介護施設で有給休暇取得率を高める5つの方法

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介護施設で有給休暇取得率を高める5つの方法

介護施設・事業所では、働き方改革によって職員がどの程度有給休暇を取得しているかを把握することが求められています。また把握するだけでなく、取得率を高めることも必要です。どうすれば介護の職場で有給休暇取得率を高めることができるのか、具体的な5つの方法を紹介します。

介護現場でも有給休暇取得が義務化

2018年に成立した「働き方改革関連法」により、2019年4月以降、年に5日以上の有給休暇を職員に取得させることが義務化されました。もちろん人材不足の介護現場も例外ではなく、職員にとって当然の権利として有給休暇を取得することが出来ます。

なお、働き方改革関連法によって定められたのは、有給休暇を取得することだけではありません。残業時間の上限についても定め、職員がより働きやすい労働環境で働けるようになりました。

10日以上の有給休暇が付与している職員が対象

すべての職員が年に5日以上の有給休暇を義務として取得できるわけではありません。10日以上の有給休暇が付与されている職員だけが対象となるので注意しておきましょう。

なお、6ヶ月以上の雇用で10日の年次有給休暇が付与されるという決まりになっています。そのため、現在の職場で6ヶ月未満の連続雇用の労働者に関しては、有給休暇を取得させていなくても雇用者が罰則を科せられることはありません

取得できていない場合は施設・事業所がペナルティを受ける

6ヶ月以上雇用状態にあり、10日以上の有給休暇が発生している職員に対しては、雇用者は年に5日以上の有給休暇を取得させなくてはいけません。5日以上の有給休暇を取得できていないときは、30万円以下の罰金が科せられます。これは5日以上の有給休暇を取得できていない職員1人に対しての罰金なので、該当する職員が多いと罰金がさらに高額になるでしょう。

また、たとえ有給休暇を取得していたとしても、職員が希望する時季に取得できていないときは、6ヶ月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金が科せられます。どの時季に有給休暇を取得したいのかを職員に予定表に記入を促し、なるべく希望に沿うように工夫しましょう。

介護現場で有給取得が難しい理由

年に5日程度であれば、簡単に有給休暇を取得できるように思えるかもしれません。

しかし、人材不足の介護現場では、わずか数日の有給休暇すら取りにくいことが往々にしてあります。主な原因としては、次の3つが挙げられるでしょう。

  • 人材不足だから
  • 有給休暇の仕組みが周知・徹底されていないから
  • 有給休暇を取りにくい雰囲気だから

人材不足だから

介護の現場では人材不足が深刻です。介護労働安定センターが実施した「令和元年度介護労働実態調査」によれば、約7割の介護施設や事業所で人材不足を感じていることが報告されています。

また特に訪問介護に関しては、8割強の事業所などにおいて人材不足を感じていると報告されました。十分な人員が配置されていないことによって介護職員一人あたりの介護業務が多くなり、結果として有給休暇を取得できない状態になっているようです

参考:介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査」

有給休暇の仕組みが周知・徹底されていないから

業務が忙しく、誰も有給休暇を取得しない環境では、有給休暇の仕組みすら周知されていない可能性があります。もしかすると「特別な理由がないと取得できないのでは?」と勘違いしている方もいるかもしれません。

また、有給休暇を取得すること自体が特別なことで、取得することが後ろめたさを感じる方もいます。有給休暇を取得するのは権利だということを、新入職者への研修でも周知されているかもしれませんが、日ごろから会議や申し送りの際に周知する必要があるでしょう。

有給休暇を取りにくい雰囲気だから

そもそも有給休暇を取得することが取りにくい雰囲気の職場もあります。職員が「〇月〇日に有給休暇を取得したい」と伝えると、上司が「何か理由があるの?」と理由を確認したり、「私は有給休暇を取りたくても取れないよ。休めていいね」と嫌味を言ったりすると、体調が悪い理由以外では有給休暇を取得できないという雰囲気になってしまい、ひいては、受け手の感じ方により、パワハラと取られてしまうリスクもあります。

本来、有給休暇の取得に特別な理由は必要ありません。有給休暇は一定期間勤続した職員に与えられた正当な権利なので、有給休暇の取得を申告しても理由を尋ねたり、嫌みを言ったりしないことが大切です。また尋ねられた人も、答えたくない時には答えなくても何の問題もありません。有給休暇の届け出の際にも「私用のため」と記載すれば良いでしょう。

介護現場の有給休暇取得率を高める5つの方法

「離職率が高く、人材不足」あるいは「有給休暇を取得する職員がいない」などの理由により、多くの介護現場ではこれまで有給休暇を十分に取得できない環境でした。働き方改革関連法が施行された現在では、そのような環境を放置しておいてはいけません。有給休暇を取得する権利を有するすべての職員が、求める時季に休暇を取れるように環境整備する必要があります。

とはいえ、法令遵守を理解していても人材不足で有給休暇の取得が難しいと考えている施設や事業所の経営者や管理者も多いでしょう。有給休暇の取得率を高める方法について、次の5つを紹介します。参考にしてください。

  • 有給休暇の見える化を進める
  • 有給休暇を取得することを周知・徹底する
  • 交代制で有給休暇を取得する
  • 取得状況に応じインセンティブを付与する
  • 時間単位で有給休暇を取得できるようにする

有給休暇の見える化を進める

職員個人に有給休暇を管理させると、計画的に取得しない可能性があります。毎日の業務が忙しく、有給休暇を取得することを忘れてしまうこともあるでしょう。

有給休暇の計画表や取得表を作成し、施設や事業所内のよく見える場所に貼ってみてはいかがでしょうか。皆がいつでも見える場所に貼れば、「〇〇さん、まだ取ってないの?都合の良い時に取ってね!」と声がけもすれば、有給休暇を取得しなくてはいけない雰囲気になり、お互いに有給休暇を取得しやすい環境をつくれるでしょう。

有給休暇を取得することを周知・徹底する

有給休暇を取得しやすくするためには、職場の雰囲気も大切です。誰もが気軽に有給休暇を取得できるように、「有給休暇は取得しなくてはいけないもの」という雰囲気づくりに会議や申し送りも通じて努めましょう。

また、有給休暇制度と取得方法の周知徹底をする必要があります。有給休暇を取りたいと思っても、届け出が面倒なので、はなかなか取得できないという職員もいるかもしれません。誰もが簡単に出来るような届け出方法についても検討しましょう。

交代制で有給休暇を取得する

有給休暇を取得することは職員の権利ですが、皆が同じ日に有給休暇を取得すると施設・事業所の運営が成り立ちません。施設のユニットごとなど、交代で有給休暇を取得する仕組みをつくり、皆が順番に取得出来るようにしましょう。

有給休暇を「いつまでに取得してもよい」といわれるとつい時季を延ばしてしまい、結局、取得出来ないまま1年が過ぎてしまうこともあります。交代制にすれば、自分がおおよそいつくらいに有給休暇を取得すればよいのかがわかるので、有給休暇取得予定日を決めやすくなるでしょう

インセンティブを付与する

もしも、有給休暇を取得することに対して職員の多くが否定的なイメージを持っている場合には、有給休暇を取得することでインセンティブを付与する仕組みをつくってみてはいかがでしょうか。有給休暇を取得することが評価につながるとなれば、取得することに対する抵抗感がなくなり、有給休暇をポジティブに取得することができます。

時間単位で有給休暇を取得できるようにする

「1日まるごと休む必要はないけれど、子どもの学校行事などに時間単位で有給休暇を使いたい」と考える職員が多い場合は、労使協定を定め、時間単位でも有給休暇を取得できるようにしてはいかがでしょうか。


体調不良や家族の事情などの急な早退や遅刻にも活用できるので、取得しやすいというメリットがあります。また、業務の状況により、少し遅れて職場に来ることや、少し早く帰宅することがリフレッシュにつながり、ライフワークバランスで、働きやすいと感じさせることもできるでしょう。

介護現場で有給休暇取得率を向上させるメリット

介護の現場で有給休暇の取得率を向上させると、働き方改革関連法を法令遵守するだけでなく、子育てや介護も両立できる働きやすい職場になるというメリットがあります。

子育てや介護をしていると、急に病院に付き添う必要が生じたり、学校や高齢者施設に出向かなくてはいけなくなったりと、予想していなかったことが多々起こるでしょう。しかし、有給休暇を取得しやすい職場であれば、そのような事情にも無理なく対応できるようになります。

また、有給休暇の取得率が高いということは、介護施設・事務所の魅力にもなるでしょう。求職者が増え、人材不足も解消される近道になることもあります。人材不足が解消されれば、さらに職員は余裕を持った働き方ができるので、有給休暇をより一層取得しやすくなるでしょう。さらに業務の見直し、皆が協力出来る体制にすれば、残業がなくなり、定時退勤が可能な職場へと生まれ変わるかもしれません。

介護現場の有給休暇消化率を向上させよう!

有給休暇の取得率を向上させることは、イキイキと職員が働く魅力ある施設・事業所になるためにも必要なことです。有給休暇取得の計画表・取得表を作成したり、取得状況に応じたインセンティブ制度や時間単位での有給休暇の取得制度を構築したりすることで、職員が働きやすい環境を作っていきましょう

また、有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりも大切です。職員皆が声掛けして、有給休暇を取得しやすい職場環境に変えていきましょう。

有給休暇取得率が向上するだけでも、求職者にとって魅力的な職場になります。慢性的な人材不足にお悩みの方も、ぜひ有給休暇の取得率を高める工夫に力を入れていきましょう。

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