介護現場での言葉遣い。敬語?タメ口?正しいコミュニケーションとは(事例付き)

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介護現場での言葉遣い。敬語?タメ口?正しいコミュニケーションとは(事例付き)

介護施設で働く職員の方の中には、利用者さんに対する言葉遣いに悩む方も多いのではないでしょうか?一般的に年長者に対して尊敬の意を表す言葉遣いは敬語ですが、タメ口で話している職員さんも何らかの理由からあえてそのような言葉を使っているのかもしれません。

介護現場ではどのような言葉を使うのが正しいのでしょうか。介護や福祉の現場でよくある言葉遣いの事例やそれぞれの言葉遣いに対する考え方を交えながら、正しいコミュニケーションについてお伝えします。


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介護現場で求められる言葉遣いとは

介護現場では、利用者さんやご家族との信頼関係を築くうえで、言葉遣いに気を配ることが重要です。利用者・入居者の方、ご家族はほとんどの場合が年長者です。基本的には敬語を使ったコミュニケーションを取りましょう。

ただ敬語といっても、普段聞きなれないような難しい言葉や過剰にへりくだった言葉遣いは逆にいんぎん無礼に感じられる可能性もあります。また利用者さんからすると堅苦しく感じてしまうこともあります。介護現場は生活支援の場ですから、日常的、家庭的な安心感が得られるような、少しやわらかい対応が望まれます。

高級ホテルのような対応をコンセプトとしている有料老人ホームなどでは、職員全体に敬語での言葉遣いが教育されている場合もあります。

また、利用者さんに対する言葉遣いだけでなく、職場の雰囲気や職員のマナーの面から、職員や取引先など仕事で関わる人との間では、馴れ馴れしいタメ口や流行りの言葉などは使わずに、敬語を使うことが望ましいでしょう。

敬語の種類と介護現場での事例

敬語には丁寧語・尊敬語・謙譲語があります。

  • 丁寧語→言葉や会話全体を丁寧に表現する言葉
  • 尊敬語→相手を高めて敬意を表す言葉
  • 謙譲語→自分を低めて相手に敬意を表す言葉

それぞれ、場面によって使い分けられます。

とくに尊敬語・謙譲語は、相手に対して使うか自分に対して使うかで混同しやすく、相手に使うべき言葉を自分に使ってしまうなど、間違いやすい敬語です。

敬語 早見一覧表

基本 丁寧語 尊敬語 謙譲語
する します なさる、される いたす
いる います いらっしゃる おる
来る 来ます お越しになる、おいでになる 参る
行く 行きます いらっしゃる、行かれる 伺う
言う 言います おっしゃる 申し上げる
聞く 聞きます お聞きになる 拝聴する、伺う
見る 見ます ご覧になる 拝見する
書く 書きます お書きになる 書かせていただく
食べる 食べます 召し上がる いただく、頂戴する
持つ 持ちます お持ちになる お持ちする
与える あげます くださる 差し上げる

丁寧語、尊敬語、謙譲語とは、具体的にどのような言葉なのか。
介護現場で使われる事例と共にみていきましょう。

丁寧語

丁寧語とは、「です」「ます」「ございます」などの文末に添えて、丁寧に表現するものです。自分自身の言葉を丁寧にして品位を高め、相手への敬意を表します。

介護の現場での丁寧語の事例

  • 「今日はレクリエーションをする?」→「今日はレクリエーションをしますか?」
  • 「朝食は何を食べた?」→「朝食は何を食べましたか?」
  • 「明日は先生が来る」→「明日は先生が来ます」
  • 「かばんを持って」→「かばんを持ってください」
  • 「服を着たか?」→「服を着ましたか?」
  • 「ノートに書いて」→「ノートに書いてください」
  • 「わかった」→「わかりました」
  • 「田中さんだね?」→「田中さんですね?」
  • 「風呂は利用する?」→「お風呂は利用されますか?」
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尊敬語

尊敬語とは、相手や第三者の行動や性質などを高め、敬意を表す言葉です。

介護の現場での尊敬語の事例

  • 「今日はレクリエーションをする?」→今日はレクリエーションをなさい(り)ますか?」
  • 「朝食は何を食べた?」→「朝食は何を召し上がりましたか?」
  • 「明日は先生が来る」→「明日は先生がいらっしゃいます」
  • 「かばんを持って」→「かばんをお持ちになってください」
  • 「服を着たか?」→「服をお召しになりましたか?」
  • 「ノートに書いて」→「ノートにお書きください」
  • 「田中さんだね?」→「田中さんでいらっしゃいますね?」
  • 「風呂は利用する?」→「お風呂はご利用になりますか?」

謙譲語

謙譲語は、自分自身を下げて間接的に相手や第三者を高める言葉です。
自分の言動に対して使われます。

介護の現場での謙譲語の事例

  • 「今日はレクリエーションをする」→「今日はレクリエーションをいたします」
  • 「私は朝食を食べた」→「わたくしは朝食をいただきました」
  • 「明日は私が行きます」→「明日はわたくしが伺います」
  • 「かばんを持とうか?」→「かばんをお持ちしましょうか?」
  • 「ノートに書く」→「ノートにお書きします」
  • 「わかった」→「承知いたしました」

介護現場でよくある不適切な言葉遣いとは

介護現場でよくある不適切な言葉遣いに「幼児言葉」「タメ口」「命令口調」があります。
実際に介護現場でみられるそれぞれの言葉遣いを事例とともに確認していきましょう。

子ども扱いしたような幼児言葉

  • 「○○ちゃん、可愛いー」
  • 体温計を脇に挟むときに「上手ねー。お手て挙げれて偉いねー」
  • 「痛いでちゅか?」
  • 「ご飯食べれまちたかー?」

利用者さんに対して赤ちゃんに使うような言葉や、子ども扱いしたような幼児言葉を使っている職員を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本人は、利用者さんに対して
「親しみを込めるため」
「わかりやすく理解しやすい言葉で伝えるため」
「敬語よりも子供に話すような優しい語調の方が利用者さんの反応がいい」

といった考えがあって使っているという場合もありますが、職員が幼児言葉で話していると、利用者さんやご家族は次のように感じている場合もあります。

  • 自分よりも年下の相手から子ども扱いされることに不快感を持つ
  • 利用者さんを大切にしているからこそ「馬鹿にしている」「下に見ている」ようにとらえて不快な気持ちになる

また、幼児言葉を使っている職員自身が、無意識に次のようなことを感じている場合もあります。

  • 利用者さんを「できない人」という視点でとらえている
  • 無意識のうちに上から目線となっている

タメ口

  • 「今から血圧測るねー。もう熱は測った?」
  • 「今日は何する?」
    「トイレ行こっか」
    「おはよー。変わりない?」


「初めは敬語で話していたけれども、入居者との関係性ができてきてからタメ口になった」、 「敬語で丁寧に話しすぎると、よそよそしさを感じて嫌だという方がいるからタメ口にしている」 といった、自分なりの理由のもとにタメ口で接している職員もいるかと思います。

しかし、本人は親しみを込めてタメ口を使っていたとしても、相手が同じようにタメ口に親しみを感じるかどうかはわかりません。
利用者さんやご家族によってタメ口に対する感じ方、とらえ方は違い、次のように思われることもあります。

  • 職員からタメ口で話されると軽く扱われているような気がする。
  • 自分はお世話をしてもらっている弱い立場であると感じてプライドを傷つけられる
  • 介護が必要となる前は地位のある立場で仕事をしていて、尊敬している父(母)が、年下の子からタメ口で接されているのを見るのが辛い、不快に感じる
  • 男性利用者さんは年功序列の縦社会を生きてきた方が多く、タメ口を好ましく思わない方も多い

タメ口を使っている本人も、最初は「親しみを込めて」という思いから、いつの間にか「馴れ馴れしく」なってしまっていることや、無意識のうちに上から目線になってしまっていることもあります。

タメ口を継続的に使用していると仕事としての緊張感がなくなり「これくらいなら、まぁいいか」と仕事がいい加減になってしまうことや、利用者さんに対して誠意を込めた対応ができなくなることもあります。

命令口調

  • 「早く立って!」
  • 「もっと食べなきゃダメ!」
  • 「待ってて!」
  • 「そんなことしない!」

命令口調で言うと利用者さんに伝わりやすいと思って使って方もいるかもしれません。ですが、命令口調だと、言われた利用者さんが萎縮してしまうことや、自分ができないことを責められていると感じることもあります。

「座ってください」という丁寧な言い方だとしても「~してください」という命令口調は相手の行動を制限し、言葉による拘束(スピーチロック)となります。

忙しいとき、余裕がないときにはついつい命令口調になってしまいがちですが、先ほど例に挙げた言葉も、次のように言い換えると命令からお伺いへと変化し、利用者さん自身が行動を選択することができます。

  • 「立てますか?」
  • 「もう少し食べられますか?」
  • 「先に待っている方のところに行きたいので、長い針が1に来るまで待っていただけますか?」
  • 「どうされましたか?」

不適切な言葉遣いになる3つの原因

不適切な言葉遣いになってしまう原因として下記の3つが考えられます。

  • 「接遇・マナーの意識が薄い」
  • 「親しみを込めていると思っている」
  • 「認知症等で伝わらないと思っている」

それぞれの原因について詳しくみていきましょう。

接遇・マナーの意識が薄い

そもそも接遇や目上の方に対して敬語を使うというマナーを知らない、意識が薄いという場合があります。年齢が若い方や社会人経験が少ない方で、今まで敬語を使う経験や接遇を意識したことがないという方によくみられる原因です。

「親しみを込めている」という考え

「利用者さんとの距離を縮めたい」「早く信頼関係を築きたい」という思いから親しみを込めて、あえて敬語を使わずにタメ口で話すという職員の考えが原因となっていることもあります。

いきなり利用者さんに対して敬語を使わずに話すと、利用者さんが不快に思い、かえって距離ができてしまうこともあります。

「認知症だから伝わらない」という考え

認知症の方には短い言葉でわかりやすく話したほうが伝わりやすいという考えから、職員がタメ口や幼児言葉、命令口調を使っていることがあります。

短くわかりやすい言葉で伝えるということは大切ですが、目上の方に対する態度としてタメ口や幼児言葉、命令口調を使うことは、利用者さん本人にとってもご家族からみても不快な気持ちを抱かせてしまうことがあります。

大切なのは利用者さんを思いやる気持ちと信頼関係を築くこと

生活の場の支援という介護の現場では、介護職員と利用者さんとの距離が近くなるからこそ、タメ口などの不適切な言葉遣いを含め、接遇やマナーがおろそかとなってしまう場合もありますが、最近では、介護・福祉施設などにおいても接遇マナーが求められ、研修もなども行われています。

利用者さんのなかには、「敬語を使われると、きちんと向き合ってくれているようで安心する」という方もいれば、「信頼関係が築ければタメ口で話してくれたほうが気軽に何でも頼みやすい」という方もいらっしゃいます。
そのため、介護職員に求められることは「どんな言葉を使うか」ということだけではなく、「利用者さんを思いやる気持ちを持って接するこ」「利用者さんとの信頼関係を築くこと」です。

「敬語」と言われると、難しく考えてしまうかもしれませんが、利用者さんを尊重し、求めているケアやサービスを提供したいと考えて行動すると、自然と丁寧な言葉遣いが生まれてくるのではないでしょうか。
そして、その思いや行動が相手に伝わり、ケアがスムーズに行えるようになったり、ストレスが軽減したり、職場の雰囲気が良くなったりと、さまざまな効果も期待できるので、ぜひ今回の記事を参考に取り組んでみてください。

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