スーパービジョンを受けたことがある介護職員は、どのくらいいるでしょうか。介護現場で取り入れている施設はまだ少ないので、指導する立場の職員もスーパービジョンを受けた経験があまりないかもしれません。
スーパービジョンは積極的に取り入れることでたくさんのメリットが得られる有効な指導方法です。貴重な介護人材を大切に育てて介護職に定着させるため、本記事ではスーパービジョンの機能やポイントについて解説していきます。
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目次
スーパービジョンとは
スーパービジョンは医療やカウンセリング、ソーシャルワークなどの現場で用いられている助言や指導の方法です。医師や臨床心理士、社会福祉士がこの役割を担っていることが多いでしょう。
専門職である産業カウンセラーの自己研鑽制度として協会スーパービジョン制度が設けられており、修了者は協会スーパーバイザーとして活躍することができます。
介護現場におけるスーパービジョンとは、スーパーバイジーと呼ばれる新人職員などサポートが必要な職員が、スーパーバイザーと呼ばれる管理者や施設長に意見を求めること、サポートやアドバイスを受けることです。
スーパービジョンの目的
入職したばかりの職員は、介護の仕事をするなかで分からないことがたくさんあります。多忙な状況下でも適切な学びを得て、介護職員としての順調な成長を促すには、スーパーバイザーによる介入が重要です。
スーパービジョンの目的とは、スーパーバイザーから仕事の指導やアドバイスをもらい、介護職員としてサービスの質や技術の向上、そしてトラブルへの対処能力の向上を目指すことです。また、スーパーバイジーの挫折やバーンアウトをケアし、離職を防ぐことも重要な目的といえるでしょう。
スーパービジョンがもつ機能とは?
スーパービジョンには、主に「管理・運営的機能」、「教育的機能」、「支持的機能」といった3つの機能があります。しっかり機能させるためにスーパービジョン契約を結び、スーパーバイザーとスーパーバイジーが内容について了解し合うことも重要です。
施設の管理体制を整える
介護の現場はチームワークが重要であり、チームの一員として機能できることが個人の成長を促してくれます。スーパーバイジーが本来の能力を発揮して活躍できるよう、チーム内の人間関係を調整するのも必要なことです。
また、本人の健康状態や家庭環境によって柔軟に勤務上の配慮をするなど、職場環境を整える配慮も大切です。
知識やスキルを教育する
介護の仕事をするうえで求められるマナーや知識など、スーパーバイジーに不足しているスキルを教えることもスーパーバイザーの大切な役割です。経験しなければ身に付いていかない状況に応じたサービスやトラブルへの対処など、介護士として必要不可欠なものを教えていきます。
スーパーバイジーが新卒採用である場合は、特に理論と実践を結びつける教育的スーパービジョンが求められます。一方、異業種から転職してきた新人には、介護職として持つべき理念を指導していくことも必要になるでしょう。
ストレスを軽減し、モチベーションを保つ
スーパーバイザーには悩みや葛藤がつきもので、ストレスを抱えていることが多いと考えられます。仕事において乗り越えられない問題や、理想と現実のギャップに対する悩みを抱え込んでいると、モチベーションが下がるだけではなく、介護職に必要なモラルまで忘れがちになってしまいます。
スーパーバイザーは、スーパーバイジーの伴走者としてときには悩みを聞いて葛藤を乗り越えさせ、支えることが求められるでしょう。
スーパービジョンには5つの種類がある
スーパービジョンには大きく分けて5つの種類があり、組み合わせることで様々な効果が期待できます。
1対1で行う「個人スーパービジョン」
スーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で面談形式にて行うスーパービジョンです。信頼関係ができていればゆっくりと悩みを聞くことができ、個別のアドバイスをすることができます。
ただし、信頼関係がないと度重なる面談がスーパーバイジーの負担になることもあるので注意が必要です。
集団で行う「集団スーパービジョン」
スーパーバイザーと数人のスーパーバイジーで行うスーパービジョンのことです。スーパーバイジーそれぞれの悩みを共有でき、悩んでいるのは自分だけではないと理解し合うことができます。また、視野を広げさせて色々な気づきを促すのにも有効です。
しかし、深い悩みを相談しにくいという面もあることを理解しておきましょう。
同僚同士でのピアスーパービジョン
同僚同士でアドバイスし合う方法です。リラックスした雰囲気で話しやすく、本音で語ることができるでしょう。同僚同士の理解と結束も深まります。
しかし、同じような立場や経験からの意見になるため、視点が偏りがちで問題解決に至りにくいというデメリットもあります。
実践現場でのライブスーパービジョン
スーパーバイジーが実際に仕事をする現場にスーパーバイザーが立ち合い、その場でアドバイスする臨床的スーパービジョンといえます。具体的で即効性がありますが、スーパーバイジーが緊張しないように配慮することが大切です。
自分自身で振り返るセルフスーパービジョン
スーパーバイザーなしではスーパービジョンがないと疑問を持つ人もいるかもしれませんが、スーパーバイジーが自分自身に語りかける方法も有効です。介護現場では一人で仕事をこなすという場面も稀ではなく、自分で自分をコントロールする術を身につけておく必要が高まっています。
ときには客観的に自分を評価しつつ自分を労い励ますことは、介護の専門家として必要なスキルです。
スーパービジョンの方法・流れ
スーパービジョンを具体的に進めるための手順について説明していきます。しっかり方法や流れをつかむことで効率よく行うことができます。
スーパービジョンの事前準備
スーパービジョンを始める前に、スーパーバイジーに現在の自分の状況を自己判断してもらいましょう。どんなことに悩み、どんな課題を感じているのかを確認し、スーパービジョンの進め方に活かしていきます。
スーパービジョンの実施
スーパービジョンでは、おおよそ3つのステップを繰り返していきます。
・課題の抽出
スーパーバイジーがあらかじめ自己診断した課題を話してもらいます。
・面談、協議、講義
どのように解決していくのがよいか協議します。スーパーバイザーは気づきを促すように関わり、面談の最後に解決策に導くポイントを伝えておきます。
・実施(見守り、助言、振り返り)
仕事に活かすことができているのかを見守るというステップを数ヶ月ごとに繰り返します。
総評
おおよそ1年で総評を行い、スーパーバイジーの成長を確認しましょう。次につながるまとめをすることも大切です。
スーパービジョンのポイント
スーパービジョンの具体的な方法と流れを掴んだら、ポイントを抑えることでさらに効果的に実行することができるはずです。
信頼関係の構築
スーパービジョンが有意義なものになるかどうかは、両者の信頼関係にかかっているといっても過言ではありません。形式だけのスーパービジョンは意味をなさないことを、スーパーバイジーにも理解してもらうことが大切です。
信頼関係を築くためには、スーパーバイジーが相談や、質問しやすい環境を作ることが重要です。そのためにもスーパーバイザーがスーパーバイジーの話にしっかり耳を傾け、受容するという態度を示しましょう。指導的、威圧的な態度は逆効果です。
そして、同じ職場で働く者としてお互いが相手に対する感謝の気持ちを素直に伝えることが、信頼関係の構築には欠かせないということを忘れないようにしましょう。
スーパーバイザーの力量
スーパーバイジーが本当の悩みを語ってくれるように、話しやすい雰囲気を作る配慮をしましょう。論破したり価値観を押し付けたりするのではなく、自分で解決できるようにサポートするというスタンスで臨みます。
また、スーパーバイジーが素直にアドバイスを受ける姿勢に感謝したり、成長しようとする姿を認め、それに応える気持ちを示したりすることも大切です。
様々なスーパービジョンを活用すれば、やりがいのある職場に
介護現場においてスーパービジョンを取り入れている施設は、まだ少ないかもしれません。スーパービジョンは、複数の方法を組み合わせることで相乗効果が期待できます。
スーパービジョン実績を積むことで、スーパーバイザーとスーパーバイジーの双方に成長をもたらすと同時に、やりがいのある働きやすい職場にすることができるはずです。将来的にはスーパーバイザーを積極的に配置するためのスーパービジョン制度が求められるでしょう。
スーパーバイザーもスーパービジョン研修を受けるなどして自己研鑽し、効果的に介護人材を育てていきましょう。