介護の現場に見られるヒヤリハットの事例!未然に防ぐ方法も紹介

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

事故になる手前の状態をヒヤリハットと呼び、これが介護の現場で起こることも少なくありません。具体的に介護現場ではどのようなヒヤリハットが見られるのか、事例を挙げながら解説します。またヒヤリハットを防ぐためには何ができるのか、経験を次に活かすためにはどのような報告書を作成すれば良いのかについても見ていきましょう。

ヒヤリハットとは事故一歩手前の状態のこと

ヒヤリハットとは、事故になる手前の状態のことです。危ないと感じたときに冷や汗が出てヒヤリとし、ハッと気付くのでヒヤリハットと呼びます。

ヒヤリハットはさまざまな場面で起こるので、常に気持ちを引き締めていなくてはいけません。たとえば、建設現場では「クレーンで吊り下げた資材が落ちそうになって通行人にケガをさせそうになった」、「安全ベルトが緩んで作業員自身が落ちそうになった」などの例があります。そのほかにも医療や運搬などのさまざまな職場で、ヒヤリハットが日々起こっているでしょう。

ヒヤリハットが起こるのは、特定の職場だけではありません。日常生活のなかにも冷や汗が出るような出来事は潜んでいます。たとえば運転中、子どもと遊んでいるとき、入浴しているときなど、普段の生活で冷や汗が出ることも珍しくありません。

介護現場のヒヤリハットの事例を紹介

介護現場も例外ではありません。介護中にヒヤリとし、ハッと気付くような出来事も多数起こります。いくつかのシーンに分けて、事例を見ていきましょう。

入浴・排せつ時のヒヤリハット

入浴時のよくある例としては、転倒しそうになることが挙げられるでしょう。介護施設の浴室で利用者さんが転びそうになったり、それを支えようとする介護職員が転んだりすることがあります。

浴室は滑りやすいので、滑り止めのマットなどを敷いて事故防止に努めることが必要です。また、脚部分にゴムの滑り止めがついた介護用の椅子を使うことも、ヒヤリハット防止に役立つでしょう。

ひげ剃りの介助をしている時に、利用者さんが動いて出血するといった事例もあります。カミソリなどの危険物を使用するときは利用者さんを適切に固定するなど、事前に介護事故防止の対策を講じておきましょう。

介護職員が一人で排せつ介助を行うときには、利用者さんが便座から滑り落ちそうになるというたこともあります。手すりなどのガードがある便座を使用する、二人で介助するなどの工夫をして介護事故を防止しましょう。

食事介助のヒヤリハット

食事のシーンでは、別の利用者さんの食事を食べてしまうこともあります。同じ内容の食事であれば大きな問題にはなりませんが、間違って食べてしまった利用者さんが食事制限をしている場合には、病状悪化などに繋がるケースがあるかもしれません。

また「入れ歯をしないで食事を始めた」といったヒヤリハット事例もあります。十分に咀嚼できないので、消化が悪くなったり食事量が減ったりする危険性があります。

そのほかにも、食べるスピードが速すぎて誤嚥するなどの事例もあります。食事介助が不要な利用者さんであっても、適度に咀嚼しているかどうか目を配りましょう。

服薬時のヒヤリハット

処方されている医薬品によっては、深刻な問題を引き起こす可能性があるので、細心の注意を払って服薬管理を行う必要があるでしょう。

服薬時の事例として、別の利用者さんの薬を飲んでしまうといった報告が挙げられています。正確に利用者さん本人の薬を渡すことはもちろんのこと、利用者さんが服薬するまでしっかりと見届けることが必要です。

また「別の時間に指定されている薬剤を渡してしまった」、「薬を渡すのを忘れてしまった」など職員側に問題のあるケースもあります。利用者さんが服薬するまでに気付けば良いですが、そうではないときには体調悪化などを引き起こす可能性があるので注意が必要です。

移動時のヒヤリハット

移動時のヒヤリハットでは、車いすに関する事例も多くなっています。ブレーキをかけ忘れ、利用者さんが立ち上がろうとした際に転倒しそうになった、利用者さんの腕が車いすのひじ掛けに乗せられておらず、手をタイヤに巻き込みそうになった事例もあります。

また「散歩中に花や木の実などを食べてしまった」、「段差に車いすのタイヤが引っかかって車いすごと倒れそうになった」というケースもあるでしょう。利用者さんが食中毒を起こしたりケガをしたりする可能性もあるので注意が必要です。

着替えのときのヒヤリハット

着替えを介助するときも注意が必要です。たとえば、靴下や靴を履こうとして転倒しそうになったり、無理に衣服を着せようとして引っかかり、表皮剥離してしまったりする場合があります。

また、おむつ交換も注意が必要な場面です。体位を変えたとき、利用者さんがベッドから落ちそうになることも珍しくありません。ベッドの柵を立てたり、二人でおむつ交換をしたりといった工夫が必要です。

介護現場でヒヤリハットを防ぐためにできること

介護現場でヒヤリハットを防ぐために、次の3つを実施していきましょう。

  • ヒヤリハットが起きそうな環境を検証する
  • ヒヤリハットが起きたシチュエーションを検証する
  • 利用者さんの状態を職員全員で共有する

それぞれのポイントを解説します。

ヒヤリハットが起きそうな環境を検証する

ヒヤリハットが起きた場所、あるいは危険なことが起こりそうだと思える場所を検証します。たとえば段差などがあるところを詳しく調べ、スロープを作る、手すりを設置するなどの対策を講じれば、ヒヤリハットを未然に回避できるでしょう。

ヒヤリハットが起きたシチュエーションを検証する

実際にヒヤリとしたときには、どのようなシチュエーションでそれが起こったのかを検証します。たとえば利用者さんに薬を渡す際に起こったのであれば、薬を渡す仕組み、ダブルチェックをする仕組みなどを構築すると良いでしょう。

ヒヤリハットが起こったときは、環境やシチュエーションだけではなく、介護者の状況も分析することが必要です。なぜダブルチェックを忘れたのかと理由を探っていくと、チェックする場所が遠い、チェックリストがないなどの問題点が見つかるかもしれません。

検証する際、疲れていたなどの理由では解決しないようにしましょう。疲れていた、面倒だったなどの理由では、問題が浮かび上がってきません。介護者がどのような状態でもヒヤリとせずに済む環境を構築するためにも、さまざまな方向からシチュエーションを分析していきましょう。

利用者さんの状態を職員全員で共有する

利用者さんの状態を正確に把握していることも、冷や汗が出るような出来事を減らすために必要です。利用者さんごとに注意するポイントは異なるので、たとえば「右手は上がりにくいので左脇から抱える」、「食間に服用」のようにノートに記録し、職員全員で共有しておくと危険な出来事が起こりにくくなるでしょう。

ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハットが起こったときは、深刻な事故に繋がらなくて良かったと安堵してしまい、できればほかの職員には知られたくないと感じるかもしれません。しかし、ヒヤリハットが起こったということは、ほかの職員でも同じ環境やシチュエーションでヒヤリハットが起こる可能性があるということを意味します。

次に同じシチュエーションになったときは、ヒヤリハットではなく事故になるかもしれません。利用者さんの安全を守るためにも、ヒヤリハットが起こったときには隠さず、その状況を報告書に記録して経験を職員全員で共有するようにしましょう。

ヒヤリハット報告書は、次の3つのポイントを意識するとわかりやすいものになります。

  • 5W1Hを意識する
  • 箇条書きで記載する
  • 主観的な視点を入れない

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

5W1Hを意識する

5W1H、つまり「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何を」、「なぜ」、「どのように」の6つをわかりやすく記載することで、ヒヤリハットが起こった状況が理解しやすくなります。たとえば洗面所でヒヤリハットが起こったときは、次のように記載できるでしょう。

  • いつ:朝食後の洗顔時間
  • どこで:2階の中央エレベーター脇の洗面所
  • 誰が:Aさんが
  • 何を:歯ブラシを
  • なぜ:歯を磨いているときに手を滑らせて
  • どのように:喉に詰まらせそうになった

箇条書きで記載する

ヒヤリハット報告書は、ほかの職員に注意を喚起し、事故を回避するために作成します。わかりやすく伝えることが大切なので、文章化する必要はありません。箇条書きで記載し、何が問題点で何に注意をすれば良いのかをわかるようにしましょう。

主観的な視点を入れない

ヒヤリハット報告書は、誰にでも起こりうる危険を回避するために作成します。疲れていたから、重かったからなどの主観的な視点を入れると、状況を誤って判断することに繋がる恐れがあるでしょう。客観的に事実だけを記載することが大切です。

次の記事でヒヤリハット報告書の書き方を詳しく解説しています。ぜひ参考にして、職員全員に役立つヒヤリハット報告書の作成に役立ててください。

介護のヒヤリハット事例を参考に安全対策を進めていこう

介護現場におけるヒヤリハットの事例を知ることで、安全性に配慮した施設づくり、サービス提供などができるようになります。職場のヒヤリハット報告書を読み、注意するべきポイントを理解しておきましょう。

また、ヒヤリハットの経験をほかの職員と共有することも大切です。隠したいと考えるのではなく、介護事故を回避するために経験をヒヤリハット報告書に記載しましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

介護専門のシフト・勤怠管理サービス
『CWS for Care』

CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表出力をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
人員基準や加算チェックなど介護特有の要件に対応し、介護事業者様の業務効率化をサポート。介護のシフト・勤怠管理でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。