モニタリングの記録について、悩んでいるケアマネジャーはたくさんいます。なぜなら、アセスメントやケアプランには所定の記録様式があるにもかかわらず、モニタリングには決まったシートがないため、何を記載していいのか分からないからです。
今回の記事では、事例を踏まえながらモニタリングシートを作成する上でどのような項目を書くべきか、どのような視点で介護サービス事業所とモニタリング内容を共有すべきかを紹介します。
介護事業所の面倒なシフト・勤怠管理がらくらく
人員基準や加算要件は自動でチェック!CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表作成をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード
目次
モニタリング業務におけるモニタリングシートとは
ケアマネジメント業務のなかでモニタリングとは、計画したプランが予定どおり実施されているかを確認する作業をいいます。同時に、利用者さんの健康状態や家族介護の様子を観察する機会でもあるのです。
ケアマネジャーは、モニタリングにおいて目標の達成状況を確認して記録しなければなりません。これは、新しい課題が見つかった場合にも同様です。
ケアプランを活かすモニタリングシートの書き方
居宅介護支援事業所のケアマネジャーがモニタリングを行う場合、1ヶ月に1回行うものとして国の定める運営基準に明記されています。またその際は、利用者さんが日常生活を送っている自宅を訪問して行うことが基本です。
そもそもモニタリングのルールとは
介護保険実地指導マニュアルでは、モニタリングについて、アセスメントの視点・状況把握や、課題分析の妥当性およびケアプランの有効性を検討するための定期的な評価を目的に実施するものとしています。そのためには、直接利用者さんやご家族の意向確認はもちろん、サービス事業担当者などへの聞き取りも行って総合的に評価することが重要です。
また、このモニタリングは少なくとも1ヶ月に1回行うこととされており、都度利用者さんの自宅を訪問して結果を記録することが定められています。なお、コロナ禍においては、利用者さんの事情などやむを得ない理由で自宅を訪問できない場合、電話やメールを活用して状況を確認することが認められています。
モニタリングシートの様式
モニタリングを記録するシートには決まった様式はありません。とはいえ、モニタリングはケアプランの進行や変更すべき点を確認する大切な業務なので、評価者や目標の達成状況など最低限の項目は記録しておく必要があります。
したがって、シートには誰が見ても分かりやすい様式を用い、ケアマネジャーがどのような根拠をもって評価したのかを明確に記載しなければなりません。
モニタリングシートの記載例
ここでは、事例をもとにモニタリングシートの記載例を紹介します。様式はオリジナルなので、評価項目や内容を参考にしながらご自身で使いやすいようにアレンジしてください。
事例:「利用者さんは女性で要介護3。脳梗塞による後遺症で右側下肢に麻痺がある。現在デイサービスを週に2回、掃除と入浴介助を目的にヘルパーを週1回利用している。」
【モニタリングシート】
記入日 | 令和年○月○日 |
記載者名 | ○○○○ |
利用者様 | ○○○○様 |
短期目標1 | 5メートルを掴まって歩くことができる |
期間 | 3ヶ月 |
サービス内容 | 週に2回のデイサービス利用日に平行棒訓練を行う |
評価 | |
内容・課題 | |
短期目標2 | 自室の簡単な掃除ができる |
期間 | 3ヶ月 |
サービス内容 | ヘルパーと共同して室内の掃除をする |
評価 | |
内容・課題 |
モニタリングシートには、少なくとも記載者名と記載日は記録できるようにしましょう。必要に応じて、モニタリングした場所や聞き取りを行った相手を追加してもかまいません。
モニタリングでは、ケアプランで設定した短期目標の達成状況を利用者さんやご家族、サービス担当者から聞き取り、シートに評価や内容、課題について記載します。
モニタリングシート記載における注意点
モニタリングシートに記載する際には、次の3つの視点がポイントとなります。
- サービスの提供状況はどうだったか
- 利用者さんの状況(ニーズの変化がないか)
- 目標達成度はどの程度か
モニタリングをしているなかで、利用者さんのニーズが変わって予定どおりのサービスが提供されていなかったり、目標が高すぎて達成出来る見込みがなかったりといった状態が確認された場合、その理由を必ずシートに記載しましょう。
これは、そのモニタリング結果が評価されてケアプラン変更の根拠となるからです。ケアプランをより良いものに作り直すため、この過程はとくに重要といえます。
モニタリングシート活用事例と注目すべきポイント
ケアマネジャーが在宅サービスをプランニングした場合、毎月のモニタリングを利用者さんだけではなく在宅サービス担当者にも行い、プランの進行状況を確認しなければなりません。
とくに新しい在宅サービスを提供した場合には、施設に訪問して利用者さん本人や担当者と直接顔を合わせてモニタリングすることで、サービス内容に対する本人の意向確認ができるだけにとどまらず、担当者との信頼関係を築くきっかけにもなります。
サービス事業所ではケアプランをもとに個別支援計画を作るので、積極的に顔を合わせる機会を作ることで進行状況の確認や支援方針のすり合わせがスムーズになり、サービスに変更があればお互いがすぐに対応出来るメリットがあります。
通所介護事業所でのモニタリングシート活用事例
通所介護事業所では、ケアマネジャーのケアプランをもとに通所介護計画書を作成するので、モニタリングでおさえるべき点は、通所介護計画書に記載した短期目標の達成状況になります。
その際にモニタリングシートを活用するメリットは、利用者さんに対して目標達成に向けたサービスを提供出来ているかを目に見える形で評価出来る点です。定期的に評価することで利用者さんの状態が改善しているか、サービス内容に変更がないかを確認することができます。
【通所介護モニタリングシート】
記入日 | 令和年○月○日 |
記載者名 | ○○○○ |
利用者様 | ○○○○様 |
短期目標 | 5メートルを掴まって歩くことができる |
期間 | 3ヶ月 |
サービス内容 | 週に2回のデイサービス利用日に平行棒訓練を行う |
評価 | 維持 |
内容・課題 | 下肢筋力が低下している為、3メートルほどで、力が入らなくなる。5メートルは歩けない。 |
利用者さんの通所介護計画書に示される短期目標は、ケアプランの短期目標と同じ内容になります。上記のモニタリングシートを例にとると、担当者は利用者さんが5メートル歩くことができるようにデイサービスで平行棒を使った歩行訓練を計画し、3ヶ月後に評価を行いました。
その結果、筋力の低下が見られて5メートル歩行は達成できず、評価としては「維持」となりました。このように、モニタリングシートを通じてケアマネジャーに短期目標を継続すべきであることを報告するわけです。
訪問介護事業所でのモニタリングシート活用事例
訪問介護事業所では、ケアプランをもとに訪問介護計画書を作成します。通所介護計画書と同様に、モニタリングでおさえるべき点は短期目標の達成状況となります。利用者さんやご家族の意向を聞き取りながら、訪問介護の必要性や利用回数に変更がないかを判断します。
【訪問介護モニタリングシート】
記入日 | 令和年○月○日 |
記載者名 | ○○○○ |
利用者様 | ○○○○様 |
短期目標 | 自室の簡単な掃除ができる |
期間 | 3ヶ月 |
サービス内容 | ヘルパーと共同して室内の掃除をする |
評価 | 達成 |
内容・課題 | ヘルパーが見守っていればベッド周りの片付けが出来る。 |
上記モニタリングシートの例では、利用者さんの短期目標に「自室の簡単な掃除ができる」ことが設定され、目標達成のためにヘルパーが共同して掃除するというサービスを提供しています。
担当ヘルパーは、利用者さんが片麻痺でも出来る範囲で掃除を行えるよう訪問介護サービスで援助した結果、3ヶ月後にはヘルパーが見守っていれば片付けが出来るようになったと評価して「達成」と記入しました。ヘルパーステーションでは、この結果をモニタリングシートを通してケアマネジャーに報告し、双方で共有することになります。
ケアマネとしておさえるべきポイント
在宅サービス事業所からケアマネジャーがモニタリングの報告を受けたとき、ケアマネとしておさえるべきポイントが3つあります。
- 利用者さんやご家族にニーズの変化がないか
- 短期目標は達成可能な内容か
- サービス内容は妥当か
プラン作成から数ヶ月が経過した時点で、利用者さんやご家族の意向に変化がないかを確認することは重要です。「こんなはずではなかった」、「もっとこうしたい」といった訴えを利用者さんが抱えたままでは、サービスを提供した意味がなくなってしまいます。
【モニタリングシート】
記入日 | 令和年○月○日 |
記載者名 | ○○○○ |
利用者様 | ○○○○様 |
短期目標1 | 5メートルを掴まって歩くことができる |
期間 | 3ヶ月 |
サービス内容 | 週に2回のデイサービス利用日に平行棒訓練を行う |
評価 | 維持 |
内容・課題 | 下肢筋力が低下している為、3メートルほどで力が入らなくなる。短期目標は維持とする。 |
短期目標2 | 自室の簡単な掃除ができる |
期間 | 3ヶ月 |
サービス内容 | ヘルパーと共同して室内の掃除をする |
評価 | 達成 |
内容・課題 | ヘルパー見守りのもとベッド周辺の掃除ができるようになったので、短期目標を達成とする。 |
こちらの例では、担当者が利用者さん対するデイサービスやヘルパー援助のモニタリング結果を踏まえて短期目標の達成状況を評価しています。
「5メートルをつかまって歩くことができる」という短期目標については、下肢筋力の低下によって3メートル程度しか歩けないことが明確となり、今後もこの目標を継続すべきであるという結果になりました。
「自室での簡単な掃除ができる」という短期目標については、ヘルパーの見守りがあればできることが確認でき、「達成」の結果を得ています。
ケアマネジャーはこの評価結果を利用者さんと共有し、ケアプランの目標変更と新たな課題がないかを確認しつつ必要に応じて新しいケアプランを作成することになります。
モニタリングシート活用でケアプランを最適に
利用者さんにとって最適なサービスを提供できるかどうかは、ケアプランが利用者さんのニーズに沿ったものであるかどうかが重要です。そのため、ケアマネジャーには「ケアプランに示したサービスを提供してどうだったか」という振り返りをモニタリングシートで定期的に行ない、ケアプランの質を上げることが求められます。
とはいうものの、1ヶ月に1回のモニタリングだけでプランの進行状況や今後の課題などすべてを把握することはできません。ですから、利用者さんとの些細な会話をとおして意向をくみ取ったり、サービス事業所と積極的にコミュニケーションをとったりすることで、常にモニタリングするという意識を高めておくことが大切なのです。
そうすることでアセスメントやモニタリングを柔軟に行えることにもなり、ケアプランの向上にもきっとつながることでしょう。今回紹介したモニタリングシート記載例を参考にして、自身のケアプランをさらに活かせるようなモニタリングシートを作成してみましょう。