「看取り介護」とは?介護士が知っておきたい看取りの目的と仕事内容

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介護施設で暮らす入居者の「自分らしい最期」を支援するための看取り介護。超高齢化社会における要介護者の増加にともない、施設での看取り介護は欠かせないケアとなりつつあります。

看取り介護は入居者とご家族の心に寄り添い、医療としっかり連携をはかることが大切です。本記事では、看取り介護の内容や具体的なケア方法、今後の課題などについて詳しく解説していきます。


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「看取り介護」とは?

「看取り」とは、無理な延命治療を行わず、自然に訪れる最期までの過程を見守って支援することです。看取り介護の推進をはかる全国老人福祉施設協議会では、看取りの対象者を、近い将来亡くなることが避けられない方であることとしています。

また看取り介護は、身体的および精神的苦痛を緩和・軽減するだけでなく、人生の最期まで尊厳ある生活を支援することと定義しています。「住み慣れた地域で自分らしい生活を続ける」という、地域包括的な役割も期待されているのが看取り介護なのです。

特別養護老人ホームでは、すでに全体の約7割が看取り介護を実施しています。近年では、民間の介護付き有料老人ホームでも看取りに対応する施設が増えているのが現状です。高齢者が余生を過ごす選択肢は広がりつつあるといえるでしょう。

「看取り」と緩和ケア・ターミナルケアの違い

「看取り」とよく似た言葉として、緩和ケアやターミナルケアを耳にする方も多いのではないでしょうか。ターミナルケアは、最期のときを間近にした方の心身の苦痛を和らげることを目的とした医療的ケアです。

緩和ケアはターミナルケアの一部であり、苦痛を緩和しながら治療も平行して行われます。一方の看取りは、看護に加えて介護の目線で利用者さんの終末期を支援するケアです。延命治療などの終末期医療ではなく平穏死を選択した人に対する行為を指します。入居者さんやご家族と医療とのかけ橋的な役割を担っているのが特徴です。

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看取り介護が増えた背景

「後期高齢者2,000万人社会」が到来する2025年以降、高齢者の医療や介護の需要はピークを迎えるといわれています。2013年には、病院での死亡者数が全死亡者数の7割を超えるまで増加するとされているのです。「多死社会」と呼ばれる将来に向け、2006年に創設されたのが「看取り介護加算」です。

2015年度の介護報酬改定時には、施設における看取り介護の体制が構築されました。整備(Plan)・看取り介護(Do)・振り返り(Check)・改善(Action)のPDCAサイクルを基本とし、看取り介護の体制はより強化されることとなりました。高齢者が住み慣れた土地で自分らしい最期を迎えるためにも、看取り介護の役割は今後より一層重視されると考えられています。

2021年度の介護報酬改定では、看取り介護加算の算定期間が死亡した日の30日前以降から45日前以降に拡大されました。また介護付きホームにおいては、夜間に看護職員を配置すると報酬が加算されることにもなっています。このような報酬面の改善からも、今後は看取り介護に取り組む事業者がますます増加すると予想されるでしょう。

看取り介護の現状は?

介護施設のなかでも特別養護老人ホームおよび老人保健施設では、看取り計画を立てる割合が半数以上にのぼります。実際に最後まで入居者さんを看取っている施設は、全体の約8割です。特に特別養護老人ホームでは介護職員が看取りに関与する割合が高く、ご家族へのよりきめ細やかな支援が求められる傾向にあります。

在宅医療を選択した患者さんに向けて、訪問介護や訪問看護による在宅での看取りも実施されています。医療現場にいる医師、また訪問看護師や訪問介護士がチームを組み、患者さんが希望する形で最期を迎えられるようにサポートするケースは今後も増えていくでしょう。

看取り介護における介護士の役割とは?

看取り介護は医師や看護師、介護士をはじめとする多職種の連携で実施されます。ここからは、看取り介護における介護士の主な役割を見ていきましょう。

食事、排泄介助、清潔保持

多職種と協力しながら、入居者の身体状況や好みに応じた食事を提供します。食事内容はむくみや尿量、排便量や体重などを確認しながら決定します。また、可能な限り入浴や清拭を行って、清潔に保持するだけではなく、感染症予防にも努めます。

精神的緩和ケア

人生の終わりに直面して不安や恐怖を感じてしまうときに、メンタル面を支えることも介護士の大切な役割です。話を丁寧に聞くこと、ベッドの周りに思い出の品を置くことなど、入居者本人が喜ぶようなサポートを行いましょう。

身体的緩和ケアと安楽な体位の工夫

入居者さんが楽に過ごせるよう、ベッドや車いす上の体位について検討します。また、痛みがある場合には医師の指示を受け、疼痛緩和のための処置を行います。医療行為はできませんが、医療者や看護職員と相談してどのようなサポートができるかを考えていきましょう。

身体的なケアだけではなく、精神的なケアも看取り介護に求められる重要な役割です。居室はこまめに訪問し、入居者さんやご家族が「気にかけてもらっている」と安心できるようにフォローしましょう。

コミュニケーション

入居者さんが穏やかな気持ちで毎日を過ごすためには、適切な声かけによるコミュニケーションが大切です。入居者やご家族の心に寄り添い、意思疎通をはかり、希望に沿ったケアを提供できるように心がけます。

状態の観察

入居者の状態をこまめに観察し、経過記録に細かく記載します。体温や血圧、食事量や排せつ量といった基本的な項目のほか、その時々の希望を他職種と共有し、きめ細かなケアに役立てます。

ご家族へのケア

延命治療をせずに看取りを選んだことで、罪悪感を覚えるご家族もいます。また、大切な人の死が迫ることで不安を感じるご家族もいるでしょう。

医療とご家族とのかけ橋的な役割を担う介護士は、見送るための心構えについて話すなど、ご家族の不安を取り払うための精神的援助を行います。定期的に医師から説明される身体状況の変化や介護内容について、分かりやすく伝えることも大切です。ご家族の気持ちに寄り添い、声に耳を傾ける姿勢が求められます。

カンファレンスへの参加

カンファレンスとは、PDCAサイクルの振り返り(Check)にあたる話し合いです。医師や看護師といった医療スタッフのほか、リハビリ職やケアマネジャー、家族が同席する場合もあります。介護士は介護者の観点から意見を述べ、他職種とともにケア内容に見直す点はないかを確認します。

亡くなった後の処置(エンゼルケア)

エンゼルケアとは、亡くなった後に行う処置や化粧のことです。お別れやお見送りはご家族だけでなく、可能な限り看取り介護に携わった全職員で行います。

場合によっては、親しくしていた入居者の立ち合いも考慮する必要があるでしょう。ご家族の状況に応じ、葬儀の連絡や調整、荷物の整理などを支援する場合もあります。

入居から看取りまで「看取り介護」の流れ

看取り介護は、一定の時期やプロセスに応じた内容で実施する必要があります。入居時から介護、看取り後まで一連の流れを確認していきましょう。

適応期

入居から1ヶ月までは「適応期」と呼ばれる時期にあたります。この時期は、入居者やご家族に「看取り」に対する理解を深めてもらうことが大切です。

今後施設でどのように暮らし、人生の最期をどのように迎えるかを考えるために、必要と思われる資料を提供します。入所時の意向は変更できることを伝え、「いつでも相談してください」と話を受け入れる姿勢を示すことも大切です。

安定期

入居から半年ほどたつと「安定期」と呼ばれる時期に入ります。安定期では、入居者に生まれた意識の変化や今後の希望を把握するように努めます。入居者本人だけではなく、ご家族の意向を確認しながら中長期的な目標設定を定め、ケアプランへと反映させます。

不安定・低下期

「食事が食べられない」、「体重が減少する」といった衰弱傾向が出現し、進行する時期です。状態の変化は、その都度ご家族と共有します。

医師の説明をご家族と一緒に聞き、治療について分かりやすく伝えることも大切です。入居者の好きな歌や香りを提供したり、季節の花を飾ったり、生活空間に配慮した環境づくりも心がけましょう。

看取り期

医師から「回復がのぞめない状態」であることを告げられ、ご逝去間近である時期を「看取り期」と呼びます。医師から説明を聞くときは介護士も同席し、看取りを間近にした入居者やご家族の心情に寄り添います。食事や水分摂取量の低下は自然な変化であることをご家族に伝え、不安を与えないように努めましょう。

最期まで良いケアが提供されたことは、ご家族の心の支えにもつながります。希望に応じて一緒にケアを行ったり、面会に職員が同席したりするなど、ご家族と入居者さんの関わりを支援します。

看取り

最後に悔いのないひとときが持てるよう、ご家族だけで過ごせる空間を準備します。希望があれば、清拭や化粧などを一緒に行う場合もあります。ご家族の気持ちの変化を見守り支えながら、ねぎらいと感謝の気持ちを伝えるように心がけましょう。

看取り後

看取り後はご遺族の心情に配慮しつつ、必要に応じて葬儀会社への連絡や調整、手続きなどを行います。また職員間で介護内容を振り返り、問題点がなかったかを検証します。スタッフに精神的負担がないかも確認し、必要であればケアにあたることも大切です。

看取り介護の課題

入居者の身近な存在としてケアにあたる看取り介護は、介護士にとって負担や不安も大きいといわれています。実際の介護現場では、看取り介護を行うにあたって以下のような課題や問題点が考えられます。

介護士の精神的負担が大きい

看取り介護では、医療機関と連携をはかりながら24時間体制で状態を見守る必要があります。入居者の身体状況によっては、たん吸引や経管栄養といった医療的ケアが必要なこともあるでしょう。ご本人やご家族の希望を聞き出し、心に寄り添う姿勢が求められます。

そういった状況から、看取り介護に精神的負担を感じている職員は全体の8割以上ともいわれます。施設がしっかりと看取り指針を整備しておくことは、介護士の負担軽減につながると考えられます。また、看取り後は職員の負担や悩みなどを共有し、適切にケアする必要があるといえるでしょう。

介護士は、入居者の表面的な反応が減ってきたとしても、心の交流を持つことができます。そばにいて入居者の身体に触れ、静かに話しかける時間をとりましょう。また気持ちを明るく持ち、死が避けられないものであっても希望を見い出すことが大切です。入居者の希望を少しでも叶えるように、できることを見つけていきましょう。

夜間帯の介護職員の不足

介護現場では、人材確保と育成が近年の課題となっています。看取り介護のための人員に不足を感じている施設は、全体の約2割といわれています。

なかでも、人手が少なくなる夜間帯が大きな課題となっており、全体の約3割が夜間の体制が十分ではないと感じています。職員の心理的負担を軽減するためにも、夜間帯には看護師を配置するなど、緊急時に対応できる職員の充実が求められています。

知識や技術の習得不足

適切な看取り介護を実施するためには、介護士の知識とスキルが求められます。実際に、「研修等を通じた知識・技術の習得が不足している」と感じる施設は全体の約3割です。今後増加する介護ニーズに対応するためにも、現場では看取りの質向上が求められることでしょう。

スキルアップのためには自分で学習して経験を重ねるほか、研修などに積極的に参加する必要があります。看取り介護にあたるすべての職員のスキルアップは、より良いケアの提供だけではなく、介護士の負担軽減にもつながるのです。

施設内で行える医療行為の少なさ

介護施設で実施されている医療処置の多くは服薬管理や摘便、褥瘡の処置などです。看取り介護のなかでは、それらに加えて経管栄養や喀痰吸引といった行為も必要になります。経管栄養や喀痰吸引は、一定の研修を終えた介護士であれば実施することができますが、摘便や褥瘡の処置などは医療行為であるため、看護師でなければ行うことができません。

バイタルサインの悪化や発熱、吐血や下血が見られた際には医療機関へ搬送されるケースが多く、すべてを施設内で対応しきれないことが今後の看取り介護における大きな課題となっています。

参考:(5)介護サービス事業所における医療職の勤務実態および医療・看護の提供実態に関する横断的な調査研究事業(結果概要)

その人らしく最期を迎えるための「看取り介護」

ほかの様々な業種と連携し、その人らしい最期を迎えるために行う看取り介護は、「ケアの集大成」とも呼ばれています。そのニーズはさらに増大するといわれるなか、看取り介護は今後の介護士に求められるスキルのひとつです。

自分自身の精神的負担を軽減しながら良いケアを提供し、入居者を笑顔にさせるためには看取り介護を正しく理解することが大切です。看取り介護への認識を深め、入居者とご家族の大切な時間を支援する重要な役割を担っていきましょう。

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