介護の人材不足はなぜ起こる?原因と解消法について解説

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介護現場は慢性的な人材不足に悩まされています。ほかの業種と比べてもその状態は顕著で、求人を募集しても集まりにくい状況です。介護ニーズはこれからも増え続け、介護の担い手が少ないなか、介護事業所の運営はますます厳しくなってくることが予想されます。

介護の担い手不足はなぜ起きてしまうのでしょうか。ここでは、人材不足の原因とその解消法について解説します。


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介護業界における人材不足の現状

働き手が不足する現状には、大きく分けると3つの要因があります。

少子高齢化による労働力不足

令和元年度高齢者白書によれば、将来的に国民の3人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると推計されています。2018年経済産業省の報告では、急速な高齢化の進展によって国内の生産年齢人口が減少し、全産業において深刻な労働力不足を招く恐れがあると示唆しています。 高齢化に伴って需要が増す介護業界においては、他の産業よりもこの労働力不足がより顕著に現れています

増加のペースは緩まない!要介護認定者

急速な高齢化により、介護保険制度開始以降に要介護認定者が年々増加してきました。2018年に経済産業省で行われた「将来の介護需要に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」による報告では、2035年頃まで要介護認定者の増加ペースが緩まない見込みであるとされています。

要介護認定者の増加は、介護を要する人を支える介護者の必要性を意味しており、介護の担い手の不足にさらなる拍車をかけています。

介護労働者の不足

2021年4月の介護サービス職業の有効求人倍率は3.29倍となっており、全職業の平均0.95倍と比較して非常に高い水準であることがわかります。

また、介護労働者の年齢推移をみると平均年齢が年々上昇しており、「令和元年度 介護労働実態調査の結果と特徴」によると60歳以上の介護労働者が全体の22.4%と高くなってきています。20代の介護職員が圧倒的に少ない状況のため、このままでは介護職全体の高齢化が進んでいくことは避けられない状況となっています。

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介護職が人材不足に陥る原因

介護労働者(訪問介護員、サービス提供責任者、介護職員)の1年間の採用率は18%、離職率は15.3%となっています。離職率については全産業の平均離職率14.6%(平成30年雇用動向調査結果)を0.7ポイント上回る結果となっています。介護職の労働環境の改善が少しずつ成果を出してはいるものの、急速に進む高齢化に対し、慢性的な人材不足が続いている状況です。

特に、勤務年数3年未満の離職者が60%にも及び、人材が定着しないというのも大きな原因のひとつです。
なぜ人材不足に陥ってしまうのか、具体的な原因をみてみましょう。

人間関係に悩むことが多い

令和元年度の介護実態調査によると、介護の仕事を辞めた理由として多いのが「職場での人間関係」でした。2019年ソラジョブ介護が介護職員200名に実施したアンケートでは、8割が人間関係に悩みを抱えており、9割以上が悩まされる相手を「職場の人」と回答しています。上司や同僚などとの人間関係に悩んでおり、仕事に対する価値観の相違がその理由として挙げられています。

介護業界で最も多いのが「人間関係」においてストレスを感じることであり、入職後定着しない原因のひとつとなっています。

給与が安い

厚生労働省の令和2年賃金構造基本統計調査によると介護職の平均年収は約337万円であり、複数回の夜勤に就いたとしても毎月の手取りが20万程度と、全業種のなかでも決して高くはありません。令和元年度の介護実態調査における「介護関係の仕事をやめた理由」では、「収入が少なかったため」が全体の上位に位置しており、特に男性の割合が高い傾向にありました。

給与は事業所の規模や地域、介護福祉士等の資格の有無によって異なります。一般的には給与が安いと捉えられており、仕事内容がハードであるにもかかわらず給与が安く、肉体労働と長時間の拘束を余儀なくされるため、割に合わないと考えて退職する人が少なくありません。介護業界における給与水準の低さは、人材不足を招く要因のひとつといえるでしょう。

同業他社と人材獲得競争激化

地域によっては、有効求人倍率が7倍を超えるところがあります。一人の求職者を多くの事業所や介護施設が取り合う構図となっており、事業所側は「採用が困難」、「同業他社との人材獲得に向けた競争が厳しい」といった悩みを抱えています。

ほかの業種と比べて収益性が低く、待遇で勝負するのが難しいため、業界外からの人材の流入が難しいといった点も課題のひとつでしょう。

介護に対するネガティブなイメージ

2019年にリクルートキャリアが行った調査結果によると、介護職に就いていない500人を対象に意識調査を実施した結果、介護職への就業をためらう主な理由として、「体力的にきつい仕事が多い」「精神的にきつい仕事が多い」「給与水準が低め」といった介護職に対するネガティブなイメージが、介護業界を敬遠する理由として上位を占めています。

しかし、この調査でもこれらのネガティブなイメージに対し、正しい実態を伝えることで、介護職への転職意向のない200人のうち、24人が「意向あり」に変わったという結果が出ています。介護業界の正しい実態への認知を広めることが、人材不足解消の一手となるでしょう。

そもそも採用に結び付かない

2019年に東京商工会議所が行った「人手不足への対応に関する調査」では、人員が「不足している」と回答した企業の約6割が「人口減少や大都市圏への流出等でそもそも人がいない」という理由を挙げています。人口の流出した地方ではそもそも働き手が少なく、採用に結び付かないといったケースも見受けられます。

どう解消する?介護人材不足への取り組み

高齢化が進むにつれて介護の担い手の需要はますます高まります。人材不足の状況を打開するためには以下の対策が急務です。

介護業界の「働き方改革」

優秀な人材を集めるためには、職員が「働きやすい」と思う労働環境を整えることが大切です。2019年4月に働き方改革関連法が施行され、介護業界においても従業員の働き方改善に向けた取り組みが求められています。

たとえば今の時代、ライフステージの変化に合わせて柔軟かつ多様な働き方ができることは必須事項です。また、キャリアの選択肢を増やして給与に反映していくような仕組みを設け、職員が長期的なキャリををイメージできるようにすることが重要です。

働き方改革に関して介護事業所が配慮しなければならないことは以下のとおりです。

  • サービス残業がないこと
  • 研修でもきちんと残業代が支払われること
  • 勤務間インターバルが8~12時間確保されていること
  • 公休、年休(年間5日間)が取得できること
  • 若い職員も希望休や有給休暇を取得しやすい職場の雰囲気であること
  • ギリギリの人数シフトでは公休さえ取得できないため、職員配置基準に余裕があること

処遇改善

さまざまな資格取得し、経験や技能を有しているにもかかわらず賃金が低いままだと、離職されてしまうのは当然のことです。リーダーとしての役割を担える実力があるといった、経験豊富で優秀といった自社にとって欠かせないについて職員については、評価を待遇に反映することでより長く働いてもらえる環境を整えましょう。

2019年に新設された「介護職員特定処遇改善加算」では勤続年数に応じた昇給の仕組みが作られ、国を挙げて介護業界の人材不足を解消するための取り組みが行われています。待遇の変更は経営側にとって簡単なことではありませんが、国の助成金制度を活用するなどして処遇や労働条件の改善に向けて取り組む努力が大切です。

助成金の活用と育成・資格取得の支援

人材雇用や育成、職場環境の整備を支援する助成金は数多く存在します。公的な助成金は返済義務を負わない場合がほとんどなので、積極的に活用するとよいでしょう。助成金の多くは厚生労働省の所掌によるものですが、地方自治体が実施している場合もあります。

人材を確保したいときに使える補助金として「キャリアアップ助成金」、「トライアル雇用助成金」、「特定求職者雇用開発助成金」、「65歳越雇用推進助成金」などがあります。また人材の育成には「人材開発支援助成金」、「キャリアアップ助成金」などを利用し、職場環境を整える助成金なども検討するとよいでしょう。

※作成中の「介護 助成金」記事へ内部リンク

離職した介護人材の呼び戻し

人材不足解消のカギとして注目を集めているのは、離職した潜在介護士の活用です。日本総研が行った潜在人材調査では、全体の4割にあたる人が介護業界で働きたいといった意向を示しており、潜在介護人材の呼び戻しが人材不足を打開する一手になる可能性を秘めています。

現場を離れた介護人材の復帰支援策として、厚生労働省は介護職に復帰する人に最大で40万円の「再就職準備金」を貸し付ける制度を設立しました。貸付とされているものの2年間の勤務実績で返済免除となるため、離職した人を呼び戻す手段として期待されています。

外国人の積極的な受入

働き手の確保について、厚生労働省は国内の人材を確保する対策の充実強化を基本とするとしながらも、優秀な外国人の労働力に期待しています。EPA(経済連携協定)に基づく受入れ、外国人技能実習制度に対する介護職種固有要件の追加、介護資格を取得した留学生への在留資格付与など、介護分野における外国人の人材活用に関する諸制度の整備が進んでいます。

介護の人材確保に向けた最近の話題

増え続ける介護需要を減少傾向にある現状の労働力人口でまかなうことは、どう考えても困難です。そのため、現状の労働市場の外にある多様な人材の活用を考えなければいけません。また、介護記録や勤務作成システムを活用したICTや介護ロボットの活用も有効な手段として期待されています。

潜在的労働力「介護サポーター」の活用

内閣府が行った「高齢者の日常生活に関する意識調査」とリクルートの「主婦の就業に関する1万人調査」によれば、現在就労していない高齢者や主婦のほとんどが「就労意欲を持っている」ことがわかっており、介護の人材確保に向けて非労働力化している潜在的労働力の活用に注目が集まっています。

潜在的労働力のなかには、キャリアアップよりも他人からの感謝や「やりがい」を求める人、定型の業務を重視したい人も多く、そういった人に「介護サポーター」として介護の専門性がそれほど高くない業務を担ってもらえるような準備が進められています

介護サポーターの導入によって期待される効果は以下のとおりです。

  • 介護職員の残業時間減少
  • 介護職員の有給休暇取得率向上
  • 介護職員の直接介護にかかわる時間の増加と事故発生件数の減少
  • 認知症利用者への個別対応が可能になる など

介護現場におけるICTや介護ロボット活用

ICTや介護ロボットの有効活用が介護分野の労働力不足に寄与することがわかってはいるものの、現状において介護記録等のシステムや介護ロボット等の普及率は高くありません。導入上の課題として金銭面や実用面の不安が多く挙げられていますが、人材不足の課題解決のためには「介護保険施設等におけるデジタル環境整備促進事業」や「介護ロボット導入支援事業補助金制度」などを活用し、適切に取り入れることが不可欠となるでしょう。

それぞれの介護事業所にあった人材不足の対策を

人材不足は事業経営の根幹を揺るがす問題であり、最悪の場合は事業を継続できなくなる可能性があります。人材不足の解消にあたって確実に有効とされる手段はありません。

この記事では離職率を抑えて定着率を上げる対策を説明してきました。紹介した対策を参考に、まずは、出来ることから始めてみることをおすすめします。

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