社会福祉法人とは?株式会社の違いとメリット・デメリット

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介護施設の求人を見ていると、「社会福祉法人」や「医療法人」「株式会社」など、複数の運営法人が出てきます。なんとなくはイメージできても、詳しい違いや事業の目的などは分からないといった方も多いのではないでしょうか。

法人の違いによって運営の目的や特徴などが異なり、転職の際に自分に合った職場を見つけるためには、その違いを理解しておくことが重要です。

そこで、本記事では介護施設の運営母体となる法人の違いについて解説します。


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「社会福祉法人」とは

社会福祉法人は、社会福祉法に基づき、保育や医療、介護などの社会福祉事業を行うために設立された非営利法人です。設立には事業所のある所在地の自治体による認可が必要で、法人が行う社会福祉事業の内容についても定められています。介護事業には、特別養護老人ホームをはじめとして、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど幅広い事業が当てはまります。

法人設立までの審査が厳しい一方で、法人税法上では公益法人に該当するため、一部を除き非課税となり税制上の優遇措置が受けられます。他の法人や企業に比べて、セーフティネットとしての役割が強くなっています。

特徴

平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、社会福祉法人で働く介護職員の平均給料は32万1,520円と高水準で、介護に関連する法人の中では最も高い金額になっています。この平均給与額は公務員扱いになる地方公共団体の職員は対象としていないため、民間でも給料が高いことがわかります。

待遇面の良さなどからも勤続年数も他の法人に比べて長くなる傾向があり、社会福祉協議会での平均勤続年数は14.2年、それ以外の社会福祉法人でも平均勤続年数は13.0年となっています。介護士としてのキャリアが長い方が多いため、介護技術や知識を得やすく初めて介護士として働く場合でもしっかりと技術を身につけられるでしょう。

また、社会福祉法人の中には、地域に根ざしている法人が多いのも特徴です。地域内の他の施設と連携しながら地域ケアについて考える機会も多く、施設内だけにとどまらない体験を積むことができます。

社会福祉法人が向いている人

社会福祉法人は税制上の優遇措置が受けられるため、比較的経営状況が安定しています。

給与面や福利厚生の面でも他の法人よりも優遇されている施設も少なくないので、倒産やリストラなどが起こらない安定した労働環境と待遇面を重視する人に向いています

また、経験を積んだベテランの職員が多いため、自然と知識やスキルを習得することができます。さらに、特別養護老人ホームなどでは要介護度の高い利用者さんが多く、高度な身体介護のスキルを求められるため、介護職として技術力を高めたいという人にはおすすめの環境でしょう。

介護事業所を運営する法人の種類

介護事業所を運営している法人は、営利を目的とするかしないかによって、大きく2つに分けられます。

営利を目的とする法人(営利法人)
株式会社、持分会社(合同会社、合資会社、合名会社の総称)

営利を目的としない法人(非営利法人)
社会福祉法人、医療法人、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、公共団体など

法人の目的を比べると、利益を追求するかどうかが大きな違いになります。

営利法人では、事業によって得た利益を従業員や株主に分配することが法人運営の目的になります。そのため、利益を第一に考え、効率よく運営するための人員配置や利益を生み出す為の価格設定など、営利を優先させた運営となります。

一方、非営利法人では、利益を分配するのではなく組織の目的を達成させるために使用します。医療や福祉など、人の命や健康を預かる事業、地域貢献に関する事業の場合、営利を優先させてしまっては十分なサービスが提供できない場合があります。そのため事業の質を重視しなければならない場合、行政の許可を得た非営利法人が担うこととなっています。
とくに、医療事業は非営利団体が運営することと、法律で定められています。

「医療法人」とは

医療法人は、医療法の規定に基づく法人で、医師や歯科医師が常勤する診療所などを開設しようとする際に設立されます。社会福祉法人と同様に都道府県の認可を得なければ設立できず、法人税法上の公益法人に該当するため法人税の優遇措置を得られます。

医療法人は病院やクリニックを運営するのが一般的で、介護分野では介護老人保健施設やデイケア施設などが当てはまります。介護だけでなく医療も同時に行えるため、退院後のリハビリなどを目的とした方が利用しています。

特徴

医療法人で働く介護職員の平均給与額は30万4,730円と、社会福祉法人には劣るものの給料が高い傾向があり、営利目的の企業と比べると3万円程度高く待遇面での良さが特徴として挙げられます。これは、介護だけでなく医療も行うことで事業所全体の収入が高額になる一方で、医療設備などへの費用が必要になるため、職員への給与がやや下がってしまうことが考えられます。

また、介護老人保健施設やデイケアなどの事業所は、終の棲家にはならず基本的に在宅復帰を目指す施設であることも特徴のひとつです。亡くなる以外に利用者さんが退所することもあり、病院と同じように目標のあるケアができます。

医療法人が向いている人

医療法人が運営する介護老人保健施設やデイケアでは医療行為やリハビリを目的としています。そのため、医師や看護師、理学療法士や作業療法士などと関わるため、必然的に医療やリハビリに関する知識が身につきます。介護の技術や知識だけでなく、医療やリハビリのノウハウを学んで介護士として幅広いスキルを身につけたい人が向いている職場といえるでしょう。

また、日々の業務の中では、医師や看護師だけでなく、ケアマネジャーや帰宅後に利用するサービスの担当者など幅広い職種の方と接します。自分とは違った意見を受け入れながら、介護の側面からの自分の意見をきちんと伝えられるコミュニケーション能力を持った方もおすすです。

「株式会社」とは

介護業界における株式会社は、一般の企業と同じように営利を目的とする組織です。事業所の設備や体制などは法律の縛りを受けますが、法人の設立や目的などは自治体の縛りは受けず、比較的自由な事業展開が可能です。

株式会社が運営している施設は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、デイサービスやグループホームが挙げられます。差別化のために非営利法人とは異なるサービス展開をしており、多様なサービスが求められています。

特徴

株式会社の事業所は全国的に展開していることが多く、事業規模が大きい事業所ほど高額な給与が期待できます。さらに、高所得者向けの事業所では利用料も高額になることで、より高い給与をもらうことも可能です。

ただ、自立度の高い事業所の場合は身体介護の割合が少なく、マナーや接遇など介護技術以外の能力が求められる場合があります。事業所内でのキャリアアップ制度が設けられていても、介護士としてのキャリアアップにつながらないこともあるので、どのように自分の技術を磨いていくのかを考えておく必要があります。

株式会社が向いている人

大手の株式会社では研修体制が整っており、いちから介護職をはじめる場合でも安心して業務に必要な知識や技術を身につけられます。就業後も社内研修などが充実している場合も多く、業務に慣れてからもスキルを磨くチャンスがあるので、社内制度を活用してステップアップしたい人は株式会社が向いているでしょう。

さらに、高級志向の事業所では接遇面でのスキルが必要になるため、利用者さんとの接し方を基本的なことから身につけられます。一方で、全国で事業を展開している場合はキャリアアップにともなう転勤の可能性もあります。そのため、転勤などがあっても対応が可能で、役職など社内でのキャリアアップに貪欲な人にもおすすめできます。

「有限会社」「持分会社」(合名会社・合資会社・合同会社)とは

民間企業の中で、少し分かりづらいのが「有限会社」や「持分会社」です。「有限会社」は現在の会社法では会社として認められておらず、株式会社のひとつである「特例有限会社」になっています。そのため、「有限会社」は平成18年以前に設立された会社しか存在しません。

「持分会社」は会社設立の出資者自らが会社を運営しており、株式会社とは異なり、出資者と経営者が分かれていません。そのため、経営者が会社の働き方などを自由に決められ、時代に適合した仕組みづくりが行いやすくなっています。

特徴

有限会社と持分会社は株式会社などと比べると小規模になり、職員と経営者の距離が近くなるのが特徴です。場合によっては、経営者の家族が現場で働いていることもあり、この距離感の近さによって現場での不満や不安を直接経営者に伝えられるのがメリットです。

さらに、経営者がそのまま会社の方針の決定権を持っているため、意見がそのまま新しい制度へ反映しやすく、働きやすい職場が作られやすくなっています。ただ、経営者一人の意見で物事が決まってしまう場合もあり、良くも悪くも経営者の考え方に大きく左右されます。

「有限会社」「持分会社」が向いている人

有限会社や持分会社特有の経営者との距離感の近さを利用して、自分の意見を提案し、より良いサービスや働きやすい職場を作り上げたい人に向いています。
細かな改善点に気づく視野の広さや、具体的な提案を行い積極的に提案したい方ほどやりがいを感じるでしょう。

また、小規模な企業のため転勤が起こりづらいのも特徴です。家族と離れたくない、住んでいるところから職場を選んだなど、業務以外の問題に悩まされたくない人も有限会社や持分会社の事業所が向いています。

まとめ

事業所を運営している法人によって、事業体系や目的、特徴などが異なります。ただ、同じ法人の中でも事業所によって方針などに違いがあり、転職の際に法人の違いだけで選んでしまうと後悔してしまうことがあります。そのため、自分のやりたいことに合う事業所を見つけるようにして、法人の違いはあくまでも方向性として考えて働きたい事業所を探しましょう。

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