介護事業の健全な運営行うためには、年に一回以上はコンプライアンスやリスクマネジメントだけでなく、サービスの質の振り返りが必要です。また事故やトラブルがない環境を作るのは、マニュアルの整備と労務管理も管理者の責務です。
今回は、管理者の役割の運営管理についてご紹介しますので、ご活用頂ければ 幸いです。
運営管理について(1)
①第三者評価・外部評価の活用
⇒自分たちの事業所の「よい部分」「課題」に気づく、 職員全員で共有できる機会となるように…
- 評価の目的・意味を理解する
- 評価の方法を考える
- 評価結果をどのようにサービスにつなげるのか?
②リスクマネジメント
- 災害対策、 緊急対応(急変対応・離設防止等)
- 感染症等対策
- 苦情対応
- 事故、ヒヤリハットの把握、対策
第三者評価や外部評価の活用は、
①評価の目的や意味を理解すること
②評価の方法(やり方)を考えること
③評価の結果をどのようにサービスにつなげて行くのかを考えること
につながります。
○なぜ「第三者評価や外部評価」が必要なのかを職場全体で考えることが、 以後の質の改善や向上には重要です。
→それを理解する、評価に臨む姿勢が『評価を受け、良い点をもらおうという姿勢ではなく、『現在行っているサービスや支援姿勢を見直す良い機会』という考えに変わる。
(お金を支払い、時間をかけて行っている取り組みということを理解し、以後のサービスの質の改善に活かすようにする)
○管理者の役割として、評価をどのようにサービスの改善・向上につなげていくのかPDCAサイクルを基に考えていく必要があります。また職員に評価の目的や意味を伝えて行くことが求められます。
◎取り組みの仕方
自己評価が大切です(十分に時間をかける必要があります)。
- 自己評価を自分達の支援姿勢、体制の定期的な見直しとして捉える
→法人や職員全員でこの考えを共有する。
⇒評価を受ける姿勢を統一する為に、事前に職員全員に評価について の内容を説明し、目的や効果を理解してもらうことが大切。 - 個人作業として評価の記入を職員個々で行います。
- 職員が集まり、一項目ずつすり合わせを行います。
- その意見や状況をまとめ、事業所の評価表として評価機関へ提出を します。
- 評価の結果や目標達成計画を次年度の事業計画に盛り込むなど、一体的に考えることも大切になります。
◆評価を受けることで,
- 現在の事業所の状況・課題・良い部分に気づくことが出来ます。
- 課題や改善策を職員間で話し合うこと自体が、職員の能力の向上
- 事業所として大切にすべき姿勢の共有につながります。
外部評価が義務でない事業所においても,外部評価の項目を参考に、定期的に日頃行っているサービス等を見直す機会を作ってみる。
①防災…マニュアル作りと避難を想定した訓練(火災・地震・風水害等)、地域住民への協力体制を確保するために理解して頂くことや訓練等への参加呼びかけ
◎マニュアル作成においての留意点
- 「動けるマニュアル作り」が求められます。
- そのマニュアルを参考に訓練を行い、マニュアルを見直すというPDCAサイクルが必要となります。
◎訓練においての留意点
- 災害等を想定し、実践的で、効果的な訓練方法を考えて準備する
→義務的な訓練は行わないこと。 - 災害が発生した時に地域の関係者や関係機関と円滑な連携が行えるように、日頃から「地域の方への説明」や「訓練参加への参加依頼」等 を行っていく必要があります。
◎その他
- 避難する場所の確認
- 避難する目安の確認(警報が出たタイミングなのか、避難勧告が出た タイミングなのか)
- 必要物品の確保
②苦情…苦情受付体制の確立
- 早期発見・対応がサービス向上につながるという意識を職員全員が共有できていることが大切です。
⇒苦情となる前の要望に対して、適切に対応できる体制作りも重要です。
③緊急体制…急変時や行方不明等の事故等が発生した場合の体制作り
⇒協力機関や地域との連携体制の確保・訓練の実施・マニュアルの整備・見直し
④感染症対策…新型コロナウイルス・インフルエンザ・ノロウイルス等、各種感染症の「予防」及び「発生時の対応方法」を明確にしていく。
⇒マニュアル等の整備・見直し、定期的な想定した訓練の実施等。「予防」「未然に防ぐ」という取り組みもとても大切ではありますが、「もし発生したら、どう対処するのか、どう動くのか」も重要になります。
また、小規模の事業所の場合は事業所内でご利用者と一緒に食事を作る場合もあります。食中毒の基礎知識を職員全員が持ち、蔓延防止に十分に配慮する必要があります。
⑤事故・ヒヤリハットの把握
- 事業所で発生している事故及びヒヤリハットの報告の把握も大切ですが、報告された内容をどのように職員間で共有するのか、それを活かし、再発防止や大きな事故やトラブルを起こさない対策を考える必要があります。
⇒単に報告書を回覧するだけではなく、申し送りや会議などを活用して、経過の確認、原因の検証や大きな事故に至った場合はどのような損害を被るのかの危険予測について話し合う機会を持つ。事故を未然に防ぐためには、ヒヤリとしたことやハットしたことを職員間で共有できていることが大切になる。
運営管理について(2)
③労務管理
⇒就業規則
⇒勤務時間・休日
⇒健康管理(身体の健康管理と心の健康管理)
◆必要な環境を整えていく、必要に応じて提案する
④その他
- 給付管理業務
- 予算、売上、費用等の管理
- 関係機関への対応、連絡調整等
◆就業規則
「皆さんの事業所の就業規則はどこにあるか知っていますか?」
- 就業規則とは職員が持つ権利や事業所のルールを書面として定めたものであり、その内容を働く人全員に周知する必要があります。
⇒管理者としてどのようなことが書かれているのかを知っておく必要がある。
⇒職員誰もがいつでも手にとって見ることが出来る、場所が分かっている環境を作る必要がある。
例えば、出勤簿やタイムカードがある場所等、誰もが利用する場所 置く等の工夫を行う。
◆勤務時間と休日等
- 勤務時間を守り,長時間労働をなくすこと。
- 職員一人ひとりの休日や有休休暇がきちんと取れているかなど、管理者が把握している必要がある。また、問題と感じた時に、適切なタイミングで、適切に指導対応をして いくことが求められる。
- 各種休暇について職員に周知徹底し、取得しやすい環境を整えていく必要がある。
- 福利厚生(設備や親睦会等)についても職員に周知徹底し、誰もが参加しやすい体制を作る。
◎課題
- 急な休み、急なトラブル等があった時に、勤務帯等を柔軟に対応 できる体制があるのか?
⇒場合によっては法人内の応援が必要となる場合がある。
その時大切になるのが、法人内が普段から自分達の事業所の状況を知っているということ(普段から状況を伝えることが大切になる)。 - 管理者として「就業規則」を理解する姿勢と「労働基準法」等、関係法令を学ぶ姿勢が求められます。
◆健康管理
「身体的な健康管理」と「心の健康管理」という両面が必要となります。
- 身体的な健康管理…法で決められている健康診断を実施すること以外に、管理者として職員の体調の変化に気づくことで、体調が悪い時に休むことができる雰囲気作りになる。
⇒同時に体調管理の必要性をスタッフに理解してもらう働きかけも 必要となる。 - 心の健康管理…何が職員の心配やストレスになっているのかを把握 できる体制作りや早期に対応できる環境づくりが必要となります。
⇒最近はメンタルヘルス等の心身管理研修会も多く開催されており、外部研修で学び、予防することも大切なこととなる。
◎取り組みの仕方
- 日頃からご利用者同様に、職員一人ひとりの様子や表情を見て「天気等どんなことでもいいので、小さな声をかけること」を大切にする。
⇒出勤時・帰宅時に「最近調子はどうですか」等、少しの声がけでも、小さな不安に気づく環境作りにつながる。
⇒感染防止以外でマスクをしている人、表情が暗い人をそのままにしていませんか?
まとめ
管理者の仕事としては,職員の誰もが働きやすい職場となるためにも、必要な環境を整えて行くことが求められます。また、課題を見つけ、改善すべき部分を管理者が中心となって進めていくことが重要となります。
状況によっては、速やかに法人に報告・連絡・相談だけでなく、提案していくことも役割としてあると理解し、安心・安全な業務遂行に務めていきましょう。