の状態、今までの採用手法だけでは優秀な人材の確保が難しいとお悩みの方も多いでしょう。
そこで、介護業界の人材採用の強い見方になってくれる「ソーシャルリクルーティング」について、メリット・デメリットや活用できるSNSについて詳しくご紹介します。
目次
ソーシャルリクルーティングとは
ソーシャルリクルーティングとは、SNS(Facebook,Twitterなど)を活用した新しい採用方法のことです。
アメリカでは、多くの企業に活用されており、日本でも徐々に利用率が増加し盛り上がりを見せています。
ソーシャルリクルーティングは、企業から求人情報を発信するだけではなく、施設や事業所の日常的な風景、ケアに対する考え方、職員の表情などを伝えるとともに、双方向のコミュニケーションが可能です。
そのため、企業の社風や求めている人物像を理解した方と直接やり取りをすることがでるので、
認識の齟齬を防ぎ、費用を抑えて求めている人材を確保しやすいといった魅力があります。
介護業界の悩みの種、「採用が困難」「離職率が高い」といった問題解決に期待できるでしょう。
ソーシャルリクルーティングのメリット・デメリット
どんなサービスにも、良い点だけでなく悪い点も存在します。
ソーシャルリクルーティングにおける、メリット・デメリットをご紹介します。
メリット
- 求めている人材を採用しやすい(ミスマッチを防ぐ)
- まだ転職を考えていない潜在層と接点を持つことができる
- 採用コストを抑えられる
ソーシャルリクルーティング活用する一つ目のメリットは、求めている人材を採用しやすいということです。
SNSでは、施設での行事の様子や職員の何気ない日常など、HPや求人サイトでは伝えきれない、企業のリアルな姿をより具体的に伝えることができます。どんな会社でどんな人が働いているのかなど、求職者の知りたい情報を伝えることで、自社の社風や介護観に合った人材からの応募を増やすことができます。また、コメントやリアクションが可能なので気軽にコミュニケーションを取ることができ、よりお互いの理解を深めやすく、事前にミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
さらに、応募者のSNSをチェックすることで、書類選考や面接では見抜くことが難しい、人間性を探ることも可能です。
2つ目は、まだ転職を考えていない潜在層と接点を持つことができる点です。
SNSを活用した情報発信は応募者を増やすだけでなく、投稿内容によっては一般のユーザーの目にも触れ、面白い内容や共感が得られる内容であれば自然と拡散されていきます。そうしたなかで、まだ転職は検討していな潜在層とも接点を増やしていくことが可能になるのです。
最後に、採用コストを抑えられるのもメリットとして挙げられます。
人材紹介会社に依頼したり、媒体などをに求人情報を掲載したりすると、費用がかかってしまいます。
その点、SNSを使った採用活動では、無料でサービスを利用できるので、広告を出さない限り費用はかかりません。
長期的な採用活動を想定している場合やコスト削減を考えている採用担当者にとって、ソーシャルリクルーティングが最適な活動方法となり得るでしょう。
デメリット
- 継続した運用が負担になる
- 投稿内容の選定が必要になる
- ネット上でのコミュニケーションを理解する必要がある
デメリットの一つ目は継続運用の負担です。
ソーシャルリクルーティングで、重要なのが「継続して運用していくこと」です。
興味を持っている応募者からのフォローが増えても、すぐに採用できるとは限りません。
日々、応募者が求めている情報を発信し続ける必要があります。
SNS慣れしている採用担当者なら問題はありませんが、慣れていない方にとって負担に感じる部分だと思います。
2つ目は、投稿内容の選定や運用計画の負担です。
投稿内容は応募者が求めていることと、企業として伝えたいことを計画して運用を行う必要があります。
いいねやリーチした人数などのデータを元に、改善していくことも求められてきますので一定の知識が必要になります。
また、炎上や情報漏洩のリスクも潜んでいますので、SNS運用のガイドラインを整備し、可能であれば2名以上で運用を行うと良いでしょう。
3つ目は、SNSと生身のコミュニケーションは違うと理解する必要があるということです。
日々の投稿だけではなく、SNS上でユーザーとの対話も積極的にする必要があります。
コミュニケーションを行うタイミングやレスポンスの頻度などをある程度相手に合わせることに苦戦する方も多いでしょう。
介護業界がソーシャルリクルーティングに向いている理由
令和元年度の介護労働実態調査によると、1年未満の離職者が15.3%という結果がでています。
介護業界では人材確保の難しさに加え、この離職率の高さも人手不足を招く大きな要因のひとつです。
人材確保が難しい理由として考えられるのが、介護職の正社員の採用にハローワークやメジャーな採用媒体、人材紹介会社をメインで利用している点があります。
同業種が同じところで募集したときに、良質な人材の取り合いがおきています。
この問題を解決できるのがソーシャルリクルーティングです。
SNSには、ライバルが少なく転職潜在層へもアプローチが可能です。利用者さんが多いので、良質な人材が確保出来やすくなるでしょう。
SNSでは、伝わりにくい職場の空気感など自社のありのままの姿を伝えることができます。
他社との差別化したSNSで、求人募集をすることで、応募者が一緒に働くイメージがしやすくなりたくさんの応募ではなく、自社にあった応募者を探せるようになるでしょう。
介護に向いているソーシャルリクルーティングですが、SNSごとに特徴があり求める人材に合わせて使い分ける必要があります。
ソーシャルリクルーティングで活用できるSNSの種類
ソーシャルリクルーティングで活用されている主なSNSはこの5つです。
サービス名 | 特徴 | 利用者の年齢 | 適している企業 |
実名制 | 30代~50代 | 中間管理職やキャリア採用を検討している企業 | |
写真や動画でのコミュニケーション | 20代〜40代 | 若年層の女性採用を目指している企業 | |
140文字のコミュニケーション | 10代〜20代 | 新卒や若手採用を目指している企業 | |
LINE | 全世代で利用されているメッセンジャーアプリ | 20代〜50代 | 年齢ごとにアプローチしたい企業 |
YouTube | 動画投稿、コミニケーションサービス | 20代〜50代 | 動画で意思疎通を図りたい企業 |
SNSごとに異なる点も多く、企業により適しているSNSを見つける必要があります。
適しているか判断するために、もう少し詳しく各SNSについてまとめました。
実名制でプライベートでの交友関係を広げるだけでなく、ビジネス上の人脈を広げることを目的に活用している方も多いサービス。
年齢層は、30代〜50代の利用者さんが多く年齢層は他のSNSに比べ高めです。
年齢層が高く、実名ということもあり、誹謗中傷は少なく、利用者さんは投稿の質を意識しています。
コミュニティに入り、介護職利用者さんに向けて情報を発信することも可能です。
中間管理職やキャリア採用を検討している場合におすすめです。
写真や動画でコミュニケーションを行うサービスで、20代~40代女性が半数以上を占めるInstagram。
「インスタ映え」と呼ばれるオシャレな投稿が多く、「映え」も意識した投稿をしていくことが必要でしょう。
そんなInstagram利用者さんの多くは、ハッシュタグで検索して情報収集している方が多いサービスになります。
そのため、ハッシュタグ(#)に求職者が検索しそうなキーワードを入れることが大切です。
投稿内容は、職場の風景や実際に働くや社員などの写真や動画が良いでしょう。企業や職場の雰囲気が伝わり、見た人がそこで働自分の姿をイメージできるようなものが理想的です。
140文字のテキストと画像でコミュニケーションを行うSNSサービス。
詳細なプロフィールを登録する必要はなく、匿名で気楽に利用できます。。
Twitterは、他者の投稿を転載(リツイート)する機能があり、注目されると拡散される効果が期待できます。
その反面、デマでも広がりやすいので投稿内容には注意が必要です。
投稿内容は、ハッシュタグ(#)を使用して求職者が気になる内容を投稿するのが良いでしょう。
10代、20代の若年層の利用が多いので、若手の採用を強化したい場合にはTwitterがおすすめです。
LINE
全世代で多く利用されているメッセンジャーアプリ。
2019年4月18日に「LINE@」の名称はなくなり現在は「LINE公式アカウント」に統合されています。
アカウントを友だち追加したユーザーに対して、メッセージを送ることや複数のユーザーに対してグループチャットでアプローチも行えます。
ユーザーがメリットと感じるメッセージを送ることで、高い反応が期待できます。
20~50代と幅広い層が利用しており、年齢ごとにグループを分けることで求めている人材に対してアプローチすることが可能です。
YouTube
動画投稿がメインのサービス。
最近では、ライブ配信機能により閲覧者の質問に答えたりできるようになりました。
このライブ配信により、リアルタイムでコミュニケーションをとれるためソーシャルリクルーティングでの活用に期待が持てます。
20~50代と利用者さんの層は幅広く、男女比もほぼ半々となっています。
年齢別に興味があるコンテンツを作成することで、限られた閲覧者に対して、文章では伝わりづらい仕事内容や雰囲気を伝えるのに向いているSNSとなっています。
ソーシャルリクルーティングの始め方
ソーシャルリクルーティングを始める前に、以下の3つを決めておきましょう。
- 適したSNSの選定と理解
- 運用プランの作成
- 運用者の選定
求めている人材に適したSNSはどのサービスか、誰がどう運営していくかを決めておくことで、運用をスムーズに進めることが出来ます。
適したSNSを選定して事前に計画を建てましょう。
適したSNSの選定
まず、どのSNSを使用するかを決めていきましょう。
求める人材像が複数の場合は、ひとつのSNSに絞る必要はなく、それぞれに適した複数のSNSを運用することも効果的です。
求めている人材を明確にし、どのSNSが一番魅力を届けやすいか考えましょう。
担当者がSNSに対する知識や利用経験が浅い場合、日ごろから積極的にSNSを利用している職員などにもヒアリングして、最適なものを選ぶことが大切です。
運用プランの作成
適したSNSが見つかったら、このような運用計画を建てましょう。
- いつまでに何が必要か
- いつから運用を始めるか
- どんな投稿をいつどのくらい投稿するか
- 応募者とのコミュニケーションはどうするか
- 採用が決まったあとはどうするか
- 採用が決まるまでの評価指標を決めておく
計画の途中で、効果を測定して課題があれば改善を行っていくことも大切です。
そして、求めている効果が得られなかった場合は、なぜ失敗したのかを考え改善していきましょう。
運用者の選定
ソーシャルリクルーティングの計画が固まってきたら、実際に誰が運用するかを決めます。
誰が適していて、その職員は時間を確保できるか、運用していけるのかを考えましょう。
ソーシャルリクルーティングを始めると、今までと違った形で応募者とのコミュニケーショが求められます。SNSの運用に不慣れな場合は負担に感じるかもしれませんが、時間をかけてコツコツと積み重ねていける人が向いているでしょう。
また、運用の負担軽減と投稿ミスなどを回避するためにも、可能であれば2名以上で運用を行うことをおすすめします。
もし、社内に適した人材がいない場合は、外部へ依頼することも検討しましょう。
運用時の注意点
SNSを運用していく上で、注意しなければいけないことがあります。
それは、「即時性が高いので投稿内容には十分な注意が必要」という点と、「良い評判だけでなく悪い評判も拡散されてしまう可能性がある」といった点です。
まず、投稿内容に関してですが、施設での何気ない日常を伝えたいと考えた時、写真を撮影して、コメントをつけて、簡単に投稿ができてしまいます。
安易に投稿できてしまう分、利用者さんや職員のプライバシーなどコンプライアンスには十分に注意が必要です。
相手が嫌な思いする投稿にならないように、慎重に投稿内容を検討し、個人が特定できる内容などは本人に確認してから投稿しましょう。
嫌な思いをした相手やコンプライアンス違反などのマイナスな投稿は拡散されやすく、企業イメージのダウンや今後の応募者減少だけでなく最悪の場合は裁判になる場合もあります。
音楽や画像などを使用する場合も、使用していい素材なのかどうか、事前に確認してから投稿するようにしましょう。
まとめ
スマートフォンの普及と軸を一にして利用者が増えているSNS。
ICT総研の調査結果によると、日本のSNSの普及率は80%となっています。SNSを上手く活用することができれば、採用コストを抑えて、より自社に合った人材からの応募を増やすことができるでしょう。
投稿するコンテンツの内容によっては一気に拡散され、求人広告よりも多くの人材にアプローチできる可能性もあります。この機会にぜひソーシャルリクルーティングの導入を検討してみてください。