「2025年には全体の30%を超える」といわれている高齢者人口。
厚生労働省では、介護サービスを持続可能にするだけではなく、同時にサービスの質の維持・向上を目指しています。そのためには既存業務を見直し、生産性を向上することで介護労働の価値を高めていく必要があり、そのための対策として介護業界においてもICT化が有効であると考えられています。そして、令和3年にはすべての都道府県でICTの補助金制度が整備されるなど、DX化の動きが広がっています。
介護業界においてまだまだ馴染みの言葉でない”DX”や、”ICT”など専門用語の読み方もよく知らない…という方にもわかりやすく説明しておりますので、ぜひご活用ください。
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目次
介護DXとは?
そもそも、DX(ディーエックス)とはDigital Transformation(デジタル トランスフォーメーション)の略です。
経済産業省では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しています。
したがって、介護DXは「スマートフォンやPCを活用して業務効率改善を図ることで、空いた時間を有効に活用し、ご入居者やご利用者のためのより質の高い介護サービスの提供を目指すための取り組み」といえるのではないでしょうか。
また、DXと並んで語られがちなICT(アイシーティー)はInformation & Communications Technology(インフォメーション&コミュニケーションズテクノロジー)の略で、総務省によると”情報通信技術”と定義されており、イメージしやすいもので言えば携帯電話やインターネットのことです。
介護DXの課題
便利になりメリットが多いDX化ですが課題もあります。
令和2年全国の介護関連施設2,500軒を対象にしたアンケートによると、「導入している介護ソフトの利用上の課題」として「パソコンや端末の操作に対する職員の能力差が大きい」といった回答が全体の64%を占めています。
また、同アンケート内の別の設問「施設・事業所で介護ソフトを導入していない理由」の自由記述にも、「パソコンや介護ソフトを扱えないスタッフがいる」など職員側のスキルが不足しているといった回答が見受けられます。このことから、職員のスキルにばらつきがあるという点が介護現場におけるDX化の最大の課題と言えるでしょう。
そのほかにも、厚生労働省のアンケート内で「うまくいかなかったこと」「今後工夫が必要なこと」の設問に対して下記の回答が集まっています。
- 効率化できる業務や書類の分類が十分でなかった。
- 記録内容などのルールの統一化がうまくいかなかった。
- 電子化に同意しない利用者がおり、完全にICT化できなかった。
- 慣れるまで、想定より時間がかかった。
- ICTに要する費用が想定以上だった。
- 定期的な振り返りが必要だと思った。
- マニュアル、記録様式、ルールの整備が必要だと思った。
引用:令和2年度ICT導入支援事業導入効果報告まとめ|厚生労働省
DX化に限らず、幅広い年齢層が働く介護現場において、労働環境を変える場合には多少なりとも課題が出てしまうことがありますが、対策についても後述しておりますので、ぜひご覧ください。
介護DXの種類とDX化で変わること
具体的に介護現場で活用できるDXについてご紹介いたします。
介護ソフト
主に介護記録やその管理、帳票作成、勤怠管理のシステム。手書きやエクセル、ワードなどで作成していた書類をシステム活用により、作成抽出することができる。
【効果】
- 書類作成時にファイルを探す手間や以前のフォーマットを誤って使うことがなくなる
- 複数の職員が同時に使うことができる
- 介護記録からヒヤリハット報告書へ等、転記ミスが起きにくくなる
データ共有場所の統一化(クラウド化)
業務上得た情報や共有したい内容(データ)をウェブ上で保存しておく場所。
【効果】
- 決まった場所へ格納するルールを決めることで探し出す手間や保存先に迷う時間が無くなる
- いつでも、どの機器からでも必要なときにアクセスできる
- 研修動画やマニュアルを格納することで、指導者と職員のスケジュールを調整する必要がなくなりOJTがやりやすくなる
- 災害時においてデータ消失が避けられる
グループウェア
グループウェアとは、業務上必要になるスケジュール管理や稟議、職員間のコミュニケーションなどができるソフトのこと。タイムカード、掲示板、チャット、メールなどの機能も備わっている。
【効果】
- チャット機能では物理的に距離が離れていてもやり取りでき、職員間のコミュニケーションが取りやすくなる
- 履歴が残るため、後から内容を確認しやすい
- ホワイトボードや連絡ノート等で共有していた情報の周知漏れが少なくなる
- 利用者の個人情報など機密情報が漏洩してしまう危険性が防げる
- 経費や稟議が電子申請できることにより、申請・承認作業もしやすくなるうえに進捗や過去の申請が可視化できる
ベッドセンサーカメラ
ベッドやその周辺に機器を設置することで、センサー機能で利用者の状態がわかるもの。
【効果】
- 入居者の急変を見逃さないように頻繁に行っていた巡視を施設で決めた巡視回数に抑えられる
- 職員の夜勤帯の精神的負担が軽減でき、安心して業務遂行出来る
- 巡視の時間を帳票整備等の別の業務に充てることができる
インカム
耳に装着し遠隔で会話できる機器。常に業務中に常に装着するもの
【効果】
- 離れた場所にいても情報共有ができる
- たとえば集団での体操の際、職員同士でご入居者やご利用者の心身状況の注視ができるので利用者の事故防止等の適切なケアにつながる
情報機器
スマートフォンやタブレットを業務用として事業所で購入し全職員へ配布する。
【効果】
- 各種システムの利用、職員同士のコミュニケーションがいつどこにいても可能になるため生産性が上がる
- カメラ機能がついているので、利用者の急変などを画像で共有できる
介護DXの最新導入事例と効果
実際の現場でどのように役立っているのか、どのような効果があるのかご紹介いたします。
見守りセンサー付きカメラ導入例
導入施設
東京都介護付き有料老人ホーム
導入したDX
見守りセンサー付きシステム
導入する前の課題
夜間に利用者の居室を巡視する業務が1日5時間を占めており、職員の負担が大きくなっていた
導入効果
・サービス向上
夜間の定時巡視により利用者を起こしてしまうことがなくなり、深夜帯は7割以上の利用者が就寝している状態になった。
・業務時間の削減
利用者の状況がリアルタイムで把握できるようになったため、1日に5時間かけていた巡視の時間が0時間、業務自体を削減することができた。
導入までのステップ
①周知:職員に業務に対しての満足度調査や定例ミーティングなどを行い、経営陣からメンバーまで役職にかかわらず全員の意見を集め、「夜間の定時巡視」の業務を改善することを決めた。
②検討:業務改善に向けて「センサーの正確性が認められていること」や「安否確認の要件を満たすこと」などの行政の基準を参考に導入機器を選定した。
③体制づくり:職員にシステムの活用方法を指導するため、IT担当者を配置した。
④実装:職員の理解を得ながらシステムを円滑に導入するために、システムが正確に作動することを実感してもらい、システムへの信頼感を高めた。その上で、実際に「睡眠状態が覚醒状態になった際に訪室する」といったオペレーションを導入した。
勤怠管理システム導入例
導入施設
福岡県 小規模多機能型居宅介護・通所介護(株式会社銀水会様)
導入したDX
介護事業者向けクラウド型勤怠管理システム「CWS for Care」
導入前の課題
シフト表はエクセルで作成し、出退勤はタイムカードによる打刻で管理していたため、毎月電卓を使って勤務時間を集計し、その後値を給与ソフトに入力する業務が発生していた。
期待できる効果
・ミスの削減
手作業で計算したり、別のファイルにコピー&ペーストする必要がなくなり人的ミスが減る
・業務時間の削減
目視や電卓計算、別のファイルに書き移す業務がなくなり、毎月シフト作成にかけていた8時間程度が削減できる
クラウド型勤怠管理システム「CWS for Care」は、パソコンやタブレットに不慣れな職員が多い施設でもサポート体制が整っていますので安心して導入していただけるシステムです。
より詳しい導入事例はこちら
介護DX導入の際の注意点
前述したように、業務環境を変える上では課題が出てしまうことも考えられます。トラブルなくスムーズに導入・活用できるようポイントをまとめました。
課題抽出と自分事化
経営者や管理職だけではなく、正職員、非常勤問わず、業務で困っていることや時間がかかっていることを調査・課題抽出しましょう。改善したいと思っている業務を共有することで、導入前から必要性を感じてもらい、DXの導入について前向きな意識づけをする目的もあります。
具体的には・・・
- 全職員で意見や課題を話し合う場を設けたり、意見が言いづらい職員がいることを想定しアンケートを実施する
- 「慣れるまでは一定期間かかります」など一時的に職員の負担が増える可能性があることを説明し理解してもらう
- 提案したいものがある場合は、「介護ソフトの導入でシフト作成の時間が月5時間削減できます。年間で言うと60時間を他の業務に充てることができるようになります」というような具体的な業務削減策を提示する
- 費用だけではなく、職員が使いやすいか・使い続けられそうか・導入して今よりも業務改善されるかを導入施設等の具体的な事例も確認し、きちんと比較検討する
例えば、「自宅の家電製品も最初はわかりにくいですよね」や、「介護記録や報告書の転記大変ですよね」「残業がなくなって早く帰れるようになりますよ」など、共感が得られそうな部分を絡めて話をすると職員も導入後のイメージが付きやすく受け入れやすいのではないかと思います。
業務の明確化と役割分担を見直す
アンケートや会議等で出た意見をもとに、現在の業務の見直しからはじめましょう。また、業務改善についてはDX化以外についても検討し、職員が「業務改善の一環にDX化がある」「職員のためになる」というポジティブな考えを持って取り組めるよう工夫しましょう。
ルール設計
導入する前にある程度の運用方法を決めておきましょう。また、導入後も必要に応じて見直すことが必要です。
具体的には・・・
- 勤怠管理システムはAさんBさん、見守りカメラはCさんDさんなどそれぞれ担当者を設定する(一人に集中しないように注意)
- 事業所内ではもちろん、情報機器を外部で使うことも想定し、休日、外出先での取り扱いルールを設定する
- マニュアルを作成、改訂する(情報共有の方法、システムへの入力単語の統一化など)
- 個人情報保護法、機密情報保持の契約の内容の再確認を行う
- OJTの仕組みづくり
メリットを実感してもらう、慣れてもらう
何よりも、自分でも使えた、便利になった、という成功体験をしてもらうために諦めずに慣れ、使い続けてもらうことが大切です。
具体的には・・・
- グループウェアやクラウドウェアに業務上必要な情報を入れておき、1日の業務で1回は利用するようにして慣れてもらう
- 期待できる改善(夜間巡視の回数と、利用者へのナースコール対応の回数など)を導入前後で一定期間記録するようにし、改善が目に見える形でわかるようにする
- コミュニケーションツールを入れる場合は、馴染みのあるツールのビジネス版を導入するなど、少しでも抵抗感をなくす方法を考える
負担軽減の注視
結果的に職員の負担を減らすために導入するシステムですが、導入の過程で気を付けなければかえって負担を増やすことに繋がりかねません。
- 現場の混乱を避けるために、すべてのシステム・機器を一気に導入しない
- 情報漏洩対策、職員の負荷になる可能性、統制が取れないためプライベートのスマートフォン、タブレットは使わない
- システムやメーカーの業者のサポートを仰ぐ(一定期間サポートしてもらうなど)
- 変化に順応しやすい職員は、周りの職員から依存されたり代わりに業務が集中してしまう可能性があるため、負担がかからないよう管理を行う
介護DXの導入を検討される方へ
介護業務は、入居者や利用者への介助業務の他に事務作業が多くの時間を占めています。
前述したアンケートでも、「介護をしたくて入職したのに事務作業が多く予想外だった」という回答が多く見受けられました。
デジタル機器が苦手な職員も含めてDX化を進めていくには、たくさん時間をかけ触れてもらい、「便利になった」という成功体験が必要だと考えます。
まずは、間接業務として多くの時間を費やす事務作業を改善するシステム導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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