【完全版】今日からできる!負担の少ない体位変換の方法を教えます

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【完全版】今日からできる!負担の少ない体位変換の方法を教えます

身体の向きを自分で変えることが難しい人にとって欠かせないのが「体位変換」です。体位変換とは体位、つまり体の位置を変えることをいい、長時間同じ姿勢でいることで起こるさまざまなリスクを予防するために行うものです。ただし、正しく行わないと、身体に負担をかけてしまうこともあるかもしれません。そこで、この記事では介助する職員と利用者さんの負担を抑えられる体位変換の効果的な方法について紹介します。


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代表的な体位の種類

『看護大事典』(医学書院)によれば、そもそも体位とは「からだの空間における位置・構え・姿勢の状態」をいいます。また、「からだの体軸・前後・体幹と四肢との位置関係を基準として分類される」ものでもあります。身体がどの方角に向き、どのように傾き、どのような格好をしているかなどといった身体の状態を示し、その状態によって複数の種類に分類されています。

体位の種類は大きく分けて「立位(りつい)」「座位(ざい)」「臥位(がい)」の3つがあります。

まず、立った状態を「立位(りつい)」といいます。正しい立位は、天に向かって身体が真っ直ぐに伸び、正面を向いたとき身体の中心に重心線が通る状態です。一方、座った状態は「座位(ざい)」といいます。座位の正しい姿勢は尻で体を支えるようにして腰掛け、上半身は真っ直ぐ起きている状態です。ほかには、寝た姿を指す「臥位(がい)」があります。

座位は、どのような座り方をしているかによって、さらに分類されています。たとえば、椅子の通常座るべき位置に座っている姿勢は「椅座位(いざい)」ベッドや椅子などの端のほうに腰かけている姿勢は「端座位(たんざい)」と分けられています。さらに、ベッドの上などで脚を真っ直ぐに伸ばして座っている状態は「長座位(ちょうざい)」仰向けに上半身を45~60度程度起こした状態は「半座位(はんざい)」または「ファウラー位」といいますし、半座位よりも角度が小さく、約30程度で上半身を起こした姿勢は「セミファウラー位」といわれています。

寝た姿を指す「臥位(がい)」には、寝たときに仰向け姿勢となるのは「仰臥位(ぎょうがい)」うつぶせ姿勢が「腹臥位(ふくがい)」と呼ばれます。腹臥位のとき、胸部や腹部は床側に向いていますが、顔は左右のどちらかに傾いた状態になります。対して、身体ごと横を向いている状態は「側臥位(そくがい)」といいます。利用者さんの体を側臥位にする場合、床側になる腕は身体が乗らないようにやや前にずらし、肘は軽く曲げます。また、両脚は重ならないようにし、膝は軽く曲げます。さらに、側臥位の状態から体幹を右左のどちらかへ向かってななめ45度に傾けた姿勢が「半側臥位(はんそくがい)」です。

体位変換の目的

体位変換は、人が本来すべき体の動きを自力でできない利用者さんをサポートすることが目的です。人は健康な状態であれば、生まれたときから自然に自分の身体を動かしています。身体の格好や向き、姿勢を日常的に変えることは人として自然な行為です。しかし、さまざまな理由から身体の自由がきかなくなっている人は、この自然な行為を自分で日常的に行うことができません。そのため、介護者である職員が日常生活のなかで意識的に、利用者さんの姿勢を変えたり、身体を傾けたり、関節を動かしたりすることが必要になるのです。

体位変換をして利用者さんを動かす目的は、大きく3つあります。1つ目は、利用者さんの日常生活のケアを行うためです。食事や着替え、身体清拭などを行う際に身体を動かします。ベッドと車いす間の移乗やおむつ交換などのときにも身体を動かさなければなりません。

2つ目は、動作が衰えることにより起こり得る身体リスクを予防するためです。身体を動かす機会が減ると、関節の硬直化が進みやすく、やがては動きが制限されてしまったり、身体が変形してしまったりします。また、血液の循環が悪くなり、褥瘡(じょくそう)を引き起こすことがあるため注意が必要です。褥瘡とは、いわゆる床ずれのことで、血液の流れが滞ることにより皮膚の変色やただれ、傷などを引き起こす症状をいいます。長時間の体重の負担で圧迫された部分に血液が通らなくなり悪化すると、皮膚や皮下脂肪組織が死んでしまうこともあるため気を付けなければなりません。そのほかにも、内臓機能が低下したり、むくみが起こりやすくなったりするなど、身体へのさまざまな弊害事象を回避するためにも体位変換は重要です。

3つ目はQOLの向上です。QOL は「Quality of Life」の略語で、生活の質を意味します。肉体面だけではなく、精神的にも社会的にも利用者さんが1人の人間として自分らしく生活を続けられるようにすることは大切なことです。たとえば、体位変換時のコミュニケーションを十分に取るようにすることで苦痛を感じさせないように工夫することも、QOLの向上のための方法のひとつといえるでしょう。また、体位変換で風通しを良くし、暑さや蒸れなどによる不快な状態を改善するようにすることも、安心して生活が送れるようにするための工夫となります。

体位変換の適切な回数

体位変換は定期的に行うことが重要です。これは、身体の同じ部分が長時間圧迫を受けることを防ぐためです。体位を変える回数は多いに越したことはありませんが、褥瘡を予防することが目的の場合、一般的には2時間ごとが目安とされています。体位変換の頻度として2時間ごとに行うことが主流となっているのは、局所への圧迫を避けるために目安となる時間が2時間であると、1977年に東京都老人総合研究所・東京都養育院付属病院により出版された『褥瘡―病態とケア―』で示されたからです。

ただし、これらはあくまでも目安で、実際に必要となる体位変換の回数は利用者さんの状態などによって変わってきます。2009年のガイドライン策定に伴う過程でも、頻度は状況に応じて決定されることが示されていました。たとえば、全身の状態や身体組織の耐久性、皮膚の状態、活動のレベルなどは人それぞれです。また、マットレスを使用しているか否かでも体位変換の必要回数は異なってくるものです。そのため、体位変換の適切な回数は、利用者さんのニーズを正確に理解したうえで、これらを総合的に見て決められるものであるとされています。

体位変換のやり方

正しい体位変換の方法について基本的な流れを紹介します。

体位変換のステップは大きく分けて6つあります。

  1. アセスメントする
  2. 目標とする体位をイメージする
  3. 体位変換の方法、必要なピローについて考慮する
  4. 実際に頭部から順に体位を変換する
  5. ポジショニングを実施する
  6. 終了後に安楽性や全身のアライメントを評価する

最初に、利用者さんに対してアセスメントを行いましょう。アセスメントとは、利用者さんが求めるニーズや体位変換がなぜ必要であるかを確認し、現状の能力や生活状況などから今後の方針や課題を立てていく作業です。これから何をすべきかを整理できたら、次は、どのような体位を目標とするのかを具体的にイメージします。そして、体位変換の順番や流れ、体位変換時のサポートとして必要となるピローについても考えておきます。

体位変換の方法を具体的に考えることができたら、次は実践です。たとえば、仰臥位から側臥位への体位変換で利用者さんの身体を横に向ける際には、事前準備として、ベッドを介助しやすい高さに調整し、枕は身体を傾けたい方向の手前に引き、あわせて顔も方向変えしておきます。利用者さんの両腕は胸の上で組み、かかとをお尻に付けるように両膝は立てておくこともポイントです。

体位変換の方法はさまざまありますが、基本として押さえておきたいポイントは、身体の上部から下部に向かって順に動かしていくことです。最初に頭部、次に体幹、最後に脚部の順番となります。

すべての箇所を動かしたらポジショニングを行い、安定した状態となれる体位を作って終了です。ここまでのステップをすべて終えたら、全身のバランスは適切か、心身の安楽性が高い状態となっているかを評価します。

体位変換の注意点・ポイント!

介護者である職員や利用者さんの負担をできる限り抑えて体位変換するためにはコツがあります。先に紹介した体位変換の方法でもほかのやり方をするときでも通じるポイントです。

まず、スムーズな体位変換を行うために大切となるのが、介護者と利用者さんの協力体制とコミュニケーションです。介護者の力だけで無理に利用者さんの身体を動かそうとすると、体力的に大きな負担がかかります。体位変換をする際には、事前に利用者さんへ声掛けをして、協力してもらえる部分はお願いしましょう。

たとえば、利用者さん自身の力で腕組みや膝立などをしてもらうことは、介護者の負担を減らし、利用者さん自身にとっても自立に向けた大事な関わりとなります。また、腕を組み、膝を高く立てておいてもらうと、身体がコンパクトにまとまるため体位を変えやすく、ベッドとの接触面が少なくなるので利用者さんの身体への摩擦を抑えられます。さらに、これから身体を動かすことを先にアナウンスしておくことで、急に体位変換されるよりも精神的に安心できるでしょう。

加えて、肩を起こす前に利用者さんのひざを介護者側に倒しておくと、お互いの身体的負担が減らせますし、身体を起こす方に向かって回転しやすくもなります。「ボディメカニクス」の原理を生かすのも、できるだけ楽に体位変換するための手段です。ボディメカニクスは、身体の構造や動きの作用に関わる力学を利用して身体を動かすことをいいます。力に頼りすぎず、てこの原理や重心の位置などを活用する方法です。これらのコツを利用しながら、さらに、ベッドの高さや力加減などを状況に応じて調整し、体位変換を行いましょう。

お互いに負担の少ない体位変換をしよう!

この記事では、介護の重要な技術のひとつである体位変換について、方法やポイントを具体的に紹介しました。体位変換をきちんとマスターすることは、介護者と利用者さんの両者の心身の負担を減らすことができるため、お互いにとってプラスです。双方にとって負担が少なくなる方法を実践しながら、無理のない体位変換を目指しましょう。

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