認知症介護における職場内教育(OJT)の運用法

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人材不足の介護業界の中で、職員を確保することが難しい現状があります。無資格や異業種からも雇うという視点からも育てる視点が必要になってきます。管理者として、新人や経験が浅い職員を育てること、育てることが出来る人を育てることが求められる中で、また認知症の方も増加する中で、認知症介護における職場内教育(OJT)は重要になります。

今回は、認知症介護における職場内教育(OJT)の運用法をご紹介します。職場内の認知症介護の教育(OJT)と対応力向上にご活用頂ければ幸いです。

認知症ケアにおける職場内教育(OJT)の特性

  1. 利用者・入居者によって必要とされるケアの内容や方法が異なる・・・
    ・利用者・入居者の背景・状態像・ケアの課題等の個別性に留意
    多くの利用者・入居者に対するケアをまとめて指導することが難しい
  2. 全員に共通的なケアの方法や業務内容を全般的に習得・・・
    ・個人個人の進度や習得状況に応じた個別的指導
  3. 個別支援の適切なあり方を目標に、一人の利用者・入居者へのケアを指導(その人理解を深めながら)

事後指導の重要性

  1. 個別の利用者・入居者へのケア場面におけるOJTでの配慮
    本人の前であからさまに誤りを訂正 → 不信感
  2. ケアの中で必要なポイントやコツを自分で考えさせ、どうしたらよいのか
    案を考えさせるようなコーチングによる指導が効果的

職場内教育(OJT)の意義を組織内で共有する

  1. 管理者は、職員を採用したら、入社資料について説明を行ってください。
    この時、職場内教育(OJT)の説明も合わせて行ってください。
    (この時点でトレーナーが決まっていることが望ましい。)
  2. 選任されたトレーナーは、可能な限り職場内教育(OJT)実施前までに、職場内教育(OJT)計画を立案してください。
  3. 職場内教育(OJT)開始:
    概ね、3ヶ月を想定していますが、職員の能力に合わせて、短縮・延長してください
  4. 採用7~10日後、管理者による面談を実施。この時、管理者は必ず、面談の記録を残し、職場内教育(OJT)の振り返りも行ってください。
  5. 3ヶ月間の職場内教育(OJT)終了:終了時は、トレーナーも交えて、改めて職場内教育(OJT)の振り返りを行ってください。

2つのリーダーシップとは

フォロワーシップの仕組み

初任者や後輩職員を指導する際の基本姿勢

  1. 信頼を勝ち取る
  2. 権威を振りかざさない
  3. 約束は必ず守る
  4. 毎日、一度は声をかける
  5. 個人的な面にも関心をもつ
  6. 上司への報告を定期的に行う

職員から学ぶ際の基本姿勢

  1. 相手の言葉や行動を否定せず、まず受け入れる。
  2. なぜそのような言葉や行動があったのかを考える。 
  3. 相手に聞いてみる(確認する)。
    聞いてみることが「なるほど」と気づくこと、職員から学ぶことにつながる

常に職場内教育(OJT)で心がけること

  1. 職員一人ひとりに関心を持ち、「知ろう」とする姿勢があるか
  2. 「人を育てる」という視点があるか

SOS の法則とは

  1. シンプル(shmple)
    教えることは、「これでもか!」と思うくらい短く、単純にしましょう
  2. アウトプット(output)
    教える際は、必ずアウトプットする時間を入れましょう
  3. スモールステップ(small step)
    教えることは、1回にひとつだけにしましょう

育成姿勢に関するチェックリスト

  1. 経営理念や大切にしたい価値観を共有している
  2. 職員と双方向の話し合いをよく行っている
  3. 未来を語り、職場のビジョンや目標を共有している
  4. 職員と定期的に個別面談を実施している
  5. 仕事の教える際に下記の方法を用いている。
    ・習う準備をさせる
    ・仕事の内容を説明する
    ・実際にやらせてみる  
    ・教えた後を見る
  6. 基礎から応用へと手順を踏んだ指導を行っている
  7. 職員のキャリアアップの視点で指導している
  8. 何が基本であり、MUST(不可欠)の項目であるかを明確にしている
  9. 基本行動は繰り返し訓練し、徹底している
  10. 基準から逸脱した行動は、その都度注意している
  11. 職員の自主性を尊重し、時には待つ姿勢をとっている
  12. 独自の考え方や創造性を発揮できる機会をつくっている
  13. 職員の持ち味や強味に着目し、ポジティブなフィードバックを行っている
  14. 節目ごとに、自分自身の知識や技術の見直し(棚卸し)を行っている
  15. 自分自身の自己啓発目標を設定している
  16. 自ら職場内外の研修に積極的に参加している
  17. 基本行動や決定事項は率先して実行している
  18. 言行一致を心がけている
  19. 常に時代の動きに目を向け、職員よりも一歩先を読む努力を続けている

各種帳票および点検票の活用について

職場内教育(OJT)を実施する機会を活用して、職場内での運用のあり方を再確認してみましょう。確認の方法は、様々ありますので、職場内でやりやすい方法を採用してください。ここでは、確認方法の一例です。

  1. 職場内の「サービス評価スケール」を作成、活用する。
  2. 各自治体で示されている「自己点検チェック表」を活用する
  3. 厚労省など公表されているOJT計画書やOJT評価チェック表を活用する。

まとめ

職場内教育(OJT)の運用においては、実践リーダーは、職場内の課題に応じた人材育成を企画・実施していく役割を理解しなければいけません。

その為には、認知症ケアとの共通点は職員の個別性を尊重し、利用者を理解する事と同じように職員の思いや考えを知ることも大切ですので、日々の申し送りやカンファレンスの際にも職員の本音が言い合える職場作りで認知症対応力向上を目指して下さい。

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