よくある介護事故の実例と対処法!事故を未然に防ぐ方法とは

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もしも介護の現場で事故を起こしそうになった、または起こしてしまったとしたら、精神的にもかなりつらい状況に追い込まれているのではないでしょうか。今後も介護の仕事を続けることを考えると、同じような経験や事故の再発を防止するために、どのような点に気をつけて対応すればよいのでしょうか。
本記事では、実際に起きた介護事故の事例と共に対処法をお伝えします。未然に事故を防ぐことで自分を守るためにも、参考にしてください。


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目次

介護施設内でよくある介護事故の4つの実例と対処法

食事介助中に背を向けた際の転倒

事例

食事の介助中、スタッフが利用者さんに背を向けた際に車いすから立ち上がり、転倒して右足を骨折してしまった。

原因・理由

利用者さんに背を向けていたため、車いすから立ち上がろうとしていたことに気づかなかった。転倒した際に尿失禁していたことから、トイレに行こうとして立ち上がった可能性がある。

対処法

  • 食事の介助が必要な利用者さんの座席配置や職員配置を見直し、スタッフが周囲の状況をわかるようにする。
  • 利用者さんの排泄リズムを把握することで、トイレ誘導を適切に行えるようにする。

面会時に家族があげたみかんで誤嚥

事例

昼食時、面会に来ていたご家族の叫び声が居室より聞こえ、スタッフが駆けつけると利用者さんが誤嚥を起こしていた。

原因・理由

本人の嚥下状態をご家族が十分に理解していなかったため、みかんを食べさせてしまった。面会中の出来事で、状況の把握が不十分だった。

対処法

  • 面会の際に差し入れがある場合は、必ずスタッフに申し出てもらうようご家族に説明する。
  • 誤嚥の危険性がある差し入れは持ち帰ってもらい、どのような食品の差し入れならよいかのアドバイスをご家族にする。
  • スタッフはご家族などの面会時の状況を把握できるよう努力する。

介護ミスによる入浴中の溺死と皮膚の剥がれ

事例:溺死

有料老人ホームで要介護度2の入所者が一人で入浴したが、面会に訪れた家族が浴槽で浮かんでいる利用者さんを発見。救急搬送したが間もなく死亡を確認した。

原因・理由

家族からも入浴中の安全確認の申し入れがあり、施設側も「入浴中の安全確認と長湯にならないよう注意が必要」と認識していたものの、職員の見守りがなされていなかった。

対処法

  • サービス計画書の見直しをする
  • 入浴の際は利用者さんからスタッフにその旨を申し出てもらう
  • 入浴中は頻繁に声をかける
  • 浴槽が円形で大きかったため、一人用の小さなサイズに変更する

事例:皮膚の剥がれ

おむつ交換の際にスタッフがパッドを引き抜いたところ、パッドと一緒に皮膚が剥がれてしまった。

原因・理由

排泄物や汗などで利用者さんの皮膚がふやけてしまっていたため、パッドが皮膚に密着していた。

  • おむつ交換の際は利用者さんの体を横向きにし、一気にパッドを剥がさない
  • パッドが剥がれにくい場合は、ぬるま湯をかけながらゆっくりと剥がす 
  • 普段からおむつ交換の際に皮膚の状態を観察しておく

ノロウィルスによる食中毒で集団感染

事例

介護老人保健施設でノロウィルスによる食中毒が発覚。利用者さんや職員に広まり100名以上の集団感染となった。

原因・理由

ウィルスが盛り付け用の調理台から検出された。汚染経路は不明。利用者さんの手洗いが十分でなかったことや、嘔吐物処理を担当したスタッフが塩素系消毒薬を使用しなかったことも感染拡大につながったとも考えられる。

対処法

  • 職員は「1ケア1手洗い」を徹底する 
  • 利用者さんが外出後やトイレの後にしっかり手洗いを実行できるよう介助する
  • ご家族や出入りする業者など、外部からの訪問者にも手洗い・うがいを徹底してもらいマスクの着用もお願いする 
  • 調理担当の職員は必ず専用のトイレを使用する 
  • ご家族からの食品の差し入れは必ず報告してもらう 
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事故を防止するためには、ヒヤリハットの対策が重要!

介護におけるサービス提供で事故を起こさないためには、日常業務での「ヒヤリ」「ハッ」とした出来事を見過ごさないことが大切です。なぜヒヤリハットが重要なのか?ヒヤリハットが起こった際にどう対処すればいいのか?について見ていきましょう。

ヒヤリハットとは

介護の現場で事故になりかねなかった「ヒヤリとした」「ハッとした」経験のことを「ヒヤリハット」と呼んでいます。看護師など医療関係者の間では、ヒヤリハットの同義語として「インシデント」を用いることもあります。

ヒヤリハットの重要性

「ハインリッヒの法則」をご存じですか?
労働災害の分野で使われる事故発生の経験則で「1件の重大事故の背後では、29件の軽傷事故と300件のヒヤリハットが起きている」といわれています。つまり、ヒヤリハットの裏には重大な事故を引き起こす可能性があるということです。

事故を未然に防ぐには、日常でヒヤリハットが発生したときに「事故に至らなくて良かった」ですませないことが大切です。介護に携わった職員が報告書を作成し、施設・事業所内の職員全員で情報共有することが重要となります。

ヒヤリハットが起こった場合の対処法

介護の現場で利用者さんにサービスを提供するうえでヒヤリハットが発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。大切なのは以下の4つを行うことです

発生した現場の環境・体制に問題はなかったのかを検証する

車いすの転倒であれば、ブレーキは弛んでいなかったか?座面のクッションがずれていなかったか?などを検証します。

介護職員がどのような状態・状況だったかを検証する

慣れている業務のため油断していなかったか?忙しさを理由に確認を怠らなかったか?などを検証します。

利用者さんのADLなどの状態を正確に把握する

介護するにあたり「立つ」「座る」「歩く」など、利用者さん本人の能力を理解していたか?当日の健康状態や身体の変化などをチーム全体で共有していたか?などを振り返り、改めて利用者さんの状態を正確に把握します。

検証した結果を分析し対応策を具体的に立てる

さまざまな角度から、発生したヒヤリハットの事例を検証。その結果をチーム全員で共有し、分析したうえで具体的に対応策を立て、実行します。そのためにも介護に携わる一人ひとりが、ヒヤリハット報告書を積極的に記録する習慣をつけることが大切です。

利用者さんと介護職員を守るリスクマネジメント

介護中の事故を未然に防ぐことは、利用者さんと介護職員を守ることにつながります。ヒヤリハット報告書の活用と情報共有は、そのためのリスクマネジメントでもあります。

やったこと起きたことを報告書としてきちんと記録に残しておくことは、責任転換や誤解が生じないためにも大切です。万が一事故が起きた場合のリスクマネジメントとして、利用者さんのご家族への説明にも必要となります。

利用者さんは高齢者がほとんどです。歩行の際に無理をさせていなかったか?服薬や水分不足によるふらつきなどがなかったか?など、利用者さんの状態を事前に確認しておくようにする必要があります。特別養護老人ホームなどの高齢者施設は認知症の利用者さんも多いため、より注意深く業務にあたるようにしましょう。

とは言うものの、事故が起きる原因は介護スタッフ個人の不注意だけではありません。そもそもあるべき場所に手すりがついていない、装具が利用者さんに合っていないといった環境が要因で、転倒や骨折などの事故が起こるケースもあります。こうした要因は事業者側、施設側の問題です。もしも環境要因に気づいたら、責任者や現場のリーダーに報告するか、チームミーティングの際などに改善を提案してみましょう。

それでも事故が起きてしまったら

未然の事故防止対策をしっかり立てて実行したところで、事故が起きる可能性はゼロにはなりません。実際に事故が起きてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。施設(サービス)別に、よくある事故の被害事例を見てみましょう。

施設別よくある事故事例

訪問サービスでよくある事故事例

訪問先でよくある事故が物品の破損・紛失です。ほかには、利用者さんの骨折などのケガ、食事中の誤嚥・誤飲などもあります。

通所サービスでよくある事故事例 

通所サービス中によくある事故が利用者さんのケガです。とくに多いのが転倒・転落による介護事故で、ケガの内容として多いのは骨折です。

居宅介護支援サービスでよくある事故事例

居宅介護支援サービスによくあるのは、ケアプランの間違いによる事故です。たとえば、リハビリ回数制限や住所間違いなどの書類作成ミスや、認定期間、時間単位の間違い、介護レベルの判断ギャップなどがあります。 

こうした事故事例のなかでも物品の破損や紛失の場合、必ずしも担当した職員が起こした事故とは限りません。しかし、利用者さんからは「なくなった」「壊した」と担当者が疑われることが多いので注意が必要です。 

では次に、介護の現場でこうした事故が起きてしまった場合、どのように対処すればよいかを見ていきましょう。事故が起きたら以下の手順で対応します。

事故が起こった場合の対処法

応急処置をし、事故の内容により警察へ通報する

利用者さんにケガがあれば、まずは応急処置をしましょう。必要に応じ病院へ運びます。担当した職員に過失があれば「業務上過失致死傷」の可能性もありますので、状況に応じ警察に通報します。

事故の内容により自治体へ届け出る

ケガや死亡、食中毒、職員の不祥事などの事故が起きた場合、介護サービス事業者は市町村へ報告する義務があります。事故報告書を作成し、自治体の介護保険課などに届出をしましょう。居宅サービスの場合は、居宅介護支援事業所へも届けます。

ご家族へ一報を入れ報告と謝罪をする

利用者さんのご家族への報告をしましょう。「まだ調査中だから」と後回しにすると、ご家族の不信感にもつながります。早めに一報を入れることが事業者側の誠意を示すことにもなります。

事故現場の保全・記録と聞き取り調査をする

事故が起きた現場の写真やケアプランなどの資料を保全・記録し、担当した職員の聞き取り調査をしましょう。利用者さんやご家族から損害賠償を求められた場合などに、事業所や担当職員、提供したサービスや事業そのものに問題がないことを証明する重要な資料となります。

まとめ

介護事故は担当した職員のミスもありますが、利用者さん本人やご家族など、支援される側に原因がある場合もあります。なかには利用者さんやご家族の無理な要求が原因のケースもあるでしょう。

いずれにしても事故を起こしてしまったら、まずは慌てず対処することが大切です。くれぐれも事故にあった利用者さんとそのご家族へは、誠意ある丁寧な対応を忘れないようにしてください。

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