訪問介護のヘルパーができること・できない(やってはいけない)こと

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訪問介護において利用者さんに不意に頼まれたことについて、ヘルパーができることか、できないことか悩んだ経験はあるのではないでしょうか?

基本的にヘルパーは、ケアプランに書かれていないサービスを提供できません。頭ではわかっていても、実際に利用者さん宅でサービスを提供していると、断るのが心苦しいと感じることもあるでしょう。

しかし、できること、できないことをしっかり把握し、利用者さんにも説明できるようにしておかなければ、利用者さんとのトラブルに発展してしまったり、生活に悪い影響をおよぼしてしまったりする場合があります。

訪問介護のヘルパーができること・できないことを確認しましょう。


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ヘルパーがやってはいけない(できない)こと

訪問介護では、ヘルパーが要支援・要介護の方の居宅に訪問し、利用者さんが日常生活を送るために必要な介護を提供します。介護職が訪問介護で働くためには、介護職員初任者研修を修了していなければなりません。

訪問介護のサービスの内容には大きく分けて身体介護と生活援助がありますが、ヘルパーが介護保険サービス内でできるサービスと時間は決まっており、「やっていいこと」と「やってはいけないこと」があります。しかし、利用者さんのなかにはヘルパーに対して「家政婦」に近いイメージを持っていて、何でも頼めばやってくれると思っている方もいます。身体介護・生活援助において、ヘルパーができること・やってはいけない(できないこと)を一覧表で確認していきましょう。

身体介護

身体介護とは利用者さんの身体に直接触れて行う介助で、入浴や排泄、食事、更衣、整容などの日常生活上必要な動作の自立を支援するためにサービスを行います。通院に車を利用する場合は、車への乗車・降車のための移動介助も含まれます。

介護の内容できることやってはいけない
(できない)こと
体位変換
移動
移乗
・体位変換
・移動介助
・移乗介助
 
食事・食事介助
・食事の見守り
入浴 ・入浴介助
・清拭
排泄・トイレ誘導
・排泄介助
・オムツ交換
更衣 ・更衣介助
整容・洗面介助
・整髪介助
・散髪
通院・乗車
・降車のための移動、移乗の介助
・病院内での具体的な自立生活支援のための見守り
・受診待ち時間中の付き添い
・利用者やヘルパーの自家用車を運転しての送迎

生活援助

生活援助とは調理、洗濯、掃除などの日常生活の援助を利用者さん本人の代わりに行うサービスです。生活援助は家事代行サービスではないため、家事ができる介護者が同居している場合には実施できないほか、利用者さん以外のためのサービス、日常生活に必要ないと判断されるサービスを行うことはできません。

介護の内容 できること やってはいけない
(できない)こと
調理・一般的な調理
・食事の準備、後片付け
・利用者以外のための調理
・おせち料理など行事用の調理
洗濯 ・洗濯(洗濯機、手洗い)
・洗濯物を干す、取り入れ、収納
・アイロンがけ
・利用者以外のための洗濯~収納の一連業務、アイロンがけ
掃除・居室内、トイレ、テーブルの上の掃除
・ゴミ出し
・利用者使用していない部屋の掃除
・庭木の手入れ、花木の水やり
・ベランダの掃除
・ペットの世話
・窓ふき
・換気扇の掃除
・引っ越し準備や大荷物の移動
買い物 ・日常品の買い物(日常生活に最低限必要な品物の購入、日常生活圏内の近隣店舗)
・白物家電の購入
・日常生活必需品の代金支払い
・薬の受け取り
・遠くのデパートで購入
・嗜好品の購入
・来客用の買い物 ・お歳暮の購入    
外出支援 ・通院同行
・公共サービスの申請
・届け出同行
・選挙および納税同行
・日常生活品の買い物同行
・生活資金引き卸のための金融機関同行
・散歩※ケアプランに位置づけられる場合を除く
・美容院などへの同行
・墓参り、法事等への同行
・お金の引き卸代行
その他 ・衣服の整理
・衣服の補修
・利用者がいない状況でのシーツ交換
・免許更新の付き添い
・住民票の代行取得
・話し相手

※詳細は、自治体ごとのルールにより定められている場合も多くあります。

医療的ケア

医師、歯科医師、看護師以外のものが医療行為を行うことは禁止されており、介護職員が医療行為を行うことはできません。「医行為」ではないとされる訪問介護職員が行えるケアについて示します。これらのケアは身体介護に含まれます。

介護の内容 できることやってはいけない
(できない)こと
爪切り ・爪切り
・爪やすり
・爪に異常がある、爪の周囲の皮膚に化膿や炎症がある、糖尿病などに伴う専門的な管理が必要な爪の爪切り、爪やすり
耳掃除 ・耳垢の除去 ・耳垢塞栓の除去
口腔ケア ・歯ブラシや綿棒を使った口腔ケア ・重度の歯周病がある場合の口腔ケア
・一包化された内服薬を飲む介助
・軟膏を皮膚に塗る
・湿布を皮膚に貼る
・目薬をさす
・肛門へ座薬挿入
・鼻腔粘膜への薬剤噴霧
・利用者本人がインスリン注射を行うときの見守り、確認
※医師の処方を受けた薬で、誤嚥や薬の調整など、専門的な配慮や判断が必要ない場合に限られる。
・内服薬の管理、仕分け
・インスリン注射を介護職員が行う
処置 ・軽微な切り傷、擦り傷、やけよど、汚れたガーゼの交換など、専門的な判断や技術が必要ない処置
・ストーマのパウチに溜まった排泄物を捨てる
・自己導尿の補助のためのカテーテルの準備、体位の保持
・市販のグリセリン浣腸での浣腸
・血糖測定の声かけ、数値の確認
・褥瘡の処置など、専門的な判断が必要な傷の処置
・肌に接着したパウチの取り替え
・自己導尿
・摘便
・血糖測定を介護職員が行う
(・経管栄養)※
(・たんの吸引)※
測定 ・水銀体温計、電子体温計での体温測定
・自動血圧測定器での血圧測定 ・パルスオキシメーターの装着
・水銀血圧計での血圧測定

※経管栄養およびたん吸引は医行為ですが、介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員は、定められた条件下において実施できる場合があります。

市区町村によっても異なるヘルパーの支援範囲

上記に示した介護職員が身体介護や生活援助でできること・できない(やってはいけない)ことの範囲のなかでも、市区町村ごとに独自のルールが定められています。

利用者さん宅や利用者さんの状況によって、とくに生活援助に関する部分で「こういう場合は訪問介護サービスとして提供できるのか?」と気になる点が出てくることもあるかと思います。

市町村ごとに、訪問介護ケアマネジメントツール、ケアマネジメント支援マニュアルなどの名称で訪問介護における生活援助の取り扱いにおける判断基準が作成されているので、確認、活用しましょう。

介護サービスはケアマネジャーの作成したケアプランに沿って行う

訪問介護でホームヘルパーが行える介護サービスは、ケアマネジャーが利用者さんの状態・状況に合わせて必要なサービス提供を計画した「ケアプラン」で事前に決められている内容です。
ケアプランに明記されていない内容について、急に利用者さんからお願いされてもサービスを提供することはできません。そのため、訪問介護員は現場で、利用者さんやご家族のニーズ、利用者さんの状況の変化に応じて、提供しているサービス内容が適切であるかの評価を行い、変更が必要だと思われる点があればサービス担当責任者に相談・報告し、ケアマネジャーと連携をとることが大切です。

トラブルを避けるためにも、利用者さんやご家族には事前に説明を!

介護保険で提供できるサービスにおいて、利用者さんとご家族へ事前に「対応できること、できないこと」を伝えておくことは、後のトラブルを避けるためにも大切です。

利用者さんとご家族に説明する際のポイントを確認していきましょう。

説明のポイント

1.ケアプランに記載がないサービスは提供できない

ケアプランに明記されていない内容については、利用者さんから頼まれたとしても、訪問介護職員がサービスを提供することはできません。
またケアプランの対象は利用者さんなので、ご家族のための要望や代行も請け負うことはできません。

2.できないことは伝えた上で、どうしたらできるかと考え、提案する

ケアプランに明記されていないサービスはできないことを伝えたうえで、できないことをどのようにすれば解決できるかを考えて提案しましょう。たとえば、「介護保険算定内で提供できるサービスであれば、ケアマネジャーに相談する」「介護保険算定の対象外となるサービスであれば自費サービスで対応できる」などを提案することは可能です。   

3.ヘルパーが対応できないことを書面でお渡しする

利用者さんが訪問介護職員のできることとできないことについて把握できておらず、「窓ふきをしてほしい」「犬の散歩をしてほしい」「ご家族のご飯も作ってほしい」などの生活援助や医療行為など、ヘルパーが対応できないことをお願いされる場合は、ヘルパーが対応できないことを一覧表にして、書面でお渡ししておくと良いでしょう。口頭で説明してもなかなか把握しにくいことも、一覧にしたうえで目で見て確認すると理解していただきやすいことがあります。

4.自費サービスであれば対応可能であることを伝える(そういったサービスがあることを伝える)

介護保険サービスの算定対象外となるサービスにおいては、自費であれば対応できる旨を伝えましょう。すべてにおいて「できません」と、利用者さんを突き放したように伝えるのではなく、できる範囲で力になりたいと寄り添う気持ちが伝わるように配慮した対応が大切です。

それでもお願いされた場合の具体的な断り方

サービスを提供できない旨を説明してもお願いされた場合の具体的な断り方をご紹介します。大切なのは「あの人はしてくれたのにあの人はしてくれない」ということが起こらないように、事業所内でも「できること、やってはいけない(できない)こと」の線引きを全員が把握して業務にあたることです。

「家族のごはんも一緒に作ってほしい」

「介護保険のサービスできているので、ご本人様の援助しかできません。ですから、ごはんもご本人様の分だけしか作ることができないんです。ご家族の方が毎日ご自分で食事の用意をするのが大変ということであれば、料金はかかりますが、民間業者の宅配弁当や配食サービスなどを週に何回かご利用するという方法もありますよ」

ご家族の方が介護保険を申請できる要件が整っており(65歳以上、または特定疾病がある40歳以上)、機能低下などで食事の用意を自分で行うのが大変になってきたなどの理由がある場合は、サービス提供責任者、ケアマネジャーに相談・報告し、ご家族が介護保険を申請して、介護サービスの利用を検討するという提案もできます。

「網戸の掃除をしてほしい」

「介護保険のサービス内でできる掃除は、ご本人様が普段使っておられる部屋やトイレの掃除に限定されているんです。網戸の掃除は大掃除にあたるのでサービスを提供することはできません。実はそういった介護サービスで提供できない部分のサービスをしてほしいというご要望はとても多いんです。私の事業所では、介護保険のサービスで提供できないサービスを、自費のサービスとして1時間○○円で提供させていただいています。良かったらご検討ください」

市町村によっては介護保険サービスで提供できない網戸掃除などの簡単な家事サービスを、高齢者生活援助事業としてリーズナブルな価格で提供している場合があります。ただし、サービスを受けるには、65歳以上のひとり暮らしの方など、対象となる規定があります。そういった市町村のサービスを把握し、利用者さんが対象になる場合は市町村の事業を紹介することができると、利用者さんにも喜ばれるでしょう。

「お酒を買ってきてほしい」

「お酒はヘルパーが買いに行くことはできません。」

お酒、たばこは嗜好品とみなし、日常生活における必需品ではないため買い物することはできません。利用者さん側としては、日用品の買い物と一緒にビールも1本買ってきてほしいぐらいの気持ちで頼んでいることが多いと思います。ですが、はっきりと買えないということを伝えましょう。日常生活の自立を支援するための介護保険サービスでは提供できない旨を、サービス提供責任者、ケアマネジャーから説明して利用者さんに納得していただきましょう。お酒やたばこは健康を損なうリスクが高く、生活習慣病などの既往がある方は医師から止められている場合もあります。そういった場合は「お医者様からお酒は止められていますので私は買いに行くことができません。」という言い方もできるでしょう。

「できる、できない」の線引きを明確にしてより良いサービスを提供しよう

訪問介護においてヘルパーが利用者さんに提供できるサービスは、「できる、できない」の線引きが難しいこともあります。判断に迷うときは、サービス提供責任者やケアマネジャーに相談・報告し、決まった線引きは、ヘルパー内でずれがないように全員で情報を供しておくことが大切です。

利用者さんのことを思うと断りづらいと感じることもあるかもしれませんが、ケアプランにないサービスを提供することは規則違反に当たるだけでなく、利用者さんの今後の生活に悪影響を与える恐れもあります。

介護保険サービスとして訪問介護で「できること、やってはいけない(できない)こと」を利用者さんにはっきりと伝え、理解してサービスを利用していただくことで、お互いにより良い関係を継続していくことができるでしょう。

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